猫が好むといわれている、またたび。与えてみたいものの「よくわからないからやめておこう」と考えている飼い主さんも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、またたびの安全性や効果、使用シーンなどについて、またたび研究のスペシャリストである宮崎雅雄先生と上野山怜子さんに詳しく伺いました。
猫にまたたびを与えても安全です!
「猫とまたたび」について長年研究してきた獣医師の宮崎雅雄先生の研究チームが、2023年9月、猫にまたたびを与えても安全であることを、初めて科学的に立証しました。
長期的に与えても肝臓・腎臓への毒性はない
猫とまたたびに関する研究のなかで、最長3年にわたって毎月またたびに接触した複数の猫たちに対して血液検査を行い、肝障害と腎障害の数値を調べました。その結果、すべての猫において正常値範囲内だったことから、猫に長期間またたびを与え続けても、肝臓や腎臓への毒性はないことが証明されたのです。
猫のまたたび反応に依存性はない
またたびの葉の抽出物に、猫が4時間ほど自由に接触できるようにしてみたところ、猫は10分程度しかまたたびに接触せず、時間とともに興味を失っていく傾向が見られました。
またたびに依存性があれば興味が薄れていくことはないはずなので、またたびに依存性がないことがわかったのです。
猫はまたたびをかいでもストレス反応を示さない
猫はストレスを感じると、血中の「コルチゾール」と「グルコース」の数値が上昇します。そこで、この数値を通常時とまたたび反応後に測定しストレス反応を調べたところ、明白な数値の変化は見られず、またたびは猫にとってストレスを与えるものではないということが立証されました。
猫にまたたびを与えると何が起こるの?
猫にまたたびを与えると、体をすりつけたりごろごろと転がったり、よくなめたりするなどの「またたび反応」が起こります。
このような反応があらわれるのは、猫が嗅いだまたたびの成分が嗅覚を通して脳に作用し、幸せホルモンのβ-エンドルフィンが分泌されると考えられているから。これは人でいうならば、ランナーズハイのような感覚です。
ちなみに、約3割の猫はまたたびに反応しないといわれています。またたびに反応する猫としない猫の違いは、現在研究中です。
猫にまたたびを与える効果的なシーンは?
遊ばせるとき
またたびのニオイが刺激になり、遊びたい気持ちが高まることがあります。また、またたびのスプレーや粉末をおもちゃにかけたり、またたびの枝をおもちゃとして使ったりするのも効果的です。
新しいグッズに慣れさせたいとき
猫は警戒心が強い動物なので、見慣れないものや人には慣れるまで時間がかかることがあります。新しいグッズに早く慣れてもらいたいときは、またたびをかけると警戒心が緩和される場合も。
ストレスを解消させたいとき
またたびに反応して活発に動き回ることで、ストレスの解消につながります。お世話や通院など、やむを得ない理由で愛猫にストレスをかけてしまったときは、気分転換としてまたたびを与えてみてもいいでしょう。
愛猫を呼び寄せたいとき
愛猫を呼び寄せたいときや、通院などでキャリーケースに入ってほしいときなどに、愛猫を誘導するツールとしてもまたたびを利用できます。
またたびを与えるか与えないかは飼い主さんの自由ですが、与える際はうまく活用してみてくださいね。
お話を伺った先生/宮崎雅雄先生(岩手大学農学部教授 博士(農学) 獣医師)、上野山怜子さん(岩手大学大学院連合農学研究科生物資源科学専攻分子生体機能学研究室 博士3年)
参考/「ねこのきもち」2024年6月号『研究第一人者に、ずばり聞きました。 「猫にまたたび」与えていいの?』
文/東里奈
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性がない場合もあります。