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【獣医師監修】猫に海苔を与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説

猫に海苔を与えるときは注意が必要です。海苔には猫の体によい効果をもたらす栄養素が含まれている一方で、摂取しすぎると不調の原因となる成分も含まれています。今回は、猫が海苔を摂取することによるメリットやデメリットなどを解説します。

佐野 忠士 先生

猫 海苔
KPS/gettyimages

猫に海苔を与えるときは過剰摂取による高カリウム血症や尿路結石症などに要注意

猫用すべり台で寛ぐヒマラヤン
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
猫が海苔を食べても栄養の成分的には問題ありませんが、与える量に注意する必要があります。

海苔は食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富な食材ですが、猫が過剰に摂取すると高カリウム血症や尿路結石症を発症することがあります。そのため、猫に与える場合はごくごく少量にとどめることが大切です。

また、腎機能の低下している猫や心臓病の猫が海苔を食べると大きな体の不調をきたすことがあるので与えないようにしましょう。

海苔のおもな栄養素|1/3が食物繊維(炭水化物)

仲良く眠るマンチカン
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
海苔(あまのり/焼き海苔)に含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー297kal
水分2.3g
タンパク質41.4g
脂質3.7g
炭水化物44.3g
灰分(無機質)8.3g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

猫が海苔を食べるメリット|必須ビタミン・アミノ酸・ミネラルが豊富

空を見つめるアビシニアン
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
ここでは、猫が海苔を食べることで得られるおもなメリットを、栄養素ごとに紹介していきます。

食物繊維|腸内環境を整え便通を促す

海苔の約3分の1は食物繊維といわれ、同じ重量あたりの食物繊維の量は数ある食材のなかでも上位に位置します。

食物繊維は、水に溶けやすい水溶性食物繊維と水に溶けにくい不溶性食物繊維に大別されますが、海苔に含まれているのは前者の水溶性食物繊維です。水溶性食物繊維は、野菜などに多く含まれる不溶性食物繊維に比べてやわらかいため、胃腸を傷つけにくいといわれています。

また、水溶性食物繊維には粘性があり、胃腸内をゆっくりと移動していくため、糖質の吸収を穏やかにして血糖値を上がりにくくする効果が期待できます。さらに、胃の中の毛玉や腸内の余分な脂質などを絡め取って排出する働きや、善玉菌を増やして腸内環境を整え、便通をよくする効果もあります。

ビタミン|必須栄養素のビタミンB1、B2などを摂取できる

海苔には、水溶性ビタミンに分類されるビタミンB1、B2、ビタミンCが多く含まれています。水溶性ビタミンは水に溶けやすく体外に排出されやすいため、食事から定期的に摂取する必要があります。

猫にとってビタミンB1・B2は、食べ物から必ず摂取しなければならない必須栄養素で、とくにビタミンB1を多く必要とします。ビタミンB1には神経の機能を正常に保つ効果があり、ビタミンB2には皮膚の健康を維持して被毛の質をよくする効果があります。

ビタミンCは体内で合成できるため、必須栄養素ではありません。しかし、5歳をすぎると合成能力が落ちて体内で合成される量だけでは足りないとする研究結果もあるため、とくにシニア期には食事から摂取することが推奨されています。

タンパク質|タウリンを含む必須アミノ酸も含まれる

海苔には、アルギニンやタウリンなど猫に必要な11種類の必須アミノ酸がすべて含まれています。

必須アミノ酸のなかでも注目したいのはタウリンです。猫はタウリンを体内で合成できず、必要量も多いため、毎日の食事からしっかり摂る必要があります。タウリンには、眼や心臓、肝臓などを健康的に保つ働きがあり、不足すると眼の網膜や心臓などに疾患を引き起こす可能性があるので気をつけましょう。

ミネラル|9種類のミネラルを含有

ミネラルは、猫をはじめ動物の生命維持に欠かせない栄養素です。動物に必要なミネラルは16種類ありますが、猫に必要なミネラルはそのうちの12種類といわれています。

海苔にはナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、銅、マンガン、亜鉛の9種類が含まれているため、海苔は猫がミネラルを摂取するのに有効な食材のひとつといえるでしょう。

猫が海苔を食べるデメリット|結石症・心臓病・腎臓病の猫には高リスク

シンクロするようにポーズを取るシャム
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
海苔はミネラル豊富な食材ですが、過剰に摂取すると体内のミネラルバランスが崩れて、体にさまざまな支障をきたすことがあります。猫にとってデメリットとなることもある栄養素について見ていきましょう。

ナトリウム|心機能や腎機能が低下している猫の過剰摂取に注意

ナトリウムは、猫にとって必要不可欠な栄養素のひとつです。カリウムとともに体内の水分バランスや細胞間の浸透圧を一定に保つ働きがあるほか、エネルギー代謝や神経刺激の伝達、老廃物の排出などにも関わっています。

しかし、ナトリウムを過剰摂取すると、心臓や腎臓に負担がかかることもあり注意が必要です。とくに心臓病や腎臓病の猫では、ナトリウムの摂取量を制限しなければならない場合があることを覚えておきましょう。

カリウム|高カリウム血症に注意

カリウムも猫が摂るべき栄養素のひとつで、ナトリウムと結合して体内の水分バランスを調整する働きなどがあります。また、エネルギー代謝や神経刺激の伝達、心機能の働きをサポートする作用も備えています。

ただし、体内のカリウム値が高くなると、不整脈や頻脈などの脈拍異常や嘔吐、四肢のしびれ、筋力低下などの不調をきたすことがあります。とくに腎臓病の猫は、カリウムの排泄がうまくいかずに「高カリウム血症」を起こすことがあり、注意が必要です。健康な猫でも摂取しすぎると、通常は体外へ排出される余分なカリウムが排出されず、腎臓に負担がかかることがあります。
またカリウムは、心機能が低下している猫にも悪影響を与える可能性があるので、カリウムを含む海苔は与えないようにしてください。

カルシウム|過剰も欠乏も尿路結石症のハイリスクに

カルシウムはリンとともに猫の骨や歯の健康を維持するのに不可欠な栄養素であり、神経や細胞間の情報伝達のほか、体内のエネルギー代謝にも大きく関わっています。

しかしながら、カルシウムは過剰に摂取しても欠乏しても、シュウ酸と結びついてシュウ酸カルシウム結石を形成することがあるため、結石症の猫には与えないほうがよいでしょう。
驚き顔のロシアンブルー
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マグネシウム|尿路結石症に注意

マグネシウムには、カルシウムと結合して猫の骨や歯の健康を維持する働きがあるほか、心機能を正常に保つ作用などがあります。ただし過剰に摂取すると、ストルバイト結石(リン酸アンモニウムマグネシウム結石)を形成して尿路結石症の原因となることがあるため、結石症の猫には与えないほうがよいでしょう。

リン|尿路結石症や慢性腎臓病の悪化を招く恐れがある

リンはカルシウムと結合してリン酸カルシウムとなり、猫の骨や歯を作りますが、リンとカルシウムのバランスが崩れるとさまざまな病気を引き起こすことがあります

体内のリンの量がカルシウムの量を上回ると、バランスを取るために骨を溶かす作用が働いてカルシウムが失われることも。また体内にリンが多い状態が続くと、ストルバイト結石やシュウ酸カルシウム結石が形成されることがあり、尿路結石症のリスクが高まります。

とくに注意を要するのは、腎機能が低下している腎臓病の猫です。余分なリンを排出できず、慢性腎臓病を悪化させる恐れがあるため、リンを含む食べ物を与えてはいけません。

水溶性食物繊維|過剰摂取により下痢になることも

水溶性食物繊維には便をやわらかくする効果や整腸作用などを期待できますが、食物繊維は体内で消化吸収されず、胃腸に長くとどまる性質があります。そのため、過剰に摂取すると消化不良を起こして下痢になることがあるので、海苔の与えすぎには気をつけましょう。

猫に海苔を与えるときの注意ポイント|小さくちぎってトッピング程度に! 味つけ海苔はNG

ふわふわのベッドで気持ちよさそうなジャパニーズボブテイル
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猫に海苔を与えるときに注意すべきポイントや、調理方法などを確認しましょう。

与えてよい部位

猫に与えてもよい海苔の種類は焼き海苔です。火をとおさず、乾燥しただけの乾海苔(干し海苔)は、焼き海苔よりも消化不良を起こしやすいので避けたほうがよいでしょう。

また、味つけ海苔や韓国海苔、海苔の佃煮などの加工品は、塩分の摂りすぎになるなど猫の体に悪影響をおよぼすことがあるため与えないでください。

与えるときの適量

猫に海苔(焼き海苔)を与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
猫の体重目安1日あたりの摂取可能目安
4~5kg8g~9g(約3枚)

※数値は、避妊・去勢済みの猫で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出

調理方法

海苔は口の中やのどなどに貼りつきやすいので、猫の口のサイズよりも小さくちぎってから与えてください。

また海苔にはタンパク質が含まれるため、食物アレルギーを持つ猫が食べると稀にアレルギー症状を発症することがあります。とくに初めて与える場合は、まずは少量を与えてみて、アレルギー症状が出ないか様子を見るようにしましょう。

猫に海苔を与えるときは少量にとどめましょう

食物繊維が豊富な海苔は、猫の腸内環境を整え、便通を促すのに役立ちますが、食べることによるデメリットもあります。とくに味付け海苔の場合は注意が必要です。リスクを冒してまで与える必要はないでしょう。猫に海苔を与える場合は、毎日継続的に与えるのではなく、たまに少量の海苔をいつものフードにトッピングする程度にしてください。
猫には与えてはいけない食べ物があります。確認しておきましょう
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/倉田千穂
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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