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愛猫が苦痛を感じてないか心配 猫の「甲状腺機能亢進症」はどんな病気?|獣医師が解説します
猫がかかりやすい病気のことは、飼い主さんならよく知っておきたいもの。
この記事ではそんな病気の解説のほか、実際に体験した飼い主さんの疑問について、獣医師の重本先生が回答します。
今回は「甲状腺機能亢進症」の猫は苦痛を感じていないか、手術で完治は望めるか、といった疑問を取り上げます。

重本 仁先生王子ペットクリニック院長(東京都北区)
甲状腺から出るホルモンが過剰に分泌される病気です
甲状腺とは、新陳代謝を促進するホルモンをつくり出す、内分泌器官のこと。のどの軟骨の下あたり、気管を挟んで両脇にあります。甲状腺機能亢進症は、この甲状腺からのホルモン分泌が過剰になる病気です。代謝が異常に活発になり、食欲が増すなど、下記のような症状が現れますが、一見活発そうなので「よく食べるし元気そう」と、受診が遅れる傾向に。体内のエネルギー消費が異常に高まるせいで、進行すると心臓などに負担がかかり、命にかかわります。診断は、血液を使った検査で甲状腺ホルモン測定を行います。一般的に7~8才過ぎの猫がかかりやすいので、年に1回を目安に、この検査を受けておくと安心でしょう。治療には、甲状腺ホルモンの生成を阻害する薬を用いるのが一般的です。
甲状腺機能亢進症の症状
・食欲を増すのに体重は減る
・目がギラギラする(瞳孔が開く)
・活発に動き回る、攻撃的になる
・嘔吐・下痢をする
飼い主さんからの疑問「そこが知りたい」①
体重は3キロから2キロに減りましたが、このような状態で猫は苦痛を感じていませんか?
愛知県 T・Ⅰさん Sちゃん(メス・17才)
※甲状腺機能亢進症を発症したのは9才当時
薬が効いていれば、ほとんど発症前と変わりないでしょう
病気による臨床症状、たとえば激しく吐いたり、下痢をしたりしているときは、猫も苦痛を感じていると思います。しかし、病気の特性として、内臓の一部がずっと痛むようなことは基本的にありません。薬で甲状腺ホルモンの分泌量を抑えられていれば、健康なときと同じような状態で生活できているでしょう。
とはいえ愛猫は高齢で、今後ほかの病気にかかる可能性もありますから、それを早期発見することが大切。体調に少しでも異変が見られたら、すぐにかかりつけの獣医師に診てもらってください。
飼い主さんからの疑問「そこが知りたい」②
健康状態にもよるでしょうが、何才くらいまで可能?
東京都 S・Kさん Ⅰくん(オス・16才)
※甲状腺機能亢進症を発症したのは15才当時
健康状態に問題がなければ、16才でも手術できるでしょう
甲状腺機能亢進症は、まず薬や療法食による内科的な治療を行います。その場合、副作用が出ることがありますが、多くは数カ月で効果が現れ、甲状腺ホルモンをコントロールできれば、長生きできる猫も少なくありません。
手術で甲状腺を摘出すれば完治が望めますが、手術は一般的ではなく、それが最善の方法か検討する必要があります。一例として、まったく薬が効かない、甲状腺にできた腫瘍が大きいなどのケースであれば、手術を行うことも。その場合、事前に検査して、心臓や腎臓などの機能に異常がないか調べます。健康状態に問題がなく、飼い主さんが望めば、高齢でも手術は可能です。術後は、甲状腺ホルモンを補うための投薬治療が必要になります。
先生、ご回答いただきありがとうございました。
ご紹介した飼い主さんのエピソードは、あなたの愛猫に起こる可能性もあります。
いざというときに思い出し、役立ててくださいね。
監修
重本 仁先生(王子ペットクリニック院長)
参考/2020年9月号『ねこに多い病気、そこが知りたい!』
文/SAY
イラスト/みやしたゆみ
※この記事で使用している画像は2020年9月号『ねこに多い病気、そこが知りたい!』に掲載されているものです。
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