野生時代に単独行動をしていた猫は、病気になったりケガなどをしたりしても、敵に悟られないように不調を隠しながら生きていました。今でもその習性が残っているため、飼い主さんはふだんから愛猫をしっかりと観察して、気になることがあればすぐに動物病院を受診することが大切です。
今回は、症状がしぐさや行動にあらわれやすい病気を、獣医師の重本仁先生に伺いました。
尿石症
尿石症は、膀胱や尿道などに結石ができる病気です。オシッコは濃くなると結晶化しやすくなりますが、もともと猫はオシッコが濃くなりやすい動物なので、尿石症にもなりやすいと考えられています。
尿石症になると、何度もトイレにいくものの尿の量が少ない、陰部を気にしてしきりになめる、トイレから数分出てこないなどの症状があらわれるため、気になるようなら早めに動物病院を受診しましょう。
膀胱炎
膀胱炎は、尿石症や細菌感染などが原因で、膀胱に炎症が起きる病気です。最近では、ストレスなど心理的な原因で発症する「突発性膀胱炎」も増えています。
膀胱炎の症状は、残尿感からトイレを何度も行き来する、トイレで長時間しゃがみ込むなど。また、尿の色が濁ったり血尿が出たりなど、尿の見た目にも変化が起きます。
腸炎
腸炎は、腸の粘膜に炎症が起きることで、消化不良を起こす病気です。原因は主に食べ物にあり、腐ったものや食べてはいけないもの(中毒を起こす植物など)を食べた、脂肪分が多いものを食べたなどが挙げられます。ほかに、寄生虫の感染や、毛づくろいで起きる毛球症などが原因となるケースも。
症状の多くは、嘔吐や下痢です。ただ、いつもより元気がなかったり、しきりにお尻をなめていたりといった症状が出ることもあります。
多発性嚢胞腎
多発性嚢胞腎は、腎臓に多数の嚢胞ができ、腎臓の機能が徐々に低下していく病気です。完治は難しく、発症したら点滴や投薬、食事療法などで腎臓の負担を減らして進行を遅らせるような治療を行います。
症状は、多飲多尿、体重の減少、食欲不振、貧血、脱水などです。このような症状があらわれたら、すみやかに動物病院で検査をしてもらいましょう。
知覚過敏症
知覚過敏症は、脳の異常などで神経が過敏になる病気です。てんかんやストレスが原因なのではと考えられていますが、正確な部分は解明されていません。
症状は、過剰に毛づくろいをする、突然走り出して攻撃的になる、背中がけいれんする、しっぽやお尻のあたりを自分で傷つけるなど、さまざまな行動としてあらわれます。
愛猫の行動を観察していて「いつもと違うな」と気付いたら、それは病気の兆候かもしれません。違和感を放置せず、気になることがあったらかかりつけの獣医師に相談してみてくださいね。
お話を伺った先生/重本仁先生(王子ペットクリニック院長)
参考/「ねこのきもち」2021年9月号『参考になる! 読者の実例写真を集めました。ねこの病気 症状事典』
文/東里奈
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。