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【獣医師監修】猫の5大感染症とワクチンについて 原因・症状・予防法

猫カゼや猫白血病ウイルス感染症など、感染すると重症化のリスクもある感染症。ここでは、猫の飼い始めに気をつけたい、5つの感染症の原因・症状・予防法などについて解説します。

知っておきたい猫の感染症とワクチンのこと

猫の感染症には、ときに命にかかわる危険な病気も多くあり、それぞれの病気には押さえておくべき特徴があります。

そもそも感染症ってどんな病気?

病原微生物が猫に感染して起こる病気です。
ウイルス・細菌・寄生虫など微生物の感染によって引き起こされる病気を、感染症といいます。感染するとすぐ症状が出る(発症する)ものもあれば、しばらく経ってから(潜伏期間があってから)出るものもあり、その期間の長さは病原体によって変わります。

どのようにうつるの?

ほとんどは病原体を持った猫の排泄物や唾液などに接触することで感染します。ノラ猫との接触がある猫(元ノラ猫)や免疫力のない子猫は感染する可能性が高いといえるでしょう。そのため、子猫や飼い始めは特に感染症への注意が必要です。

感染症から猫を守るための3つの鉄則

猫の感染症予防のために実践するべき、3つの鉄則をご紹介します。

【1】子猫や飼い始めには感染症の検査を

猫を迎えたらすぐに動物病院で、感染症のチェックを受けましょう。特に、「猫白血病ウイルス感染症」と「猫エイズウイルス感染症」は、初めに検査しておきたい病気です。ただし、感染初期であれば検査で陽性反応が出ないこともあるので、期間をあけてからもう一度検査をするとより確実です。
下痢気味なら、「猫汎白血球(ねこはんはっけっきゅう)減少症」や、「寄生虫症」の検査もしておくと安心です。

【2】ワクチンを接種して抗体をつくる

感染症によっては、ワクチン接種が効果的です。例えば「猫カゼ」はワクチンをうっていれば発症しても重症化リスクを減らすことができますし、「猫汎白血球減少症」はワクチン接種により極めて高い予防率を示します。

主にワクチンが有効な感染症は以下の3つです。
・猫カゼ(猫カリシウイルス感染症やヘルペスウイルスによる猫ウイルス性鼻気管炎の総称。猫クラミジア症も猫カゼの一種です)
・猫汎白血球減少症
・猫白血病ウイルス感染症

一般的にワクチンは3・5・7種類の混合のものがあります(下の表を参照)。型が多い猫カリシウイルスは、7種混合ワクチンでは3つの型に対する予防効果を示します。このほか、猫エイズウイルス感染症に対しては、単体のワクチンがあります。
※動物病院によって取り扱うワクチンは異なります。ワクチンをうつ時期や種類などは、かかりつけの獣医師と相談して決めてください。
※クラジミアも猫カゼの一種です。

【3】ストレスのない環境づくりをする

感染症の中には、たとえ感染していても、飼い主さん次第で発症を抑えられるものがあります。「トイレをいつもきれいに保つ」、「フードと水は、新鮮なものを用意する」「暑すぎず、寒すぎない室温に気をつける」「遊びなどで適度な運動をさせる」など、猫にストレスをかけない環境を整えることが大切です。

猫の健康のために知っておきたい5大感染症

子猫や飼い始めに気をつけたい、5つの感染症について解説します。

【1】猫カゼ(猫カリシウイルス感染症、猫ウイルス性鼻気管炎)

主な症状

発熱、口内炎・よだれが出る、鼻水・くしゃみ・咳、涙目・目ヤニ・結膜炎

どんな病気?

人の風邪のような症状が出る病気で、猫カリシウイルスや猫ヘルペスウイルスなどの感染が原因です。悪化させると鼻炎で鼻が詰まりニオイがかげなくなったり、口内炎の痛みで食べられなくなったりして衰弱することもあります。
体力や免疫力のない子猫が感染して発症すると、重症になることが多く、治療が遅れて命を落とすこともあります。ほかの感染症にかかっている場合、免疫力がさらに低くなるので通常よりも症状がひどく出ることがあります。死に至る危険もあるので「たかがカゼ」と思わず、ワクチンでしっかり予防しておくことが大切です。

治療や予防法は?

予防法は定期的にワクチンをうつこと、感染猫に接触させないこと、適度な運動をさせたり新鮮な食事を与えたりして、免疫力を下げない生活をすることです。もしかかってしまったら、症状にあわせた薬を投与したり、免疫力をサポートするインターフェロンを投与したりして治療をすることもあります。症状が慢性化すると視力などに後遺症が残ることもあるので、症状が出たら早めに治療をしましょう。

【2】猫エイズウイルス感染症(FIV)

主な症状

感染すると軽い発熱や下痢、リンパ節の腫れの症状が数週間から数カ月続きます。その後症状が治まり普通に生活できるようになります(無症状キャリア期)。発症すると、再びリンパ節の腫れや慢性鼻炎、口内炎、結膜炎、皮膚炎、体重減少などの症状が出てきます。

どんな病気?

発症したら完治することはできないが、環境を整えることでうまく付き合っていける病気です。
主に感染猫とのケンカや交尾などから、免疫機能を破壊する「猫免疫不全ウイルス」が体内に入り、口内炎、リンパ節の腫れ、慢性鼻炎、体重減少などの症状を引き起こす病気です。感染から発症までの期間の長さの幅は1~10年と幅広く、ストレスのかかり具合によって変わるともいわれています。中には10年以上あくこともあり、発症まで進まず一生を終える猫も多くいます。

発症すると、免疫機能が低下して急激にやせたり、貧血が進んだりします。さらに悪性腫瘍ができやすくなったり、弱い細菌にも容易に感染する「日和見(ひよりみ)感染」を起こしやすくなったりして、激しい症状が出ると多くは数カ月で死に至ります。

また生後6カ月以内の子猫は、母親からの抗体をそのまま引き継ぐため、実際に感染していなくても検査で陽性になる場合もあります。子猫の検査は獣医師とよく相談しましょう。

ノラ猫の子猫を拾ってきた場合、すでに感染している可能性があります。先住猫がいても、ケンカをして感染してしまわないように、感染の有無がはっきりするまでは生活スペースを分けると安心です。

発症させない方法は?

この感染症の発症にはストレスが大きく関係します。例えば、狭いスペースで何十匹も飼っていたり、トイレが汚いままで生活をしていたりするとすぐに発症しますが、清潔でストレスレスな室内飼いをしていれば、発症リスクを抑えることができます。
飼い主さん次第でうまく付き合っていける病気ですので、できるだけストレスをかけない環境を整えてあげましょう。

【3】猫白血病ウイルス感染症(FeLV)

主な症状

感染すると発熱やリンパ節の腫れなどの症状が見られ元気がなくなります。猫によっては貧血や白血球の減少が見られることもあります。期間は1週間から1カ月ほど続きます。その後症状が治まり普通に生活できるようになります(無症状キャリア期)。発症すると、貧血や血液のがんなどさまざまな症状が表れます。

どんな病気?

ワクチンを打ってもすべてを防ぐことはできず、若い猫は感染すると7割以上が持続感染するといわれています。
原因となる猫白血病ウイルスは、感染すると貧血やリンパ腫などの症状をもたらし死に至らせます。子猫がウイルスにさらされた場合、高確率で無症状キャリア期を経て発症します。子猫は免疫機能が十分に働かず、ウイルスを外に追い出すことができません。そのため成猫に比べて感染しやすい傾向にあります。
予防としてワクチンをうつことはもちろんですが、ワクチンを接種しても100%は感染を防ぐことが難しい恐ろしい病気です。しかし、感染猫との接触をもたなければ感染を防ぐことができます。

【4】猫汎白血球(ねこはんはっけっきゅう)減少症

主な症状

急激な発熱、激しい嘔吐。大量の血便や下痢をすることもあります。

どんな病気?

ウイルスの感染力が非常に強く、発症した子猫の致死率は90%以上という怖い病気です。
猫パルボウイルスに感染して間もなく発症して、急激な発熱や激しい嘔吐を繰り返します。大量の血便や下痢をすることもあります。猫自身の免疫の働きにより回復することもありますが、免疫の弱い猫は1週間以内に死に至ることもあります。

●感染経路・予防法は?

飼い主さんの衣服や靴に付いたウイルスから感染することもあります。
原因となるパルボウイルスは非常に強く、感染猫が1カ月前にしたウンチでさえウイルスが生きていることもあるといわれています。飼い主さんが衣服や靴に知らずに付けている恐れもあるので、室内飼いでも注意が必要な病気です。
まずはワクチンをしっかりうちましょう。飼い主さんがノラ猫と接触しているなら、しっかり手洗いをするなどの対策も大切です。

この病気に対するワクチンの効果は非常に高いので、ワクチンをうっていればほとんど感染することはありません。しかし、特に子猫はワクチンを接種する前の免疫がない状態で感染してしまうことが多いので注意が必要です。

【5】猫伝染性腹膜炎(FIP)

主な症状

突然食欲がなくなり高熱が出ます。ぶどう膜炎(目の虹彩が赤く濁る)ことで気づくこともあります。

どんな病気?

発症するとほとんどが死に至ってしまいますが、不明点が多い病気です。
猫コロナウイルスに感染したあと、ウイルスが猫の体内で毒性の強いFIPウイルスに突然変異して発症するとされています。高熱が出ることがほとんどで、目の虹彩が赤く濁る「ぶどう膜炎」で気づくこともあります。最近では、ほかの猫から直接FIPウイルスはうつらないと考えられています。猫が持っているコロナウイルスは2種類あり、ほとんどは軽い腸炎を引き起こす腸コロナウイルスです。しかし体内で毒性の強いFIPウイルスに突然変異した場合、この病気を発症します。

猫伝染性腹膜炎の症状は2つのタイプに分かれます。1つが「ドライタイプ」と呼ばれ、目や内臓に異常をきたし、神経症状(異常行動、痙攣など)が見られるものです。成猫の場合はこのタイプが多いようです。
もう1つが「ウエットタイプ」です。これは、おなかや胸に水がたまる症状で、子猫に多く見られます。猫によっては500mlを超える水がたまることもあるそうです。胸腹水がたまること自体はそこまで痛みがなく、ややおなかが張っている程度にしか見えないこともあるため、飼い主さんが気づかないこともあります。

現在のところ、ほとんど亡くなってしまう病気であり、世界中で治療法が研究されていますが確実に有効な方法はいまだありません。自宅ではストレスのない環境を整えることが一番の予防方法です。

感染症についてのQ&A

マンチカンのおやびんくん
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【Q】感染の疑いがある猫を動物病院に連れて行くときの注意点は?
【A】ほかの猫との接触をなるべく避けましょう。隔離しなければならないこともあるので、来院前に電話で連絡を入れてください。待合室ではほかの猫に感染させないように、キャリーケースから猫を出さないようにするなど配慮が必要です。

【Q】感染を知るための検査はどんなものがありますか?
【A】鼻水や血液中のウイルスの遺伝子を検出できる検査があります。今までは猫の症状からしかウイルスを特定できませんでしたが、4~5年ほど前から“PCR”という方法でウイルスの遺伝子が検出できるようになりました。検査料は動物病院によって異なりますが、およそ1万円~とやや高額です。

※症状が出る・出ない期間は、環境やほかの病気にかかっているかなどの条件により異なるため、参考程度にとどめてください。また病気によっては研究途中のため、ここで紹介した以外にも説があります。
命にかかわるケースも多く怖い感染症ですが、定期的にワクチンを接種することで、予防効果を高めることができます。愛猫の健康のためにも、感染症の知識を身につけて、動物病院で定期的にワクチン接種をしましょう。
監修/長谷川諒先生(きたじま動物病院)
文/ねこのきもちWeb編集室
参考&画像・イラスト出典/「ねこのきもち」本誌、ムックより
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