猫と暮らす
UP DATE
【獣医師監修】猫に海苔を与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説
猫に海苔を与えるときは注意が必要です。海苔には猫の体によい効果をもたらす栄養素が含まれている一方で、摂取しすぎると不調の原因となる成分も含まれています。今回は、猫が海苔を摂取することによるメリットやデメリットなどを解説します。
佐野 忠士 先生
酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授
酪農学園大学附属動物医療センター集中治療科診療科長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了
北里大学獣医畜産学部および同大学獣医学部勤務
日本大学生物資源科学部獣医学科勤務
●資格:獣医師/博士(獣医学)/世界的獣医心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER インストラクター)/CCRP
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本獣医学会/日本獣医師会/日本動物リハビリテーション学会/動物臨床医学研究所/日本麻酔科学会/日本臨床モニター学会
●主な診療科目:麻酔科/集中治療科
●書籍:『asBOOKS チームで取り組む獣医師動物看護師のためのICU管理超入門』/『as BOOKS チームで取り組む獣医師・動物看護師のための輸液超入門』/『動物看護師のための麻酔超入門・改訂版』 など多数
猫に海苔を与えるときは過剰摂取による高カリウム血症や尿路結石症などに要注意
海苔は食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富な食材ですが、猫が過剰に摂取すると高カリウム血症や尿路結石症を発症することがあります。そのため、猫に与える場合はごくごく少量にとどめることが大切です。
また、腎機能の低下している猫や心臓病の猫が海苔を食べると大きな体の不調をきたすことがあるので与えないようにしましょう。
海苔のおもな栄養素|1/3が食物繊維(炭水化物)
エネルギー | 297kal |
---|---|
水分 | 2.3g |
タンパク質 | 41.4g |
脂質 | 3.7g |
炭水化物 | 44.3g |
灰分(無機質) | 8.3g |
文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照
猫が海苔を食べるメリット|必須ビタミン・アミノ酸・ミネラルが豊富
食物繊維|腸内環境を整え便通を促す
食物繊維は、水に溶けやすい水溶性食物繊維と水に溶けにくい不溶性食物繊維に大別されますが、海苔に含まれているのは前者の水溶性食物繊維です。水溶性食物繊維は、野菜などに多く含まれる不溶性食物繊維に比べてやわらかいため、胃腸を傷つけにくいといわれています。
また、水溶性食物繊維には粘性があり、胃腸内をゆっくりと移動していくため、糖質の吸収を穏やかにして血糖値を上がりにくくする効果が期待できます。さらに、胃の中の毛玉や腸内の余分な脂質などを絡め取って排出する働きや、善玉菌を増やして腸内環境を整え、便通をよくする効果もあります。
ビタミン|必須栄養素のビタミンB1、B2などを摂取できる
猫にとってビタミンB1・B2は、食べ物から必ず摂取しなければならない必須栄養素で、とくにビタミンB1を多く必要とします。ビタミンB1には神経の機能を正常に保つ効果があり、ビタミンB2には皮膚の健康を維持して被毛の質をよくする効果があります。
ビタミンCは体内で合成できるため、必須栄養素ではありません。しかし、5歳をすぎると合成能力が落ちて体内で合成される量だけでは足りないとする研究結果もあるため、とくにシニア期には食事から摂取することが推奨されています。
タンパク質|タウリンを含む必須アミノ酸も含まれる
必須アミノ酸のなかでも注目したいのはタウリンです。猫はタウリンを体内で合成できず、必要量も多いため、毎日の食事からしっかり摂る必要があります。タウリンには、眼や心臓、肝臓などを健康的に保つ働きがあり、不足すると眼の網膜や心臓などに疾患を引き起こす可能性があるので気をつけましょう。
ミネラル|9種類のミネラルを含有
海苔にはナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、銅、マンガン、亜鉛の9種類が含まれているため、海苔は猫がミネラルを摂取するのに有効な食材のひとつといえるでしょう。
猫が海苔を食べるデメリット|結石症・心臓病・腎臓病の猫には高リスク
ナトリウム|心機能や腎機能が低下している猫の過剰摂取に注意
しかし、ナトリウムを過剰摂取すると、心臓や腎臓に負担がかかることもあり注意が必要です。とくに心臓病や腎臓病の猫では、ナトリウムの摂取量を制限しなければならない場合があることを覚えておきましょう。
カリウム|高カリウム血症に注意
ただし、体内のカリウム値が高くなると、不整脈や頻脈などの脈拍異常や嘔吐、四肢のしびれ、筋力低下などの不調をきたすことがあります。とくに腎臓病の猫は、カリウムの排泄がうまくいかずに「高カリウム血症」を起こすことがあり、注意が必要です。健康な猫でも摂取しすぎると、通常は体外へ排出される余分なカリウムが排出されず、腎臓に負担がかかることがあります。
またカリウムは、心機能が低下している猫にも悪影響を与える可能性があるので、カリウムを含む海苔は与えないようにしてください。
カルシウム|過剰も欠乏も尿路結石症のハイリスクに
しかしながら、カルシウムは過剰に摂取しても欠乏しても、シュウ酸と結びついてシュウ酸カルシウム結石を形成することがあるため、結石症の猫には与えないほうがよいでしょう。
マグネシウム|尿路結石症に注意
リン|尿路結石症や慢性腎臓病の悪化を招く恐れがある
体内のリンの量がカルシウムの量を上回ると、バランスを取るために骨を溶かす作用が働いてカルシウムが失われることも。また体内にリンが多い状態が続くと、ストルバイト結石やシュウ酸カルシウム結石が形成されることがあり、尿路結石症のリスクが高まります。
とくに注意を要するのは、腎機能が低下している腎臓病の猫です。余分なリンを排出できず、慢性腎臓病を悪化させる恐れがあるため、リンを含む食べ物を与えてはいけません。
水溶性食物繊維|過剰摂取により下痢になることも
猫に海苔を与えるときの注意ポイント|小さくちぎってトッピング程度に! 味つけ海苔はNG
与えてよい部位
また、味つけ海苔や韓国海苔、海苔の佃煮などの加工品は、塩分の摂りすぎになるなど猫の体に悪影響をおよぼすことがあるため与えないでください。
与えるときの適量
猫の体重目安 | 1日あたりの摂取可能目安 |
---|---|
4~5kg | 8g~9g(約3枚) |
※数値は、避妊・去勢済みの猫で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出
調理方法
また海苔にはタンパク質が含まれるため、食物アレルギーを持つ猫が食べると稀にアレルギー症状を発症することがあります。とくに初めて与える場合は、まずは少量を与えてみて、アレルギー症状が出ないか様子を見るようにしましょう。
猫に海苔を与えるときは少量にとどめましょう
文/倉田千穂
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
UP DATE