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【獣医師監修】猫に煮干しを与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説

煮干しには猫の体によい栄養素がたっぷり含まれているので、猫は適量であれば煮干しを食べても大丈夫です。ただし、どんなに体によいものでも、食べ過ぎればかえって健康を害することに。猫にとってプラスになる煮干しの栄養価と、与える際の適量や注意点について解説します。

佐野 忠士 先生

猫に煮干しを与えるときは与える量に要注意

ドライイワシ
key05/gettyimages
猫用のおやつとして煮干しが販売されているように、煮干しはカルシウムやマグネシウム、鉄分などのミネラルが豊富で、煮干しを食べることで骨を強くしたり、貧血を予防したりといったさまざまな効果が期待できます。さらに、煮干しには猫の体内では合成できず、食事として取り入れなければならない「タウリン」という栄養素も豊富に含まれています。タウリンが欠乏すると、猫の健康にさまざまな悪影響が出る可能性があるので、手作りのご飯を与えている場合は、煮干しを摂り入れるのもよいかもしれません。

一方、獣医師の間では「煮干しは与えてよい」「煮干しは与えるべきではない」と意見が分かれているという状況があります。それは、猫が欲しがるままに与えることで、ミネラルの過剰摂取になったり、塩分過多になったりする心配があるからです。
煮干しを愛猫のために役立てるなら、飼い主さんが正しく煮干しの栄養価を理解し、与える際の適量や与え方を知っておくことが大事なのです。

煮干しのおもな栄養素|各種のミネラルと脂質が豊富で高カロリー

差し出された煮干しの匂いを嗅いでいる茶&白の猫顔アップ
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
煮干しに含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー298kal
水分15.7g
タンパク質64.5g
脂質6.2g
炭水化物0.3g
灰分(無機質)13.3g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

猫が煮干しを食べるメリット|歯や骨の健康。貧血や動脈硬化の予防にも期待

飼い主が手に持っている煮干しを舌なめずりして眺めている黒い猫
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
煮干しには猫の体を健康に保つのに役立つ栄養素がたくさん含まれています。おもな栄養素とその役割を紹介します。

カルシウム|丈夫な歯や骨をつくり筋肉をスムーズに動かす

煮干しにはカルシウムが豊富に含まれています。
カルシウムは、骨や歯を構成すると同時に、血液や体液の中で、同じミネラルの仲間である「リン」とつねにバランスをとりながら、体のさまざまな機能を正常に保っています。食べ物や病気によってカルシウムとリンのバランスが崩れてカルシウムの量が少なくなると、骨密度が低下して骨がもろくなり、骨折しやすくなる心配があります。

さらに、カルシウムには筋肉をスムーズに動かす働きもあるので、いつまでも愛猫に元気に活動してもらうためには、つねに適正な量のカルシウムを摂取させることが大事です。

ふだんから適量のキャットフード(総合栄養食)を主食として与えていれば、カルシウムが不足することはありませんが、煮干しでカルシウム不足を補うのもよいでしょう。

マグネシウム|心臓の働きには不可欠、ただし尿路結石には注意

煮干しはマグネシウムも豊富です。マグネシウムは、神経の伝達や筋肉の収縮に必要なミネラルで、心臓の正常な働きになくてはならないものです。また、丈夫な歯や骨を維持するのに欠かせない栄養素でもあります。

ただし、マグネシウムを多量に摂取すると「ストルバイト結石」を形成しやすくなるといわれています。尿路結石の既往がある猫は、マグネシウムを多く含む食べ物には注意が必要です。

鉄分|貧血の予防

鉄は、赤血球の中のヘモグロビンを構成する成分で、酸素を全身に運搬する役割があります。鉄が不足すると、赤血球が十分につくれないために、全身の器官や筋肉に酸素が行き渡らない「貧血」状態になります。

ふだん総合栄養食のキャットフードを与えていれば、鉄分不足になることはまずありませんが、手作りご飯を与えている場合は不足することがあるかもしれません。鉄分が豊富な煮干しで栄養補給を図るのもひとつの方法です。

タウリン|コレステロールや中性脂肪の低下

煮干しに含まれる栄養成分「タウリン」は、タンパク質が分解される過程で生成される物質です。コレステロールや中性脂肪を低下させたり、心臓や肝臓の機能を向上させたり、視力の低下や動脈硬化を抑制したりするなど、さまざまな効果があるといわれています。

猫にとって、タウリンは食べ物から摂り入れなければならない必須アミノ酸。体内でタウリンを合成することができる人間や犬と違って猫は体内で合成できないのでキャットフードには必ずタウリンが含まれています。キャットフードを与えている限り、タウリンが不足することはまずありませんが、手作りご飯の場合は、煮干しで補給するというのもひとつの方法です。

DHA・EPA|血液がサラサラに

魚類である煮干しには、DHA(トコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などのオメガ3系不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。DHAは、脳の働きを正常に保つ働き、EPAには血液が固まるのを抑えて血栓ができるのを予防する働きがあります。

オメガ3系不飽和脂肪酸を摂取することで、加齢とともに発症のリスクが上がる腎臓病や心臓病、関節障害、皮膚炎などを予防する効果が期待されます。

猫が煮干しを食べるデメリット|過剰摂取は体調不良の原因に。アレルギーにも注意

背伸びをして煮干しに猫パンチをしようとしているスコティッシュフォールド
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
猫の体によい栄養素が豊富な煮干しですが、与える量や猫の体調によってはマイナスになる要素もあります。愛猫に煮干しを与える前に、以下をチェックしてください。

塩分|塩分過多は高血圧の原因。心臓や腎臓に負担

イワシの稚魚を乾燥させた煮干しには、海水の塩分が豊富に含まれているので、煮干しを与え続けると塩分の過剰摂取につながります。猫が塩分を過剰に摂取すると、喉が渇いて水分を多く飲むようになります。すると、血液中の水分量が増え、血圧が上がり、心臓や腎臓に負担をかけることになるのです。

そもそも猫は加齢とともに腎臓の機能が衰えて腎臓病を発症するリスクが高くなる動物なので、食事からの塩分摂取量によってそのリスクが高まらないよう、飼い主さんが気をつけてあげる必要があります。

頻繁に煮干しを与えている場合は、塩分やミネラル摂取が過剰となる可能性が高いので、腎臓病や尿路下部疾患のリスクも高くなることを覚えておきましょう。そして、排尿の様子、尿の量や色など見た目に異常がなくても、こまめな健診で各数値をチェックすることをおすすめします。「若いから大丈夫」といった根拠のない安堵は禁物です。少なくとも1年に1回、もし可能であれば1年に3〜4回の健診を心がけてください。

ミネラル|過剰摂取でバランスが崩れると体調不良や下部尿路疾患の原因に

煮干しに含まれるカルシウムやマグネシウム、鉄などのミネラルは、それぞれがほかのミネラルと助け合って働きます。それらのバランスが崩れると、ほかのミネラルの働きを低下させることもあるので、個々の適正な量を摂取すると同時に、バランスを保つことが大事になります。

猫が煮干しを過剰摂取すれば、ミネラルバランスが崩れ、腎臓に負担をかける心配があります。さらに、リン、マグネシウム、シュウ酸の過剰摂取は、尿路結石の原因にも。結石ができれば、石が膀胱の粘膜を傷つけ、膀胱炎を引き起こすことにもなりかねません。結石や膀胱炎は、激しい痛みを伴う病気です。愛猫をそうした苦しい病気から守るためにも、ミネラル豊富な煮干しを過剰に与えないよう注意しましょう。

DHA・EPA|過剰摂取で黄色脂肪症の恐れ

煮干しを与えている猫の毛艶が悪くなってきたり、下腹部にしこりのようなものを見つけたりした場合は、「黄色脂肪症(イエローファット)」かもしれません。黄色脂肪症は、不飽和脂肪酸を過剰摂取することで発症する病気で、猫の腹部や胸部の皮下脂肪が酸化し、炎症を起こした状態をさします。この病気にかかると、猫の脂肪が黄色く見えることからついた病名ですが、「汎脂肪組織炎」ともいわれています。

タンパク質がアレルギー症状を引き起こすことも

煮干しにはタンパク質が豊富に含まれています。食物アレルギーは、タンパク質に免疫機能が過剰反応する現象なので、煮干しを食べてアレルギーを起こす猫もいるかもしれません。

「猫は煮干しが好き」という思い込みでたくさん与えるのはよくありません。まず少し与えてみて、食べたあとに皮膚の痒みや湿疹、目の充血、嘔吐、下痢などのアレルギー症状が起こらないことを確認してから、次を与えるようにしてください。もし、何らかの症状が見られたら、煮干しを与えるのは止め、獣医師の診察を受けてください。

猫に煮干しを与えるときの注意ポイント|ペット用の減塩・無塩を選び、必ず塩抜きを

舌なめずりする猫
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
猫に煮干しを与える場合は、以下の点に注意しましょう。

与えてよい部位

猫に煮干しを与えるなら、ペット用に市販されている減塩・無塩のものを選びましょう。信頼できるメーカーのものを選ぶと安心です。人間用に販売されている煮干しは、塩分が多いため与えてはいけません。

与えるときの適量

猫に煮干しを与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、猫の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。
猫の体重目安1日あたりの摂取可能目安
4~5kg8~9g(2.5尾~3尾)

※大きめの煮干し1尾=3gとして計算
※数値は、避妊・去勢済みの猫で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出

調理方法

猫に煮干しを与えるときは、減塩・無塩のペット用煮干しであっても、必ず塩抜きをします。煮干しをつくる際に塩を使っていなくても、魚自体に海水の塩分が含まれているからです。イワシの稚魚を干した煮干しは、塩を加えていなくてももともと海水の塩分が染み込んでいるため、多少なりとも塩分が含まれているからです。

塩抜きの方法は、サッとお湯に潜らせて水につけてから水気をよく拭けばOK。小さく刻んでからご飯にトッピングすれば、喉に突き刺さる心配がないでしょう。

猫に煮干しを与えるなら、過剰摂取にならないように気をつけよう

キャットフードを与えている場合は猫に必要な栄養素は摂取できているはずなので、煮干しの栄養を愛猫に役立てたいなら、過剰摂取にならないよう与える量や頻度への注意が必要です。

なお、キャットフードによっては、猫が水を飲むようにナトリウムを多めに入れているタイプもあるので、キャットフードの塩分(ナトリウム)量を確認しておくと安心です。猫に煮干しを与えるときは、無塩のペット用であっても、必ず塩抜きをしましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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