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発症すると免疫機能が破壊される病気、猫エイズについて獣医師が解説します!

『ねこのきもち』本誌で毎号連載中の「ねこの病気、そこが知りたい!」。実際に愛猫が病気になった飼い主さんが治療中に「知りたかったこと」を、獣医師の重本 仁先生が教えてくれます。

今回は猫の免疫機能が破壊される猫エイズウイルス感染症、通称「猫エイズ」についての体験談から、すでに感染している猫を新たに受け入れるとき、何に気を付けるべきかをご紹介します。

重本 仁 先生

 獣医師
 王子ペットクリニック院長
 宮崎大学農学部附属動物病院所属

 日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医臨床病理学研究室卒業
 現在 日本獣医生命科学大学獣医外科学教室研究生
 宮崎大学大学院医学獣医学総合研究科(博士課程)
 宮崎大学と共同で先天性門脈体循環シャントの腹腔鏡での術式の研究と開発を行う

●資格:獣医師

●所属:日本小動物内視鏡推進連絡会推進委員/日本獣医再生医療学会理事/日本獣医内視鏡外科研究会東京都獣医師会北支部副支部長 防災/獣医神経病学会日本獣医がん学会日本獣医麻酔外科学会日本小動物歯科研究会/光線温熱療法(PHT)研究会/日本小動物血液透析協会(JSAHA)

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発症すると免疫機能が破壊される病気

猫エイズウイルス感染症は、免疫機能を破壊する「猫免疫不全ウイルス」が体内に侵入して感染する病気。発症すると免疫不全になり、最終的に死に至ることが人のエイズと似ていることから「猫エイズ」と呼ばれています。
現在、治療法がないため、感染すると完治はのぞめません。ただ、症状のない「無症候キャリア期(通称「キャリア期」)」のステージが長い猫が多い傾向にあるので悲観し過ぎることはないでしょう。
感染経路は、おもに感染猫とのケンカなどによる噛み傷からとされています。
感染を知るには、専用の血液検査を受けることが必須です。母猫から抗体を受け継ぐため、生後6カ月以内の子猫の場合、感染していなくても陽性になる場合が。また、感染してから2カ月以内の場合、抗体が検出できず、感染していても陰性になることがあるので、検査するタイミングは獣医師に相談して。

感染~発症の流れ

感染直後に数週間から数カ月、軽い発熱や下痢、リンパ節の腫れなどの症状が出ますが、その後発症しなければ数カ月から数年、または、そのまま寿命まで症状が出ない猫もいます。
発症してやせた猫(下写真)。発症すると、免疫機能が低下し始めるので、口内炎、鼻炎、結膜炎などにかかりやすくなり、進行すると、貧血に。免疫力が下がった結果、最終的に命を落とすといわれています。
イラスト/上垣厚子
画像/ねこのきもち2019年10月号『猫の病気、そこが知りたい!』

猫エイズでこんな体験をしました

先住猫が2匹いたこともあり、保護した際に動物病院で血液検査をしたところ、猫エイズのキャリアであることが判明。先住猫との顔合わせを慎重に進め、仲がよくなってから、家の中で自由に過ごせるようにしました。今のところ発症せず元気に過ごしています。
静岡県 M・Oさん ノワールくん(オス・3才)
保護した際に、ケンカの傷がたくさんあったノワール。獣医師からは、ケンカが原因で猫エイズにかかった可能性が高いと説明を受けました。感染していてもケンカをしなければ先住猫と同じ空間で生活できることを聞き、2カ月ほど完全隔離をしてから、日数をかけて少しずつ顔合わせをしました。徐々に慣れていくようにしたことがよかったのか、ケンカをすることもなく、ノワールを家の中で自由にさせられました。このまま発症しないように、免疫力を上げるサポートをしてくれるサプリメントを与えています。
画像/ねこのきもち2019年10月号『猫の病気、そこが知りたい!』
自宅の庭に遊びにきていた頃のノワールくん。数カ月かけて無理強いせず保護したそう。
画像/ねこのきもち2019年10月号『猫の病気、そこが知りたい!』
ゴハンは、取り合うこともなく先住猫と一緒に仲よく並んで食べるのだとか。

飼い主さんからの疑問「そこが知りたい」

獣医師からは、猫エイズはケンカによる噛み傷からの感染がほとんどと聞きました。
先住猫を感染させないためにケンカ以外に自宅で気を付けることはあるのでしょうか?

外に出さないように気を付けて

「猫免疫不全ウイルス」は、空気感染や人を介して感染する心配はなく、猫の血液や唾液を介してのみ感染します。唾液といっても、食器の共有やグルーミングなどで感染する可能性は低いとされているので猫同士が仲よしなら大丈夫でしょう。ただ、忘れてほしくないのが、猫を外に出さないこと。自宅で感染しないように気を付けても、外に出て感染したノラ猫とケンカをしては元も子もありません。とくにオスは縄張り争いでケンカをしがちなので要注意です。
イラスト/上垣厚子
先生、ご回答いただきありがとうございました。
実際の体験談だけあって、参考になりそうなポイントがたくさんありますね。
いざというときに役に立つリアルな情報を今後もお届けしていきます。
お話を伺った先生/重本 仁先生(王子ペットクリニック院長)
参考/2019年10月号『猫の病気、そこが知りたい!』(監修:王子ペットクリニック院長 重本 仁先生)
文/浪坂一
イラスト/上垣厚子
※この記事で使用している画像は2019年10月号『猫の病気、そこが知りたい!』に掲載されているものです。
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