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【獣医師監修】猫にトマトを与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説

猫がトマトを食べても基本的には問題ありません。トマトには抗酸化作用の強い「リコピン」が多く含まれています。ただし、茎や葉、ヘタ、未成熟のトマトには中毒性のある「トマチン」という物質が含まれているので注意が必要です。ここでは、猫にも有益なトマトの栄養素と与える際の注意点を紹介します。

佐野 忠士 先生

猫にトマトを与えるときは、葉や茎、未成熟のトマトに含まれる中毒成分「トマチン」に注意

イギリスのショートヘア猫とトマト
chendongshan/gettyimages
トマトは、基本的には猫に与えても大丈夫な野菜です。トマトには、強い抗酸化作用を持つ「リコピン」や「ビタミンC」などの栄養素がたっぷり含まれています。ヨーロッパでは「トマトが赤くなると医者が青くなる」という格言があるほど、古くから健康をサポートする野菜として親しまれてきました。

ただし、さまざまな健康効果を期待できるトマトでも、猫に与えるときはいくつか注意が必要です。

トマトには、微量ですが「トマチン」と呼ばれる中毒性のある物質が含まれています。赤く熟したトマトの実を少し食べるくらいなら問題ありませんが、葉や茎、ヘタ、未成熟の青いトマトはトマチンの含有量が多く、猫が口にすると中毒症状を引き起こすことがあるため避けることが大事です。

また、トマトにはカリウムが含まれているので「高カリウム血症」にも気をつけたいもの。とくに腎臓病の猫や心機能が低下している猫では命に関わるため注意が必要です。健康な猫でも、過剰摂取により高カリウム血症を引き起こすこともあるので、与えすぎないようにしましょう。

トマトのおもな栄養素|9割以上が水分。炭水化物、タンパク質、ミネラルの順に多く含まれる

流れる水が大好きなペルシャ
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
トマト(赤色トマト)に含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー20kal
水分94.0g
タンパク質0.7g
脂質0.1g
炭水化物4.7g
灰分(無機質)0.5g

トマト(赤色ミニトマト)に含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー30kal
水分91.0g
タンパク質1.1g
脂質0.1g
炭水化物7.2g
灰分(無機質)0.6g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

猫がトマトを食べるメリット|リコピンやビタミンCによる抗酸化作用の効果を得られる。水分補給にも

威風堂々としたメインクーン
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
トマトには、リコピンなど体にうれしい栄養素が含まれています。猫にとってもメリットのある成分をいくつか紹介します。

リコピン|体内で発生した余分な活性酸素を除去

リコピンはカロテノイドという天然色素の一種で、トマトの赤い色に関係しています。リコピンには強い抗酸化作用があり、体内で発生しすぎた活性酸素を除去する働きや、免疫力を高めて慢性疾患のリスクを下げる働きがあるといわれています。また、人間においてはガンや動脈硬化の予防に期待できるともいわれています。

リコピンは猫の健康維持にも役立ちますが、猫は完全肉食動物なので、トマトを好まない猫に無理に与える必要はないでしょう。

カリウム|猫の健康維持に欠かせない主要ミネラル

トマトにはカリウムが含まれています。主要ミネラルのひとつであるカリウムには、体内の水分バランスを調整する働きや利尿作用があり、細胞内の余分なナトリウムが尿と一緒に排出されるのを促すことから、血圧低下や脳卒中の予防効果が期待できるといわれています。ほかにも、エネルギー代謝や神経刺激の伝達、心機能の働きにも関わっています。

カリウムは猫の健康維持に欠かせない栄養素ですが、総合栄養食を与えている場合は別途与える必要はありません。

ビタミンC|抗酸化作用がある

トマトに豊富に含まれるビタミンCには強力な抗酸化作用があり、体内の活性酸素を取り除いて老化を防ぐ効果が期待できます。また、コラーゲンを生成して皮膚を健康的に保つ働きや、免疫力を高めて風邪を引きにくくする働きもあるといわれています。

猫はビタミンCを体内で合成できるため必須栄養素とはされていませんが、とくにシニア期になると肝機能が衰えてくるため、体内合成量だけでは足りないとする研究結果もあります。また、5歳をすぎると急激に合成能力が落ちるため、体外から定期的に摂取することが推奨されます。もちろん、総合栄養食を与えている場合は、ビタミンCにも配慮されているので心配はいりません。

なお、水溶性ビタミンに分類されるビタミンCは、摂りすぎても余分なものは尿として排泄されるため、過剰摂取によるリスクは低いと考えられます。ただし、腎機能が低下している猫は、排泄機能が正常に働かないこともあるので注意してください。

水分|夏には熱中症予防などにも効果的

夏野菜のトマトは、9割以上が水分でできています。猫の水分補給は水が基本ですが、トマト好きの猫で、夏場などに水を飲んでいる様子があまり見られない場合に与えれば、夏バテや熱中症の予防効果を期待できるでしょう。

猫の祖先は砂漠地帯で暮らしていたので、水分をあまり取らなくても耐えられるといわれています。とはいえ、体内から水分が不足すると腎疾患や尿路結石症などを引き起こす恐れもあるので水分摂取量には十分に注意してください。

猫は、「ビタミンA(βカロテン)」の働きを期待できない

トマトに含まれるβカロテンは「プロビタミンA」とも呼ばれ、体内でビタミンAに変換されることでその栄養効果が得られますが、猫は、人間や犬のようにβカロテンをビタミンAに変換する酵素を持っていないため、残念ながらトマトのβカロテンにビタミンAの働きを期待することはできません。

ビタミンAは眼や被毛の健康に役立つ大切な栄養素なので、猫の場合はビタミンAそのものを食事から摂取する必要があります。当然ながら、総合栄養食を与えている場合は、しっかりビタミンAも含まれているので心配は不要です。

猫がトマトを食べるデメリット|葉や茎、未成熟な青いトマトに含む有毒物質「トマチン」で中毒症状の恐れあり

きれいな長毛タイプのアメリカンショートヘア
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
トマトを猫が食べることによるデメリットもあります。注意すべきポイントと成分を紹介します。

葉や茎、未成熟な青いトマトは避ける|有毒物質トマチンが含まれる

トマトの葉や茎、未成熟な青いトマトには、有害物質「トマチン」(アルカロイド配糖体)が含まれています。トマチンには、ジャガイモの芽に含まれる有害物質「ソラニン」と同じような作用があり、中毒を起こすと、下痢や嘔吐などの消化器症状が現れたり、赤血球が破壊されたりするほか、重症化すると死に至ることもあります。トマチンの量はトマトが熟すと減るので、真っ赤に熟したものを選ぶようにしましょう。

ちなみに、ミニトマトでは赤以外に、オレンジ、緑、黄、黒、白などカラフルなカラートマトをよく見かけます。ミニトマトの色の違いは皮や果肉に含まれる色素の違いで、黒にはブルーベリーなどに含まれる色素「アントシアニン」、緑色には「トマチン」など、猫にとって中毒を引き起こす可能性のある成分が含まれています。

また、家庭菜園などでミニトマトを育てている飼い主さんも多いかもしれませんが、家庭で作るカラートマトは完熟しているかどうか判断が難しい場合があります。

安全を考えて、「市販のトマトも家庭菜園のトマトも猫に与えてよいのは赤いトマトのみ」と覚えておけば、間違いが起こりにくいでしょう。


なお、赤色のトマトでもフルーツトマトは糖分が多いので、糖尿病や肥満の猫には与えないようにしましょう。一般的に、フルーツトマトには糖度8度以上のものが分類され、なかには10度以上とフルーツ並みの糖度を持つものもあります。

トマトジュースなどの加工品|調味されているものはNG

缶詰やジュースなど、トマトの加工品のなかでも与えてよいものとダメなものがあります。代表的な加工品について、猫に与えてもOKかNGかを整理しておきましょう。

◆トマト缶
食塩やクエン酸が添加されていないホールトマト、ダイストマトなどはOK。

◆トマトジュース
トマト100%の無塩タイプはOK。加塩タイプは、たとえ低塩を謳っていたとしても、猫の腎臓や心臓に負担がかかるのでNG。

◆ドライトマト
ドライトマトは味つけされたものが多いのでNG。

◆ケチャップ
食塩や砂糖、香辛料、食酢、玉ねぎ、にんにくなど、猫にとって害のある調味料や食材で味が調整されているものが多いのでNG。

◆その他のトマト加工品
トマトピューレー、トマトソース、トマトペーストなども、味つけされているものが多いのでNG。

カリウム|腎臓病の猫や心機能が低下している猫に注意

前述のとおり、トマトに含まれるカリウムは猫の健康に必要な栄養素ですが、腎臓病の猫や、健康な猫でも過剰摂取することにより「高カリウム血症」が引き起こされることがあります。高カリウム血症になると、筋力低下や四肢のしびれ、嘔吐などの胃腸症状、脈拍の異常などが現れ、最悪のケースでは心不全を起こして死に至ることもあり危険です。

心機能にも影響を与えることがあるため、腎臓疾患を持つ猫だけでなく、心機能が低下している猫にもカリウムを含むトマトは与えないようにしましょう。

食物アレルギー|下痢や嘔吐、かゆみなどに注意

トマトにはタンパク質が含まれるため、稀に食物アレルギーを起こすことがあります。愛猫にトマトを初めて与える場合は、まずはごく少量を与えてみて、下痢や嘔吐、かゆみなどのアレルギー性反応が出ないかどうか、しばらく様子を見るようにしてください。また、それまでトマトを食べて大丈夫だった猫でも、突然アレルギーを発症することもあるので注意しましょう。
トマトを食べて何らかのアレルギー性反応が見られた場合は、以後は与えないでください。

猫にトマトを与えるときの注意ポイント|赤色の完熟トマトを加熱して細かくカット。葉や茎、種、皮は取り除く

寝落ち寸前のスコティッシュフォールド
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愛猫にトマトを与える場合の注意点や、与えてよい部位、適量、調理法などをしっかり確認しておきましょう。

与えてよい部位

猫にトマトを与える場合は、赤色の完熟トマトで、ずっしりと重く、表面がつるりとしているものを選ぶのがポイント。未成熟の青いトマトには有害物質トマチンが含まれているので、必ず赤い色に熟したものを用意してください。表面に傷がついていたり割れたりしているものは、雑菌が繁殖していることがあるので避けたほうが安心です。また、表面に筋が入っているものは、「すじ腐れ」という状態になっているので、こちらも避けることをおすすめします。

猫に与えてよいトマトの部位は赤い実の部分のみです。トマトの葉や茎のほか、ヘタにもトマチンが含まれているので、くり抜くように取り除いてください。ミニトマトなどで、ヘタの部分が黒ずんでいる場合は黒カビの可能性があるので避けましょう。

また、消化されにくいトマトの皮や種も取り除いたほうがよいでしょう。

与えるときの適量

猫にトマトを与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、猫の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。

赤色トマト
猫の体重目安1日あたりの摂取可能目安
4~5kg119g~141g(約7/13~約9/13個

赤色ミニトマト
猫の体重目安1日あたりの摂取可能目安
4~5kg79g~94g(約5~6個)

※数値は、避妊・去勢済みの猫で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出

調理方法

トマトは生よりも、加熱したほうがリコピンを効率的に吸収できるため、茹でる、蒸すなどしてから与えることをおすすめします。加熱することで消化されやすくなるうえ、トマトに含まれるクエン酸による酸味も和らぎます。加熱後は、消化されにくい皮を剥き、種を取り除いて、食べやすいように細かくカットします。ミニトマトも、丸呑みしてのどに詰まらせる恐れがあるので、小さくカットしましょう。

健康によい効果が期待できるトマトを使った猫のご飯レシピ!

トマトを使った猫用のご飯レシピを2つ紹介します。

◆魚のトマトスープ
鯛などの魚で取ったスープ(出汁)に、皮を湯剥きして種を取り除き、細かくカットしたトマトを加えます。

◆トマトリゾット
鍋に、お湯、すりおろしたトマト、細かく刻んだきゅうり、まんだいビッツ、ヤギミルクパウダーと水を小さじ1杯ずつ混ぜたものを入れ、ごはんを加えて煮ます。


なお、人間の感覚からすると塩などを加えて調味したくなりますが、猫にとっては毒になるため、いずれも調味料を加える必要はありません。

猫にトマトを与えるときは赤いトマトのみ。猫にとって有害な葉・茎は取り除く

人間では、赤いトマトは医者いらずといわれるほど健康によい食材ですが、猫に与えるときは注意が必要です。トマトの葉や茎、未成熟のトマトには猫にとって毒性の高いトマチンが含まれているので与えてはいけません。もしトマト好きの猫に与える場合は、完熟した赤色のトマトを選び、消化に悪い皮や種は取り除いて細かくカットしたものを少しだけ与えるようにしましょう。
猫には与えてはいけない食べ物があります。確認しておきましょう
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/倉田千穂
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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