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猫と暮らす

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【獣医師監修】猫を飼うときに知っておきたいこと~心構え、費用、住宅環境、お世話など

本来は「肉食動物」の猫。猫の習性を知っていなければ、いざ飼うときになって「こんなはずじゃなかった」となることも。猫の性格とは、猫にどんなケアが必要なのか、猫にとって快適な環境とはなど、猫を迎え入れる前に知っておきましょう。

塚原 昌史 先生

 獣医師
 横浜戸塚プリモ動物病院勤務

 東京農工大学農学部獣医学科(現 共同獣医学科)卒業
 東京農工大学動物医療センターⅡ種研修医修了

●資格:獣医師

●所属:獣医アトピー・アレルギー・免疫学会

●主な診療科目:一般診療(外科・内科)

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猫と暮らすということ

猫との暮らしで抱かれているイメージ

猫と一緒に暮らしたいという人は多いのではないでしょうか。もちろん、猫は元々とても魅力的な生き物ですから、人気者になっても何も不思議ではありません。ですが、加熱する猫人気には、少し不安を感じることもあります。

一般に、猫に対して「見た目がかわいい」、「癒し効果がある」、「集合住宅でも飼いやすい」…などのイメージを持っている方々は、決して少なくないのではないでしょうか。また、猫と暮らすことで、「家族をあたたかくしてくれる」、「心身の健康を支えてくれる」、「子供の成長を支えてくれる」…などに期待する方々も、もしかしたらいらっしゃるかもしれませんね。

ですが、実はこれらの考え方はいささか人間に中心的で、「理想の猫のイメージ」に偏っているような印象を受けます。もちろん、猫は人間を癒してくれる存在です。ですが正確にいえば、猫が積極的に人間に尽くして癒してくれる訳ではなく、猫が勝手気ままにくつろいだり、遊んだり、時に甘えたりしてくれるその姿に、人間が「勝手に」癒されている、というのがリアルな現実でしょう。当の猫自身には積極的に癒している自覚はほとんどなかったとしても、ストレスなく過ごせる環境と、愛情あふれるケアに包まれて、ただのびのびと過ごしている姿そのものが、結果的に人間にとって大きな癒しになっているのです。

猫を飼う前に知っていただきたいこと

見た目は可愛いですが、猫は「肉食動物」です。獲物を狩るための鋭い爪と立派な牙をもっています。幼い頃はとりわけやんちゃで、噛んだり引っ掻いたりひっきりなしに激しくじゃれつきます。飼い主さんは生傷が絶えないこともあるでしょう。

犬のように定期的な散歩の必要がないため、集合住宅での飼育もしやすいかもしれませんが、室内で十分遊べるスペースを用意できなければ、運動不足によるストレスで噛みつきや粗相などの問題行動がひどくなることもあります。

「家族をあたたかくしてくれる」、「心身の健康を支えてくれる」、「子供の成長を支えてくれる」など、猫と暮らすことで得られる効能を人間が期待しているかもしれません。しかしそれらは、猫に限らず、犬でも、鳥でも、犬猫以外の小動物でも、場合によっては植物でも、「心を込めてかわいがり、家族皆で世話をし、それについて会話をする」という家族共通の体験から十分得られるのかも知れません。

これから猫を飼う方や、猫にもっと癒して欲しいと願っている方には、「愛猫に癒してほしい、愛猫と暮らすことで得られるかもしれない効能」に期待する前に、まずは「愛猫を幸せにするために、自分自身にできる努力を怠らない」という気持ちを持っていただきたいと思います。

猫に過剰な期待をするのではなく、猫の気持ちによりそって、末永く仲良く暮らすことを一番大事にしていただければ、何よりもうれしく思います。

子猫の成長スピードと、月齢に合わせたケア

フードを食べる3匹の猫
ねこのきもち投稿写真ギャラリー

子猫の成長スピードとは?

初めて子猫を迎えようと思っている皆様は、子猫と一緒に過ごす生活をどのように思い描いているでしょうか? もしかしたら、よちよちと足元のおぼつかない幼い子猫と楽しく戯れ、抱っこすれば穏やかに甘えてくれる。そんな生活だけを思い描いてはいませんか?

もちろん、子猫はとてもかわいらしくて、成猫とはまた違った魅力がある存在です。ですが、そのような幼い時期は本当にごく短期間です。生後2ヶ月半(もしくはもっと前かもしれません)も過ぎれば、人間ではとても追い付けないほどの運動神経を発揮します。元気でやんちゃで、じっとしているのは寝ているときか、食べるときくらいしかないといった活動的な時期を過ごしつつ、成猫へと成長していきます。

子猫には月齢に応じたケアが必要

猫種によっても多少異なりますが、子猫が完全に成猫になるまでにかかる期間は、一般的には生まれてからおおよそ4~6ヶ月間くらいの短い期間で、あっという間に大人の猫とほぼ同じレベルの運動や行動ができるくらいにまで立派に成長します。
なかでも、生後3ヶ月齢くらいまでの間は、日を追うごとに成長がみられる時期です。そのため幼い子猫を迎える際には、その成長の程度に応じたきめ細やかなケアも必要になります。

例えば、迎えた子猫が離乳前なら3~4時間おきに哺乳と排泄の世話と、冷えないよう細やかな温度管理などが必要になりますし、離乳した子猫でも、食事の補助や温度管理などがしばらくの間は必要になります。また、離乳もすっかり終わって行動範囲が増えれば、高い所から落ちてけがをしたり、誤食やいたずらによる事故など、その月齢ごとに気を付けてあげなければいけないことはやはりたくさんあるものです。

子猫に伝える愛情表現も、成長に合わせて変える

愛情の伝え方も、それぞれの月齢でずいぶん異なります。足元がまだおぼつかないような離乳前の子猫の場合は、お世話するタイミングでやさしく声掛けをしたり抱っこをしたりなど、安心感を与えるコミュニケーションが中心になるでしょう。ですが、成長して活発に走ったり遊んだりできるようになったら、そのような穏やかなコミュニケーションだけではなく、こまめにたくさん遊んであげるなど活動的な関わりをたくさん持つことも、愛情を伝える大切なコミュニケーションになります。

このように、猫の月齢に応じた成長の過程を理解することは、自宅に迎えた(あるいは保護した)猫の月齢に応じたケアをするためにもとても大切です。

子猫を迎えるということは、その猫と末永く一緒に暮らす覚悟をすることです。できれば猫を迎える前に(もちろん、保護などで突然子猫を迎えることになった場合には、保護をしてからなるべく早いうちに)、猫の成長の過程やそれに伴う行動の変化について、あらかじめ知っておく努力をすることをお勧めします。

猫の成長について知っていることが多ければ、愛猫のことをより理解し、愛猫との絆を育む大きな助けになるだろうと思います。

猫が楽しく暮らせる住宅環境と、気を付けたいこと

キャットタワーの上にのる猫
ねこのきもち投稿写真ギャラリー

住宅環境の工夫が必要

これから猫を飼おうと考えている方々は、実際にどのような住環境で猫を飼う予定でしょうか? 集合住宅でしょうか? それとも、戸建てでしょうか? 完全室内飼育でしょうか? それとも、外にも遊びに出るスタイルでしょうか? いずれにしても、それぞれの住環境に応じて猫が楽しく過ごせるような工夫をすることが大事です。

3ヶ月未満の子猫の最適な環境と、気を付けたいこと

まず住環境に関わらず、3ヶ月齢未満の子猫の間は、体調不良を避ける目的で室内の限られた部屋でお世話をするのがよいでしょう。子猫は、成猫に比べると体の仕組みがまだ未熟です。特に3ヶ月齢未満の子猫にとっては、温度管理がきちんと行き届いた生活環境がまず必要です。遊んだり走ったりできる広い環境ももちろん大事ですが、休ませたり食事をさせたりするときには、あまり広すぎない場所のほうが適しています。

例えば、家具などをあまり置いていない部屋を利用して、隠れられるような場所やトイレ、フードや水なども用意した猫部屋にしたり、周囲を布で覆って目線を遮れるようなケージを用意したりなど、限られた空間で過ごさせるほうが、休息や食餌に集中しやすい傾向があります。

子猫を迎え入れたときの最適な環境と、気を付けたいこと

家に来たばかりの子猫の場合、生活環境の変化で興奮し体にストレスがかかる状態が数日は続くため、遊んだりしつけをしたりする前に、意識的に寝る時間を取ったり、なるべく休ませるような対応も必要なことが多いです。一週間から10日くらいが経過して家に慣れはじめたら、少しずつ広い場所で過ごさせる時間を長くするとよいでしょう。子猫にいたずらされては困るものはあらかじめ片づけるか、子猫の口が届かないような場所に移動するなどの工夫をし、はじめのうちは極力目を離さないように心がけましょう。

かまってあげられないときには、休息するための場所やケージに戻すようにするのもよいでしょう。ただし、人間の就寝時など以外で、そういった刺激の少ない場所で長時間すごさせるのはあまりすすめません。こまめに遊んでやったり、危なくない範囲で家の中を探検させてやったりなど、子猫の好奇心を満足させるような工夫は常にするようにしましょう。

やがて、子猫が成長するにつれて、どんどん活動範囲が増えていきます。床を走ったりするだけでなく、壁を蹴って高く飛んだり、家具伝いに高い所に登ろうとしたりと、立体的な動きも徐々に増えていきます。このころから、飼い主さんの住環境に合わせて、さまざまな工夫が必要になります。

一戸建ての場合の快適な環境と、気を付けたいこと

立体的な動きを好む猫に合わせ、キャットタワー以外にも、キャットウォークを設置するのもよいでしょう。また、二階建以上の建物の場合、上の部屋の室温がより高くなりやすい傾向があります。エアコンを利用したり、暑い時間帯は上階には上がらせず、涼しい場所で過ごさせるようにするなど工夫をしましょう。

また、窓や外壁に近い場所は室内でもやや寒暖差が大きいため、猫の居場所は窓から離れたところに用意するほうがよいでしょう。猫のための専用の部屋を用意できない場合には、2段~3段ケージなど、猫が安全に過ごせる場所を用意しましょう。

外にも行くようなスタイルで飼う場合は、近隣の住民ともコミュニケーションをとって、万が一ご迷惑をかけた際に対応しやすい関係づくりを心がけましょう。また、猫自身には迷子札やマイクロチップ装着など、迷子対策もきちんと実施しましょう。ただし外に出る猫は、ほかの猫とのケンカによる感染症や交通事故などで、完全室内飼いの猫に比べると平均寿命が短い傾向があります。安全面からは完全室内飼いがおすすめです。

集合住宅の場合の快適な環境と、気を付けたいこと

壁や天井の構造によっては、キャットウォークの設置には制限があります。キャットタワーの設置は可能ですが、猫が床に飛び降りた際に階下に音が響くことも。吸音マットやコルクシートなど、床下への防音の配慮もするほうがよいでしょう。

また、ワンルームなど、猫のための専用の部屋を用意できない場合には、2段~3段ケージなど、猫が安全に過ごせる場所を用意しましょう。戸建て同様に、窓や外壁に近い場所は室内でもやや寒暖差が大きいため、ケージの設置場所は窓から離れたところに用意するほうがよいでしょう。

集合住宅のベランダは、猫が鳥を追ってそのまま転落する事故などの危険性があるので、猫が自由に出入りできるようにすることはすすめません。ベランダでのブラッシングや、猫用のマットやグッズのお手入れなども、近隣に毛が飛び散って迷惑になる可能性かあるので避けるほうがよいでしょう。

猫を飼うために必要な費用

猫を飼うために必要なもの、かかる費用

現実的な話として、猫を飼う際にはそれなりの準備と、それに伴う費用が掛かります。また、猫と暮らす間、継続して必要な食費やトイレ関連の消耗品、医療費などの経費もあります。猫を飼う前に、必要な費用について知っておきましょう。

飼育環境を整えるための費用

・ケージ、もしくは猫用の部屋
猫用ケージの参考価格:1万円台~数万円するものも。
なかで上下の動きができるよう、2段~3段ケージなどのほうが好ましいです。

・食器
参考価格:数百円くらいから。
食餌用と飲み水用、2個以上必要です。

・猫用のベッドや、隠れるための場所など
参考価格:数千円~数万円。
素材やデザインによって幅があります。家にある毛布や段ボール箱などで、DIYも可能です。

・トイレ
参考価格:トイレ本体は数千円程度のものが一般的ですが、デザインや機能(全自動トイレなど)によっては、数万円するものも。
さらに、トイレ材(トイレ砂などトイレを清潔に保つための消耗品)の費用として、月々にすると数百円~千円前後(トイレ砂の種類により、価格に幅があります)ほど、継続して費用がかかります。
基本的に「猫の数+1」を用意してください。

・爪とぎ
参考価格:数百円~数千円と、素材や大きさによって価格に幅があります。
※近頃では、爪とぎ兼遊び場所や隠れ場所として使用できるものなど、複数の用途に使える製品もあります。使用できる期間は、素材や爪とぎの頻度によりさまざまですが、傷み具合をみながら定期的(数週間~数ヶ月ごと)に交換します。

・食餌
参考価格:一般的に市販されている総合栄養食(ドライフード)の場合、費用は月額2~4千円前後ほどと価格に幅があります。ウェットフードの場合は、同じカロリーあたりの価格が、ドライフードに比べてやや割高になる傾向があります。

医療費

・ワクチン
参考価格:1回、数千円から。
※初年度は2回以上の複数回の接種が必要です。その後は、かかりつけと相談の上で1年ごと~数年に一度の接種を行います。

・ノミ、マダニなど寄生虫の予防
参考価格:動物病院で処方される製品は、1回ごとに2~3千円前後の費用が掛かります。
※予防したい寄生虫が発生する期間は、定期的に投薬が必要です。
一般に、完全室内飼育の猫ではノミやマダニなどの寄生虫感染のリスクは低いと考えられていますが、人間がそれらの寄生虫を気づかないうちに室内に持ち込み、そこから感染するケースも時折あるので注意が必要です。

・去勢、避妊手術
参考価格:5万円前後から、10万円以上かかることも。費用は病院ごとに異なるので、詳細は事前にかかりつけ医に確認するとよいでしょう。
(詳細は別項“避妊について”に記載。)

・キャリーバックもしくはクレート(頑丈なプラスチック製のキャリー)
参考価格:いずれも数千円前後から。キャリーについては、カートタイプ(車輪がついているもの)や、強度、デザイン性に優れた製品になると数万円以上するものもあります。日常では使いませんが、動物病院など移動する際には必須です。

その他、あったほうがよいもの

・首輪
参考価格:数百円~数千円程度と幅があります。
安全面を考慮し、ある程度の力がかかると留め具が外れる仕組みになっているものを選ぶほうが無難です。

・おもちゃ
参考価格:数百円~数千円程度。
使っているうちに猫が破壊して壊れることも少なくないので、基本、消耗品と考えます。電池で動くタイプの製品もあります。

・キャットタワー
参考価格:数千円から。タワーの高さや機能が多くなったり、素材が高価なものになると、さらに価格が高くなることもあります。

・お手入れに必要なグッズ
参考価格:犬猫専用の爪切りは千円~2千円前後。ブラシは、数百円~数千円程度と幅があります。基本的には愛猫の毛質に合わせて選びます。いずれも、人間用の製品はすすめません。


迎えた猫が生涯心地よく暮らすために、何にどのくらいの費用を掛けるかは、それぞれの飼い主さんの考え方によりますが、あまり費用をかけずに工夫できることもあれば、やはりある程度の費用をかける必要があるものもあります。

猫を迎える前に準備するものや、かかる費用のことについて、まずは考える機会を持ちましょう。

愛猫との生活で必要なグッズ

かごのなかで眠る猫
ねこのきもち投稿写真ギャラリー

飼育環境を整えるために必要な物

はじめて猫との生活を始める際には、何を準備したらいいのでしょうか? 猫と快適に生活するためには、
・飼育環境を整えるために必要な物
・その他、あったほうがよいもの
の2種類があります。

まずは、飼育環境を整えるために必要な物とその理由をまとめました。

ケージ、猫用の部屋

家に迎えたばかりの子猫にとって静かに休める場所は必ず必要です。また人間の留守中などに猫が安全に過ごせる場所を用意するためにも、猫用ケージもしくは猫用の部屋を用意するほうがよいでしょう。

ケージを用意する際には、大きくなっても使えるような2段、3段などのものや、増設ができる仕様の製品を選ぶほうが、買い直しなどの手間や費用のロスは少ないです。ただし、子猫にとってそのケージが安全かどうかもまた大事な部分です。あらかじめ大きいケージを購入するのであれば、子猫の時期には高い所には上がれないような工夫をしたり、保温がしやすいようにケージのなかにさらに小さな寝床や、あまり大きくない段ボール箱などを設置して、一時的に隠れ家を作るなどの工夫も必要です。

食器

食餌用と飲み水用に、少なくとも2個以上の食器が必要です。猫は食事や飲水の際に髭が食器に触れるのを好まない傾向があるので、口が広くて安定が良い陶器かガラス製を選ぶとよいでしょう。木製やプラスチック製の食器は、衛生面の観点からあまりすすめません。人間が使っていない食器を猫用に譲ることも可能ですが、より安定のよいものを選ぶ必要があります。ステンレス製は臭いを嫌がることがあります。

猫用のベッドや隠れるための場所など

一般に、猫は穴倉のような奥まった場所に潜り込んで休むのを好む傾向があります。かじっていたずらをしないのなら、ベッドの素材はやわらかいもののほうがよいでしょう。なお、人間の毛布などをたたんでから隙間を空けて空間を作って、それを隠れ家兼ベッドの代わりにしたり、段ボール箱に穴をあけて古いタオルやブランケットなどを入れて、隠れ家を作ることも可能です。

トイレ

猫は本能的に、排泄物を隠したい要求が強い生き物です。そのため、地面を掘って排泄をするその習性に合った形の専用のトイレと、猫砂などのトイレ材を用意するほうが、排泄のしつけもしやすい傾向があります。

子猫の場合、市販の子猫専用の小さなトイレを利用したり、大人用のトイレの入り口にスロープや段差を用意して入りやすくしたり、また一時的に子猫がまたいで入れるくらいの深さのプラスチックのトレーを、簡易トイレとして利用するなどの方法があります。

近年、猫用トイレやトイレ材はさまざまな種類があります。愛猫の排泄の様子を見ながら、トイレ砂の大きさや素材などを選んでみるとよいでしょう。また、ごくまれですが、砂そのものを好まない猫もいます。そのような場合は、細かく裂いた新聞紙やペットシーツなどをトイレ材として使用すると、うまく受け入れる場合もあります。

爪とぎ

猫は、本能的に爪とぎ行動をします。これは、爪を健全な状態に保つ目的と、足の裏から出る自分の臭いを付けるマーキングの意味もあります。そのため、定期的に爪切りをしている猫でも、猫の本能的な欲求を満たすために爪とぎは用意しましょう。

爪とぎの素材は、段ボールなどの紙製、麻ひもなどを巻いたもの、木材を加工したものなどさまざまです。中には、隠れ家やベッドのような形に加工されている多機能な製品もあります。また床に置くか、壁に立てて設置するかなど、設置向きも猫の好みを見ながら、考える必要があります。はじめのうちは愛猫の反応を見ながら、色々試してみるとよいでしょう。

キャリーバック、もしくはクレート(頑丈なプラスチック製のキャリー)

病院への受診など、屋外での移動の際には、キャリーバッグもしくはクレートを利用します。一般的なキャリーバックは比較的軽くて扱いが楽であり、さらに布製のものであれば収納の場所を取らないことなどが利点です。上からも猫を出し入れできるタイプの製品のほうが、受診の際には使いやすい傾向があります。
一方、クレートはキャリーバッグよりもやや重くかさばる形ですが、頑丈な造りなので扉を開けたまま室内に置いて日常の隠れ家として利用したり、交通機関で長距離移動をする際にも使用できることなどがメリットといえるでしょう。

その他にあったほうがよいもの

次に、そのほかにあったほうがよいものと、その理由をまとめました。必ず必要というわけではありませんが、いざとなったときに便利だったり、愛猫との生活が楽しくなるものをまとめました。

首輪

完全室内飼育の猫では必須ではありませんが、外に出る習慣がある猫は必ず着けるようにしましょう。首輪には、万が一迷子になった際の為に連絡先などを記して迷子札の代用にする役割と、野良猫ではなく飼い猫であることの目印としての役割があります。

素材はさまざまですが、猫は狭い隙間に入ったり、木に登ったりすることもあるため、万が一枝などに引っかかってしまった際に、首が締まったり、その場所から逃げ出せなくなったりして危険です。ある程度の力がかかると留め具が外れる仕組みになっているものを選ぶほうが無難です。

おもちゃ

狩りを行う動物である猫は、狩りに見立てた遊びを本能的に好む傾向があります。おもちゃを使わない遊びは、誤って人間の手や足を獲物にみたてて、直接攻撃するようになることもあるので注意が必要です。おもちゃを上手に利用して遊ぶほうがよいでしょう。

猫のおもちゃの種類としては、猫じゃらしやひも付きのおもちゃに柄のついたもの、抱えこんで蹴って遊ぶタイプのもの、ボール状のものなどのほかに、レーザー光線を利用して壁に投影した光を追わせるようなものや、電池で自動的に動くものなど種類は非常にさまざまです。どのおもちゃを好むのかはその猫の性格によって異なります。愛猫の反応を見ながら、好みのタイプのおもちゃを見つけてあげるとよいでしょう。

なお、猫は顎の力が強いので、おもちゃを破壊して誤食してしまうことがあります。おもちゃを与えるときには必ず傍で様子を見て、壊さないかどうか確認しながら遊ぶようにしましょう。

キャットタワー

猫は運動能力に優れるため、床のような平らな場所だけではなく、高い所に飛び乗ったりよじ登ったり、上下に移動することも得意です。また、高い所でくつろぐことを好む傾向もあります。そのため、隠れ家や爪とぎなどの機能も備わったキャットタワーを設置すると、猫にとって居心地のよい居場所であり、遊び場所にもなります。

キャットタワーの代わりに家具などをうまく配置して、猫が好む高い場所や隠れ家を用意する場合は、上り下りが楽にできるような配慮と、猫の動きで家具が揺れたり倒れたりしないような安全対策をする必要があります。

お手入れに必要なグッズ

猫のお手入れで、特に必要になるのは、専用の爪切りとブラシです。爪切りは、猫の爪を切るのに適した形の専用の爪切りが市販されています。ご自身の手に収まるサイズの、使いやすそうなものを選ぶとよいでしょう。

ブラシ

どのようなブラシを用いてお手入れするかは、個々の猫の毛の長さや質にもよりますが、以下のようなブラシや道具を用いるのが一般的です。

・コーム:金属製の平櫛です。少しずつ毛の流れに沿ってとかし、毛玉を探したり毛の流れを整えたりします。
・ピンブラシ:ゴム製の土台にピンがまばらに植えられています。毛のもつれをほぐしたり、抜け落ちた毛を取り除いたりと、日々のお手入れに使いやすいタイプのブラシです。ゴムのクッションがあるため、地肌までピンがきちんと届くようにブラッシングすると、マッサージの効果も期待できます。
・スリッカー:主に毛玉をほぐすために使います。力を入れずに徐々に毛玉をほぐすように、毛を引き切ってしまわないように注意して使います。
・ラバーブラシ:ゴム製のブラシです。主に、抜け落ちきらずに被毛の隙間に残っている毛を集める効果があります。使う際に被毛に強く押し付けすぎると、やわらかい毛は引き切れてしまうことがあるので注意しましょう。
・獣毛ブラシ:豚など、動物の毛を使用した密度の高いブラシです。毛艶を出したり、抜け毛や被毛の汚れを落としたりするのに使用します。

猫と暮らす上で必要な物はそれなりにたくさんありますが、すべてを一度に揃えなければいけないわけではありません。まずは飼育環境を整えるために必要な物を用意し、それ以外のものは愛猫の様子に合わせて少しずつ揃えていくとよいでしょう。

猫にしつけをするうえで大事なこととは?

箱から顔を出す猫
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
「動物のしつけ」とは、猫に限らず人間と暮らすためにしてほしい行動や習慣など、特定の行動をトレーニングする行為です。闇雲に厳しく叱ったり、威圧して行動を矯正するようなトレーニングは効果がありません。その動物にとって理解しやすい方法で、好ましい行動を繰り返し促すようなトレーニングのほうが、動物にとっても受け入れやすい傾向があります。

猫の場合も基本の考え方は同じですが、特に猫にとって受け入れやすい方法としては、猫の本能をきちんと満たしてあげながら、猫が居心地良くストレスなく、人間と暮らすために覚えてほしい事柄に少しずつ慣れてもらう対応が挙げられます。これは、成猫であっても子猫であっても、共通の考え方です。

「家に来たばかりだから」、「まだ幼くてしつけをするのはかわいそうだから」というご意見もありますが、家に来たばかりのときにこそ、飼い主さまにしていただきたい対応や、猫がまだ幼い時期だからこそ慣れてほしいこともあります。子猫と一緒に、お互いがストレスなく楽しい生活を送れるようなしつけを心がけましょう。

またトイレのしつけについてもご説明します。猫は犬と違い、本能的に排泄物を隠します。したがって猫用トイレを設置すれば、自然とそこで排泄するようになっていきます。ただし、失敗してしまった場合は酸素系洗剤でしっかりと臭いを消して対応するようにしてください。臭いが残ると、その場所をトイレと考えてしてしまうことがあるためです。また、失敗しても叱ったり叩いたりするのはNGです。逆効果にしかなりません。何度も失敗する場合はトイレが気に入らないか、何らかの疾患の可能性があるので、かかりつけの動物病院に相談してみてください。

猫の食事で気を付けるべきもの

食事中の猫
ねこのきもち投稿写真ギャラリー

猫に食べさせてはいけないもの

猫に食べさせてはいけないものについて考える際、大きく分けると以下の3通りになります。
(1)猫に対して、明らかに毒性があるとわかっているもの
(2)猫に対する毒性について今のところは明らかになっていないが、注意するべきもの
(3)毒性はないが、消化機能に負担をかける可能性があるもの

(1)猫に対して、明らかに毒性があるとわかっているもの

ネギ類、チョコレート、コーヒーや緑茶、生の甲殻類・イカ・タコ・貝類などによって猫が中毒を起こすことは、比較的知られているかと思います。
また猫は、植物による中毒も起こしやすい動物です。一般的によく目にする観葉植物や切り花(例えばユリ、チューリップやスイセンの球根、ツツジやシャクナゲ、キョウチクトウ、シクラメンなど、)も、誤食すると命に関わるほどの中毒を起こすものもあります。

なお、ここに挙げたもの以外にも、猫に毒性を示すものはまだあります。判断に迷うような食材などは、むやみに与えない慎重な対応を心がけましょう。

(2)猫に対する毒性について今のところは明らかになっていないが、注意するべきもの

猫に限らず生物が体の中に取り込んだ物質は、肝臓で代謝(体に役立つものや無害なものに変化させること)などの処理をされます。ただし、猫の場合は、植物に由来する成分を肝臓で解毒する能力が人間よりも弱いため、その負担を強く受けやすい傾向があります。そのことから、明らかに毒性があると証明されていないような一般的な観葉植物なども、体に取り込んだ結果として体調不良を招く可能性が否定できないため、注意が必要と考えられています。

なお、猫に対するアロマ(エッセンシャルオイル)の影響を慎重に考える傾向があるのも、このことに基づいています。

(3)毒性はないが、消化機能に負担をかける可能性があるもの

猫は肉食動物です。元々、野菜など繊維質の多い食材を消化するのが、あまり得意ではありません。そのため、本来であれば猫に対して毒性のない野菜類でも、消化不良による嘔吐や下痢などを起こすことがあります。


人間と比べると、猫にとってきちんと役立つ栄養になるような食材は少ない傾向があります。またその分、食べなれないものによる体調不良を招きやすいともいえるでしょう。特に子猫の場合は、健康に成長するための良質な栄養分をたくさん摂取してほしい大事な時期です。猫の健康を大事に、与える食べ物には慎重な配慮をするよう心掛けましょう。

子猫の健康管理の仕方

診察中の猫
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子猫の健康管理の仕方

家に子猫を迎えた後、1~2週間は環境変化によるストレスに配慮して自宅で過ごすのが一般的です。この期間中、特に体調不良などなく過ごしたら、次は今後の健康管理のための対応をします。動物病院に受診をして、健康診断と予防接種を受けましょう。

健康診断

家に来る前に健康診断を受けている子猫でも、環境変化によって体調が変化することもあること、また検便など寄生虫感染の有無についても、数週間ごとに複数回のチェックをするほうが望ましいなどの理由から、家に迎えた後にも受けることが望ましいです。

予防接種

猫が感染しやすい病気の感染予防や、発症時の重症化の抑止に有効です。子猫の場合、出産前後に母猫から譲り受けた抗体(移行抗体)による一時的な免疫(母子免疫)によって、生後8週齢~12週齢くらいまでの期間は病気にかかりにくい状態です。ただ、この母子免疫には個体差があり、早いうちに移行抗体がなくなってしまう子猫もいれば、12週齢を超えても移行抗体がある子猫もいます。そのため、予防接種は生後8週齢前後から生後14週齢(状況によっては16週齢以降)までの期間に、複数回の接種をすることがすすめられています。

予防接種については、自宅に子猫を迎える前にすでに接種を受けているケースもあるでしょう。その際には、初回の接種時期に応じてその後のワクチネーションプログラム(ワクチン接種計画)を考えます。健康診断の際に、獣医師に相談しましょう。

子猫の体調不良を見逃さないためには?

子猫の体調不良のサインとは?

成猫が体調不良の際には、その症状によっては、自宅でできることをまずやってみて、それで体調が改善するかどうかを見るという対応もある程度は可能かと思います。ですが、子猫は成猫とは異なり、体の仕組みがまだ未熟です。体調変化の経過も早く、場合によっては半日程度の短時間でどんどん具合が悪くなるケースもあります。そのため、子猫の健康管理には、体調の変化にできるだけ早く気づき、速やかに適切な対応をすることがとても重要です。


では、体調の変化にできるだけ早く気づくには、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。例えば、「嘔吐や下痢がある」、「元気がなくぐったりしている」、「目やにや鼻水が多量に出る」など、明らかな体調不良を疑うような症状は、はじめて猫を飼う方でも比較的気が付きやすいかと思います。もしも子猫にこのような強い症状がみられた際には、まず速やかに動物病院に受診をして手当てを受けることが必要です。

ただし、そのような強い症状に至る前に、わずかな体調不良のサインがみられることもあります。明らかに体調不良になってしまってから対応するよりも、病気になりかけの、体調不良のサインがみられた段階で対応や治療を始められれば、回復も早い傾向があります。

子猫のわずかな体調不良のサインとして気を付けたい症状は、以下のふたつです。

(1)動き方がいつもより鈍い

一般に、子猫は好奇心が非常に旺盛で活動的な気質を持っています。そのため、よほど体調が悪くならない限り、じっと大人しく過ごす姿はあまり見られません。体調の悪化があると、まずは活動量が減ります。そのため、いつもよりも動きにキレがないように感じたり、体を休めている姿を多く見かける(それでも好奇心が刺激されれば、それなりに動いたりもします)こともあるでしょう。

このようなときには、発熱など体のだるさを感じるような疾患や、場合によっては体のどこかに痛みを感じている可能性を疑います。いずれにしても、症状が丸1日以上続くのであれば受診をして原因を調べるなどの対応を検討するほうがよいでしょう。

(2)食が細い

一般に、成猫に比べると子猫は成長と活動の両方にエネルギーを使う分、食欲旺盛なものです。元気があっても食欲が減っている場合や、もともと食が細い場合には、食が細い原因に病的な要因が関わっていないかどうか早めに確認をするほうがよいでしょう。受診をして食欲不振の原因についてできる範囲探った上で、その後は体調に応じた工夫を併用しましょう。


子猫の体調不良に早く気づくには「いつもと何か違う」と感じることがまず大事です。元気、食欲、排泄など、健康な子猫が日々見せる自然な姿は、いい換えれば「もっとも体調が安定しているときの姿」でもあります。子猫と飼い主さんが一緒に過ごす時間は互いの愛情を深める大切な機会ですが、それと同時に、飼い主さんにとっては、子猫の自然な様子を観察し、健康状態を判断するための知識を得る大切な経験でもあります。

子猫の心や体の小さな変化にもなるべく気づいてあげられるよう、子猫と一緒に過ごす時間をぜひ大切にしていただきたいと思います。

猫の不妊手術とは?

エリザベスカラーをつけた猫
ねこのきもち投稿写真ギャラリー

不妊(去勢・避妊)手術のメリットとは?

これからはじめて猫を飼おうと考えている方々の中には、「不妊(去勢・避妊)手術は、必ずしなければいけないの?」と、疑問を感じる方もきっといらっしゃるでしょう。もしかしたら、生まれながらに体に備わっているものを取り除いてしまうことに、漠然とした不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。

猫に限らず、一般的にペットの不妊手術は、メスであれば子宮や卵巣、オスであれば精巣の病気、またはそれらに付随して発生しやすい病気の予防のため、また望まない繁殖を防ぐ目的で、若いうちに手術をすすめられることが多いかと思います。もちろん、猫の場合もその考え方を参考にします。ですがそれ以外にも、猫の習性や行動、飼育環境の面などからかも、不妊手術について前向きに考える必要があります。

屋外にも出る習慣のある猫の、不妊手術のメリットとは?

屋外にも出る習慣がある猫の場合には、下記の事故を防ぐためにも、不妊・去勢手術は必要です。

・メス猫の、外で交配して妊娠してしまうケース
・交配時のオス猫がメス猫の首を強くかむ咬傷
・オス猫が発情中の不特定多数のメス猫を妊娠させてしまうケース
・未去勢のオス猫同士の激しい喧嘩

完全室内飼育の猫でも、誤って屋外に出る可能性のある環境で飼育しているのであれば、やはりそれらの事故を未然に防ぐために実施するべきでしょう。

完全室内飼育の猫に不妊手術は必要?

一方、完全室内飼育でなおかつ屋外に出る可能性がなく、高層の集合住宅などほかの猫との接触がほとんど、もしくはまったくない環境で飼育されている猫の場合は、どのように考えるべきでしょうか? これについてはさまざまなご意見があるかもしれません。結論からいえば、やはり不妊・去勢手術を実施したほうが、猫がその限られた環境でより穏やかに心地よく過ごすための大きなサポートになると考えられます。

完全室内飼育のメス猫の、不妊手術のメリットとは?

これには、猫の体の仕組みが関係しています。生後5~6ヶ月くらいまで成長した猫は、それ以後は性ホルモンによって体や心がさまざまな影響を受けるようになります。例えば、メス猫であれば、日照時間(室内の灯りの影響もうけます)の影響により、周期的に発情期を繰り返すようになります。発情期の間は落ち着きなく動きまわり、盛んに大きな声で鳴き、交配する相手を探す素振りが増えます。トイレ以外の場所での排尿(マーキング)が増えたり、屋外に出ようと試みる行動が増える傾向もあります。つまり、発情期の一時的であっても落ち着いた穏やかな生活がしにくくなり、猫自身がかなり高齢になるまでの長期間、その状況を周期的に繰り返すことになります。

完全室内飼育のオス猫の、不妊手術のメリットとは?

一方、オス猫の場合は、成長するにしたがってオス猫としての自覚が芽生え、常にある程度の緊張感を持ちながら生活する傾向があります。限られた生活環境全体を縄張りとみなしてそれに対するこだわりを持ち、その縄張りにいるほかの動物に対する警戒心を抱く傾向があるため、ほんのささいなきっかけで同居の動物(場合によっては、人間にその矛先が向かうこともあります)などに突然攻撃的な行動をするようになったり、縄張りの誇示のために室内の壁などに尿を吹き付ける行動(スプレー行為)を繰り返すようになるなど、極端な行動がみられることもあります。

不妊手術は、愛猫が生涯人間と一緒に穏やかに生活するためのもの

これらの性ホルモンによって影響を受けたメス猫、オス猫の行動は、人間とかかわりなく野生で生きる動物であれば、生き物として本来あるべき自然な姿であるといえるでしょう。ですが「限られた生活環境で、繁殖する機会はなく、生涯人間と一緒に穏やかに生活するペット」にとって、これらの性ホルモンに影響を受けた行動は、動物自身が楽しく幸せと感じる行動であるといえるでしょうか。

これらのことから、成長がある程度落ち着いた若いうちに不妊手術を受けて、性ホルモンによる猫の体や心への影響を最小限に抑えることが、人間と猫が一緒に穏やかに過ごす大きなサポートになると考えます。


もちろん、個々の猫の性格によっては、未避妊・未去勢でもそれなりに穏やかに過ごせるケースも結果的にはあるかもしれません。ですが、それを猫が若いうちに見極めるのは困難です。むしろ、後々猫が高齢になってから、穏やかに過ごせない状況に陥ってしまう可能性が否定できません。

「交配して子猫を望む」など、不妊手術を行わないはっきりした理由がない限りは、愛猫が心穏やかに楽しく過ごすためのひとつの選択肢として、不妊(避妊・去勢)手術についてきちんと向き合って考える機会をもっていただければと思います。

子猫のお手入れの仕方と、お風呂の入れ方

子猫のころから慣れておきたいお手入れとは?

猫の体は非常にやわらかく、口先や舌も器用なので、全身の被毛や足裏、お尻の周辺など、自分で舐めたりかじったりしてある程度はお手入れをすることができる生き物です。ですが、できるだけ健康に快適に過ごしてもらうために、子猫のころから練習して、慣れておいたほうがいいお手入れもあります。ここでは、そのようなお手入れについていくつかご紹介します。

歯磨き

子猫のころの歯はすべて乳歯なので、本来は歯磨きの必要はありません。ですが、永久歯が生えそろったときになるべくきちんと歯磨きができるよう、トレーニングの目的もかねて、幼いうちから歯磨きの練習を始めましょう。

最初のうちは撫でているついでに口周りを軽く触ったり、唇の上から一瞬歯を触ったりするくらいの軽い練習から始めましょう。この時、盛んにじゃれついたり噛んでくるようだとトレーニングにならないので、たくさん遊んで休んでいるタイミングや、眠る前のゆったりしているタイミングなどを選んで、ごく短時間から口や歯茎、歯を触る練習をするとよいでしょう。

歯そのもののお手入れをするには、歯磨きクロス(歯磨き専用の不織布)や、歯ブラシが必要です。歯ブラシは動物用のものもありますが、人間用のもので代用することも可能です。部分磨き用や、乳児向けのヘッドが小さく毛先がやわらかい歯ブラシを選びましょう。ただし、人間がすでに使用したお古を猫に譲るのは猫の健康上よくありません。猫用にきちんと新しいものを用意してあげましょう。

爪切り

猫の爪は層状の構造になっていて、爪をといだり自分で爪をかじるなどして、一番表側の古い層をはがして取り除きます。これによって、常に爪が鋭くとがった状態を保ちます。この鋭くとがった状態の爪は狩りや木登りには非常に役に立ちますが、室内で過ごす際には、敷物に引っ掛けて思わぬ事故につながったり、人間の肌や家具を傷つけたりする可能性があります。そのため、先端のとがった透明な部分だけ、2~4週間に1回程度の頻度でカットするほうがよいでしょう。

爪切りには、動物専用の爪切りを使用します。人間の爪切りを使用するのは、誤って爪を割ってしまうことがあるのでおすすめしません。

ブラッシング

猫は自分の被毛を自分で舐めてお手入れしますが、飲み込む毛の量が多くなると体の負担になることがあります。特に長毛、もしくは短毛でも毛の密度が高く毛量が多い猫の場合は毎日被毛のお手入れが必要です。

実際にどのようなブラシを用いるかは個々の猫の被毛の状態にもよりますが、子猫の際には毛が細くやわらかいので、コームやピンブラシなど、毛を傷めにくいようなブラシを選ぶほうがよいでしょう。はじめからブラッシングを好む猫はあまり多くないので、子猫のうちから嫌がらない範囲で毎日少しずつ慣らすようにしましょう。

シャンプー・お風呂

猫は皮脂が少なく、皮膚や毛にべたつくような汚れはつきにくい傾向があります。そのため、基本的には定期的なシャンプーの必要はありません。ただし、子猫のうちは下痢や粗相、食餌の食べ散らかしなど思わぬ原因で被毛が汚れてしまうこともあるでしょう。いざ洗う必要がある際に困らないように、ぬるま湯に触れさせたり、足先やお尻周辺などを部分的にぬるま湯で軽く洗ったりなど、折に触れて体が濡れることに慣らす練習をあらかじめしておくほうがよいでしょう。

全身を洗うのはその必要がある時だけですが、シャンプーを使う場合、すすぎ残しがあると皮膚トラブルの原因になることがあります。しっかりすすいで皮膚にシャンプーが残らないように配慮しましょう。猫の性格的に長時間すすぐのが難しいようなら、お湯だけで洗うなど猫の負担がすくない方法で行いましょう。洗った後は、タオルドライだけでなくドライヤーなどで風を送って、被毛を根元からしっかり乾かすようにしましょう。
監修/塚原昌史先生(横浜戸塚プリモ動物病院)
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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