猫と暮らす
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【獣医師監修】猫にトマトを与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説
猫がトマトを食べても基本的には問題ありません。トマトには抗酸化作用の強い「リコピン」が多く含まれています。ただし、茎や葉、ヘタ、未成熟のトマトには中毒性のある「トマチン」という物質が含まれているので注意が必要です。ここでは、猫にも有益なトマトの栄養素と与える際の注意点を紹介します。
佐野 忠士 先生
酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授
酪農学園大学附属動物医療センター集中治療科診療科長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了
北里大学獣医畜産学部および同大学獣医学部勤務
日本大学生物資源科学部獣医学科勤務
●資格:獣医師/博士(獣医学)/世界的獣医心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER インストラクター)/CCRP
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本獣医学会/日本獣医師会/日本動物リハビリテーション学会/動物臨床医学研究所/日本麻酔科学会/日本臨床モニター学会
●主な診療科目:麻酔科/集中治療科
●書籍:『asBOOKS チームで取り組む獣医師動物看護師のためのICU管理超入門』/『as BOOKS チームで取り組む獣医師・動物看護師のための輸液超入門』/『動物看護師のための麻酔超入門・改訂版』 など多数
猫にトマトを与えるときは、葉や茎、未成熟のトマトに含まれる中毒成分「トマチン」に注意
ただし、さまざまな健康効果を期待できるトマトでも、猫に与えるときはいくつか注意が必要です。
トマトには、微量ですが「トマチン」と呼ばれる中毒性のある物質が含まれています。赤く熟したトマトの実を少し食べるくらいなら問題ありませんが、葉や茎、ヘタ、未成熟の青いトマトはトマチンの含有量が多く、猫が口にすると中毒症状を引き起こすことがあるため避けることが大事です。
また、トマトにはカリウムが含まれているので「高カリウム血症」にも気をつけたいもの。とくに腎臓病の猫や心機能が低下している猫では命に関わるため注意が必要です。健康な猫でも、過剰摂取により高カリウム血症を引き起こすこともあるので、与えすぎないようにしましょう。
トマトのおもな栄養素|9割以上が水分。炭水化物、タンパク質、ミネラルの順に多く含まれる
エネルギー | 20kal |
---|---|
水分 | 94.0g |
タンパク質 | 0.7g |
脂質 | 0.1g |
炭水化物 | 4.7g |
灰分(無機質) | 0.5g |
トマト(赤色ミニトマト)に含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー | 30kal |
---|---|
水分 | 91.0g |
タンパク質 | 1.1g |
脂質 | 0.1g |
炭水化物 | 7.2g |
灰分(無機質) | 0.6g |
文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照
猫がトマトを食べるメリット|リコピンやビタミンCによる抗酸化作用の効果を得られる。水分補給にも
リコピン|体内で発生した余分な活性酸素を除去
リコピンは猫の健康維持にも役立ちますが、猫は完全肉食動物なので、トマトを好まない猫に無理に与える必要はないでしょう。
カリウム|猫の健康維持に欠かせない主要ミネラル
カリウムは猫の健康維持に欠かせない栄養素ですが、総合栄養食を与えている場合は別途与える必要はありません。
ビタミンC|抗酸化作用がある
猫はビタミンCを体内で合成できるため必須栄養素とはされていませんが、とくにシニア期になると肝機能が衰えてくるため、体内合成量だけでは足りないとする研究結果もあります。また、5歳をすぎると急激に合成能力が落ちるため、体外から定期的に摂取することが推奨されます。もちろん、総合栄養食を与えている場合は、ビタミンCにも配慮されているので心配はいりません。
なお、水溶性ビタミンに分類されるビタミンCは、摂りすぎても余分なものは尿として排泄されるため、過剰摂取によるリスクは低いと考えられます。ただし、腎機能が低下している猫は、排泄機能が正常に働かないこともあるので注意してください。
水分|夏には熱中症予防などにも効果的
猫の祖先は砂漠地帯で暮らしていたので、水分をあまり取らなくても耐えられるといわれています。とはいえ、体内から水分が不足すると腎疾患や尿路結石症などを引き起こす恐れもあるので水分摂取量には十分に注意してください。
猫は、「ビタミンA(βカロテン)」の働きを期待できない
ビタミンAは眼や被毛の健康に役立つ大切な栄養素なので、猫の場合はビタミンAそのものを食事から摂取する必要があります。当然ながら、総合栄養食を与えている場合は、しっかりビタミンAも含まれているので心配は不要です。
猫がトマトを食べるデメリット|葉や茎、未成熟な青いトマトに含む有毒物質「トマチン」で中毒症状の恐れあり
葉や茎、未成熟な青いトマトは避ける|有毒物質トマチンが含まれる
ちなみに、ミニトマトでは赤以外に、オレンジ、緑、黄、黒、白などカラフルなカラートマトをよく見かけます。ミニトマトの色の違いは皮や果肉に含まれる色素の違いで、黒にはブルーベリーなどに含まれる色素「アントシアニン」、緑色には「トマチン」など、猫にとって中毒を引き起こす可能性のある成分が含まれています。
また、家庭菜園などでミニトマトを育てている飼い主さんも多いかもしれませんが、家庭で作るカラートマトは完熟しているかどうか判断が難しい場合があります。
安全を考えて、「市販のトマトも家庭菜園のトマトも猫に与えてよいのは赤いトマトのみ」と覚えておけば、間違いが起こりにくいでしょう。
なお、赤色のトマトでもフルーツトマトは糖分が多いので、糖尿病や肥満の猫には与えないようにしましょう。一般的に、フルーツトマトには糖度8度以上のものが分類され、なかには10度以上とフルーツ並みの糖度を持つものもあります。
トマトジュースなどの加工品|調味されているものはNG
◆トマト缶
食塩やクエン酸が添加されていないホールトマト、ダイストマトなどはOK。
◆トマトジュース
トマト100%の無塩タイプはOK。加塩タイプは、たとえ低塩を謳っていたとしても、猫の腎臓や心臓に負担がかかるのでNG。
◆ドライトマト
ドライトマトは味つけされたものが多いのでNG。
◆ケチャップ
食塩や砂糖、香辛料、食酢、玉ねぎ、にんにくなど、猫にとって害のある調味料や食材で味が調整されているものが多いのでNG。
◆その他のトマト加工品
トマトピューレー、トマトソース、トマトペーストなども、味つけされているものが多いのでNG。
カリウム|腎臓病の猫や心機能が低下している猫に注意
心機能にも影響を与えることがあるため、腎臓疾患を持つ猫だけでなく、心機能が低下している猫にもカリウムを含むトマトは与えないようにしましょう。
食物アレルギー|下痢や嘔吐、かゆみなどに注意
トマトを食べて何らかのアレルギー性反応が見られた場合は、以後は与えないでください。
猫にトマトを与えるときの注意ポイント|赤色の完熟トマトを加熱して細かくカット。葉や茎、種、皮は取り除く
与えてよい部位
猫に与えてよいトマトの部位は赤い実の部分のみです。トマトの葉や茎のほか、ヘタにもトマチンが含まれているので、くり抜くように取り除いてください。ミニトマトなどで、ヘタの部分が黒ずんでいる場合は黒カビの可能性があるので避けましょう。
また、消化されにくいトマトの皮や種も取り除いたほうがよいでしょう。
与えるときの適量
また、猫の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。
赤色トマト
猫の体重目安 | 1日あたりの摂取可能目安 |
---|---|
4~5kg | 119g~141g(約7/13~約9/13個 |
赤色ミニトマト
猫の体重目安 | 1日あたりの摂取可能目安 |
---|---|
4~5kg | 79g~94g(約5~6個) |
※数値は、避妊・去勢済みの猫で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出
調理方法
健康によい効果が期待できるトマトを使った猫のご飯レシピ!
◆魚のトマトスープ
鯛などの魚で取ったスープ(出汁)に、皮を湯剥きして種を取り除き、細かくカットしたトマトを加えます。
◆トマトリゾット
鍋に、お湯、すりおろしたトマト、細かく刻んだきゅうり、まんだいビッツ、ヤギミルクパウダーと水を小さじ1杯ずつ混ぜたものを入れ、ごはんを加えて煮ます。
なお、人間の感覚からすると塩などを加えて調味したくなりますが、猫にとっては毒になるため、いずれも調味料を加える必要はありません。
猫にトマトを与えるときは赤いトマトのみ。猫にとって有害な葉・茎は取り除く
文/倉田千穂
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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