猫と暮らす
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【獣医師監修】猫にメロンを与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説
メロンは基本的に猫が食べても大丈夫な果物のひとつ。水分やビタミンC、カリウム、食物繊維など、猫の健康を守るのに役立つ栄養素が多く含まれています。ただし、与える量や与え方には少し注意が必要です。猫がメロンを食べるメリットに加え、与える際に注意すべき点を紹介します。
佐野 忠士 先生
酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授
酪農学園大学附属動物医療センター集中治療科診療科長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了
北里大学獣医畜産学部および同大学獣医学部勤務
日本大学生物資源科学部獣医学科勤務
●資格:獣医師/博士(獣医学)/世界的獣医心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER インストラクター)/CCRP
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本獣医学会/日本獣医師会/日本動物リハビリテーション学会/動物臨床医学研究所/日本麻酔科学会/日本臨床モニター学会
●主な診療科目:麻酔科/集中治療科
●書籍:『asBOOKS チームで取り組む獣医師動物看護師のためのICU管理超入門』/『as BOOKS チームで取り組む獣医師・動物看護師のための輸液超入門』/『動物看護師のための麻酔超入門・改訂版』 など多数
猫にメロンを与えるときは与え過ぎとアレルギーに要注意
ただし、糖分が多い分カロリーが高く、食べ過ぎるとカロリーオーバーになり、肥満や糖尿病などの原因になる可能性があります。また、メロンはスイカやきゅうりなどと同じウリ科の植物なので、ウリ科の果物や野菜にアレルギーがある猫には、メロンを与えないほうが安心です。
猫にメロンを与えるメリットとデメリット、与える際の注意点を紹介します。
メロンのおもな栄養素|約90%が水分、糖分とビタミンC、カリウムも豊富
※緑肉種・赤肉種の成分比率はほぼ同じ
エネルギー | 40kal |
---|---|
水分 | 87.8g |
タンパク質 | 1.1g |
脂質 | 0.1g |
炭水化物 | 10.3g |
灰分(無機質) | 0.7g |
文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照
猫がメロンを食べるメリット|熱中症予防、高血圧予防、老化防止、腸内環境の改善など
水分|約90%が水分、水分補給で熱中症予防
食物繊維|腸内環境の正常化、便秘や下痢の予防
水溶性食物繊維は糖質の吸収をおだやかにすることで、食後の血糖値の上昇を緩やかにし、コレステロールの排出をサポート。
不溶性繊維質は、腸内で水分を吸って膨らむことで便のカサを増し、便通を改善してくれます。さらに不溶性食物繊維は、腸内にある善玉菌のエサとなって、腸内環境を整える作用があります。
普段から軟便や下痢、便秘がちな猫には、メロンの食物繊維が役に立つかもしれません。
ビタミンC|病気や老化の防止
ビタミンCには、病気や老化の要因になると考えられる活性酸素を強力な抗酸化作用で取り除くほか、鉄分の吸収促進や、解毒をしたり、ホルモン代謝をサポートしたりするなどさまざまな働きがあります。愛猫を病気から守るだけでなく、若さを維持して関節炎を予防するのに役立つ重要な栄養素といえるでしょう。
カリウム|高血圧の予防
カリウムには、体内の水分の濃さを調整する作用があり、体内に溜まった塩分を尿と一緒に体外に排出することで、高血圧を防いでくれます。また、神経の伝達や筋肉の収縮にも深く関わっています。つまり、カリウムは猫の体を健康に保つために必要不可欠なミネラルのひとつなのです。
猫にはβカロテン摂取のメリットはない
犬の体内ではβカロテンがビタミンAに変換され、皮膚や目、粘膜の保護などに活用されることから、猫も同様だと思われがちですが、猫は体内に取り込んだβカロテンをビタミンAに変換して活用する酵素を持っていないため、βカロテンは猫にとってメリットのある栄養素とはいえません。猫は食べ物から直接ビタミンAを摂取する必要があります。
猫がメロンを食べるデメリット|心臓や腎臓への負担、アレルギーに要注意
カリウム|過剰摂取は高カリウム血症の原因に。腎臓病、心臓病の猫はとくに注意!
さらに腎臓の機能が低下していると十分にカリウムが排出されず、血液中のカリウム濃度が高まる「高カリウム血症」になる可能性があります。「高カリウム血症」は、四肢のしびれや筋力の低下、嘔吐、不整脈など体の不調をきたす原因になり、重篤になれば命を落とす場合もあります。
カリウムなど、体内の水分に含まれる電解質のバランス影響は、臨床症状などでははっきりとわからないことも多いです。「メロンを与える」「与えない」とは関係なく、定期的な健康診断と血液検査の実施をおすすめします。
口内・喉を刺激する「ククミシン」や中毒を引き起こす「ククルビタシン」に要注意
ククミシン
人間がメロンを食べたときに、口の中や喉にピリピリとした喉の痛みや舌のしびれを感じる人がいますが、その原因となっているのがこの成分です。ククミシンが口の中の粘膜を刺激することで、それらの症状が生じると考えられています。
ククミシンはアレルギーを引き起こす原因になる「アレルゲン」という報告がありますが、メロンを食べてすぐ起こる喉や口中の不快な症状はアレルギー反応ではなく、ククミシンによって口の中の粘膜などが攻撃を受けたためのものと考えられています。
ククルビタシン
「猫がメロンを食べて嘔吐した」という飼い主さんの声を聞くことがあります。これは、熟れたメロンに含まれるククルビタシンが嘔吐や下痢などの中毒症状を引き起こしたと考えられますが、詳細なことはわかっていません。
愛猫がメロンを食べて吐いたり、下痢をしたりした場合には、かかりつけの動物病院もしくは救急病院で獣医師の診察を受けましょう。
タンパク質にアレルギー反応を示す場合も
以前も何らかの食べ物でアレルギーを起こしている猫や、愛猫に初めてメロンを与えるときは、ごく少量から。食べたあとに皮膚の痒みや湿疹、目の充血、嘔吐、下痢などのアレルギー症状が起こらないことを確認してから、次を与えるようにしてください。もし、何らかの症状が見られたら、獣医師の診察を受けてください。
猫にメロンを与えるときの注意ポイント|皮と種は取り除いて。メロン加工品もNG
与えてよい部位
与えるときの適量
また、猫の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。
猫の体重目安 | 1日あたりの摂取可能目安 |
---|---|
4~5kg | 60g~70g(中1/5個~大1/8個) |
※数値は、避妊・去勢済みの猫で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出
※メロン中1個=可食部325g、大1個=可食部547gとして計算
調理のしかた
人間用のメロン加工食品は与えてはダメ
メロンを愛猫に与えるときは、適量を守る。与え過ぎないよう気をつけて
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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