猫の祖先ともいわれるリビアヤマネコは砂漠で暮らしていたはずなのに、家猫たちは、なぜ暑さで体調を崩すのでしょうか? 猫が熱中症になる理由と注意が必要な猫の特徴、熱中症の症状について、ねこのきもち獣医師相談室の岡本りさ先生に教えていただきました。
砂漠にいた猫が、なぜ熱中症になるの?
体質が変わっているから
長い歴史の中で人と共に砂漠から各地へ移った猫は、それぞれの置かれた環境に順応するため、毛の長さや体質を変化させてきました。ノルウェージャンフォレストキャットが北ヨーロッパの厳しい寒さに適応して豊かな長毛をまとい、寒さより暑さに弱くなったように、リビアヤマネコと現在のイエネコとでは体質が変わっています。そのため、熱中症が起こり得るのです。
日本の夏は高温多湿だから
猫の祖先といわれるリビアヤマネコが暮らしていた砂漠は気温が50℃を超える日もありますが、湿度が低く乾燥しています。一方で、日本は温帯気候から亜熱帯気候に傾いているため、雨が多く高温多湿になります。砂漠と異なる蒸し暑さが、熱中症の発生に大きく関わっているのです。
猫は汗をかいて体温調節できないから
猫は汗腺が少なく、人のように全身に汗をかいて体温調節することがほとんどできません。代わりに鼻や口から水分を蒸発させたり、グルーミングしたりすることで、体温調節を行っているのです。
日本の夏のように湿度が高いと、体から出た熱を水蒸気として発散しづらくなるため、体温調節がうまくできず熱中症の原因になります。そのため、比較的高い気温に強い猫でも、蒸し暑さには弱いのです。
熱中症になりやすい猫の特徴
熱中症にならないためには、体温が上がりすぎないようにすることが大切です。猫の体型や健康状態によって体温調節機能に差が出てくるため、次のような特徴のある猫は、熱中症により一層の配慮が必要になるでしょう。
- 体温調節がしづらい子猫やシニア猫
- 長毛種の猫
- 熱を逃しにくいぽっちゃり体型の猫・鼻ペチャ猫
- 自分で居場所を移動できない、四肢に障害のある猫
もし熱中症にかかったら!猫に現れる症状
熱中症になると、初期の段階で次のような症状が現れます。
- 体がいつもより熱い
- 食欲・元気がない
- 口呼吸をする
- ヨダレが出ている
- 吐く
- フラつく
- あまり動かない
- ぐったりしている
このまま重症化すると、意識がなくなる、痙攣(けいれん)する、血尿や血便が出るといった症状も現れるでしょう。
熱中症ではなかったとしても、これらの症状が見られる場合は何らかの病気の可能性が。気になる症状が現れたら、迷わずに動物病院を受診しましょう。
野生時代の生活を考えると、猫は何の対策もしないで夏を乗り越えられるように思いがちですが、そうではありません。環境に合わせて猫の体質も変化しますし、日本の夏は蒸し暑くなるので、人にとっても猫にとっても過ごしにくいことを忘れてはいけないでしょう。
(監修:ねこのきもち獣医師相談室 獣医師・岡本りさ先生)
取材・文/小崎華
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。