猫と暮らす
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猫にりんごを与えてOK?食べてしまった場合の対応は?
猫が好んでりんごを食べることは少ないですよね。でも、好奇心旺盛な猫ちゃんだと、差し出されたらかじってみることもありそうです。猫ってりんごを食べても平気なんでしょうか?
答えは大丈夫!
猫がりんごを食べてしまっても問題はありません。ただ、もし、りんごが大好きな猫ちゃんだったり、何らかの理由で愛猫にりんごを与えたいと考えたりしているのであれば、与え方には工夫が必要になります。
今回は、猫とりんごについて分かりやすく説明します。
この記事の監修

佐野 忠士 先生
酪農学園大学獣医学群獣医保健看護学類准教授
酪農学園大学附属動物医療センター集中治療科診療科長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了
北里大学獣医畜産学部および同大学獣医学部勤務
日本大学生物資源科学部獣医学科勤務
●資格:獣医師/博士(獣医学)/世界的獣医心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER インストラクター)/CCRP
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本獣医学会/日本獣医師会/日本動物リハビリテーション学会/動物臨床医学研究所/日本麻酔科学会/日本臨床モニター学会
●主な診療科目:麻酔科/集中治療科
●書籍:『asBOOKS チームで取り組む獣医師動物看護師のためのICU管理超入門』/『as BOOKS チームで取り組む獣医師・動物看護師のための輸液超入門』/『動物看護師のための麻酔超入門・改訂版』 など多数
りんごの栄養素

甘酸っぱい香りと独特な食感が特徴のりんごは、バラ科に属する植物です。英語圏ではりんごは果物の象徴的な扱いを受けている果実で英語の「APPLE」は果物全般を指す「FRUITS」と同義語としても使われることがあるほどです。中にはリンゴが好物という猫もいるかもしれませんが、基本的にはほとんどの猫は全く興味を示さないはずです。
猫は、酸味を嫌う動物なため、もし、口にしたとしても、大量に食べようとすることはほとんどないでしょう。
りんごに含まれる栄養素とは?
りんごは、世界で1万種以上も確認されている植物で、それだけ人間にとって身近でおいしい果物と言えます。古くからりんごは豊富な栄養素を含んでいることから世界中で食されてきました。
イギリス発の有名なことわざ「1日1個のりんごは医者知らず」ですが、世界中で同じようなことわざがあり、日本でも「りんごが赤くなると医者が青くなる」などと言われています。つまり、それだけ、りんごには豊富な栄養素が含まれているということなのです。
りんごに含まれている代表的な栄養素には、カロテン、ビタミンC、カリウム、葉酸などがあり、そのほかにも豊富なポリフェノールや食物繊維を含んでいることが知られています。
カロテンは、猫の体の中に入るとビタミンAに変換されますが、本来のビタミンAが脂溶性ビタミンで摂取量に制限があるのに対し、カロテンで摂取した場合は、必要分以外は体外に排出されるため安全に摂取できるといった特徴があります。
ビタミンCと同じく、強い抗酸化作用を持っていることから、人間の場合は心筋梗塞や動脈硬化、さらにがんなどの予防にも効果があるとされています。
カリウムは、体内の浸透圧を調整する働きがあることが知られていて、ナトリウムとともに、むくみや高血圧の改善に効果があると言われています。
また、りんごに含まれているポリフェノールは100種類以上にもなるという研究結果も報告されていて、1つの果実にこれだけたくさんのポリフェノール含有していること自体、非常にめずらしいのだそうです。
これらのポリフェノールには、人に対して以下のような効果が期待されています。
・がんの抑制
・メラニン色素の生成を抑制
・口臭予防
・老化防止
・高血圧の予防
・自律神経の正常化
・育毛
ただし、人の体と猫の体の仕組みが違うことや、必要としている栄養素の違いなどから、これらの効果がすべて愛猫に当てはまるわけではありません。
安全なりんごの入手先
現在、日本では年間80万トン以上のりんごが収穫されています。スーパーなどの青果コーナーを見ても分かる通り、青森県、長野県、山形県、岩手県などが生産上位を占めています。
国産のりんごを買い求めるなら、9月から3月くらいまでの、りんごの旬の時期を狙うといいでしょう。
猫にりんごを与える際の注意点

りんごの果実に含まれる成分でとくに猫に対して危険と思われる成分は含まれていません。しかし、りんごはバラの仲間の植物です。バラ科の植物にはウメのように有毒植物に指定されているものもあり、葉や茎、熟す前の実などにアミグダリンという成分が含まれていることがあります。
アミグダリンは、人間や猫に対して強い毒性を持つシアン化水素に変換される性質を持っているため、あやまって食べてしまわないように注意をする必要があるのです。
ただし、スーパーなどでりんごの実だけを購入してきた場合は、しっかり種を取り除くことでこれらの危険性は回避できます。りんごの種は小さいですが、猫があやまって食べてしまうと喉に詰まってしまうことも考えられるためできるだけ取り除くようにしましょう。
また、りんごの皮の部分には豊富な栄養が含まれていますが、農薬等が心配な場合は厚めに剥いてしまうことをおすすめします。
猫にりんごは必要?

結論から言えば、まったく必要ではありません。りんごに含まれる栄養素のすべてが必ずしも猫に必要というわけでもなく、仮に必要な栄養素があった場合は、キャットフードや猫用の栄養補助食品から摂取させる方が安全で効果的なのです。
むしろ、りんごを与えることによるリスクやデメリットの方が大きいと言えるかもしれません。
人と猫では大きく違う
猫や犬の健康を考える上で、もっとも大きな問題のひとつに歯周病があげられます。人間と違って歯磨きという習慣がないため、歯の健康を大きく損ねやすくなっているのです。歯周病にかかると歯の痛みや不快感から口臭、消化不良、食欲不振など多くの問題が発生し、大切な愛猫に大きな健康リスクを与えることになってしまうのです。
たしかに、りんごには多く栄養素が含まれていますが、虫歯の原因となる果糖、ショ糖なども多く、100gあたりの配合量では14.3gにもなります。猫は、その口腔内の構造上、虫歯になることはありませんが歯周病にはかかります。ビタミンやカロテンの補給のためだけに、あえてりんごを与えることはおすすめできないのです。
また、猫は肉食動物で人間や犬のように食べ物をすりつぶす臼歯が発達していません。りんごなどを食べても、前歯で飲み込みやすい大きさにカットするだけです。そのため、噛み切りづらい皮などはそのまま丸呑みしてしまうおそれもあるのです。
もし、どうしても猫にりんごを与えたいと考えるなら、皮を取り除き、実はおろし器などで擦ってあげるといいかもしれません。
もし、猫がりんごの種を食べちゃったら
猫がもし、りんごの種を食べてしまった場合は、しばらく様子を見るようにしましょう。種を飲み込んだあと、吐き出すような仕草を見せるようでしたら、食道などに種がとどまっていることが考えられます。
猫は毛づくろいなどで消化管に毛がたまっていることが多いため、小さな種でも引っかかってしまうことがあるのです。毛玉と一緒に種が排出されればとりあえず問題はないでしょう。
もうひとつ、先程もお話したアミグダリンですが、りんごの種にもごく少量含まれていることが分かっています。よほど、大量に食べなければ心配はないと言われていますが、種を食べた後、明らかに元気がない、体調が悪そうといった状態が見られた場合は、速やかに獣医さんに診せるようにしましょう。
猫にりんごを与えるのはデメリットが多い
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医保健看護学類准教授)
文/BE
※一部写真はスマホアプリ「まいにちのいぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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