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【獣医師監修】猫は梨を食べても大丈夫? 与えるときの注意点は

梨は猫に与えても大丈夫です。梨の成分の約90%は水分で、それほど栄養価は高くありませんが、水を飲みたがらないときに水分補給の目的で与えるのもよいでしょう。ただし、梨の皮や芯は固く消化しにくいので取り除いて。内の栄養と与える際の注意点を紹介します。

佐野 忠士 先生

猫は適量なら梨を食べても大丈夫

ほい梨
Promo_Link/gettyimages
梨は約90%が水分なので、あまり栄養価が高い果物とはいえませんが、猫の体に中毒を引き起こすような有害物質は含まれていないので、与えてもとくに問題はありません。水をあまり飲みたがらないときの水分の補給にもなり、熱中症や脱水の予防として役立つかもしれません。

あまり栄養価は高くないとはいえ、梨には高血圧の予防が期待できる「カリウム」、お腹の調子を整える「食物繊維」、疲労回復に役立つ「アスパラギン酸」、消化を助ける酵素「プロテアーゼ」などが含まれています。皮や芯を取り除いて小さく刻むなど、与える際の注意点を守れば、水分と一緒に体に役立つ栄養素も補給することができるでしょう。
ただし、梨でまれにアレルギーを生じることもあるので、初めて与えるときは注意が必要です。

梨のおもな栄養素|約90%が水分

段ボールの箱に顎を載せているグレー&ホワイトのミヌエット
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
梨(和梨)に含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー48kal
水分84.9g
タンパク質0.3g
脂質0.1g
炭水化物14.4g
灰分(無機質)0.3g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

猫が梨を食べるメリット|脱水や熱中症の予防、便秘予防、疲労回復など

腹ばいになり顔を寄せ合ってこちらを見ている茶とグレー2匹のミヌエット
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
猫の体に役立つと考えられる梨のおもな栄養成分を紹介します。

水分|約90%が水分、水分補給で脱水や熱中症を予防

みずみずしい梨は、成分の約90%が水分。水をあまり飲みたがらない猫が梨を食べれば、水分の補給に役立つでしょう。熱中症や脱水の予防のためにおやつに梨を与えてみるのもおすすめです。

カリウム|利用作用と高血圧の予防。ただし腎臓病の猫は要注意!

梨にはミネラルの一種であるカリウムが含まれています。カリウムには、体内の水分の濃さを調整する作用 があり、体内に溜まった余分な塩分を尿と一緒に体外に排出することで、血圧が上がるのを防いでくれます。また、カリウムには筋肉を作り、筋肉の機能を調整する働きもあるので、カリウムが不足すると体がだるくなる、脱力感や疲労感が生まれる、などの症状が現れます。カリウムをしっかり摂取して、ナトリウムとの適度なバランスを取ることは疲労回復にも効果的だといえるでしょう。

ただし、加齢や腎臓病で腎臓の機能が低下している猫の場合は、余分なカリウムを体外に排出しづらくなり、血液中のカリウム濃度が上がる「高カリウム血症」になる可能性があります。シニア猫や腎臓病の猫、心機能が低下している猫やこれらの治療をおこなっている猫には、カリウムが豊富な梨を与え過ぎないよう注意が必要です。

食物繊維|整腸作用、とくに便秘の予防・解消

食物繊維には「水溶性食物繊維」「不溶性食物繊維」の2種類があります。
水溶性食物繊維には、糖質の吸収をゆるやかにして、血糖値の急上昇を抑える働きやコレステロールを体外に出す作用があります。一方の不溶性食物繊維には、腸の中で水分を吸って大きく膨らみ、便のカサを増やすことで排便を促す働きや、腸内の毒素やコレステロールを体外に排出する働きがあります。

梨には、その2つの食物繊維が含まれていますが、不溶性食物繊維のほうが多く、水溶性食物繊維の約3倍以上の含有量です。そのため、どちらかというと便秘の要望や解消の効果のほうが期待できるでしょう。ただし、水を吸って膨らんだ便が大きくなり過ぎると、かえって便が出づらくなる可能性があるので、過剰摂取にならないように気をつけましょう。

ちなみに洋梨(ラ・フランス)には、和梨に比べて約2倍(同可食部比)の食物繊維が含まれています。

アスパラギン酸|解毒作用、疲労回復

アスパラギン酸は、アスパラガスに多く含まれることからその名がついたアミノ酸の一種ですが、梨には100gあたり140mgのアスパラギン酸が含まれています。

アスパラギン酸の役割は、体の疲労によって生じた乳酸を分解してエネルギーに変換することで、疲労回復に役立ってくれます。また、体内に溜まった有害物質であるアンモニアを体外に排出する解毒作用も認められています。アスパラギン酸の解毒作用と疲労回復効果を期待して、体力が落ちて元気がない愛猫に梨を与えるのもよいでしょう。

プロテアーゼ|酵素の力で消化を促進

肉を調理する際にすりおろした梨に漬けておくと、肉が柔らかくなるといわれています。これは、梨に含まれる「プロテアーゼ」という酵素がタンパク質を分解してアミノ酸に変えるためです。愛猫の胃腸が弱っているときは、プロテアーゼを多く含む梨を与えて、消化を助けてあげるのもよいかもしれません。

梨にはまたたび効果がある?

猫は梨の匂いを嗅ぐと、気持ちよさそうにゴロゴロしたり、梨の入っていた袋や箱に体をスリスリしたりして、まるで猫にまたたびを与えたときのよう・・・という情報を見かけました。「猫にとって梨の香りはまたたびと同じ効果がある!?」と期待したいところですが、残念ながらそのような研究報告はありません。

猫に梨を与えるときの注意ポイント|皮を剥き、芯を取り除き、細かく切って与えよう

https://cat.benesse.ne.jp/gallery/ 
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
猫に梨を与える際の注意点を以下に紹介します。

果樹園に落ちている未成熟の梨はNG

一般的に市販されている梨は、実が熟した状態なので問題ありませんが、熟しきっていない梨の実には未成熟の桃と同じように「アミグダリン」という有害物質が含まれています。アミグダリンは、猫に中毒を起こす危険性があるので注意が必要です。梨の果樹園が近くにあったり、庭に梨の木があったりする家で、愛猫が外に出る可能性がある場合は、熟す前の小さな実が落ちていないか確認するようにしましょう。

与えてよい部位

皮や芯は猫には消化しにくく、皮には農薬が残っている場合があるので、与える際は必ず皮を剥き、芯を取り除いてください。
また、喉に詰まらせる心配がないよう、小さめくカットしてあげましょう。幼猫やシニア猫の場合は、すりおろすかフードプロセッサーでペースト状にして与えるのもよいでしょう。

なお、梨の種にはごく少量ですが中毒を引き起こすアミグダリンが含まれています。切り分けたあとのごみの処理はきちんと行い、愛猫の口に入らないように注意してください。

なお、もし皮や芯、種を食べてしまっても少量であれば慌てて病院へ行く必要はありませんが、普段と違う様子がみられた場合は念のため獣医師の診察を受けましょう。

与えるときの適量

猫に梨を与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、猫の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。
猫の体重目安1日あたりの摂取可能目安
4~5kg50g~59g(1/6個1/5個)

※数値は、避妊・去勢済みの猫で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出
※和梨1個287g(可食部244g)として計算

調理のしかた

梨に含まれる消化酵素やビタミンは熱に弱いので、加熱せず生のまま与えます。

タンパク質にアレルギー反応を示す場合も

食物アレルギーは、タンパク質に免疫機能が過剰反応することによって起こる現象です。梨にも可食部100g中0.3gとごく少量ですがタンパク質が含まれているので、梨を食べてアレルギーを発症する可能性はゼロとはいえません。

以前も何らかの食べ物でアレルギーを起こしている猫や、猫が初めて梨を食べるときは、試しにごく少量与えて様子をみてみましょう。食べたあとに皮膚の痒みや湿疹、目の充血、嘔吐、下痢などのアレルギー症状が起こらないことを確認してから、次を与えるようにしてください。もし、何らかの症状がみられたら、獣医師の診察を受けてください。

猫は梨を食べてもOK。豊富な水分を脱水予防に役立てては

成分の約90%が水分の梨。栄養価はあまり高くないものの、皮や芯、種を取り除けばおやつで与えても大丈夫です。旬の季節が短い果物なので愛猫と一緒に季節感を楽しむ時間もよいでしょう。ただし、与え過ぎはかえって体調を崩す原因になりかねません。適量を守るように注意しましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学 獣医学群 獣医学類 准教授 )
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「まいにちのねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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