猫の愛らしさを引き立てているモフモフの被毛は、ただかわいらしいだけのものではありません。紫外線や外部の刺激から体を守ったり、季節に合わせて生え替わることで体温調節を行ったりなど、じつは多機能な部位でもあります。さらに、生えている場所によって異なる細かい役割があるのです。
そこで今回は、首回り・耳・お腹の毛など、猫の被毛が持つパーツごとの役割を、猫写真家の石原さくら先生に伺いました。
首回り&胸元の毛
猫の首回りや胸元には、やや長くて硬めの毛が生えています。この毛には、敵の攻撃から首を守ったり、自分の体をより大きく見せることで強さをアピールしたりする効果があるようです。役割としては、ライオンのたてがみと同じですね。
耳の毛
耳の中から生えている毛は「タフト」と呼ばれており、耳の中にゴミなどの異物が入らないよう、カバーをする役割があります。
また、耳の先端に生えている長めの毛は「リンクスティップ」や「房毛(ふさげ)」などと呼ばれ、小さな音や動きを察知する、センサーのような役割を担っているのだとか。これは、野生のヤマネコが狩りをする際、発達したものの名残だといわれています。
お腹の毛
お腹は内臓が集まっているため、猫にとっては急所といえる場所。そこに生えている毛は、その大切な内臓を守る役割があるのです。
また、お腹の毛は部位によって生え方に違いがあります。暑いときに熱を逃がせるよう、真ん中あたりは毛が薄め。一方両サイドは、紫外線から皮膚を守るために、密集気味に生えています。
肉球の間にある毛
足の裏にある毛は、直接地面に触れる肉球を守るために生えています。また、寒い地域に住んでいる猫は寒さから、暑い地域に住んでいる猫は地面の熱からなど、ケガ以外にもさまざまな危険から柔らかい肉球を守っているのです。
ただ室内で暮らしている猫は、肉球の間にある毛が伸びすぎるとフローリングの床などで滑りがち。毛が伸びてきたら、適度にカットしてあげてくださいね。
顔にある「触毛」
猫の顔に生える代表的な毛は、やはりヒゲ。猫のヒゲは、被毛の一部が発達した「触毛」と呼ばれる感覚器官で、1本1本に神経と血管がつながっており、わずかな刺激でも敏感に察知することができるすぐれものです。
ちなみに、頬や目の上、前足の裏側にも、ヒゲの一種である触毛が生えています。
かわいいだけでなく、さまざまな役割を持って猫の体を守っている被毛。耳の毛や触毛など、今まであまり意識して見ていなかった部位があるのなら、じっくりと観察してみるものおもしろいですよ。
お話を伺った先生/石原さくら先生(猫写真家 愛玩動物飼養管理士1級 キャットグルーマー)
参考/「ねこのきもち」2022年4月号『換毛シーズン到来 役割から構造、ケアまで まるっと! “猫毛”のすべて』
文/東里奈
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。