猫と暮らす
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【獣医師監修】猫に煮干しを与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説
煮干しには猫の体によい栄養素がたっぷり含まれているので、猫は適量であれば煮干しを食べても大丈夫です。ただし、どんなに体によいものでも、食べ過ぎればかえって健康を害することに。猫にとってプラスになる煮干しの栄養価と、与える際の適量や注意点について解説します。
佐野 忠士 先生
酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授
酪農学園大学附属動物医療センター集中治療科診療科長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了
北里大学獣医畜産学部および同大学獣医学部勤務
日本大学生物資源科学部獣医学科勤務
●資格:獣医師/博士(獣医学)/世界的獣医心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER インストラクター)/CCRP
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本獣医学会/日本獣医師会/日本動物リハビリテーション学会/動物臨床医学研究所/日本麻酔科学会/日本臨床モニター学会
●主な診療科目:麻酔科/集中治療科
●書籍:『asBOOKS チームで取り組む獣医師動物看護師のためのICU管理超入門』/『as BOOKS チームで取り組む獣医師・動物看護師のための輸液超入門』/『動物看護師のための麻酔超入門・改訂版』 など多数
猫に煮干しを与えるときは与える量に要注意
一方、獣医師の間では「煮干しは与えてよい」「煮干しは与えるべきではない」と意見が分かれているという状況があります。それは、猫が欲しがるままに与えることで、ミネラルの過剰摂取になったり、塩分過多になったりする心配があるからです。
煮干しを愛猫のために役立てるなら、飼い主さんが正しく煮干しの栄養価を理解し、与える際の適量や与え方を知っておくことが大事なのです。
煮干しのおもな栄養素|各種のミネラルと脂質が豊富で高カロリー
エネルギー | 298kal |
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水分 | 15.7g |
タンパク質 | 64.5g |
脂質 | 6.2g |
炭水化物 | 0.3g |
灰分(無機質) | 13.3g |
文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照
猫が煮干しを食べるメリット|歯や骨の健康。貧血や動脈硬化の予防にも期待
カルシウム|丈夫な歯や骨をつくり筋肉をスムーズに動かす
カルシウムは、骨や歯を構成すると同時に、血液や体液の中で、同じミネラルの仲間である「リン」とつねにバランスをとりながら、体のさまざまな機能を正常に保っています。食べ物や病気によってカルシウムとリンのバランスが崩れてカルシウムの量が少なくなると、骨密度が低下して骨がもろくなり、骨折しやすくなる心配があります。
さらに、カルシウムには筋肉をスムーズに動かす働きもあるので、いつまでも愛猫に元気に活動してもらうためには、つねに適正な量のカルシウムを摂取させることが大事です。
ふだんから適量のキャットフード(総合栄養食)を主食として与えていれば、カルシウムが不足することはありませんが、煮干しでカルシウム不足を補うのもよいでしょう。
マグネシウム|心臓の働きには不可欠、ただし尿路結石には注意
ただし、マグネシウムを多量に摂取すると「ストルバイト結石」を形成しやすくなるといわれています。尿路結石の既往がある猫は、マグネシウムを多く含む食べ物には注意が必要です。
鉄分|貧血の予防
ふだん総合栄養食のキャットフードを与えていれば、鉄分不足になることはまずありませんが、手作りご飯を与えている場合は不足することがあるかもしれません。鉄分が豊富な煮干しで栄養補給を図るのもひとつの方法です。
タウリン|コレステロールや中性脂肪の低下
猫にとって、タウリンは食べ物から摂り入れなければならない必須アミノ酸。体内でタウリンを合成することができる人間や犬と違って猫は体内で合成できないのでキャットフードには必ずタウリンが含まれています。キャットフードを与えている限り、タウリンが不足することはまずありませんが、手作りご飯の場合は、煮干しで補給するというのもひとつの方法です。
DHA・EPA|血液がサラサラに
オメガ3系不飽和脂肪酸を摂取することで、加齢とともに発症のリスクが上がる腎臓病や心臓病、関節障害、皮膚炎などを予防する効果が期待されます。
猫が煮干しを食べるデメリット|過剰摂取は体調不良の原因に。アレルギーにも注意
塩分|塩分過多は高血圧の原因。心臓や腎臓に負担
そもそも猫は加齢とともに腎臓の機能が衰えて腎臓病を発症するリスクが高くなる動物なので、食事からの塩分摂取量によってそのリスクが高まらないよう、飼い主さんが気をつけてあげる必要があります。
頻繁に煮干しを与えている場合は、塩分やミネラル摂取が過剰となる可能性が高いので、腎臓病や尿路下部疾患のリスクも高くなることを覚えておきましょう。そして、排尿の様子、尿の量や色など見た目に異常がなくても、こまめな健診で各数値をチェックすることをおすすめします。「若いから大丈夫」といった根拠のない安堵は禁物です。少なくとも1年に1回、もし可能であれば1年に3〜4回の健診を心がけてください。
ミネラル|過剰摂取でバランスが崩れると体調不良や下部尿路疾患の原因に
猫が煮干しを過剰摂取すれば、ミネラルバランスが崩れ、腎臓に負担をかける心配があります。さらに、リン、マグネシウム、シュウ酸の過剰摂取は、尿路結石の原因にも。結石ができれば、石が膀胱の粘膜を傷つけ、膀胱炎を引き起こすことにもなりかねません。結石や膀胱炎は、激しい痛みを伴う病気です。愛猫をそうした苦しい病気から守るためにも、ミネラル豊富な煮干しを過剰に与えないよう注意しましょう。
DHA・EPA|過剰摂取で黄色脂肪症の恐れ
タンパク質がアレルギー症状を引き起こすことも
「猫は煮干しが好き」という思い込みでたくさん与えるのはよくありません。まず少し与えてみて、食べたあとに皮膚の痒みや湿疹、目の充血、嘔吐、下痢などのアレルギー症状が起こらないことを確認してから、次を与えるようにしてください。もし、何らかの症状が見られたら、煮干しを与えるのは止め、獣医師の診察を受けてください。
猫に煮干しを与えるときの注意ポイント|ペット用の減塩・無塩を選び、必ず塩抜きを
与えてよい部位
与えるときの適量
また、猫の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。
猫の体重目安 | 1日あたりの摂取可能目安 |
---|---|
4~5kg | 8~9g(2.5尾~3尾) |
※大きめの煮干し1尾=3gとして計算
※数値は、避妊・去勢済みの猫で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出
調理方法
塩抜きの方法は、サッとお湯に潜らせて水につけてから水気をよく拭けばOK。小さく刻んでからご飯にトッピングすれば、喉に突き刺さる心配がないでしょう。
猫に煮干しを与えるなら、過剰摂取にならないように気をつけよう
なお、キャットフードによっては、猫が水を飲むようにナトリウムを多めに入れているタイプもあるので、キャットフードの塩分(ナトリウム)量を確認しておくと安心です。猫に煮干しを与えるときは、無塩のペット用であっても、必ず塩抜きをしましょう。
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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