多頭飼いを始める理由は人によりさまざまですが、なかには猫たちが良好な関係を築けず、多頭飼いが失敗してしまうケースも。今回は、猫の多頭飼いに必要な準備や顔合わせ方法をはじめ、猫同士の相性の見極め方、相性が悪い場合の対応方法について解説します。
猫を多頭飼いするのに必要な準備
多頭飼いをするのが計画的であれ突発的であれ、猫たちが快適に暮らすためにも、以下の準備は必ず行うようにしてください。
逃走距離がとれる空間を用意
猫には逃走距離と呼ばれる、猫同士が快適に過ごすために必要な、半径2mほどの距離感(テリトリー)があるといわれています。天井に空間を広げられるキャットタワーなども利用しながら、半径2m分の距離をとれる空間を確保してあげましょう。
「猫の数+1」個分のトイレを用意
自分が使っているトイレからほかの猫のニオイがしたり、トイレが汚れていたりすると猫は排泄を我慢したり、トイレではないところに排泄をするようになってしまいます。猫のトイレは基本共有にせず、「猫の数+1」個分を用意することが大切です。
ぞれぞれの猫に合った食器・フードを用意
食器が共有だと、どの猫がどれだけ食べたのか把握することができず、食べすぎや横取りが起きるおそれがあります。また、必要なエサの種類や量は猫によって異なるため、1匹ずつ食器を用意し見守って、しっかり管理する必要があります。
健康チェックや去勢・避妊手術をしておく
猫同士でウイルスやノミ・ダニなどがうつらないよう、健康チェックやワクチン接種を忘れずに行っておきましょう。
また、性別の組み合わせによっては、発情時期に交尾行動や喧嘩などが起きてしまうため、妊娠を望まないのであれば、あらかじめ去勢・避妊手術を行っておくことをおすすめします。
先住猫と新入り猫の正しい顔合わせの仕方
猫同士の第一印象が悪いと喧嘩が多くなるとの調査報告もあるほど、猫にとって顔合わせは重要です。以下のステップを踏みながら、慎重に行いましょう。
顔合わせは1~2週間かけて行う
猫は新しい環境に慣れるまでに3日ほどかかるといわれています。新入り猫を新しい環境に慣れさせるだけでなく、前述したワクチン接種などの準備を進めるうえでも、顔合わせは最低でも1~2週間かけて余裕をもたせながら行ってください。
ステップ1.別々の部屋で生活させる
お互いの存在に慣れないうちに対面させると、喧嘩や威嚇などの敵対行動をとりかねません。まずは1週間くらい別々の部屋で生活させ、相手のニオイがするタオルなどを使って、お互いの存在を意識させることから始めましょう。
ステップ2.ケージ越しに対面させる
お互いのニオイに警戒しなくなったら、猫たちの反応を見ながらケージやキャリー越しに対面させてみましょう。空腹時にごほうびのおやつを与えながら行うと、いい印象を抱きやすくなるのでおすすめですよ。
ステップ3.様子を見ながら実際にふれあわせる
ケージやキャリー越しの対面に慣れたら、飼い主さんの監視のもと、実際にふれあわせましょう。どちらかが威嚇した場合はすぐに引き離し、徐々に同じ空間で過ごす時間を増やしてみてください。
なかにはこんな失敗エピソードも……
一度顔合わせを失敗してしまうと、関係性を修復するのが難しい場合も。ここでは、先住猫・アーちゃん(メス・12才)と新入り猫・シーちゃん(メス・3才)の飼い主さんから寄せられた、顔合わせについての失敗エピソードをご紹介します。
「ねこのきもち」2017年9月号『今のうちに考えてみて 2匹目を迎える前に知っておきたい3つのこと』より
ひどい猫カゼの子猫・シーちゃんを保護した飼い主さん。
しかし、飼い主さんのおうちには「猫嫌い」な先住猫・アーちゃんがいました。アーちゃんは、外猫を見ても怒るタイプのコだったので、2匹目の猫を迎え入れることは考えていなかったそう。
やむにやまれず迎え入れたシーちゃん。お世話をするうちに、飼い主さんはシーちゃんを「うちのコにする!!」と決意します。
そしてある日、アーちゃんとシーちゃんを対面させていたときに「事件」が……↓↓
飼い主さんが目を離した隙に、シーちゃんがアーちゃんを怒らせてしまったのです!
3年が経ったいまでも、緊張状態が続いているアーちゃんとシーちゃんの関係性。飼い主さんは、「あのとき目を離さなければ…!」と悔やんでいるのだそうです。
猫の顔合わせについては、以下の記事も参考にしてみてくださいね。
先住猫のストレス対策も忘れずに!
相手の存在に慣れたからといって、先住猫にとって新入り猫は、自分の縄張りにいきなり入ってきた侵入者ということには変わりありません。新入り猫との生活に慣れないうちはストレスを感じてしまうことも考えられるため、以下のようなストレス対策を行うことが大切です。
先住猫の生活リズムは崩さない
環境の変化が苦手な猫にとって、生活リズムを崩されることもストレスになります。新入り猫とふれあわせるときも、新入り猫との生活をスタートさせたあとも、先住猫の今までの生活リズムを崩さないよう気をつけてください。
お世話は先住猫を優先
新しい環境に早く慣れてもらおうと新入り猫にかかりっきりになってしまうと、先住猫が新入り猫にやきもちを焼いて喧嘩になってしまうおそれも。お世話やスキンシップをするときは、まずは先住猫から行うようにしましょう。
猫同士の相性が悪いときはどうすべき?
前述したステップを踏めばすべての猫が仲良く暮らせるかというと、残念ながらそうではありません。猫同士の相性のよしあしによっては、一緒に暮らすのが困難な場合も。では、猫同士の相性が悪かった場合、飼い主さんはどのような対応をとるべきなのでしょうか。
そもそも猫の相性のいい・悪いはどう見分ける?
そもそも猫は、仲のいい猫同士であっても喧嘩のような激しいじゃれあいをするため、一見しただけでは相性のよしあしがわかりづらいです。相性がいいかどうかの判断基準として、以下のような行動が見られるか確認してみてください。
相性がいい場合に見られる猫たちの行動
猫同士の相性がいいと、お互いに毛づくろいをしあう「アログルーミング」や、体をスリスリとこすりつける「アロラビング」といった親和行動が見られます。
互いの鼻先をつけてあいさつしたり、近い距離でくつろいで過ごしたりするのも、仲のいい猫同士ならではの行動といえます。
相性が悪い場合に見られる猫たちの行動
一方、相性の悪い猫同士では、威嚇したり急いでその場を離れたりと、「相手を受け入れない意思表示」をしていることが多いです。
激しい敵対行動をしていなくても、猫の間に微妙な距離感がある、相手の前にまったく姿を見せないなどの行動が見られるようであれば、あまり猫の仲はよくないといえそうです。
猫の相性のよしあしの傾向や見極め方は、以下の記事でも詳しく解説しているのであわせて確認してみてください。
対応策①別スペースで生活させる
相性の悪い猫同士は無理に同じ空間にいさせるよりも、生活スペースをわけてしまったほうが落ち着いて暮らせる可能性が高いです。次のようなストレスサインが見られたら、部屋をわけることを検討してください。
- ほかの猫に対して攻撃する、うなる、威嚇する
- フードを食べなくなる
- 排泄を我慢する
- 毛をむしる、毛をなめすぎて脱毛する など
対応策②場所や部屋を交代で使わせる
猫は自分のニオイが混ざったものに安心感を覚えやすいので、猫がよくいる部屋や場所にお互いのニオイをつけさせておくと、徐々に相手を受け入れるようになる可能性があります。
日中は先住猫、夜間は新入り猫といった具合に、交代で同じ場所や部屋を使わせる方法を試してみてはいかがでしょうか。
時間をおいて再度顔合わせしてみる
一概にはいえませんが、少し期間や時間をおいてから再度顔合わせをすることで、徐々に敵対行動が見られなくなる場合もあります。とはいえ、猫の歩み寄り次第なところもあるので、猫の反応や様子を見ながら無理のない範囲で行うことをおすすめします。
猫たちにストレスを与えない飼い方を検討しよう!
猫にも相性や向き・不向きがあるため、どれだけしっかり準備したとしても、多頭飼いに失敗してしまうケースはゼロではありません。どうしても猫同士の相性が悪い場合は無理に一緒にいさせるのではなく、部屋をわけるなど飼い主さんができる限りのサポートをしてあげてくださいね。
参考/「ねこのきもち」2017年9月号『今のうちに考えてみて 2匹目を迎える前に知っておきたい3つのこと』
監修/ねこのきもち相談室獣医師
イラスト/上野うね
文/pigeon
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。