お手入れ嫌いな猫へのブラッシングは、至難の業。しかし定期的なブラッシングは、猫だけではなく、飼い主さんにとっても利点があります。今回は、ブラッシングの手順や「保定」などのコツ、必要性、便利グッズ、さらに掃除テクニックについて解説します。
毛の長さ別!猫の効率的なブラッシング方法と頻度の目安
ここでは、ブラッシングの基本的なやり方をご紹介します。まずは、短毛タイプ・長毛タイプ共通の、効率よく抜け毛を除去するブラッシング方法から見ていきましょう。
換毛期におすすめ|猫のブラッシング方法(短毛・長毛共通)
使用するもの
・短毛……ラバーブラシ
・長毛……スリッカーブラシ(ピンが柔らかいソフトタイプが猫向き)、コーム
Step1
短毛・長毛ともに、首の後ろ→お尻をブラシでとかしていきます。
このとき、静電気が起こる場合は水分かブラッシングスプレーをプラスしましょう。
Step2
片前足を軽く持ち上げながら、脇→後ろ足をブラシでとかします。
Step3
首まわりをブラシでとかします。あごを軽く上げ、首の前から胸元に向かってとかしましょう。
Step4
しっぽをブラシでとかします。付け根から先端に向け一気にとかしましょう。しっぽは握らず、手を添えるだけでOKです。短毛はここで終了です!
長毛猫はさらにプラス|換毛期のブラッシング
Step1~Step4までの手順は同じ。長毛の猫はもう一手間かけてあげましょう。
Step5
より毛がほぐしやすいコームに変更し、脇の下→お腹・片前足を軽く持ち上げながらとかします。
Step6
内股をコームでとかします。根元までしっかりコームが入るよう、猫の片後ろ足を軽く持ち上げてください。
毛玉のほぐし方
毛が絡まっていたら、無理に引っ張るのはNG。毛玉ができている周辺の毛の束を取り、手で裂くように丁寧にほぐしてください。ほぐれたら、仕上げにコームで毛先から少しずつとかしていきます。
猫のブラッシング|毎日のお手入れ方法
毎日のお手入れには、ピンブラシを使う方法もおすすめです。短毛種なら、まずピンブラシで毛のもつれを取り、その後ラバーブラシまたは抜け毛ブラシで抜け毛を取り除けばOK。長毛種の場合は、同じようにピンブラシでブラッシングし、毛のもつれがひどいときや毛玉があるときは、皮膚にピンを当てないよう注意しながらスリッカーブラシでほぐしましょう。長毛種は毛が長いので、毛の根元までしっかりとかすには、ピンブラシよりコームのほうが使いやすい場合もあります。
猫のブラッシング頻度とやりすぎの目安は?
換毛期で長毛種は毎日、短毛種は2~3日に1回ほどを目安にしてください。スキンシップをかねて毎日行なっても構いません。ただし、ラバーブラシでのブラッシングをやりすぎると、生えている毛が抜けてしまったり毛づやが悪くなってしまうため、同じ場所のブラッシングは数回にとどめ、短毛種は5分以内で終わらせるようにしましょう。素早くブラッシングすることを心がけ、たとえ猫が嫌がっていなくてもほどほどで終了することが大切です。
嫌がる猫もこれでうっとり♪ブラッシングや保定のコツ
基本的な手順がわかったら、ブラッシングのコツを見ていきましょう!
猫が好きなスポットをマッサージ
顔まわりをなでて、軽くマッサージ。事前に手のひらを温めておくと、ぬくもりが伝わり猫が安心しやすくなります。ブラッシングの最中も、反対の手でなでながら頭~体へと自然な流れでとかしてあげましょう。
嫌がる猫には無理強いしない
ブラッシングが苦手な猫は、とかしながら「えらいね」など穏やかな声で猫が安心するように声をかけてあげましょう。人の手を気にしはじめたり、耳やしっぽが動きはじめたりしたらイヤイヤのサイン。そろそろブラッシングのやめどきです。
どうしても嫌がる猫には、手ぐし→歯ブラシ→コームやスリッカーなど段階をふんで、とかす感覚に慣れさせてあげてください。おやつなどで気をそらすのもアリです。
猫が安心する“保定ワザ”を使う!
「保定」とは、動物看護師さんが使うワザ。人と動物の安全を確保しながら、円滑に治療を行うために動物を押さえる動作を指す専門用語です。猫がブラッシングを嫌がる場合は、この保定を取り入れる手もあります。では、主な保定のやり方をご紹介します。
猫が安心するブラッシング保定<胸編>
猫が安心するブラッシング保定<足編>
猫が安心するブラッシング保定<しっぽ編>
猫が安心するブラッシング保定<かぶさりワザ編>
足で猫の体を固定し、上から覆いかぶさるようにすると、猫は「伏せ」の体勢になり、飼い主さんとの密着感もあるためおとなしくなりやすいようです。このとき、飼い主さんは少し腰を浮かし、猫に体重をかけないよう注意しましょう。後退りしたり、引っかいたりと、猫が予測不可能な動きをするのも防げます。
猫が安心するブラッシング保定<押さえワザ編>
動いている猫の体に、うしろから、肩、お尻の順にすばやく手を添え、ふわっと棒をつかむような感覚で、両手に均等な力を軽くくわえます。そのまま軽く押すようにして猫を押さえ込み、猫が「伏せ」の体勢になればOKです。
猫が安心するブラッシング保定<番外編>
母猫に首の根っこをくわえられる名残か、猫は首元をつかまれるとおとなしくなることがあります。お手入れをするときに、大きめのクリップで首元を挟むのも一案です。
※猫をクリップで挟む前に、まず自分の皮膚をクリップで挟んで力加減を試してみてください。
※首元をつかまれるのが苦手な猫もいるので、猫が嫌がったらクリップの使用をすぐにやめてください。
どのブラシを選べばいいの?おすすめブラッシンググッズ
どの猫にどんなブラッシンググッズが必要なのかは意外と悩みどころ。ここでは、ブラシの特徴について見ていきます。
おすすめブラシ|ラバーブラシ
小さな突起が付いたラバー(ゴム)製のブラシです。抜け毛を集め、取り除きやすいのがメリットといえるでしょう。さまざまなタイプがあり、程良くしなって体に沿わすように使用できるものや、皮膚にマッサージ効果を与えられるものも。短毛種用には、突起の短い手袋型のラバーブラシが便利です。
長毛猫におすすめブラシ|スリッカーブラシ
「く」の字に曲がった、細かい金属製のピンが密集してついているブラシです。抜けている毛を除去し、毛のもつれをほぐすことができます。猫にはピンのやわらかいソフトタイプがおすすめです。
おすすめブラシ|コーム
歯が一直線に並んでいるクシです。短毛種の仕上げや、長毛種の毛玉をほぐす際などに使います。目の細かいコームは、ノミ取り用として使います。
おすすめブラシ|獣毛ブラシ
豚の毛など獣毛が使用されているブラシです。毛のもつれをほぐす効果はなく、主に毛が弱い子猫や短毛の成猫の毛艶出しなどに使用します。
おすすめブラシ|ピンブラシ
皮膚を傷付けないよう、先端が丸くなっているものがおすすめです。短毛種・長毛種ともに、毛のもつれをとかすときなどに使い、皮膚へのマッサージ効果も期待できます。
おすすめブラシ|抜け毛ブラシ
文字通り抜け毛を取り除くためのブラシです。おもしろいほど抜け毛がとれ、非常に脱毛効果が高い一方、やりすぎると生きている毛が抜けてしまったり、健康な毛がちぎれてしまったりするおそれがあるので注意が必要です。
おすすめサポートグッズ
抜け毛対策サポートグッズとして、静電気や毛が舞うのを防ぐブラッシングスプレーや、毛玉や抜け毛の多い猫の吐き出し防止におすすめの毛玉除去剤などが挙げられます。
猫の病気予防にも!ブラッシングの効果と必要性
ここまではブラッシングのやり方を中心にご紹介してきましたが、そもそも猫にブラッシングは必要なのでしょうか。
抜け毛の予防
猫の毛は上毛と下毛に分かれており、それぞれが成長し生え変わっていくというサイクルを繰り返しています。猫は自分で毛づくろいを行ないますが、自分でなめて仕上げるセルフ・グルーミングだけでは手入れが行き届かないこともあります。
特に気を付けたいのが「換毛期」。気温が高くなると下毛が抜け落ちるようになり、換毛期に入った猫の抜け毛は、ほかの季節の数倍にもなります。もつれて大きな毛玉になったり部屋中に散乱したりするので、ブラッシングで抜け毛を予防しましょう!
病気の予防
セルフ・グルーミングでなめとった毛は、猫の体内に入ります。その毛は、ほとんどがウンチや吐き出しによって体外へ排出されますが、胃腸で停留してしまう場合もあります。この症状を「毛球症」とよび、塊の大きさによっては開腹手術が必要になることも。
ほかにも、抜け毛を大量に飲み込むことで胃炎や食道炎のおそれがあります。また、猫だけでなく人が猫アレルギーになるおそれも。定期的なブラッシングで抜け毛を事前にとりのぞいて、病気予防やアレルゲンを除去しましょう。
健康チェックができる
ブラッシングをしながら体をさわることによって、ケガや皮膚病などの体の異変の早期発見にもつながります。たとえば、ブラッシング中に大量の白い粉(フケ)があれば、病気のサインかもしれません。ほかにも、脱毛やノミ・ダニの確認などもブラッシングのついでに行うことができます。
猫のブラッシング後に毛が舞う……掃除テクで解消!
では最後にブラッシング後の掃除方法についてご紹介します。
高いところから掃除スタート
エアコンや照明のカサ、猫の通り道などの高い場所は、化繊はたきに抜け毛を吸着させましょう。また、カーペット地になっているキャットタワーは、厚手のゴム手袋で撫でるように抜け毛を集めるのがポイントです。
床は素材ごとに掃除機のかけ方を変える
掃除機が使える場所は、カーペット・フローリング・たたみなど種類ごとに、掃除機の動かし方を変えていきます。カーペットは毛足を起こしながら、フローリングやたたみは目に沿ってゆっくりとヘッドを動かしていきましょう。
溝やスキマの抜け毛は乾いた状態でかき出す
溝やスキマの凹凸のある場所は、ペンキ用ハケなどでかき出して掃除機で吸引しましょう。本の上やすだれ・ブラインドなどの抜け毛やほこりにも使えます!
ブラッシングは好き嫌いが分かれるお手入れのひとつ。ブラッシングが苦手な場合は、使用グッズを変えてみたり好きなスポットを研究して工夫してみると、うまくいくかもしれませんね。どうしても難しい場合はプロに頼むのもひとつの手です。
参考/「ねこのきもち」2016年1月号『上手な押さえ方なら、お手入れはもっとラクになる!プロの保定ワザ教えます』(監修:倉敷芸術科学大学生命科学部 動物生命科学科教員 同大学教育動物病院専任動物看護師 村尾信義先生)
「ねこのきもち」2016年7月号『愛猫のデータマイにゃんバーで病気を早期発見!見てわかるヘルスチェック』(監修:聖母坂どうぶつ病院獣医師 鵜飼佳実先生)
「ねこのきもち」2017年2月号『よかれとやっていることが、健康や関係性に影響することも やり過ぎると危険なお世話』(監修:聖母坂どうぶつ病院獣医師 鵜飼佳実先生)
「ねこのきもち」2017年3月号『シーン別にサインと予防策を紹介!噛む・引っかく される前にできること』(監修:もみの木動物病院副院長 日本獣医動物行動研究会幹事 村田香織先生)
「ねこのきもち」2017年4月号『猫もお部屋もスッキリ!換毛期にすること』(監修:ちば愛犬動物フラワー学園講師 CATオアシスオーナー 花島秀俊先生、CATオアシス店長 キャットグルーマー 鈴木美保さん、ベスト株式会社代表取締役 植木照夫さん)
「ねこのきもち」2018年2月号『丸ごとハッピーお手入れBOOK』(監修:モノカどうぶつ病院院長 小林清佳先生)
監修/加藤憲一先生(相模原プリモ動物医療センター院長)
文/takemori.m
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と一部写真に関連性はありませんので予めご了承ください。