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【獣医師が解説】立ち会うことになっても安心!猫の出産 〜基礎知識からお産の流れまで〜

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1)猫の妊娠期間や胎子数

猫の基本的な妊娠期間は約63日ですが、実際は63日より若干長いと言われています。また、品種・年齢・栄養状態・胎子数などによっても妊娠期間には差が見られます。
猫は妊娠40日を過ぎたころから、お腹が大きくなったのが分かってきますが、それ以前に外見上の変化は見られません。
猫は一度に1〜8頭程度の子猫を産みます。そのため、避妊手術をせずにいると、いつの間にかどんどん子猫が増えてしまい、飼えなくなってしまうケースがみられます。妊娠を望まない場合は避妊手術を受けるようにしましょう。

2)猫の妊娠診断

猫の妊娠を診断する方法は、触診・超音波検査・レントゲン検査の3つがあります。

1.触診

触診とは、直接猫のお腹を触ることで妊娠しているかを確認する方法です。触診では、交配後20日ごろから診断可能です。しかし、慣れてない方が触診を行うことで流産をする可能性もあるので、必ず獣医師に診断してもらうようにしてください。

2.超音波検査

超音波検査では、交配後19日頃から診断可能です。また、胎子の心臓の動きがリアルタイムで分かるため、生死の確認も行えます。さらに、胎子数を数えることもできますが、胎子数が多いほど難しくなります。

3.レントゲン検査

レントゲン検査は、胎子数を正確に診断するために行います。レントゲン検査では、胎子の骨を見て診断するため、胎子の骨がしっかりとレントゲンに写るようになる交配後40日以降で診断が可能になります。
またレントゲン検査では、母猫の骨盤を胎子が通れるかを確認することができ、自然分娩できるかの判断にも役立ちます。母猫の骨盤が極端に狭い場合などは、自然分娩できないため、帝王切開になることが多いです。

3)猫の妊娠中の注意点

猫の妊娠がわかった後に、日常生活や食事で気をつけることをまとめました。

1.日常生活

交配から14日前後は、着床時期なので最も安静にする必要があります。その後は、過度な運動はさせず、ストレスを与えないことが大切です。過度な運動は禁物ですが、適度な運動は必要となります。運動不足になると筋力が落ち、陣痛が弱くなり難産になる可能性があります。しかし、運動させなければと思って、普段しないようなことを急に始める必要はありません。

さらに、お腹が大きくなってくると猫は自分の体の大きさが認識できずに、いろんな所にお腹をぶつけてしまうことがあります。特に、階段やソファーなどの上り下りの際にお腹が段差に当たってしまうことがよくあるので、気をつけて観察しましょう。

猫は、交配から14日頃に食欲が落ちることがあります。これは、人間のつわりと同じような状態です。食欲の低下が一時的な場合は心配いりませんが、ずっと食欲が落ちている場合は何かしらの異常が起きている可能性があるので、動物病院を受診しましょう。

また、妊娠中のシャンプーはストレスがかかることもあるので、なるべく控えるようにしましょう。汚れてしまった場合は、体を拭く程度にしてください。出産が近づいてくると、おっぱいの周りの毛は自然に抜けることがほとんどですが、抜けない場合は子猫がおっぱいを吸いにくいので、カットする必要があります。

妊娠中にワクチンを打つことはできないので、交配させる前にワクチンを打つようにしましょう。ワクチンをしっかりと打つことで、子猫へ十分な抗体を与えることができます。
外に出て行く猫の場合は、出産予定の7日前頃からは外で何が起こるか分からないので、外に出さないようにしましょう。

出産が近づいてきたら、今まで以上にストレスがかからないように注意しましょう。そして、母猫が安心できる場所を作ってあげることも大切です。

2.食生活

妊娠がわかってから1ヵ月程度は、今まで通りの食事量で構いません。1ヵ月を過ぎた頃から、少しずつ食事量を増やすようにしましょう。増やす量は、今までの3〜4割増ほどがよいでしょう。しかし、妊娠中に太り過ぎてしまうと難産の原因になるため、太り過ぎには注意しましょう。
出産が近づいてくると、子宮が大きくなるため、1度に沢山の量は食べることができなくなります。そこで、少量の食事を数回に分けて与えるようにしましょう。
母猫の栄養が足りない場合は、新生子の低体重の原因となり、その後の成長も悪くなる傾向にあるため、妊娠中の食事はとても大切です。
妊娠中は、総合栄養食を与え、体重の増減に気をつけるようにしましょう。

4)出産の準備と徴候

出産前に準備するものや出産の徴候〜流れを説明します。

1.準備するもの

出産予定日の7日前頃までには、母猫が安心して出産できる場所(段ボールや箱)を用意してください。猫は天井に蓋がある箱を好む傾向にありますが、猫によっては落ち着かないこともあるので、その子にあった場所を見つけるようにしましょう。また、箱の中にはタオル等を敷き詰め、温かくしてください。

出産予定日が近づいてくると、母猫は落ち着かず、知らない人や動物が近づくのを嫌がります。そのため、静かであまり家族が近づかない場所を用意してあげることが大切です。しかし、家族がいないと不安そうにしている場合は、たまに様子を見に行き、安心させてあげましょう。

また、稀に母猫が生まれた子猫のへその緒の処理をしない場合があるので、凧糸などのしっかりした糸やはさみなどを用意しておきましょう。

2.出産の徴候

落ち着きが無くウロウロし、タオルなどを掘るような巣作り行動をとります。また、陰部を気にしてしきりに舐めるようになります。さらに、浅く速い呼吸になります。犬では体温の低下から出産の予測ができますが、猫では体温の低下が著しくないため、体温の低下からの出産予測は難しいです。経産猫の場合は、出産の2〜3日前頃から、乳汁が出ることがありますが、初産の場合は出産日まで、起こらないことが普通です。

5)出産の流れ

出産の過程は、3つのステージに分けることができます。それぞれ、ステージ1(開口期)、ステージ2(娩出期)、ステージ3(後産期)と呼ばれます。

■ステージ1(開口期)

出産の準備に入り、落ち着きがなくなり巣作り行動をするようになります。これらの変化は出産の1〜2日前ごろから起こります。さらに、陰部が充血して、透明の粘液が出ることもあります。この時期には体温の低下も見られますが、体温を測られるのを嫌がり、興奮することで体温が上昇することがあるので、注意が必要です。また、嫌がることを無理にすることでストレスを感じるので、無理にはしないようにしましょう。

■ステージ2(娩出期)

分娩の開始時間は、母猫が落ち着ける夜中〜朝方にかけてが多いようです。これは、夜中や朝方は静かなため、母猫が落ち着けるからではないかと言われています。

娩出期になると定期的な陣痛が起こり、破水が起こります。そして、さらに陣痛が強くなり、羊膜に包まれた胎子が娩出されます。羊膜は自然と破れるか、母猫が破ることで胎子が出てきます。母猫は、へその緒を自分でちょうど良い長さで噛み切り、胎子を舐めることで呼吸を促します。

母猫が羊膜を破らない場合やへその緒を噛み切らない場合は、サポートしなければなりません。羊膜を破り、へその緒を糸で縛って、鼻や口に入っている羊水を出し、体をタオルで拭き、呼吸を促します。この時、胎子を強く振ったりしてはいけません。

また、生まれた子猫はすぐに乳を飲み始めます。乳を強く吸うことで陣痛が促され、次の胎子がスムーズに出産されます。そのため、生まれた子猫をすぐに母猫から取り上げないようにしましょう。

分娩にかかる時間は、経産・未経産・胎子数などにより異なりますが、経産の猫の方が分娩時間は短い傾向にあります。一般的に、陣痛が始まってから2時間以内、破水が起きてから1時間以内に胎子は出てきます。これ以上時間がかかっている場合は、異常の可能性があるため、動物病院へ連絡してください。

母猫は、分娩が終わるまで落ち着かず、いろいろと姿勢を変えることがよくあります。その際、子猫を踏んで押し潰してしまうなどの事故が起こってしまうことがあります。そのため、分娩が終了するまでは注意深く観察するようにしてください。

■ステージ3(後産期)

子猫が生まれると同時に、必ず胎盤が出てきます。1匹の子猫に対して1個の胎盤があるので、子猫の数と胎盤の数は必ず同じでなければなりません。胎盤が子宮の中に残っていると、子宮炎などの病気になってしまうので、要注意です。子猫と胎盤の数が違う場合は、獣医師に相談しましょう。

また、母猫は本能的に胎盤を食べることがあります。そのため、子猫の数と胎盤の数が合わないということがあります。母猫が胎盤を食べる前に胎盤が排出されていることを確認しましょう。
また、胎盤をたべることで、栄養がついたり次の陣痛が促進されることはありません。むしろ嘔吐や下痢を起こし、母猫の調子が悪くなってしまう場合もあるので、なるべく胎盤は食べさせない方がよいでしょう。

6)難産の判断と対処法

難産とは、分娩の過程で人の助けや医学的な処置をしなければ、母猫と胎子の命に危険が及ぶ恐れのある状態のことをいいます。猫の難産の発生率は、犬より低いですが、純血種の場合は難産の発生率が高い傾向にあります。難産の原因は、母体側と胎子側の2つに分けられます。母体側の原因には、肥満・高齢・初産などがあげられます。胎子側の原因には、猫では稀ですが母体に比べて胎子が大きすぎる・妊娠期間が長引いたときなどがあげられます。

1.難産の判断

陰部から胎子の一部が出ているが、いくら力んでもそれ以上進まない場合や、破水したのに胎子が出て来ないなどの場合は胎子の体の一部がひっかかっているなどの可能性があります。難産の判断はとても難しいので、わからないときは獣医師に相談しましょう。
また、難産の場合は帝王切開になる可能性が高いです。帝王切開は一刻を争うので、飼い主さんも帝王切開になる場合のこともしっかりと考え、心の準備をしておきましょう。

2.難産の対処法

陰部から胎子の一部が見えていて、力んでいるがなかなか進まない場合は、胎子を持って母猫の陣痛に合わせて引き出してあげることで、胎子を取り上げることができることがあります。このとき、胎子の一部を引っ張るのではなく、胎子の体全体を包み込むような感覚でゆっくり引っ張ることが大切です。それでも引き出せない場合は、帝王切開になります。
一部の対処法を紹介しましたが、慣れない方が行うのはとても危険なので、必ず獣医師に相談して指示を仰ぐようにしましょう。

7)出産後の注意点

出産にも注意が必要ですが、出産後にも問題が起こることがあります。出産後に気をつけたい問題についてまとめました。

1.痙攣

出産後に母猫の血液中のカルシウムが低下し、痙攣が起きることがあります。原因ははっきりしていませんが、子猫の骨を作る為や乳にカルシュウムが取られるためではないかといわれています。まれに妊娠中に起こることもありますが、多くは出産後1~3週に起こります。

しかし、授乳中はいつでも起こる可能性があります。血液中のカルシュウムが低下した場合は、適切な治療を受けなければ命に関わりますので、痙攣が起こった場合はすぐに動物病院を受診しましょう。

低カルシュウムになるのを防ごうと思い、カルシウム剤などを妊娠中から与えると逆に出産後に低カルシウムを起こす可能性が高くなります。バランスのよい食事を与えることが一番大切です。子猫の数が多い場合は、何匹かに粉ミルクを与えることがよいでしょう。

2.子宮炎

出産後に子宮に細菌感染が起こり、発症します。難産や胎盤が排出されないことが原因となることが多いです。発熱や食欲低下や陰部から腐敗臭のする悪露が見られることがあります。状態が悪くなると乳が出なくなるだけでなく、母猫の命に関わることもあるので、動物病院を受診しましょう。

まとめ

妊娠しているかもしれないと思ったときは、まず動物病院で妊娠しているかの診断を受けるようにしましょう。そして、妊娠中は総合栄養食をしっかりと食べ、適度な運動をし、ストレスのかからないような環境を作ってあげましょう。

猫は犬に比べて比較的安産な傾向にありますが、難産になる場合もあります。難産かもしれないと思った場合は、すぐに動物病院へ連絡しましょう。また、難産と判断された場合は帝王切開になることがほとんどです。帝王切開は一刻を争うので、飼い主さんも帝王切開になる場合のこともしっかりと考え、心の準備をしておきましょう。

また、出産後にもいろいろなトラブルが生じる場合もあるので、母猫や子猫の状態をこまめに観察するようにしましょう。




監修/八木田智洋(獣医師・かんもん動物病院

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