猫と暮らす
UP DATE
【獣医師監修】猫に卵を与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説
猫に卵を与えるときは与え方に注意が必要です。卵は栄養豊富な食材で、黄身・白身・殻のいずれも猫が食べても問題ありませんが、基本的に生卵を与えるのはよくありません。ここでは、猫が卵を食べるメリットやデメリットとともに、猫に卵を与えるときの注意点も紹介していきます。
佐野 忠士 先生
酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授
酪農学園大学附属動物医療センター集中治療科診療科長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了
北里大学獣医畜産学部および同大学獣医学部勤務
日本大学生物資源科学部獣医学科勤務
●資格:獣医師/博士(獣医学)/世界的獣医心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER インストラクター)/CCRP
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本獣医学会/日本獣医師会/日本動物リハビリテーション学会/動物臨床医学研究所/日本麻酔科学会/日本臨床モニター学会
●主な診療科目:麻酔科/集中治療科
●書籍:『asBOOKS チームで取り組む獣医師動物看護師のためのICU管理超入門』/『as BOOKS チームで取り組む獣医師・動物看護師のための輸液超入門』/『動物看護師のための麻酔超入門・改訂版』 など多数
猫に卵を与えるときは部位ごとに与え方や注意ポイントが違う
卵のおもな栄養素|タンパク質が豊富
エネルギー | 336kal |
---|---|
水分 | 49.6g |
タンパク質 | 16.5g |
脂質 | 34.3g |
炭水化物 | 0.2g |
灰分(無機質) | 1.7g |
卵(卵白/生)に含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー | 44kal |
---|---|
水分 | 88.3g |
タンパク質 | 10.1g |
脂質 | 微量 |
炭水化物 | 0.5g |
灰分(無機質) | 0.7g |
文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照
猫が卵を食べるメリット|必須アミノ酸をバランスよく摂取できる
タンパク質|猫の健康を助ける必須アミノ酸が豊富
タンパク質は約20種類のアミノ酸で構成されていますが、卵には猫が摂るべき11種類の必須アミノ酸のうち、タウリン以外の10種類が含まれています。猫が卵を食べることで、必須アミノ酸を効率よく摂取することができるでしょう。
なお、通常の卵にはタウリンは含まれていませんが、なかにはタウリンを含む卵も販売されています。これは、卵を産む鶏の健康のために、タウリン入りのエサを与えているためのようです。
脂質|必須脂肪酸を摂取できる
オメガ6脂肪酸のリノール酸には、皮膚のバリア機能を維持するとともに、被毛を健康的に保つ働きがあります。アラキドン酸も猫の皮膚や被毛の健康に関わるほか、脳機能を正常に保つのに不可欠な栄養素です。犬の場合は体内でリノール酸からアラキドン酸が合成されますが、猫は合成できないため、食事から摂る必要があります。
オメガ3脂肪酸のEPAやDHAには、炎症を抑えるなどさまざまな働きがありますが、とくにDHAは猫の成長期に必要な栄養素といわれています。またαリノレン酸は、皮膚のバリア機能に欠かせない栄養素のひとつです。
オメガ6とオメガ3はバランスよく摂取する必要がありますが、卵にはどちらも含まれているため、猫に必要な必須脂肪酸を効率よく摂取できる食材といえるでしょう。なお、市販の卵のなかには、オメガ3の含有量を強化した種類もあります。
鉄|体内で酸素の運搬を担う
ビタミン|ビタミン類は黄身に多く含まれる
卵に含まれるビタミンのうち、猫にとって有効な成分とその働きをいくつか紹介すると、ビタミンAのひとつであるレチノールは視力に関わる栄養素で、暗闇に順応する機能を助ける働きが期待できます。また、レチノールは皮膚や被毛の健康にも役立っています。
ビタミンB群のなかでも、ビタミンB6にはアミノ酸の代謝を促す働きがあります。またビオチン(ビタミンB7)には、猫の皮膚の健康を維持し、被毛のつやをよくするほか、神経系の機能を正常に保つ働きが期待できます。水溶性ビタミンは水に溶けやすく、体外に排泄されやすいので、定期的に摂取する必要があります。
カルシウム|黄身や殻に多い
このように、猫にとってメリットのある栄養素のほとんどは黄身に含まれています。
猫が卵を食べるデメリット|病原菌に注意。白身・黄身ともに与え過ぎは禁物
サルモネラ菌・大腸菌|食中毒を起こす原因に
日本で販売されている卵は生食用のため、サルモネラ菌などの病原菌に汚染されている確率は極めて低いものの、新鮮な卵でも白身や殻に病原菌が存在する場合があります。白身と黄身が混ざり、時間が経つと菌が増殖するため、猫に生卵は与えないほうがよいでしょう。
アビシン(アビジン)|必須ビタミンの吸収を阻害
必須ビタミンであるビオチンは、猫の皮膚を健やかに保ち被毛のつやを維持するのに欠かせない栄養素です。アビシンは熱に弱いため、加熱すれば与えても問題ないとはいわれていますが、生の白身は与えないほうがよいでしょう。
なお、卵黄にもアビシンが含まれていますが、それを超える量のビオチンが含まれているため、生のまま与えてもビオチンの吸収が阻害されることはないといわれています。
リン|過剰摂取に注意! 腎臓病の猫には厳禁
また、腎機能が低下している猫は余分なリンを排出することができません。過剰蓄積されたリンとマグネシウムが結合することで尿路結石症になったり、慢性腎臓病を悪化させたりすることがあるため注意が必要です。
高カロリー|黄身の与え過ぎに注意
一方、白身は100グラムあたり約45キロカロリーと黄身に比べるとカロリーは低めですが、ほとんどの栄養素は黄身に含まれているので、あえて白身だけを猫に与える必要はなさそうです。
食物性アレルギー|卵アレルギーの猫に与えるのはNG
これは人で心配されている卵アレルギーの状態と同じで、あらかじめ(若いときに)アレルギー検査などで明らかにしておくことも重要かもしれませんが、与えてみて初めて、症状が現れて検査して明らかとなるということも少なくありません。
初めて与える場合はまずは少量を与えてみて、かゆみや嘔吐、下痢などのアレルギー反応が出ないか様子を見ることが大切です。なお、長年食べ続けている場合も突然アレルギーを発症することがあるので、注意してください。
猫に卵を与えるときの注意ポイント|加熱調理が基本! ゆで玉子がおすすめ
与えてよい部位と調理の仕方
◇黄身
日本で販売されている卵は生食用なので、新鮮な黄身であれば生のまま与えても問題ないですが、基本的には加熱してから与えたほうが安心です。
◇白身
前述のとおり、白身にはサルモネラ菌が含まれることがあるうえ、アビシンという成分によりビオチンの吸収が阻害されることがあります。これらのリスクを防ぐためにも、必ず加熱してから与えてください。
◇卵の殻
ほぼ炭酸カルシウムでできているので、猫に与えても問題ありません。ただし、卵の殻には大腸菌が付着している場合もあるので、殻を与える場合はよく洗いましょう。また、卵の殻は固いうえに欠片の尖った部分で口やのどなどを傷つけることもあるので、必ず細かく砕いてから与えてください。
卵の加熱方法は、茹でるのがおすすめです。フライパンで焼く場合は、油を使わないようにしましょう。ゆで玉子も目玉焼きも調味料で味つけするのはNGです。調理後は、猫が食べやすいように小さく刻んでから与えましょう。
与えるときの適量
卵(卵黄/生)
猫の体重目安 | 1日あたりの摂取可能目安 |
---|---|
4~5kg | 7g~8g(約1/3個~約1/2個 |
卵(卵白/生)
猫の体重目安 | 1日あたりの摂取可能目安 |
---|---|
4~5kg | 54g~64g(約1個半~約1+3/4個) |
※数値は、避妊・去勢済みの猫で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出
卵は栄養豊富な一方、相応のリスクもある
文/倉田千穂
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
UP DATE