愛猫が抱っこをさせてくれなくて寂しい思いをしている、という飼い主さんは案外多くいらっしゃいます。猫はもともと警戒心が強く、抱っこされるのが得意ではありませんが、それだけが原因ではない可能性も。もしかしたら飼い主さん自身が、猫を不安にさせる抱き方をしているのかもしれません。
今回は、抱っこ嫌いな猫でも許してくれる上手な抱き方をご紹介します。
今後の参考にされてみてくださいね。
どうして抱っこが嫌いなの?
理由1:自由を奪われるから
猫は、もともと警戒心の強い動物です。神経質な猫の場合、体を束縛され、自由を奪われることに恐怖心を抱くことがあります。
理由2:体勢が不安定になる抱き方だから
抱き方が悪いと猫の不安をかき立ててしまいます。体が安定した体勢でないと猫は安心して体を預けられません。
理由3:嫌な思い出があるから
野良だった猫に多いのですが、子猫の社会化期に人と触れ合っていないと抱っこに抵抗感を持つことがあります。また、抱っこをされて薬を飲まされた、お風呂に入らされたなどの嫌な経験があると、抱っこが苦手になることがあります。
理由4:抱っこするタイミングが悪いから
猫の気分や都合に関係なく、例えば甘える気分ではない時などに無理やり抱っこされると、抱っこが嫌いになります。
猫を上手に抱っこするには
猫を抱っこするには、「体を安定させる」と同時に「過度に圧迫しない」ことがポイントです。また、抱っこそのものだけでなく、抱き上げる過程もとても重要。そこで失敗すると抱っこ嫌いのきっかけになってしまいます。
1.上手な抱き上げ方(左右は逆でもかまいません)
①猫の後ろから肩のあたりを包むように両手で軽くつかむ。指は脇の下へ差し込みます。
②上半身を浮かせたら、右手を脇の下に滑り込ませ上半身をしっかり支えます。と同時に、あいた左手はすぐにお尻を支えます。
③左手でお尻をしっかり支えたら、右手は上半身、左手は下半身をしっかりホールドし、持ち上げます。この時、自分の体に猫の体を密着させ、持ち上げるときの揺れを防ぐことがコツです。
2.上手な抱っこの体勢
◎お腹を上に向けるのが苦手な猫に:抱き上げの体勢のまま抱っこ
抱き上げながら、右手は肘まで差し込んで猫の体全体をしっかり支え、左手で後ろ足をたたみながらお尻と後ろ足を支えて抱っこします。お腹が下側を向くので、神経質な猫がより安心する抱き方です。
◎ある程度慣れている猫・体の大きな猫に:イス座り風抱っこ
抱き上げながら、左手をさらにお尻に深く差し込み、腕でお尻全体を支えてイスに座っているような形で前を向かせ、右手も深めに差し込んで猫の胸から背中にかけて腕で支えます。
こんな抱っこは嫌われる
1.抱き上げるときにしてはいけないこと
✖️脇の下に両手を入れて、赤ちゃんを高い高いするように持ち上げる
やりがちな方法ですが、猫にはあまり良くありません。赤ちゃん猫ならまだしも、大人猫の場合は全体重が肩にかかるため、痛みがでることが。腰にも負担がかかります。
✖️片手だけで胸をつかんで持ち上げる
片手に全体重がかかるため、胸を圧迫します。苦しかったり、痛かったりすることも。
✖️お腹から腰をつかんで下半身から持ち上げる
最もしてはいけない抱き上げ方です。お腹には肋骨がないので臓器が直接圧迫されます。なによりも「逆さになるかもしれない」という恐怖で、猫は逃げ出したくなります。
2.猫が嫌う抱っこの体勢
✖️猫と人とが向き合うような抱っこ
人と向き合う抱っこは下半身が不安定なので、猫は怖さから人の肩に手をかけてよじ登ろうとしてしまいます。
✖️仰向け赤ちゃん抱っこ
かなり慣れている猫はかまいませんが、仰向けにする、いわゆる赤ちゃん抱っこは、猫にとっては急所のお腹が全開になり怖さを感じることも。後ろ足が完全フリーになるため、飼い主さんが蹴られる可能性もあります。
抱っこ嫌いな猫を抱っこに慣らすコツ
抱っこ嫌いな猫を無理に抱き上げても余計に嫌われるだけです。まずは人の手に慣らし、甘えてくるタイミングで少しだけ抱いてみましょう。最初は立つ必要はありません。地面から遠いと怖さを感じるので、まずは膝の上に置いたり、座ったりした体勢で抱っこをしましょう。抱っこされても安心だということを覚えてもらうために、嫌がったらすかさず離してあげてください。
抱っこの間、猫が好きなところをなでてあげたり、窓の外を見せたりするなどして気をそらしてもよいでしょう。抱っこの時間はごく短時間にし、一日のうちに何回かトライして慣れさせるようにしましょう。
まとめ
猫は抱っこが嫌いだからといって飼い主さんが嫌なわけではありません。猫はもともと警戒心が強く、抱っこされるのが得意ではないということを理解してあげたうえで、少しずつ慣らしていくようにしましょう。根気よく機嫌をうかがいながら、愛猫の好きな体勢で抱っこするようにしてください。
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。
監修/白山聡子先生(獣医師)
獣医師資格取得後、小動物臨床に従事。主に犬猫の臨床に携わる。現在は育児と仕事を両立させながら、愛猫と暮らしている。
取材・文/大口亜紗