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【獣医師監修】猫にかつおぶしを与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説

猫にかつおぶしを与える場合は、人間用よりも塩分調整された猫用がおすすめです。かつおぶしはタンパク質やビタミンの含有量が豊富なので、少量を与える分にはよい栄養補給になります。ただし、過剰に摂取すると尿路結石の発生や腎臓への負担が増加し、腎不全発症のリスクが高まるので注意しましょう。

佐野 忠士 先生

猫にかつおぶしを与えるときは塩分量や過剰摂取に要注意

机上のかつおぶし
Promo_Link/gettyimages
かつおぶしには、タンパク質やビタミン、ミネラル、DHAやEPAなど猫に必要な栄養素が濃縮されています。また、かつおぶしの風味や香りは多くの猫を惹きつけるようで、フードにトッピングすると食いつきがよくなる猫もいます。食が細くなっている猫や、食欲のない猫に与えれば、食欲増進が期待できるかもしれません。

ただし、塩分量の多い人間用のかつおぶしを与えるのはおすすめできません。猫が塩分を摂り過ぎると、いいことは一つもないと覚えておくとよいでしょう。例えば腎臓への負担が増加し、腎不全発症のリスクが高まったり、塩分過剰による心臓への負担増加は人の場合と同じです。

少量であれば人間用のかつおぶしを与えても問題ないといわれていますが、そんなことはありません! 塩分調整された猫用かつおぶしを、たまに少し与える程度にとどめておくことをおすすめします。

かつおぶしのおもな栄養素|タンパク質が豊富

遊んでもらえずあくびしているサバトラミックス
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
かつおぶしに含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分

エネルギー332kal
水分15.2g
タンパク質77.1g
脂質2.9g
炭水化物0.8g
灰分(無機質)4.0g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

猫がかつおぶしを食べるメリット|タンパク質、ビタミン、不飽和脂肪酸を摂取できる

見事なへそ天のラグドール
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
猫にかつおぶしを与えれば、含有成分により以下のようなメリットを得られます。おもな効果を確認しましょう。

タンパク質|必須アミノ酸9種類+タウリンを摂取できる

かつおぶしはタンパク質を豊富に含む食材です。タンパク質はおよそ20種類のアミノ酸で構成されていますが、かつおぶしには猫の体内で合成することができない10種類の必須アミノ酸のうち、アルギニン以外の9種類が含まれています。これに加えて、猫にとって不可欠な必須栄養素「タウリン」も含有しています。


また、かつおぶしにはイノシン酸という「旨味成分」も含まれているため、食欲増進効果も期待できます。

ビタミン|脂溶性、水溶性ビタミンが豊富

かつおぶしには、脂溶性ビタミンのビタミンDやE、水溶性ビタミンのビタミンB群が豊富に含まれています。

脂溶性ビタミンのうち、ビタミンDには、肝臓や腎臓でカルシウムやリンの代謝をコントロールするなどの働きがあります。またビタミンEには抗酸化作用などが期待できます。

一方、水溶性ビタミンに分類されるビタミンB群のなかで、かつおぶしに多く含まれているのは、ビタミンB1、B2、B6、ナイアシン、パントテン酸です。ビタミンB1は神経伝達や細胞の働きを正常に保つのに役立ち、ビタミンB2は酵素の働きを助けるほか皮膚や被毛の健康にも役立ちます。また、ビタミンB6やナイアシン、パントテン酸は、タンパク質をはじめさまざまな栄養素の代謝に関わり、猫の健康をサポートします。

不飽和脂肪酸|抗炎症作用や、心機能、腎機能の健康維持に期待できる

かつおぶしにはEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などの不飽和脂肪酸が含まれています。不飽和脂肪酸はオメガ3系の脂肪酸で、抗炎症作用があり、心機能や腎機能を健康的に保つなどの効果が期待できるため、猫にも有効であるといわれています。

EPAやDHAは、体内で合成できない栄養素なので食事から摂取する必要がありますが、とくに成長期の猫が摂るとよいといわれています。

猫がかつおぶしを食べるデメリット|ミネラル、塩分、不飽和脂肪酸の過剰摂取や食物アレルギーに注意

けだるそうな黒猫ミックス
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
かつおぶしを猫に与えることでデメリットになることもあります。注意すべきポイントを把握しておきましょう。

ミネラル|ミネラルバランスが崩れると泌尿器系疾患の原因に

かつおぶしにはカルシウムやマグネシウム、カリウムなどのミネラルが豊富に含まれているので、過剰に摂取するとミネラルバランスが崩れ、尿のpH(ペーハー)バランスが乱れて腎臓に負担がかかります。

たとえば、尿中のカルシウムやマグネシウムが増えると尿路結石などが生じる場合があります。またカリウムが増えて高カリウム血症になると、腎機能が低下して腎不全になることもあります。このように、ミネラルバランスが崩れると泌尿器系疾患の原因になることがあるため注意が必要です。猫が頻繁にかつおぶしをほしがっても、与えすぎないようにコントロールしてください。

塩分|ねこまんまはNG

昔はごはんにかつおぶしを混ぜたものや、お味噌汁をかけたものを「ねこまんま」と称して与えていましたが、ねこまんまは塩分量が多く栄養バランスも悪いため、猫に与える食事としては適していません。

とくに、塩分には注意が必要です。猫が塩分を過剰摂取するとナトリウムの量が増加して血圧が上昇し、心臓や腎臓に負担がかかります。そのため、心臓病や腎臓病の猫に人間用のかつおぶしを与えるのはNGです。また猫は塩分量が多すぎるものを食べると吐くこともあるので、塩分量に配慮された猫用かつおぶしを与えるようにしましょう。

不飽和脂肪酸|「黄色脂肪症」|痛みを伴うしこりのような塊を形成することも

DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸を継続的に摂りすぎると、「イエローファット」とも呼ばれる「黄色脂肪症」になることがあります。

黄色脂肪症は皮膚の下やお腹の中の脂肪が酸化して黄色くなり、しこりのような塊や炎症が起こる病気です。しこりの部分に痛みが生じるため、黄色脂肪症の猫は触られるのを嫌がったり、歩行がおかしくなったりします。ゆくゆくは歩行困難になるため、黄色脂肪症にならないように注意しなければなりません。

黄色脂肪症は、体内に不飽和脂肪酸が蓄積している状態でビタミンBが不足すると起こるのではないかと考えられています。飼い主さんは、DHAやEPAを多く含むかつおぶしや魚類を継続的に与えすぎないようにするとともに、ビタミンBが不足しないように配慮することも大切です。

食物アレルギー|嘔吐や下痢、皮膚炎などのアレルギー反応に注意

かつおぶしにはタンパク質が含まれるため、稀に食物アレルギーを発症して嘔吐や下痢、皮膚炎などのアレルギー反応が起こることがあります。そのため、初めてかつおぶしを食べる猫にはごく少量を与えてみて、アレルギー反応が出ないか様子を見ることが大事です。症状が現れた場合は、ただちに与えるのをやめましょう。

なお、過去にかつおぶしを与えたことがあって、アレルギー反応は見られなかったという場合でも、食物アレルギーを突然発症することもあるので十分注意してください。

猫にかつおぶしを与えるときの注意ポイント|塩分調整された猫用かつおぶしがおすすめ

鏡を覗き見るペルシャ
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
かつおぶしを与える際の注意ポイントをしっかり確認して、適切に与えましょう。

与えてよい種類

人間用のかつおぶしには塩分が含まれているものが多いため、基本的には塩分調整された猫用かつおぶしを与えることをおすすめします。

なお、泌尿器系の病気や心疾患を患ったことのある猫、現在それらの病気を抱えている猫には危険なので、人間用も猫用も与えないでください。

与えるときの適量

猫にかつおぶしを与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、猫の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。

猫の体重目安1日あたりの摂取可能目安
4~5kg7~8g(約1/10袋)

※数値は、避妊・去勢済みの猫で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出

かつおぶし薄削り1パック80gで計算。小分けパック(1袋1~4g程度)の場合は、1g入りで7~8袋、4g入りで約2袋が目安です。

与え方

猫用かつおぶしをそのまま小皿に入れて与えるか、フードなどにトッピングして与えます。

人間用でも無塩タイプのかつおぶしで、味付けしていないだし汁を少し与えるくらいなら問題ないでしょう。ただし、だしを取ったあとにの「だしがら」(だしを取ったあとのかつおぶし)には、ミネラルなどの栄養分はほぼ残っているので、与えるのもNGです。基本的には猫用のかつおぶしを与えるようにしてください。
猫には与えてはいけない食べ物があります。確認しておきましょう
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/倉田千穂
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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