猫と暮らす
UP DATE
猫の歯周病&口内炎は人よりも重症化しやすいは本当!?獣医師が解説します!
重本 仁 先生
王子ペットクリニック院長
宮崎大学農学部附属動物病院所属
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医臨床病理学研究室卒業
現在 日本獣医生命科学大学獣医外科学教室研究生
宮崎大学大学院医学獣医学総合研究科(博士課程)
宮崎大学と共同で先天性門脈体循環シャントの腹腔鏡での術式の研究と開発を行う
●資格:獣医師
●所属:日本小動物内視鏡推進連絡会推進委員/日本獣医再生医療学会理事/日本獣医内視鏡外科研究会/東京都獣医師会北支部副支部長 防災/獣医神経病学会/日本獣医がん学会/日本獣医麻酔外科学会/日本小動物歯科研究会/光線温熱療法(PHT)研究会/日本小動物血液透析協会(JSAHA)
猫に多い口腔の病気 人よりも重症化しやすいので要注意!
「歯周病」は、歯肉に炎症が起きる「歯肉炎」や歯の根元の歯槽骨などに炎症が起きる「歯周炎」の総称。おもな原因は、歯に付着した歯石や歯垢中の細菌の増殖によるものです。
一方、「口内炎」は口の中の粘膜に炎症が起きる病気のこと。人でも同名の病気がありますが、猫の場合は口内に赤みや腫れ、肉芽増殖(粘膜が盛り上がる)などが見られ、何年も治らないケースがあります。発症の原因として、口腔内の細菌バランスの乱れや、猫カゼを引き起こすカリシウイルス、エイズウイルスなどの関与が疑われていますが、まだ解明されていません。
どちらも初期症状として、フードを口に入れることを嫌がる、よだれが増える、口臭がきつくなるなどがあります。治療は、軽症なら歯石の除去や抗生物質の投与、重度の場合は全身麻酔のうえ抜歯を行います。
歯周病
下記の写真は、歯周病により、上の歯に歯石が多量に付着して歯肉が赤く腫れた状態。このくらい歯垢や歯石が付いているときは抜歯による治療を行うのが一般的です。
口内炎
写真は口峡部の粘膜に炎症や肉芽増殖が起きているほか、舌がただれて舌炎の症状が見られます。口内炎は歯垢や歯石が付着しない箇所にも発症します。
歯周病でこんな体験をしました
「歯周病」と診断され、歯石除去をしましたが、その3年後に口臭が気になり、再受診。
歯石除去とぐらつく犬歯を抜歯しました。
その後、慢性腎臓病を発症したため、全身麻酔を要する歯石除去ができず、歯周病に悩まされ続けました。
東京都 S・Oさん クロコちゃん(メス・享年20才)
飼い主さんからの疑問「そこが知りたい」
それができたら晩年歯周病で苦しむこともなかったのに……と思いました。
歯石除去は麻酔が必須なのでしょうか?
歯石除去は全身麻酔が必須ですが、腎臓病でも全身麻酔ができる場合があります
ただし、程度によりますが、腎臓病であっても、絶対に麻酔ができないわけではありません。愛猫の病状や体調を把握したうえで、全身麻酔をしてくれる動物病院を探してみるのも手です。
口内炎でこんな体験をしました
その際に、獣医師から「口内炎」になりやすいと聞いていた通り、1才のときに口内炎に。
フードを食べるときに首を傾けて肩をすくめるように食べたり、ときどき声を上げたり、とても痛がっている様子でした。
神奈川県 M・Nさん 琥珀くん(オス・3才)
迎えたあと、フードを食べるときの様子がおかしかったので口の中を見たところ、歯茎や粘膜が赤くなっているのを確認。すぐに動物病院で診察をしてもらいました。
診断後は飲み薬による治療を行い、今は痛がることなくフードを食べられるまで回復しました。
飼い主さんからの疑問「そこが知りたい」
ので歯石がたまりがちでした。
口内炎がますます悪化するのではないかと心配になったのですが、
できるケアはあったのでしょうか?
飲み水に入れて飲ませるデンタルケアグッズを試しても
歯磨きが難しい場合は、飲み水に入れるタイプのデンタルケアグッズや薬などで、口内環境を整えてあげても。
また、全抜歯による治療を行うと、約6割のケースで口腔の病気は完治することがわかっています。猫は食べ物を咀嚼せず飲み込んで食べる習性があるので、症状次第では抜歯を検討し
てもいいでしょう。
実際の体験談だけあって、参考になりそうなポイントがたくさんありますね。
いざというときに役に立つリアルな情報を今後もお届けしていきます。
参考/2019年7月号『猫の病気、そこが知りたい!』
文/浪坂一
イラスト/上垣厚子
※この記事で使用している画像は2019年7月号『猫の病気、そこが知りたい!』に掲載されているものです。
UP DATE