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【獣医師監修】猫に豚肉を与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説

猫は肉食動物なので、豚肉を食べさせてもOKです。ただし、生の豚肉を食べると、寄生虫による感染症を発症する危険があるので、しっかり熱を加えてから与えることが大事です。豚肉に含まれる栄養素と猫が食べるメリット、与える際の注意点を紹介します。

佐野 忠士 先生

猫に豚肉を与えるときは必ず加熱を。トキソプラズマ感染症に要注意

肉、豚肉、豚肉のスライス
Ilya_Starikov/gettyimages
「猫には魚」というイメージを持っている人が多いようですが、じつは猫は肉食動物。市販のキャットフードの原材料をチェックすると、チキンやビーフなど肉が多く使われていることがわかります。

猫が豚肉を食べるというイメージはあまりないかもしれませんが、結論からいえば、肉食動物の猫は、牛肉や鶏肉と同じく豚肉を食べても大丈夫です。豚肉にはタンパク質やビタミンB群、リンなど猫の元気な体を作るのに必要な栄養素が豊富に含まれています。適量を守って与えるのであれば、猫の健康維持に役立つ食材のひとつといえます。

ただし、猫に豚肉を与える際は、しっかり中まで火を通すことが必要です。人間が豚肉を食べるときも、牛肉とは違いしっかり加熱することを心がけますが、猫の場合もそれは同じ。生の豚肉には寄生虫がいる可能性があり、猫が生焼けの豚肉を食べてしまったり、生肉が入っていた容器を舐めてしまったりしたら、寄生虫による感染症を発症する可能性があるだけではなく、人へ大きな影響を及ぼす感染源にもなってしまいます。

大事なのは、豚肉を猫に与える場合は、しっかり加熱すること。中までしっかり火が通っていれば、寄生虫がいたとしても死滅するので、猫が食べても問題はありません。

豚肉のおもな栄養素|タンパク質が豊富でハイカロリー

鈴をつけたラグドール
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
豚肉に含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
※ロース
エネルギー140kal
水分71.5g
タンパク質20.6g
脂質6.8g
炭水化物0g
灰分(無機質)1.1g

※バラ
エネルギー398kal
水分45.8g
タンパク質13.4g
脂質40.1g
炭水化物0g
灰分(無機質)0.7g

※もも(赤身)
エネルギー133kal
水分71.5g
タンパク質21.9g
脂質5.3g
炭水化物0.2g
灰分(無機質)1.1g

※ヒレ
エネルギー105kal
水分74.2g
タンパク質22.7g
脂質1.7g
炭水化物0.1g
灰分(無機質)1.3g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

猫が豚肉を食べるメリット|丈夫な体を作り、活力を生み出す

おやつをもらうブリティッシュショートヘア
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
豚肉に含まれる栄養成分のうち、猫の体に役立つおもなものをピックアップしました。愛猫に豚肉を与える前に、まずそれぞれの栄養素の働きをよく理解しておきましょう。

タンパク質|丈夫な体を作り、元気を維持する

タンパク質は、食べ物が消化されることでアミノ酸に変化し、皮膚や筋肉、ホルモン、抗体などを作るのに役立つものです。

雑食性の人間や犬は、おもに炭水化物をエネルギー源としますが、肉食動物の猫は、食べ物から摂取したタンパク質をエネルギー源として活動しています。そのため、猫は犬よりも多くのタンパク質が必要で、妊娠中や授乳中の母猫や怪我をしている猫は、通常よりさらに多く必要となります。

豚肉は部位によって違いはあるものの、100gあたり約13g〜22gものタンパク質を含んでいるので、猫へのタンパク質補給に役立つ食材といえます。

ビタミンB群|代謝を促進、エネルギーを作り出す

豚肉には、多くのビタミンB群(B1・B2・B6・B12、ナイアシン、葉酸、パントテン酸など)が含まれていて、脂肪や炭水化物、タンパク質、糖の代謝をサポートし、エネルギーを産生すること。猫が元気に活動するのに役立ちます。
そのなかでも、豚肉にはとくにビタミンB1・B6、B12、ナイアシンが多く含まれています。

ビタミンB1

ビタミンB1には、猫の皮膚や粘膜の健康をキープする働きがあります。ビタミンB1が不足すると、皮膚にトラブルが起こったり、毛艶が悪くなったりする場合が。また、歩行障害や筋力の低下を起こす可能性もあります。

ビタミンB6

ビタミンB6は、アミノ酸の代謝をサポートする働きがあります。猫の皮膚や粘膜を健康な状態に保つのにも役立つ栄養素です。

ビタミンB12

ビタミンB12は、タンパク質の合成や赤血球の合成に役立つと考えられています。

ナイアシン

ナイアシンは、ビタミンB3とも呼ばれるもので、細胞の代謝を促進したり、肝臓の代謝をサポートしたりする働きがあります。
ふだんからキャットフードを主食にしていれば、猫の健康を維持するのに必要なビタミンB群が不足することはありませんが、食が進まないときや体力が落ちているときなどは、豚肉からビタミンB群を補うのもよいかもしれません。
ただし、ビタミンB群は水溶性ビタミンなので、茹でるとお湯の中に流れ出します。消失量はビタミンB12で約3割、ビタミンB1は6割以上といわれているので、調理方法の工夫が必要です。

リン|丈夫な歯や骨を作り、神経や筋肉を正常に保つ

リンは、骨や歯の主要な成分であるほか、血液や体液の中でカルシウムとバランスを保ちながら、さまざまな機能を担っています。リンは肉類に多く含まれているので、豚肉を過剰に摂取するとカルシウムとのバランスが崩れる心配があります。

鉄|貧血の予防

鉄は、赤血球の中のヘモグロビンを構成する成分で、酸素を全身に運搬する役割があります。そのため、鉄が不足すると全身の器官や筋肉に酸素が十分に行き渡らず、「貧血」状態になってしまいます。キャットフードを食べていれば、鉄分不足で貧血になることはあまりありませんが、手作りごはんを与えている場合は不足する場合があるかもしれません。

猫が豚肉を食べるデメリット|寄生虫による感染症、腎臓病や肝臓病の猫は要注意

胸元の白い長毛がふさふさのラグドール
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
猫の健康に役立つ豚肉ですが、与え方を間違ったり、持病のある猫に与えたりすると、かえって健康を損ねたり病気を悪化させることにもなりかねません。愛猫に豚肉を与える前に、猫が豚肉を食べるデメリットもチェックしておきましょう。

トキソプラズマ|感染症を引き起こす寄生虫。人間にも感染の可能性あり

豚肉には、「トキソプラズマ」という寄生虫がいることがあります。この寄生虫は、十分に加熱することで死滅しますが、生はもちろん半生状態や生肉から滲み出た血液や肉汁からも感染するといわれています。人間が豚肉を食べるときに、牛肉とは違ってよく火を通すのはそのためで、猫に豚肉を与える際も十分な加熱が必要です。

トキソプラズマ感染症のおもな症状は下痢ですが、まだ体ができていない子猫や免疫力が低下している猫が感染すると、嘔吐や貧血、発熱などの症状が見られ、重篤になると痙攣や呼吸困難に陥って命を脅かす危険も。また、妊娠した母猫が感染すれば、赤ちゃんが感染して死産に至ることもあります。

なお、トキソプラズマは猫だけでなく人や犬など多くの動物に感染する寄生虫です。加熱が不十分な豚肉を猫が食べてトキソプラズマに感染すると、その糞から人間に感染する可能性があります。とくに妊婦や乳幼児が感染すると、重症になるリスクが高いので注意が必要です。

まずは、愛猫に十分に加熱できていない豚肉を与えないことが重要です。そして、感染の可能性や危険性のある猫の排泄物を処理する際は、ゴーグルやマスク、ゴム手袋を使用して、処理後は手洗いを十分に行うことが励行されています。

リン|腎臓病や肝臓病の猫には制限が必要

リンは歯や骨を作る大事な栄養素ですが、腎臓病で腎臓の働きが低下すると、体内に余ったリンを尿として体外に排出することが困難になってきます。その結果、リンが体内に過剰に溜まり、そのことがさらに腎臓を悪くするという悪循環に。腎臓病が悪化した猫には、リンを制限した食事療法が必要になります。

また、肝臓病が悪化すると、体内で生成されたアンモニアが上手に体外に排出できなくなり、血液中のアンモニア濃度が上がる「高アンモニア血症」になることがあります。アンモニアは、タンパク質を代謝する際に生じるものなので、肝臓機能が低下してアンモニアの排出が困難になった場合は、リンを多く含むタンパク質、肉類や魚類などを制限する必要があります。

腎臓病や肝臓病がある猫の場合は、豚肉を与える前に必ず獣医師に相談してください。

豊富なタンパク質がアレルギー症状を引き起こすことも

食物アレルギーは、タンパク質に免疫機能が過剰反応する現象です。豚肉はタンパク質が豊富な食べ物なので、猫にアレルギーを引き起こす原因になる可能性があります。最初は少し与えてみて、皮膚の痒みや湿疹、下痢、嘔吐などが起こらないかどうか確認してください。そして、もしいつもと違う様子や症状が見られたら、獣医師の診察を受けてください。

猫に豚肉を与えるときの注意ポイント|必ず完全に火を通してから与えよう

仰向けに寝ている白い猫の頬を舐めているキジトラ(MIX)
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
猫に豚肉を与える際は、以下の注意点を守ってください。

与えてよい部位

豚肉にはさまざまな部位がありますが、脂身が多い部位はカロリーが高いので避けたほうが安心です。ヒレ・もも肉は脂身が少ないのでおすすめ。ロースなどは脂身の部分を取り除いてあげましょう。

骨付きの肉は、中まで火が通るのに時間がかかり、完全に火が通っているかどうか確認しづらいので、あまりおすすめできません。さらに、加熱することで骨が崩れると猫が誤飲しやすいので、骨付き豚肉は与えないようにしましょう。

与えるときの適量

猫に豚肉を与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、猫の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。
※ヒレ肉の場合(厚めにカットした肉1切=50gとして計算)
猫の体重目安1日あたりの摂取可能目安
4~5kg23g~27g(1/2切弱~1/2切強)

※もも肉の場合(1枚25gとして計算)
猫の体重目安1日あたりの摂取可能目安
4~5kg18g~21g(3/4枚~4/5枚)

※数値は、避妊・去勢済みの猫で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出

調理方法

大事なのは、しっかり加熱すること、そして塩や醤油などの味付けはしないことです。
寄生虫のトキソプラズマを死滅させるには、55度以上で5分以上、肉の中心部が67度になるまで加熱するのが有効であるといわれています。

また、豚肉の有効成分ビタミンB群は水溶性なので、茹でた場合はその煮汁も捨てずに主食にかけてあげると猫の食欲をそそり、かつビタミンBの補給にもなります。

豚レバーの生食は厳禁。ハム・ソーセージなど豚肉の加工品もNG

必ず加熱してから食べましょう。また、ハムやソーセージ、ベーコンなど豚肉を使った加工品はたくさんありますが、人間用に加工された食品は塩分が多く、人間用に味付けされているので、猫には与えないでください。

豚肉は猫にOK。ただし主食を阻害しない程度の量を守って

豚肉は肉食動物の猫が食べても大丈夫です。ただし、ふだん総合栄養食を主食として与えている場合は、時々おやつとして与える程度がベター。食が進まないときの栄養補給に用いるのであれば、愛猫が1日に食事から摂取しなければならないカロリーを超えない範囲で主食にトッピングするなどして、過剰摂取にならないよう気をつけましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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