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【獣医師監修】猫に豆苗を与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説

猫が豆苗を少し食べる程度なら害はありませんが、猫草の代わりに与えることはおすすめできません。猫にとって豆苗は消化しにくく、生の豆苗にはレクチンという毒素となりうる成分も含まれているため、過剰摂取で下痢や嘔吐などを起こす恐れがあります。浸水して育成中の豆苗を好んで食べる猫もいるので、飼い主さんは管理を徹底しましょう。

佐野 忠士 先生

猫に豆苗を与えるときは消化不良に要注意

豆苗と黒猫
luckat/gettyimages
えんどう豆の新芽(若芽)である豆苗には、猫が食事から摂るべきビタミン類などの栄養素が含まれています。そのため猫にとってもメリットのある食材ですが、与える際に注意したい点がいくつかあります。

生の豆苗には「レクチン」と呼ばれる毒素となりうる成分が含まれていて、猫の体に悪影響を及ぼす恐れがあります。また肉食動物である猫にとって、植物である豆苗は消化しにくいものなので、食べすぎると消化不良を起こす心配もあります。

「水に浸けて育てていた豆苗を愛猫が食べてしまった」というケースもあるようですが、猫草の代わりにはならないので注意が必要です。その理由については後述します。

豆苗のおもな栄養素|水分が多くカロリーは低め

3匹の仲良しバーマン
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
豆苗(トウミョウ/芽生え/生)に含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー27kal
水分92.2g
タンパク質3.8g
脂質0.4g
炭水化物3.2g
灰分(無機質)0.4g


豆苗(トウミョウ/芽生え/ゆで)に含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー28kal
水分91.7g
タンパク質3.6g
脂質0.6g
炭水化物3.8g
灰分(無機質)0.3g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

猫が豆苗を食べるメリット|ビタミン類や葉酸を摂取できる

大あくびのラグドール
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
豆苗には猫にとっても有効な栄養素が含まれています。メリットとなる栄養素について確認しましょう。

ビタミンA|眼や皮膚、被毛の健康に役立つ

ビタミンA(レチノール)は網膜色素を作る成分で、眼が暗闇に適応する働きをサポートします。眼の健康に役立つほかにも、皮膚や被毛の健康を維持する働きも持っています。

ビタミンAが不足すると、眼や皮膚、骨の疾患や、消化器、呼吸器などの機能低下につながることがあり注意が必要です。猫はビタミンAを体内で合成できないため、飼い主さんは愛猫が食事から定期的に摂取できるように配慮しましょう。しかし、ビタミンAをはじめとする脂溶性ビタミンの過剰摂取には注意が必要です。体によいからといって与えすぎは禁物であることを忘れないでおいてください。

ビタミンK|体内で合成できるが食事からの摂取も大事

ビタミンKは、血液凝固や酵素の働きに欠かせない栄養素であり、ほかにもタンパク質の代謝や、骨や歯の形成をサポートする働きもあります。体内で不足した状態が続くと貧血が起こることもあるため注意が必要です。なお、猫はビタミンKを体内で合成できますが、それだけでは1日の必要量に満たないため、食事からも摂取する必要があります。

ビタミンC|抗酸化作用が期待できる

ビタミンCには抗酸化作用があり、関節炎などの予防効果が期待できます。とくに病気の猫や、成長期・高齢期の猫にとって大事な栄養素のひとつといわれています。

猫は体内でビタミンCを合成できるので必須栄養素ではありませんが、健康な猫でも体内で合成される量だけでは足りないとする研究結果もあり、食べ物からの補給は不可欠です。また5歳をすぎると合成能力が落ちるため、定期的に食事から摂取することが推奨されています。

ただし、腎臓病の猫に与えすぎるのは禁物です。通常は、ビタミンCの摂取が多くても尿と一緒に排出されるため過剰摂取の心配はないといわれていますが、腎機能が低下している猫では尿から十分な量を排出できないこともあるため注意しましょう。

葉酸|猫の胎児の成長にも大切な栄養素

葉酸(ビタミンB9)は、神経組織の発達やDNAの合成に関係している栄養素です。葉酸は体内に溜めておくことができず、不足すると貧血や食欲不振などを引き起こすため、毎日の食事から摂取する必要があります。とくに胎児の成長に不可欠な栄養素です。

かといって、これらの成分を「豆苗からだけ」で摂取しようとすると、食事の栄養バランスが崩れてしまいます。どのような場合でも、いろいろな種類の食べ物からバランスよく栄養素を摂取することを心がけてあげてください。

猫が豆苗を食べるデメリット|レクチンによる中毒や食物アレルギーに注意

自然のなかがよく似合うメインクーン
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
猫が豆苗を食べることで体に不調をきたすことがあります。デメリットとなる要素も知っておきましょう。

レクチン|中毒性反応が現れる可能性あり

生の豆苗には「レクチン」という毒素が含まれています。しかし、えんどう豆に含まれるレクチンは発芽する際に分解されるため、えんどう豆の新芽である豆苗に含まれる量は少ないようです。

人間が豆苗を生で食べても害はありません。また、猫が豆苗をどれだけ食べると中毒性反応が出るといったことも明らかになってはいません。ただし、猫は人間よりも体が小さいため、人間より毒素の影響を受けやすいと考えたほうがよいでしょう。

食物繊維|消化不良により下痢・嘔吐が起こることも

豆苗には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方が含まれていますが、とくに不溶性のほうが多く含まれています。一般的に不溶性食物繊維は、便のかさを増やして腸の動きを刺激するので便通の改善に役立ちますが、猫の場合は摂りすぎると便が固く大きくなり、便秘が助長されることがあるため注意が必要です。

また、そもそも肉食動物である猫は食物繊維を含む植物を消化しにくい体質なので、消化不良により下痢や嘔吐などの症状が現れる可能性もあります。猫にとって消化しにくい豆苗は、与えすぎないように気をつけしましょう。

食物アレルギー

豆苗にはタンパク質が含まれるため、稀ではありますが、食物アレルギーが現れることがあります。ほかの食べ物にアレルギーを示す猫には注意が必要です。猫に豆苗を初めて与える際には、まずは少量を与えてみて、下痢や嘔吐、皮膚炎などのアレルギー反応が出ないか様子を見てください。

豆苗は猫草の代わりになる?

仲良くお外を見つめるラガマフィン
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猫草とは猫が食べてもよい植物の総称で、「猫草」という固有の植物が存在するわけではありません。猫草として市販されている植物は、エン麦(燕麦)や、大麦、小麦などイネ科に属する植物が多いようです。

猫が猫草を食べる理由には諸説あり、毛づくろいのときに飲み込んだ毛玉を吐き出すためとか、体内で合成できない葉酸などのビタミンを摂取するためとか、便秘防止のため、食感・味が好みだからなどさまざまな仮説が挙げられています。

では豆苗を、このような猫草の代わりに与えてもよいかというと答えはノーです。
前述のとおり、豆苗はえんどう豆の新芽(若芽)で、一般的な猫草とは種類が異なります。また、豆苗は消化しにくく、レクチンによる中毒や食物アレルギーが起こるリスクもあるため、猫草としては適さないでしょう。

猫に豆苗を与えるときの注意ポイント|必ず加熱して細かくカット!

微笑み顔のロシアンブルー
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
猫に豆苗を与えるときのポイントをチェックしましょう。

与えてよい部位

人間が食べるときと同様に、豆苗の根の部分は切り落とし、茎と葉の部分のみを与えましょう。

与えるときの適量

猫に苗を与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。

豆苗(トウミョウ/芽生え/生)

猫の体重目安
1日あたりの摂取可能目安
4~5kg88g~104g(約4/5~1袋)


豆苗(トウミョウ/芽生え/ゆで)

の猫体重目安
1日あたりの摂取可能目安
4~5kg85g~100g(約4/5~1袋)


※数値は、避妊・去勢済みの猫で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出

猫の体質によって反応が異なるので、まずは少量から与えて様子を見てください。アレルギー反応などがない場合も、日常的に与えるのではなく、たまに少量程度を与えるようにしましょう。

調理方法

豆苗には「レクチン」という毒素が含まれていますが、レクチンは熱に弱く、加熱することで毒性は弱まります。そのため、猫に与える場合は必ず、茹でる、蒸すなどの加熱調理をしてください。加熱することで、消化にもよくなります。加熱後は、猫が食べやすく消化しやすいように細かくカットして、味つけせずに与えましょう。

豆苗は猫草の代わりにはならないので与え方に注意

豆苗はえんどう豆の新芽であり、猫草に多いイネ科の植物とは種類が異なるため、猫草の代わりに与えるのはよくありません。また生で食べるとレクチンによる中毒症状が現れる可能性もあるので、猫に豆苗を与える際は必ず加熱してください。キッチンなどで育てている豆苗を、猫が勝手に食べてしまわないように注意することも大切です。
猫には与えてはいけない食べ物があります。確認しておきましょう
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/倉田千穂
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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