飼い主さんとしては、愛猫の健康にはいつも気を配ってあげたいものです。しかし猫が罹患する病気の中には、かなり進行しないと症状や行動に変化が出ず、発症に気付くことが難しいものも少なくありません。
そこで今回は、飼い主さんが気付きにくい病気である、甲状腺機能亢進症・腎臓病・心筋症について、獣医師の重本仁先生に伺いました。
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症は、甲状腺が肥大し、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまう病気です。甲状腺ホルモンは新陳代謝を活発にさせるホルモンなので、初期は食欲が増えたり活発に動いたりするなど、むしろ元気で健康に見えることも。そのため、見た目でこの病気に気付くことは難しいといわれています。
甲状腺機能亢進症を発症するのは、主に10才以上のシニア猫。10才を超えたら、健康診断に甲状腺ホルモンの検査を追加するといいでしょう。
腎臓病
腎臓病は、腎臓の組織が壊れ、その機能を徐々に失っていく病気です。怖い病気にもかかわらず、発症してすぐは無症状なので、この時点で飼い主さんが腎臓病に気付くのは、非常に困難だといわれています。しばらくすると多飲多尿の症状が現われますが、この頃はすでに病気が進行している状態です。
腎臓の機能は、一度失われると二度と回復させることができません。そのため、もし腎臓病になってしまった場合は、病状の進行を遅らせる治療をどれだけ早く始められるかがとにかく重要です。早期発見ができるよう、健康診断では血液検査を行うことをおすすめします。
心筋症
心筋症は、心臓の筋肉である「心筋」に異常が生じ、血液を体に送るポンプ機能が低下する病気です。ポンプ機能が衰えると血液循環が悪くなるため、悪化すると呼吸が荒くなったり、咳などの症状が現われたりすることがあります。
ただ、こちらも症状が一切現われないことがあり、何の異変もなかった猫が突然倒れて命を落とすケースも……。心筋症に気付くためには、定期的な健康診断を行うことが大切です。
今回ご紹介した3つの病気は、健康診断の血液検査で発症しているかどうかを調べることが可能です。飼い主さんが気付きにくい病気だからこそ、定期的に健康診断を受け、愛猫の健康を維持できるよう努めましょう。
お話を伺った先生/重本仁先生(王子ペットクリニック院長)
参考/「ねこのきもち」2021年9月号『参考になる! 読者の実例写真を集めました。 ねこの病気 症状事典』
文/東里奈
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。