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ライフステージに合わせて、猫も栄養管理をしよう!

猫は人の何倍ものスピードで成長し、年をとっていきます。人と同じく、育ち盛りの頃と、中年や高齢では、必要な栄養バランスが異なります。また、妊娠中や避妊後も、栄養管理の留意点が異なります。猫のライフステージをよく理解して、フードを与えましょう。

年齢や状態によって、必要な栄養量や割合は変わる。

 体が必要とする栄養素の量は、年齢や生活状態によって異なります。伸び盛りで活動的な中学生は食事をモリモリ食べますが、大人になってもその調子では、肥満になって、生活習慣病のリスクが高まってしまいます。
 猫も同様です。必要な栄養素の量は、ライフステージ(年齢、肥満などの生活状態、妊娠などの生理状態)によって、とらえ直す必要があります。子猫には成長するためにたくさんの栄養が必要ですし、高齢になって、代謝や運動量が落ちてくると、肥満や病気に気をつけなければなりません。
 愛猫の健康のために、ライフステージに応じた栄養管理をしましょう。

成長期は、大切な時期。骨や筋肉、さまざまな臓器がつくられる。

 生まれてから成長が完了するまでを「成長期」といい、栄養のとり方の状態から、「哺乳期」「離乳期」「離乳後の成長期」に分けてとらえることができます。「成長期」には、体を維持したり活動したりするための栄養のほか、体や免疫などのしくみが発達するための栄養も必要になります。
 母乳を飲んで育つ「哺乳期」には、母猫の栄養管理が重要になります。「離乳期」は母乳を飲みつつ、母猫と同じ食物に少しずつ慣れていく期間で、食事の提供を、飼い主が受け持つことになります。「離乳後の成長期」は、母乳を飲まなくなってから成長が完了するまでの期間です。

離乳期は、子猫の食事の世話を、母猫からバトンタッチ。

 子猫に乳歯が生え始め、母猫の食べ物に興味を示しだす生後3〜4週頃から、お湯を加えておかゆのようにしたフードを離乳食として与えます。母乳も飲んでいるなら、最初はなめる程度から始め、生後6〜10週(2カ月半)くらいには固形フードを食べられるようにします。
 離乳食用のフードは、消化がよく、少量で効率よくエネルギーとなる成長期用の総合栄養食(「子猫用」などの表示がある)を与えましょう。母猫の繁殖期用フードも適しています。自家製の離乳食は栄養的に充分とはいえません。
 とくに猫は、生後6週前後までに限られたものしか口にしていないと、食の好みが限定されやすいので注意します。

離乳後の成長期は、体重と体型を把握して、過不足なく食事を増やしていく。

 離乳後の成長期からは、子猫は飼い主が与えるフードのみによって成長していきます。猫は生後約4カ月までに、成猫の体重の50%まで急激に成長し、その後、10〜12カ月くらいまで成長が続きます。大切なのは、成長に合わせてフードの量を適切に増やし、健康的な成長を促すことです。子猫用(成長期用)フードに記載されている、体重や月齢による給与量を参考にしながら与えましょう。
 また、離乳期にフードに混ぜていた水分もなくなるので、いつでも新鮮な水が飲めるようにすることも大切です。小さな体でも飲みやすい器の高さにし、溺れないよう、器の大きさにも留意しましょう。

成猫期は、肥満に注意! 加齢を早めない栄養管理を。

 成猫期(成熟期・維持期)とは、成長が止まってから、平均寿命のおよそ半分までの期間で、猫では1才〜7才くらいとされています。
 変化の少ない期間のようにも思えますが、この時期の栄養管理が悪いと、健康に影響を及ぼすばかりか、加齢を早めることにもなります。
 とくに、避妊・去勢をすると、それまでより必要なエネルギー量が減るため、肥満の予防はこの時期の重要ポイントです。定期的な体重測定をし、体重が増えてきたら獣医師に相談しましょう。食事の量や内容のコントロールのほか、上下運動ができる場所を確保するなどして、適度な運動をさせることも大切です。

成猫期は、加齢に個体差が出てくる時期。かかりやすい病気も知っておこう。

 愛猫の健康のために、かかりやすい病気と栄養素の関係を知っておきましょう。
 乾燥地帯での生活をルーツにもつ猫は、水をあまり飲みたがりません。また下部尿路疾患のリスクが高いので、水をいつでも飲めるようにすることが大切です。とくにこの時期に多いストルバイト尿路結石症を避けるには、リンとマグネシウムの量の適度な制限が必要です。猫の死因として多い慢性腎臓病が進行していた場合、リンやたんぱく質の過剰摂取が、症状を悪化させることがあります。自己流の手作り食や、偏った肉食を続けることは避け、栄養素がコントロールされた総合栄養食を与えるようにしましょう。
 健康寿命には歯も大切ですから、歯石の沈着に留意したフード選びも重要です。

高齢期、寿命は年々延びているが、病気になりやすくなる時期。

 加齢に伴う変化が外見や体の機能に現れてくる時期を、高齢期(シニア期)と呼びます。猫では一般的に7、8才以降を指しますが、個体差も大きいものです。
 高齢期の栄養管理で大切なのは、加齢を遅らせ、高齢になるとかかりやすくなる病気を遠ざけることです。もし病気になった場合は、病気の進行を最小限にとどめるために、病気の特徴に沿った栄養管理が必要になります。
 安全で快適な室内飼いが進み、20才以上まで生きる猫も珍しくなくなりました。愛猫の健康なシニアライフを、栄養の面からも、飼い主がしっかりバックアップしたいものです。

高齢期は、これまでと同じように、食べさせていては危険!

 高齢期の猫は、じっとしている時間や寝ている時間も増え、活動的でなくなります。筋肉量が減少し、基礎代謝も低下してきます。このため、1日の必要摂取カロリーは、成猫期に比べて減少します。これまでと同じフードを同じだけ与えていては肥満になりやすいので、脂肪の割合などが抑えられた高齢期用のフードへの切り替えが必要です。
 ただし、さらに年をとると、食べる量が減ったり消化吸収能力が衰えてきたりすることがあります。その場合には、エネルギー効率のよい脂肪を適度に含んだ、消化のよいフードのほうが合う場合もあります。愛猫の体の状態に応じて、獣医師の判断も仰ぎながらフード選びをしましょう。

かかりやすい病気に留意した栄養管理を。

 猫の死因で多いものに、腎不全があります。慢性腎臓病は、初期の段階では症状がみられないのも特徴です。手作り食などでたんぱく質を過剰に摂取していると、気付かないうちに症状を重くすることがあります。
 腎臓病が進行していると、リンやナトリウムの過剰摂取が症状を悪化させます。ですから、日頃から塩分をとりすぎることは、避けたほうが安全です。とくに人の食べ物や犬・猫用のトリーツ・スナック類は、塩分を多く含んでいるので要注意です。
 猫はもともと水をあまり積極的に飲まない動物ですが、高齢になると、のどの渇きに気付きづらくなり、ますます水を飲む量が減ります。食事の一部をウエットフードにしてフードから水分を補給させることも効果的です。

高齢期の猫の食事を替えるときはゆっくりと。

 高齢期には、年齢や体調に応じたフードに切り替えたいことがあるほか、病気の場合、処方される療法食に切り替えなければならない場合も多くあります。
 高齢になると、長年食べ慣れたフードへのこだわりから、新しいフードを頑固に拒否する傾向が強くなります。すんなり食べてくれる場合にも、胃腸の適応能力が低下しているため、急いでフードを切り替えると、消化不良を起こすおそれがあります。ふだんでも、フードの切り替えは消化不良を起こさないように、1週間ほどかけて徐々に行うべきですが、高齢期には、さらにゆっくり切り替えるようにしましょう。
 さらに高齢になると、味覚や嗅覚が衰えたり、歯周病になったりするせいで、食欲自体が落ちてくることもあります。ドライフードをウエットフードに切り替えたり、さらにウエットフードを少し温めて嗜好性を高めたりするなどの工夫もしましょう。

妊娠・授乳期は、ライフステージの中でいちばんエネルギーが必要。

 妊娠・授乳期の母猫は、何匹もの子猫を体内や母乳によって育てるために、多くの栄養を必要とします。とくに授乳中は、ライフステージの中でエネルギー要求量がもっとも増すときでもあります。
 妊娠・授乳中の猫には、栄養価の高い繁殖期用か、子猫用のフードを与えるようにします。猫の妊娠期間は63〜65日で、妊娠初期から、出産後に備えて脂肪をため込みます。このため、妊娠6〜7週までに、成猫期のエネルギー要求量の125〜150%まで増加するように、食べる量を増やしていきます。授乳期には好きなだけ食べられるようにしておいてもよいくらいです。
引用元:ねこのきもち『愛猫の栄養学事典』
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