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猫が「慢性腎臓病」と診断されたらどうすべき? 獣医師が解説します!

猫がかかりやすい病気の事は、飼い主さんならよく知っておきたいもの。この記事ではそんな病気の解説のほか、実際に体験した飼い主さんの「気になりながら聞けずにいた疑問」について重本先生が回答! 

今回は愛猫が「慢性腎臓病」にかかったときに、獣医師とどんなコミュニケーションをとればいいのかをご紹介します。

重本 仁 先生

 獣医師
 王子ペットクリニック院長
 宮崎大学農学部附属動物病院所属

 日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医臨床病理学研究室卒業
 現在 日本獣医生命科学大学獣医外科学教室研究生
 宮崎大学大学院医学獣医学総合研究科(博士課程)
 宮崎大学と共同で先天性門脈体循環シャントの腹腔鏡での術式の研究と開発を行う

●資格:獣医師

●所属:日本小動物内視鏡推進連絡会推進委員/日本獣医再生医療学会理事/日本獣医内視鏡外科研究会東京都獣医師会北支部副支部長 防災/獣医神経病学会日本獣医がん学会日本獣医麻酔外科学会日本小動物歯科研究会/光線温熱療法(PHT)研究会/日本小動物血液透析協会(JSAHA)

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シニアの猫に症状が出やすい腎臓の機能が低下する病気

腎臓を形成するネフロンという組織が壊れると、老廃物を体外に排出する機能が低下します。一度壊れたネフロンは再生することがないため、症状は徐々に進み続けます。これが慢性腎臓病です。
猫がかかりやすい理由は、もともと飲水量が少なく尿が濃いうえ、タンパク質を主食とする ので、代謝の過程で多くの老廃物をつくり、腎臓に負担をかけやすいからです。それに加え近年、AIMというアミノ酸が関連しているという話も。AIM は腎臓の尿細管の掃除を促してくれる物質ですが、猫は人と比べると腎臓での作用が弱いのだとか。つまり、腎臓の小さな尿の通り道が詰まっても掃除をする機能が弱いのです。
飼い主さんは、代表的な症状 である多飲多尿や痩せてくるなどで、この病気に気付くことが多いでしょう。治療は、進行具合により、食事療法から始めたり、皮下輸液で脱水症状を緩和したりするのが一般的です。
画像/ねこのきもち2019年10月号『猫の病気、そこが知りたい!』
ろ過機能を失った腎臓に代わって血液を浄化する人工透析。人の腎臓病の治療として広く知られていますが、近年、動物用の血液透析装置を導入する動物病院も。

慢性腎臓病でこんな体験をしました

8才くらいのときに、愛猫のオシッコの量が増えトイレ砂の塊が大きいリンゴくらいに。 また、飲水量も増えていたので受診しました。血液検査をしたところ、「腎臓の数値が少し悪いくらいなので腎臓病の初期だけど、今は特別な治療はしなくていい」と言われ、療法食を処方されました。

東京都 A・Tさん かあくん(オス・11才)
その後、心配なことがあって受診しても、触診などだけで検査は勧められなかったため、別の動物病院を受診することに。 そこでは、最初にスクリーニング検査を受け、あらためて血液検査をしました。すると、一度目の検査より数値がさらに悪くなっていたため、さらに腎臓の機能の状態を調べる血液検査「SDMA」もしました。現在は、機能の低下を抑止する「ラプロス」という薬を1カ月くらい試し、クレアチニンの数値の様子を見ているところです。
画像/ねこのきもち2019年10月号『猫の病気、そこが知りたい!』
先住猫を慢性腎臓病で亡くしているTさん。“かあくん”はもともと尿道が細く、尿石症を患っていたとこともあり、この病気にはとくに注意していたそう。

飼い主さんからの疑問「そこが知りたい」

最初の病院ではくわしい検査や治療を勧められたり「ステージ2」の状態だったことを伝えられたりしませんでした。
愛猫が慢性腎臓病にかかったら獣医師とどんなコミュニケーションをとったらいいでしょうか?

ステージを確認し必要な検査をしてもらいましょう

現在、猫の慢性腎臓病は「IRIS」という基準によってステージ分けし、それぞれの段階に合わせて治療をするのが一般的。「ステージ2」は初期に分類され、療法食を与えることからスタートします。ステージ分けは、血液検査、尿の比重、血圧、尿タンパク、SDMAを調べて判断します。腎臓の数値が少しでも高ければこれらの検査に加えて、エコー検査などもします。
上記のことをふまえ、愛猫が慢性腎臓病だと診断されたら、獣医師に進行具合であるステージを確認すると、その後の治療がスムーズだと思います。

IRISによる慢性腎臓病のステージ分け

画像/ねこのきもち2019年10月号『猫の病気、そこが知りたい!』
※クレアチニンの数値にかかわらず、SDMAが>25ならステージ3、>45ならステージ4となります。慢性腎臓病のステージ分けは、これらの数値のほか、尿の比重や血圧などで総合的に判断します。
先生、ご回答いただきありがとうございました。
ご紹介した飼い主さんのエピソードは、あなたの愛猫に起こる可能性もあります。いざというときに思い出し、役立ててくださいね。
お話を伺った先生/重本 仁先生(王子ペットクリニック院長)
参考/2019年9月号『猫の病気、そこが知りたい!』
文/浪坂一
イラスト/上垣厚子
※この記事で使用している画像は2019年9月号『猫の病気、そこが知りたい!』に掲載されているものです。
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