サラダにしてもお漬物にしてもきゅうりは美味しいです。夏野菜を代表するきゅうりは、水分をたくさん含んでいて、なにかと食欲が落ちやすい暑い時期でも美味しくいただけますよね。でも、このきゅうり、もし愛猫が欲しがったら与えてもいいのでしょうか?
答えは大丈夫です。
きゅうりの持つ栄養成分の中に、猫に有害になるものは含まれていません。ただ、完全肉食動物である猫にとって、きゅうりはもちろんのこと、野菜自体必要なものではないため、与える時には注意が必要なことも事実です。今回は、猫にきゅうりを与える際の注意点や、最近流行っているきゅうりを使って猫を驚かせる行為についても解説していきます。
きゅうりの栄養素
きゅうりはウリ科の植物です。生でガブっと食べられるイメージがありますが、実際、生食に適したきゅうりは、栽培されている品種の2/3ほどでしかありません。猫が好んできゅうりを食べることはありませんが、江戸時代までは、水分が少ない品種で生食には適さなかったこともあり、庶民の間でも不味いと評判で、よほどのことが無い限り食することはなかったと言います。
きゅうりに含まれる栄養素とは?
きゅうりは、その実の95%が水分でできています。通常サイズのきゅうりの熱量は1本あたり14kcalほどしかなく、これはギネスブックにも「Least calorific fruit」と掲載されているほどです。カロリーと同様に、含まれる栄養素も少なく、ビタミンやミネラル等も含まれてはいますが、いずれも特筆すべき配合量を持っているわけではないのです。猫に与える際にも、栄養素の過剰摂取の心配がないこともメリットとなっているのです。
スーパーのきゅうりは安全?
現在、世界ではおよそ500種類にもおよぶきゅうりが栽培されており、国内でも地域により20種類近くの品種が流通しています。しかし、通常、私たちがスーパーなどで見かけるきゅうりは白イボ系と呼ばれるきゅうり1種類です。水分が多く、ほとんど無味無臭で歯切れが良いことから、生食に適した品種と言われているのです。
2017年におけるきゅうりの国内出荷量は、約48万3千トンに対し、輸入量は13.5トンです。輸入元の1位はアメリカで、2位が韓国、3位が中国となっています。気になる方はきちんと産地が表記してある店舗で購入するようにしましょう。
ちなみに、猫にとっても比較的安全な国内産のきゅうりをもっとも多く生産している県は宮崎県で、次いで群馬県、埼玉県の順になっています。
猫にとってきゅうりは必要?
完全肉食動物である猫にとって、きゅうりはまったく必要のない食材です。きゅうり自体、青臭い臭いを発していることから、通常の猫が食欲をそそられることはまずありません。特殊な環境や、猫の性格、嗜好などが原因で、まれにきゅうりを欲しがる場合があるようですが、あえて積極的に与える食材ではないのです。
猫がきゅうりを食べることによるメリットもほとんどなく、きゅうりの栄養素の中に特に猫が必要としているものもありません。あえて、挙げるとすれば、低カロリーで水分が豊富なことから、太り気味の猫のダイエット効果や夏場の水分不足が考えられますが、べつにきゅうりでなくても十分に代用できると考えられます。
猫にきゅうりを与えるときの注意点
もし、飼っている猫がきゅうりを欲しがった場合には、どうすればいいでしょう。その場合は、ただ、きゅうりをポンと与えるのではなく、以下のような点に注意して与えてください。
冷たいきゅうりはダメ
通常、きゅうりは冷蔵庫の野菜室などで保管していることと思います。水分を多く含むきゅうりは、冷たくなりやすく、また、夏野菜の持つ特性として体温を低下させる働きがあります。猫にとって、体温を下げる食材はあまり好ましくないことから、猫に与えるきゅうりは室温で保管するとか、与える前にお湯にさらして温めるなどしてあげてください。
与える時は皮をむく
きゅうりの皮は、意外と固く、また、新鮮であればあるほど、棘状の突起も鋭くなっています。餌をほとんど丸呑みしてしまう猫の場合、きゅうりのような食材は消化器官に傷を付けてしまう恐れもあるのです。また、安全な国内産のきゅうりと言っても、農薬や配送中の汚れが付いていることもあります。水やお湯で洗ったくらいでは落ちない成分もあることから、少し厚めに皮をむいて与えるようにしましょう。
漬物やドレッシングはNG
猫用にきゅうりを用意してある場合は、ともかく、人間がサラダとして食べるように用意された中からきゅうりを与えることはおすすめできません。例えばサラダの中にきゅうりと一緒に玉ねぎが入っている場合や、ドレッシングの成分に玉ねぎが含まれていた場合、猫にとっては非常に危険な成分となってしまいます。また、人間の食べる食品は、猫にとって高い塩分濃度であることが少なくありません。猫の腎臓の健康を維持するためにも人間用に味付けされたきゅうりは与えないようにしましょう。
高齢の猫はとくに注意
きゅうりの持つ栄養成分の中で、唯一猫が気をつけなければならないものがカリウムです。健康な猫であれば気にすることはないのですが、カリウムはナトリウムと共に猫の細胞内にある浸透圧を一定に保つ働きを持っているのです。カリウムは、増えすぎたナトリウムの吸収を抑えることで血圧を一定の値に保つ効果があるのですが、高齢で腎臓の機能が弱った猫や、何らかの腎疾患を患っている猫の場合、カリウムの排出がうまくいかずに、高カリウム血症を発症してしまう危険性があるのです。
高カリウム血症は、筋肉の収縮がうまくいかなくなり、猫の場合だと足に力が入らない、嘔吐、ぐったりする、といった症状が見られます。また、心臓の動きにも影響があり、ひどくなると、不整脈が発生します。いずれも、治療が遅れることで最悪の結果を招いていしまうこともあるのです。
猫がきゅうりに驚く理由
最近、動画投稿サイトなどで猫のそばにきゅうりを置いて驚く様子を公開しているものを見かけますが、これは、どういったことなのでしょう。猫がきゅうりを見て驚く現象には、天敵である蛇に似ているからとか、突然、見知らぬものが現れたからなど、さまざまな説があるようです。獣医の中には、こういったいたずらは猫にとって強いストレスになる可能性もあるから控えるようにと警告するものもあるようです。
猫にきゅうりを与える際は猫の状態を把握しておこう
きゅうりは、猫にとっても安全な食材です。含まれている栄養成分にもとくに危険なものはなく、低カロリーで水分が豊富なことから、太り過ぎの猫や水分補給に与えることに問題はありません。ただ、与える際には体が冷えすぎないように常温に戻し、消化器官を傷つけないよう厚めに皮をむくなどの工夫が必要です。また、高齢の猫や、腎臓機能の弱っている猫にはきゅうりを与えないようにしましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/BE
※一部写真はスマホアプリ「まいにちのいぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
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