猫がすりすりするしぐさは、見ていて微笑ましいですね。けれども、あまりにも頻繁にすり寄ってきたり、その延長で噛んでくるようだとちょっと困ります。猫はなぜすりすりしてくるのか、またその延長で噛んでしまう原因など、猫のすりすりに隠された謎について解説します。
「すりすり」に隠された猫の心理とは?
すりすりは甘え願望と信頼のあらわれ
猫のすりすりの裏に隠された気持ちとして、一番は「飼い主さんを信頼しているよ」という思いがあります。猫はもともと警戒心の強い生き物。飼い猫として家に迎え入れたばかりの頃は、警戒心からなかなか体を触らせてくれない子も多いです。人間と一緒に生活していくにつれ、「この人は安心できる。安全なんだな。」とわかってくると、自分の体を人間の体にこすりつけてくるようになります。
このすりすり行動は、心を許せる人間にしか見せません。毎日何度もすりすりしてくるようなら、その猫は完全に心を開いて安心している心理状態にあります。安心して甘えても平気なんだと、猫からの信頼を得ていると思って、飼い主さんとして自信を持って大丈夫です。
野良猫でもすりすりしてくる子がいる?
近所の野良猫にすりすりされたことあるけど、猫って警戒心強いんじゃないの?なぜ知らない人間にまですり寄ってくるの?と、矛盾を感じる方もいるかと思います。飼い主のいない野良猫が、すり寄ってくるのにも理由があります。
ごはんが欲しい
近所の人間から常日頃ごはんとなる食べ物を与えられていると、「人間にすり寄っていけばごはんがもらえる」と学習する猫も多いです。
甘えたい願望
野良猫は基本的に単独行動です。それでも子猫時代の名残から、「構ってもらいたい・甘えたい」という願望も起こります。
元来の人懐っこい性格
人間にも人見知りなどしないフレンドリーな性格の方がいるように、猫にも人にあまり警戒心を抱かない人懐っこい性格の子もいます。また、自分の体をすり付けることで匂いを残すマーキング行為をする子も。自分の匂いを付けて、安心したいという気持ちも含まれているのです。
すりすりの延長で噛んでくる!その原因とは?
すりすりの延長で噛んでくる猫は多いですが、猫に噛まれると結構痛いですね。できれば噛むのはやめてほしいもの。噛んでしまう背景には、猫のどんな気持ちが隠されているのでしょうか?
狩猟本能のあらわれ
猫に備わっている狩猟本能から、飼い主さんの手や指を噛んでしまうことも多いようです。猫は獲物を捕まえたあと、すぐに食べたりせず獲物で遊ぶという特徴があります。狩猟本能がはたらいた状態で、飼い主さんの手や指で遊ぼうとして噛んでしまいます。
甘えやじゃれたい気持ちのあらわれ
「甘えたい・じゃれたい」という気持ちのあらわれとして、すりすり行為の延長で噛んでくるケースが最も多いです。すりすりをするということは、猫がリラックスしている証拠。同時に飼い主さんともっと触れ合いたい、遊んでほしいという願望が湧き上がってきます。飼い主さんの手や指をおもちゃにして遊ぼうとした結果、噛んでしまうこともしばしばです。
ストレスや病気から苛立ってしまった
猫は気まぐれな性格の持ち主です。自ら寄ってきてすりすりしていたとしても、突然怒り出すこともあります。撫でられ方がしつこいと猫が感じた、体に痛みなどを伴う病気があってそこを触られて痛かった場合、ガブリと噛んでイライラを表現してくることがあります。
すりすりの延長で噛まれたときの対処法
猫のほうの事情もわかりますが、一緒に楽しく暮らしていくには飼い主さんとしても毅然とした態度で接しないといけません。噛まれて痛い思いをしたら、猫に対してどのように教えていくと良いのでしょうか?
猫の目をじっと見つめて「痛い!」と大声で伝える
すりすりの延長で噛まれたら、「痛い」と大きめの声に出して猫に伝えます。この時、猫の目をじっと見つめて視線でも訴えかけましょう。初めのうちはあまり効果が感じられないかもしれませんが、何度か繰り返すうちに猫もだんだんと理解してくるようになります。
噛まれる前に手や指を隠す
猫に噛まれそうになる前に、手や指を猫の目の前から隠すことも大切です。じゃれつく対象となる人間の手を噛まれる前に隠すことで、猫の行動がエスカレートするのを自然と抑えられます。また、噛まれそうになる前に猫のそばから立ち去るのも効果的です。
突然切れる「甘えたいスイッチ」に注意
じゃれついてきて構って欲しい様子を見せていたと思うと、突然スイッチが切り替わったようにツンとした態度になることがあります。これは猫の気持ちが遊びモードから通常モードに変わったサイン。飼い主さんとしては拍子抜けしてしまいますが、その際はなでたりし続けないことが大切です。人間に触られてしつこいと思った猫が、今度はイライラして噛み付いてくることもありますから、ここはクールに交わして遊びを中断しましょう。
ケース別「猫のすりすり」の原因
1:人間の足にまとわりつく
猫が人間の足にしつこくまとわりついてくる場合、不安感や寂しさを感じていることがあります。甘えたい気持ちもありますが、足にからまって自分の匂いを付けることで安心感を得たいという表れです。
ひとりで留守番をしている時間が長い猫は、特に足にからまってくることが多いようです。心を許せる、甘えさせてくれる飼い主さんが帰ってきた嬉しさから、「おかえり~寂しかったよ~。構って!」という気持ちを込めてすり寄ってきます。
2:顔を押し付けるようにすりすりしてくる
猫が自分の顔や頭を押し付けるかのようにすりすりするのは、安心感を得たい気持ちの表れです。猫の額あたりには、匂いを分泌する器官があって、周りが自分の匂いで満たされると、猫は大きな安心感を抱きます。マーキングをするように顔や頭を押し付けてすりすりするのは、猫にとって大切な人や物という意味を持っているのです。
3:物の角にすりすりする
飼い主さんだけでなく、家の柱や家具などにもすりすりしますね。猫には、お尻側にも匂いを発する器官があります。この場合もマーキング行為として、周りを自分の匂いで満たして安心したい気持ちからの行動です。
猫に「すりすりされない人」の共通点とは?
ごくたまに、「猫や動物がまったく自分に寄ってこない」と嘆く人もいますが、そういう人には何か特徴があるのでしょうか?すりすりされまくって困るという人も多いなか、すりすりされなくて寂しいと感じている人もいるようです。
すりすりしてもらえない人の共通点の秘密は、ぜひこちらの記事も参考に!
猫のすりすりはコミュニケーションを深めるチャンス
猫のすりすり行為に隠された意味、理解していただけましたか?猫がすり寄ってくる時は、猫との絆を深める絶好のチャンスです。忙しいとなかなか構ってあげることができませんが、飼い主さんを信頼してるという気持ちをめいいっぱいアピールしてるんです!
すりすりの延長で噛んできたら、毅然とした態度で噛んではいけないことを教えてあげましょう。皆さんの素敵な猫ライフを応援しています。
監修/佐藤貴紀先生(目黒アニマルメディカルセンター 隅田川動物病院 循環器担当)