猫と暮らす
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【獣医師監修】猫に感染が多い寄生虫とは?特徴・症状・治療法・予防法
飼い主さんも猫自身も気がつかないうちに、体に忍び込む寄生虫。子猫や高齢猫など体力が少ない猫に大量の寄生虫が感染すると、重篤な症状を引き起こす場合もあります。愛猫の健康のために、正しい知識を身につけましょう。

長谷川 諒 先生
株式会社Ani-vet 代表取締役
保護猫施設専門往診病院 下京ねこ診療所 院長
動物病院京都 ねこの病院 所属獣医師
北里大学獣医生化学研究室 研究生
●所属:日本猫医学会/日本獣医腎泌尿器学会
●書籍(監修):『知っておきたい ネコの多頭飼いのすべて 獣医師が教える 幸せに暮らすためのポイント』メイツ出版 /『いちばんよくわかる猫種図鑑 日本と世界の60種』メイツ出版
寄生虫感染の予防&早期発見に役立つ3つのこと
【1】猫を保護したらすぐに動物病院で便検査を受ける
【2】寄生虫の予防・駆除剤を投与する
なお駆虫薬は、飲み薬タイプと背中に滴下する液体タイプがあります。飲み薬が難しい猫でも、背中に滴下するタイプの駆虫薬だと、飼い主さんでも簡単に投与できます。
【3】普段からウンチを観察して発見したら早く取り除く
猫に多い寄生虫の特徴・症状・治療法
特に多い内部寄生虫1:回虫
回虫ってどんな寄生虫?
回虫は、ノラ猫の半数以上が感染しているといわれるほど、身近な寄生虫です。猫には「猫回虫」と「犬小回虫」が寄生しますが、圧倒的に多いのが、猫回虫です。白くて細長く、成虫の長さは、2~10cmにもなります。
なぜ感染しやすいの?
どんなときに気づくの?
・下痢をするとき
・体重の減少(子猫の場合)
猫の体のどこに寄生するの?
検査・治療方法は?
特に多い内部寄生虫2:条虫
条虫ってどんな寄生虫?
なぜ感染しやすいの?
瓜実条虫の卵を食べたノミが猫の体の表面に付き、そのノミを猫が毛づくろいでなめとって感染します。猫条虫は、条虫の卵を食べたネズミを猫が食べることで感染し、マンソン裂頭条虫は、条虫の幼虫を宿したカエルや、そのカエルを食べたヘビを猫が食べても感染します。
どんなときに気づくの?
・瓜実条虫の片節がお尻についていたときや、寝床に落ちているとき
猫の体のどこに寄生するの?
検査・治療方法は?
条虫の卵は便検査では見つかりにくいため、猫のお尻周りやウンチの表面に条虫の片節がないかを確認します。
治療は、条虫を退治する駆虫薬を投与するほか、ノミの感染も併発している可能性が高いため、ノミの駆虫薬の投与も必要です。
特に多い外部寄生虫1:ダニ
ダニってどんな寄生虫?
猫に最も多いのは「ミミヒゼンダニ」で、その他にも「ショウセンコウヒゼンダニ」「マダニ」もあります。
なぜ感染しやすいの?
感染猫と軽く接触したり、同じブラシを使うだけでもうつるため、複数飼いの場合1匹が感染すると、あっという間に同居猫へと広がってしまいます。耳ダニは、外で過ごしていた元ノラ猫によく見られます。
どんなときに気づくの?
・黒い、独特な刺激臭の耳垢がたまっているとき
猫の体のどこに寄生するの?
検査・治療方法は?
治療はダニの種類に応じて、駆虫薬を投与します。
特に多い外部寄生虫2:ノミ
ノミってどんな寄生虫?
なぜ感染しやすいの?
ノミは温度20~30℃、湿度50~80℃の環境で繁殖します。つまり、冷暖房や加湿器で温度・湿度が整えられている住まいは、ノミにとって最適な環境になります。毛に覆われている猫はノミが寄生しやすい動物なので、室内で暮らす猫にとって最も身近な寄生虫といえるでしょう。
どんなときに気づくの?
・猫が毛をカチカチと噛むとき
猫の体のどこに寄生するの?
検査・治療方法は?
厄介な内部寄生虫1:原虫類
原虫類ってどんな寄生虫?
どんなところが厄介なの?
感染猫のウンチに含まれるオーシスト(卵のようなもの)を、ほかの猫が口にするのがおもな感染ルートです。原虫類は猫の体内で増殖していきます。精密な検査が必要で、かつ駆除に時間がかかることもあります。
どんなときに気づくの?
・発育不良、体重の減少(子猫の場合)
猫の体のどこに寄生するの?
検査・治療方法は?
便検査などで虫が特定できたら、抗原虫薬を投与して駆除します。同時に下痢の症状があれば、対症療法も行います。
厄介な内部寄生虫2:フィラリア
フィラリアってどんな寄生虫?
猫に寄生した場合、大部分で感染は成立しないといわれていますが、まれに感染が成立し成虫にまで成長することもあります・フィラリアの成虫の大きさは10cm以上になります。
どんなところが厄介なの?
フィラリアは蚊が媒介して、猫に寄生します。犬のように体内で成虫にまで発育しないことが多いのではっきりした症状が出ないこともあり、診断は困難です。まれに成虫まで発育すると、普通に生活していた成猫が突然死してしまうケースもあります。
猫の体のどこに寄生するの?
検査・治療方法は?
猫の寄生虫についてのQ&A
【A】いいえ、寄生虫は室内にも入ってきます。
例えばノミは、猫同士が接触したときだけ感染するのではなく、飼い主さんが外から室内に持ち込むこともあります。また、室内にいるノミや蚊を介して、猫の体に忍び込む寄生虫もいます。ですから、室内飼いの猫でも油断は禁物です。
【Q】元気にしているのは、寄生虫がいない証拠ですよね?
【A】いいえ、寄生虫によっては目立った症状が出ないこともあります。
寄生虫の種類によっては、感染しても症状がほとんど出ないケースもあります。とはいえ放置しておくと、同居猫や人にうつる恐れもあります。元気だからと油断せず、動物病院で適切な検査と予防をすることが大切です。
【Q】フィラリアは犬につく寄生虫だから、猫は関係ないですよね?
【A】いいえ、猫の10匹に1匹は、感染しているという報告もあります。
フィラリアは本来、犬の心臓にすみ着く寄生虫ですが、猫にも感染します。猫の場合、犬と違って気づかれないケースが多いのです。
【Q】寄生虫の病気が重症化することはないですよね?
【A】いいえ、大量に寄生されると重症になることもあります。
子猫や高齢猫など体力の低い猫に、大量の寄生虫が感染すると重篤な症状を引き起こすケースがあります。また、フィラリアに感染して突然死する猫もいるため、たかが寄生虫と油断するのは禁物です。
文/ねこのきもちWeb編集室
参考&画像・イラスト出典/「ねこのきもち」本誌、ムックより
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