野生の猫は、年に1回、気候が穏やかな時期に子猫を産みます。一方飼い猫は、去勢・避妊手術をしていたとしても、年に2~3回発情することも。ということで、そんな飼い猫は、”恋”をすると、どんな変化が見られるのでしょうか? 猫の生態にくわしい今泉忠明先生に教えていただきました。
飼い猫の「メス」は、恋の季節どう変わる?
猫が恋を始めるのは、メスがきっかけと言われています。日照時間が長くなるとメスはフェロモンを出すようになり、併せて発情行動をするように。ではメスの飼い猫の場合、発情するとどんな様子が見られるのでしょう?
独特の鳴き声で鳴く
これは野生のメスにもこの時期よく見られる様子ですが、発情のスイッチが入ると、メスはふだんと違って、低く奥行きのある鳴き声で鳴くように。人の赤ちゃんの泣き声によく似てると言われています。
食欲が減り、少しやせることも
異性を求めることが最優先になって、食欲が減ります。食べる量が減るのでやせることもありますが、性欲が高まっているからか毛ヅヤはいいことが多いです。睡眠欲も減り、活動時間が増えることもあります。
しっぽの付け根を「叩いて!」とせがむ
野生では本来、写真のようにオスがメスの背後から馬のりになり、交尾をします。メスはしっぽの付け根が性的快感を得られる部位なので、飼い猫であっても、発情すると、その部分を刺激してほしいと飼い主さんにおねだりすることがあります。
自ら同居猫のお世話をすることも
出産経験や、避妊手術をして生殖機能がない飼い猫でも、この時期は”母性”が働くことが。同居猫を毛づくろいしてあげたり、お尻を舐めたりすることもあります。ちなみに、ときにはオスでも、子猫と遊んであげることがあります。
飼い猫の「オス」は、恋の季節どう変わる?
メスの発情行動に誘われて、オスもメスを探し始めます。野生だとオスは”ライバル”とメスを奪い合うこともあるので、発情すると飼い猫であっても、次に紹介するように、ナーバスになることが多いです。
外を気にして、出たがるようになる
完全室内飼いにしても、帰宅した飼い主さんに付いているニオイ、外から聞こえるメスのアピールする声に反応して、外に出ようとすることがあります。その意味では玄関や窓辺に行くことが多いので、この時期はとくに猫が脱走しないように気を付けましょう。
外の猫を見て威嚇することも
飼い猫にとって、外(=テリトリー外)の猫はみんな敵です。発情の時期は、とくにその敵に過敏になるので、猫を見つけると、写真のモグくん(オス・2才)のように唸ることが。このときむやみに触れようとすると、攻撃されるので注意しましょう。
同居猫や人の体に馬のりになる
去勢手術ずみでも、オスは交尾欲求が高まると、性別関係なく同居猫や人の足などにまたがって、ペニスをこすりつけることがあります。
上写真の、赤い突起がペニス。ちなみに野生のオスは交尾後、陰部を舐めたりして自分を落ち着かせます。
参考/「ねこのきもち」2018年4月号『春は猫もソワソワ、ワクワク。猫の恋劇場』(監修:哺乳動物学者 「ねこの博物館」館長 日本動物科学研究所所長 今泉忠明先生)
文/Monika
撮影/小森正孝、尾﨑たまき
※この記事で使用している画像は2018年4月号「春は猫もソワソワ、ワクワク。猫の恋劇場」に掲載されているものです。