猫と暮らす
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【獣医師が解説】猫にパンを与えてはいけない理由 特にダメなパンは
猫に人間用のパンを与えてはいけません。パンには砂糖や塩、バター、保存料などが使われていたり、玉ねぎやチョコレートといった猫が食べたら危険な食材が含まれていたりすることがあるからです。猫が人間用のパンを誤食した場合に考えられる症状と対処法を紹介します。
佐野 忠士 先生
酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授
酪農学園大学附属動物医療センター集中治療科診療科長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了
北里大学獣医畜産学部および同大学獣医学部勤務
日本大学生物資源科学部獣医学科勤務
●資格:獣医師/博士(獣医学)/世界的獣医心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER インストラクター)/CCRP
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本獣医学会/日本獣医師会/日本動物リハビリテーション学会/動物臨床医学研究所/日本麻酔科学会/日本臨床モニター学会
●主な診療科目:麻酔科/集中治療科
●書籍:『asBOOKS チームで取り組む獣医師動物看護師のためのICU管理超入門』/『as BOOKS チームで取り組む獣医師・動物看護師のための輸液超入門』/『動物看護師のための麻酔超入門・改訂版』 など多数
猫はパンを食べてはいけない。調理パン・菓子パンなどは使われる食材によって命の危険があることも
猫は本来、狩りをして食べ物を確保してきた肉食動物なので、そもそも炭水化物を消化するのが苦手です。そのため、炭水化物のパンを過剰に摂取すると、消化不良を起こして下痢や便秘になる可能性も。さらに、人用に作られたパンに入っている砂糖や塩、バターの量は、人間よりもはるかに体の小さな猫にとっては過剰な量であり、病気や体調不良の原因にもなりかねません。
また、調理パンや菓子パンのなかには、玉ねぎやレーズン、チョコレートといった猫の健康を害する危険な食べ物が使われているものがあります。飼い主さんが愛猫においしいパンをお裾分けしてあげたいと思う気持ちが、かえって猫の健康を害する結果になるのは避けたいものです。
しかしながら、なかにはパンを好んで食べる猫もいるようです。猫の嗜好性が決まる生後6週間から8週間程度の間にパンをよく食べていた猫は、成長してもパンを好んで食べるといわれています。とはいえ、猫本来の食生活にパンはとくに必要のない食べ物です。愛猫がほしがるからといって、積極的に与えるのはやめましょう。
猫がパンを食べたときに見られる症状|嘔吐、下痢、血尿、ふらつく、痙攣、意識を失うなどの中毒症状
チョコ入りパンを食べた場合
加熱など、調理を経てもテオブロミンの毒性は変わりません。猫のテオブロミン中毒のおもな症状は以下の通りです。
- 嘔吐、下痢
- 頻尿、血尿、失禁
- 発熱
- 呼吸が荒くなる、苦しそう
- 痙攣、硬直
- 息が荒くなる
- 脈の乱れ(頻脈、不整脈など)
- 意識を失う、昏睡、など
猫が食べてしまったチョコレートの量が多ければ多いほど危険です。摂取量が多いと24時間以内に死亡するケースもあります。
レーズン入りパンを食べた場合
- たくさん水を飲み、たくさん排尿する、もしくは尿が出なくなる
- 嘔吐を繰り返す
- 元気がなくなる
- 食欲低下
- アンモニア臭のような口臭がある
- 痙攣する
- 血圧や体温の低下
- 昏睡 など
猫の急性腎不全は、急激に悪化して重篤な状態に陥りやすいのが特徴です。適切な処置を施しても、残念ながら命を落とすケースもあります。
玉ねぎ入りパンを食べた場合
- 元気がなくなる
- 下痢、嘔吐をする
- 血尿が出る
- 発熱する
- ふらついて歩けなくなる
- 歯茎や目の結膜が白くなる(貧血の症状)
- 粘膜が黄色く見える(黄疸が出る)
- 呼吸や脈が速くなる
- 呼吸困難になる
- 血便が出る
- 吐血する
- 意識を失う(ショック状態) など
なかでも血尿と貧血は猫の「ネギ中毒」の代表的な症状です。愛猫がネギを誤食した、または誤食した可能性があり、ピンク色の尿(血尿)が出たり、足元がふらふらし始めたら、ネギ中毒の可能性が高いです。すぐに動物病院を受診してください。
症状が出るまでの時間
猫がパンを食べてしまった場合の対処方法
何らかの症状が出たら病院へ
ただし、チョコやレーズン、玉ねぎといった猫には危険な食材が含まれているパンを食べてしまった(と思われる)場合は、症状が現れていなくても、なるべく早く病院へ連れていってください。
なお、病院に行く際には、何をどのくらい食べたか、食べてからの経過時間、症状などをメモして持っていくと、診察および治療がスムーズに進みます。
病院での治療方法
中毒症状の原因物質を取り除く
ちなみに、食べたものを吐き出させる催吐処置は医療行為です。飼い主さんが無理やり吐かせようとするのは、たいへん危険なので、絶対にしないでください。
症状に応じた対症療法を行う
猫がパンを食べてはいけない理由|多様な調味料やNG食材による健康被害、アレルギー発症の危険あり
市販品は調味料などさまざまな材料が含まれている
市販の調理パンや菓子パンには猫に有害な原料が使用されていることも
食物アレルギー
また、小麦粉のほかにも食物アレルギーの原因となりうる材料が含まれていることがあります。たとえば卵、とうもろこし、牛乳など。最近は小麦の代わりに米粉を使ったパンも目にするようになりましたが、小麦アレルギーは回避できても原材料として含まれている卵や牛乳でアレルギーを発症する猫もいるので、もともとアレルギー体質のある猫がパンを誤食しないよう注意が必要です。
危険な量の目安
チョコレート(テオブロミン中毒量)
ネギ類(ネギ中毒量)
レーズン(ぶどう中毒量)
危険な量の目安は、巨峰なら約3粒~約10粒、マスカットで約7粒~約25粒、デラウェアで約20粒~約75粒と考えられます。
食塩
猫のパン誤飲を防ぐ方法
プレーンな食パンやロールパンをほんの少しかじった程度なら、それほど体調に影響はないと考えられますが、レーズン入りのパンやチョコを生地に練りこんであるパン、玉ねぎ入りの調理パンなど、猫にとって危険な食材が入っているパンを食べてしまったらたいへんです。
食事の途中で席を離れる場合は、猫が食べてしまったりしないようにパンの置き場所に注意し、パンのかけらが落ちたらきれいに掃除をしておくなど、猫の口にパンが入らないようくれぐれも注意しましょう。
人間用のパンは猫に積極的に与える食べ物ではない。与えるなら猫用パン、または手作りパンを
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「まいにちのねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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