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猫の体にしこり(腫瘍)が…肥満細胞腫ってどんな病気? 獣医師が解説します!

猫がかかりやすい病気のことは、飼い主さんならよく知っておきたいもの。この記事ではそんな病気の解説のほか、実際に体験した飼い主さんの「気になりながら聞けずにいた疑問」について重本先生が回答! 
今回は愛猫にできたしこり(腫瘍)が「肥満細胞腫」と診断されたときの、飼い主さんの体験談から、遺伝との関係性をご紹介します。

重本 仁 先生

 獣医師
 王子ペットクリニック院長
 宮崎大学農学部附属動物病院所属

 日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医臨床病理学研究室卒業
 現在 日本獣医生命科学大学獣医外科学教室研究生
 宮崎大学大学院医学獣医学総合研究科(博士課程)
 宮崎大学と共同で先天性門脈体循環シャントの腹腔鏡での術式の研究と開発を行う

●資格:獣医師

●所属:日本小動物内視鏡推進連絡会推進委員/日本獣医再生医療学会理事/日本獣医内視鏡外科研究会東京都獣医師会北支部副支部長 防災/獣医神経病学会日本獣医がん学会日本獣医麻酔外科学会日本小動物歯科研究会/光線温熱療法(PHT)研究会/日本小動物血液透析協会(JSAHA)

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「肥満細胞」が腫瘍化する病気

「肥満細胞腫」は、肥満細胞と呼ばれる細胞が腫瘍化する病気で、皮膚に発生する「皮膚型」と内臓に発生する「内臓型」があります。

「皮膚型」には中高齢の猫に多い「肥満細胞型」と、若齢の猫に多い「異形型」があります。
前者は、細胞が成熟した「高分化型」なら良性に近く、未成熟な「未分化型」なら悪性度が高くなりがちです。後者は、自然に小さくなる傾向があります。

「皮膚型」は、皮膚に脱毛を伴うしこりができるので気付きやすいでしょう。
一方、「内臓型」は比較的悪性度が高いとされ、中高齢の猫に多く脾臓にできる「脾臓型」と、高齢の猫に多く小腸などの消化器にできる「消化器型」があります。元気がなくなったり、よく吐いたりするなどの一般的な症状で受診して初めてわかることが多いでしょう。

治療は、「皮膚型」「内臓型」に関わらず手術で腫瘍を切除するのが一般的ですが、全身に転移している場合は化学療法や放射線治療などを行うこともあります。

画像/ねこのきもち2019年11月号『猫の病気そこが知りたい』
診断方法は、腫瘍やリンパ節、脾臓、消化管に細い針を刺して細胞を採取し、顕微鏡で見る「細胞診」という方法が一般的。写真は、「肥満細胞腫」の猫から採取した肥満細胞(〇印)で、顆粒が入っているのが特徴的です。

画像/ねこのきもち2019年11月号『猫の病気そこが知りたい』
切除手術は、腫瘍ができた箇所にもよりますが、再発防止のために腫瘍(〇印)のまわりの皮膚も広範囲にわたり切除します。

肥満細胞腫でこんな体験をしました

昨年の夏、下の左犬歯そばの口唇に直径3ミリほどの小さなできものを発見。
少し腫れているくらいだったので様子を見ていたところ出血。不安になり受診すると
肥満細胞腫と診断されて手術をすることに。
現在も経過観察中で2カ月に一度のペースで受診しています。

神奈川県 M・Kさん ななみちゃん(メス・8才/メインクーン)
腫瘍の治療に定評がある動物病院を探して連れて行きました。診断の結果、「肥満細胞腫」とわかり、切除手術をすることに。獣医師から「口唇の粘膜にできるのはまれなタイプ」と言われ、手術で切除したものを病理検査にもまわしました。結果が悪性だったこともあり、手術から約10カ月経ちますが現在もなお通院を継続。再発や転移がないか細胞診や超音波検査などを定期的に受けています。
画像/ねこのきもち2019年11月号『猫の病気そこが知りたい』
画像/ねこのきもち2019年11月号『猫の病気そこが知りたい』
病理検査結果報告書にも、まれなタイプのことが記入されている(写真上)。今では傷もほとんどわからないとか(写真下)

飼い主さんからの疑問「そこが知りたい」

獣医師から、口唇の粘膜にできたまれな肥満細胞腫と言われましたが、
どんなタイプなのでしょうか?
遺伝が原因だったりするのでしょうか?

比較的悪性度が高いとされています。原因は遺伝性ではないでしょう

口唇の粘膜にできるのは、「皮膚型」のなかでもまれで、悪性度が高い傾向に。粘膜にできていることから転移の可能性は高いかもしれません。また、すでに「内臓型」のものが、口唇に転移した可能性もあります。定期健診をこのまま続けることが大切です。
原因ですが、遺伝の可能性はありません。ウイルス説やシャム猫に多い説などもありますが、実際にはわかっていないのが現状です。
イラスト/上垣厚子
先生、ご回答いただきありがとうございました。
ご紹介した飼い主さんのエピソードは、あなたの愛猫に起こる可能性もあります。いざというときに思い出し、役立ててください。
お話を伺った先生/重本 仁先生(王子ペットクリニック院長)
参考/ねこのきもち2019年11月号『猫の病気そこが知りたい』
文/浪坂一
イラスト/上垣厚子
※この記事で使用している画像は2019年11月号『猫の病気そこが知りたい』に掲載されているものです。
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