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【獣医師監修】猫にブロッコリーを与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説

ブロッコリーには猫に有用な栄養素が含まれていますが、過剰摂取により体に不調をきたしたり、少量でも稀に食物アレルギーを引き起こすことがあり注意が必要です。与える場合は生のままではなく、加熱して細かく刻んでから与えるようにしましょう。なお、ブロッコリースプラウト(新芽)は、猫への反応が大きく出る可能性があるといわれています。与える場合にはごく少量とし、何か様子がおかしいと思った場合にはすぐに病院へ連れて行ってあげてください。

佐野 忠士 先生

猫にブロッコリーを与えるときは過剰摂取による尿路結石症などの病気や食物アレルギーなどに要注意

ブロッコリーの山
azpworldwide/gettyimages
ブロッコリーには猫にとって有益な栄養素が豊富に含まれていて、たまに少し食べる程度であれば問題ありません。しかし過剰に摂取すると、尿路結石症や甲状腺機能の低下、便秘などを招く恐れがあるほか、含有するタンパク質により稀に食物アレルギーを起こす危険性もあり注意が必要です。ブロッコリーを猫に与える際には、量や回数などに十分に気をつけましょう。

愛猫がほしがったときなどに与える場合は、生のブロッコリーは固くて消化不良を起こすこともあるため、必ず加熱して細かく刻んでから与える必要があります。与える量はごく少量にとどめ、下痢や嘔吐、皮膚炎などのアレルギー性反応が出ないかしばらく様子を見ることも大切です。また、与える回数が多かったり、継続的に与え続けると過剰摂取につながるため、たまに少量をフードにトッピングする程度にとどめておくことをおすすめします。

なお、猫はもともと肉食動物で、犬などのように雑食性はあまりないので、ブロッコリーを好んで食べる猫は少ないかもしれません。ブロッコリーを食べることによるデメリットもあるので、ほしがらない猫に無理に与える必要はないでしょう。

ブロッコリーのおもな栄養素|水分が多く、炭水化物やタンパク質なども含む

キャットタワーの上でちょこんと座る黒猫(ミックス)
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
ブロッコリー(花序/茹で)に含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー30kal
水分89.9g
タンパク質3.9g
脂質0.4g
炭水化物5.2g
灰分(無機質)0.6g

ブロッコリー(芽ばえ:ブロッコリースプラウト/生)に含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー18kal
水分94.3g
タンパク質1.9g
脂質0.6g
炭水化物2.6g
灰分(無機質)0.5g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

猫がブロッコリーを食べるメリット|猫に必要なビタミンやミネラル、食物繊維などの栄養素を摂取できる

窓辺でリラックスしている猫(ミックス)
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
ブロッコリーは栄養豊富な食べ物です。ここでは、猫がブロッコリーを食べることで得られるメリットを紹介しましょう。

ビタミン|ビタミンC、E、βカロテン、葉酸によるメリットを得られる

ブロッコリーにはビタミンCを筆頭に、ビタミンEやβカロテン、葉酸(ビタミンB9)などが多く含まれています。

水溶性ビタミンのひとつであるビタミンCには強い抗酸化作用があり、加齢や運動による酸化ストレスを軽減したり、関節の病気を防いだりする効果が期待できます。猫は体内でビタミンCを合成できますが、水溶性ビタミンは尿と一緒に体外へ排出されやすく、また体内で合成される量だけでは足りないとする研究結果もあるので、食事などから定期的に摂取する必要があります。

不溶性ビタミンに分類されるビタミンEやβカロテンにも抗酸化作用があるといわれています。ただ、このうちのβカロテンはビタミンAに変換されることで効果を発揮する栄養素ですが、猫は体内でビタミンAを合成できないため、その効果を得ることはできないといわれています。

葉酸も水溶性ビタミンの一種で、神経組織の発達やDNAの合成に関わっています。とくに妊娠期の母猫では、お腹の中の胎児が葉酸をたくさん消費して欠乏することがあるため、食事から十分に摂取することが推奨されます。

ミネラル|猫の健康維持に欠かせないカリウムやリンなどが豊富

ブロッコリーはミネラル豊富な野菜で、カリウムやリン、カルシウム、マグネシウムなどが豊富に含まれています。これらの栄養素のうち、カリウムにはエネルギー代謝や神経刺激の伝達、心機能を健康的に保つ働きがあるほか、ナトリウムとともに体内の水分バランスや体液の浸透圧を調整する役割も果たします。

リンやカルシウムは、骨の健康を維持するのに役立つ栄養素です。また、マグネシウムはカリウムと同じように、エネルギー代謝や神経刺激の伝達、心機能の健康に関わる栄養素で、それぞれの働きをサポートしています。ミネラルのなかでも、リン、カルシウム、マグネシウムのバランスが崩れると結石症になることがあるため、これら3種のミネラルはとくにバランスよく摂取する必要があるといわれています。とはいえ総合栄養食を与えていれば問題ありません。

食物繊維|不溶性食物繊維が多く便秘の改善に役立つ

食物繊維には水に溶けにくい不溶性食物繊維と、水に溶けやすい水溶性食物繊維がありますが、ブロッコリーには両者ともに含まれています。とくに含有量が多いのは前者の不溶性食物繊維で、便のかさを増やして腸を刺激し、スムーズな排便を促す働きがあることから、便秘の改善に役立つといわれています。

一方の水溶性食物繊維は、血糖値を上げにくくしたり、腸内環境を整えたりする役割を果たします。なお、食物繊維は不溶性・水溶性の両方をバランスよく摂取することが大事だといわれています。

グルコシノレート|体内でイソチオシアネートに変わり、殺菌作用や抗酸化作用などが期待できる

ブロッコリーには、アブラナ科の植物に多く含まれる「グルコシノレート」という成分が含まれていますが、酵素の働きによって消化されると「イソチオシアネート」という成分に変化します。イソチオシアネートは辛味成分の一種で、強力な殺菌作用や抗酸化作用を持ち、血液の循環をよくしたり、肝臓の解毒作用を促したりする効果があるといわれています。また、猫への効果は不明ですが、人間ではがん予防にも効果が期待されています。

スルフォラファン|解毒作用や抗酸化作用を高める

ブロッコリーに微量に含まれる辛味成分スルフォラファンは、とくにブロッコリーの新芽であるブロッコリースプラウトに多く含まれています。スルフォラファンはイソチオシアネートの一種で、解毒作用や抗酸化作用を高める働きがあるといわれています。人間ではがんの予防効果も期待できるとされ注目を集めていますが、猫への効果は不明です。

猫がブロッコリーを食べるデメリット|過剰摂取による便秘や嘔吐、ストルバイト結石などに注意

大あくびをしているペルシャ
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
猫がブロッコリーを食べることよるデメリットには、以下のようなものが挙げられます。

食物繊維|過剰摂取により便秘になることも

ブロッコリーには不溶性食物繊維が多く含まれているため、過剰摂取すると便のかさが増えて大きくなりすぎたり、固くなりすぎたりして、排便しづらい状態になることがあります。猫はそもそもあまり水を飲まず、便秘になりやすい傾向があるため、不溶性食物繊維の過剰摂取には注意しましょう。

グルコシノレート|過剰摂取による嘔吐や脱水症状、甲状腺機能低下の恐れ

前述したとおり、ブロッコリーに含まれるグルコシノレートは、酵素の働きによって「イソチオシアネート」に変化してプラスの効果をもたらしますが、過剰摂取すると胃を刺激して炎症を起こし、嘔吐などの症状を引き起こすことがあります。重症化すると脱水症状に陥ることもあり注意が必要です。とくに、ブロッコリースプラウトはイソチオシアネートの一種であるスルフォラファンの含有量が多く、ブロッコリーと比較するとその量はおよそ20倍以上ともいわれています。ブロッコリースプラウトの過剰摂取には、よりいっそうの注意が必要です。

また、グルコシノレートは、「イソチオシアネート」だけでなく「ゴイトリン」という成分にも転換されます。ゴイトリンは甲状腺腫誘発物質であるゴイトロゲンの一種で、ヨウ素が甲状腺内の細胞に取り込まれるのを阻害して、甲状腺の機能を低下させる作用があるといわれています。スルフォラファンでも同じことがいえ、スルフォラファンがゴイトロゲンのような働きをして、甲状腺の働きを阻害することがあります。甲状腺の機能が低下している猫が食べると、症状が悪化する恐れがあるため、甲状腺の病気を持つ猫には、ブロッコリーやブロッコリースプラウトは与えないほうがよいでしょう。

マグネシウム|過剰摂取によりストルバイト結石が形成される恐れあり

ブロッコリーに含まれるマグネシウムは、エネルギー代謝全般に関わる栄養素で、神経伝達や筋肉の収縮をサポートするほか、心機能を健康的に維持する作用も備えています。ただし、過剰摂取により尿がアルカリ性に傾くと、ストルバイト結石(リン酸アンモニウムマグネシウム結石)を形成して尿路結石症を引き起こすことがあり注意が必要です。なお、ストルバイト結石は比較的若い猫に多いといわれています。

シュウ酸|過剰摂取によりシュウ酸カルシウム結石が形成されるリスクあり

ブロッコリーに含まれるシュウ酸がカルシウムと結合すると、シュウ酸カルシウム結石を作り、尿路結石症の原因になることがあります。とくに中高齢の猫に多い傾向があるため注意が必要です。

食物アレルギー|アレルギー性反応による下痢や嘔吐、皮膚炎などに注意

ブロッコリーにはタンパク質が含まれていて、稀に食物アレルギーを発症する猫もいます。下痢や嘔吐、皮膚炎などのアレルギー性反応が現れることもあるので、とくに初めて与える場合やほかの食べ物に食物アレルギーを持っている猫の場合は、十分に注意する必要があります。

猫がほしがったときにブロッコリーを与える際は、まずはほんの少し与えてみて、アレルギー性反応を起こさないか様子を見ましょう。何らかの症状が見られた場合は、以後は与えないようにしてください。また、それまでアレルギー性反応がなかった猫でも突然アレルギーを発症することもあるので注意しましょう。

猫にブロッコリーを与えるときの注意ポイント|必ず加熱して細かく刻んでから与えましょう

イキイキとお散歩中の猫(ミックス)
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
猫にブロッコリーを与える際には、気をつけるべきポイントがいくつかあります。与えてよい部位や調理方法などをチェックしましょう。

与えてよい部位

ブロッコリーは「花蕾(かいらい)」と呼ばれるお馴染みの部位以外に、茎や葉も猫に与えることができます。ただし、外葉は農薬残留の恐れがあるため、できるだけ内葉を与えることをおすすめします。

与えるときの適量

猫にブロッコリー(花序/茹で)を与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、猫の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。

猫の体重目安1日あたりの摂取可能目安
4~5kg79g~94g(小房中サイズ約8~9切れ)

※数値は、避妊・去勢済みの猫で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出

調理方法

生のブロッコリーは消化が悪いので、必ず加熱してから与えてください。猫にとって害になることもあるイソチオシアネートも熱に弱いので、加熱することでより安心できるでしょう。加熱方法は、ブロッコリーを茹でてしまうとせっかくのビタミンが水中に溶け出してしまうため、蒸す、または電子レンジ調理がおすすめです。加熱後のブロッコリーは、食べやすく消化しやすいように、細かくカットしてから与えてください。

なお、ブロッコリーの新芽であるブロッコリースプラウトには、体内でイソチオシアネートに転換して胃を刺激するスルフォラファンが多く含まれているので、猫には与える場合はごく少量にとどめてください。

ブロッコリーを猫にあえて与える必要はない

ブロッコリーには猫の体に嬉しい栄養素が豊富に含まれています。とはいえ、総合栄養食を与えているのであれば十分に栄養補給できているので、あえてブロッコリーを与える必要はありません。むしろ過剰摂取によるデメリットもあるため、猫がほしがったとしても、大量に与えたり、定期的に与えたりすることは避けたほうがよいでしょう。なお猫にブロッコリーを与える場合は、加熱して刻んだものを食事に少しトッピングする程度に抑えておくことをおすすめします。
猫には与えてはいけない食べ物があります。確認しておきましょう
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/倉田千穂
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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