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【獣医師が解説】猫の命をおびやかす! 猫伝染性腹膜炎「FIP」とは

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今回は、猫の感染症の中でも特に危険度の高い「猫伝染性腹膜炎(FIP)」について、その概要や治療法、感染経路や予防について解説します。万が一発症したときに早期発見ができるよう、病気について少しでも多く学んでおきましょう。


目次

「猫伝染性腹膜炎(FIP)」はコロナウイルスの突然変異が原因だった!

「猫伝染性腹膜炎(FIP)」の症状は2つのタイプに分かれる<

「猫伝染性腹膜炎(FIP)」の診断と治療法

「猫伝染性腹膜炎(FIP)」発症しやすい猫はいるの?感染は?

「猫伝染性腹膜炎(FIP)」できる予防・対策はしておこう!

「猫伝染性腹膜炎(FIP)」はコロナウイルスの突然変異が原因だった!

かごに入った猫
getty

「猫伝染性腹膜炎(FIP)」とは、猫の不治の病ともいわれている病気です。この病気は不明点が多く、現段階では特効薬となるワクチンはありません。
「猫伝染性腹膜炎(FIP)」は、猫コロナウイルスに感染したあと、猫の体内でウイルスが突然変異し、毒性の強いFIPウイルスとなることで発症するとされています。猫コロナウイルスの状態では、症状が現れないか軽い腸炎になる程度ですが、FIPウイルスに変異して発症するとほとんどが死に至ります。

「コロナウイルス」は完全室内飼いでも感染する

まず突然変する前の「コロナウイルス」は、どこにでもいるウイルスだということを知っておいてください。ある調査では、複数飼いの猫の80~90%、一匹飼いの猫の30~50%程度は感染歴があると推計されています。先にも説明しましたが、猫コロナウイルス自体は病原性が弱いので、無症状のまま自然に回復することが多いでしょう。

FIPウイルスに感染すると

猫コロナウイルスが猫伝染性腹膜炎(FIP)へと突然変異をする原因やタイミングは、まだ解明されていません。そして、FIPウイルスに感染したあと、体の中で何が起こっているか、ということも同じように分かっていないのです。
まだ研究段階ですが、“免疫の過剰反応によって、体が壊れていくのではないか”と考えられています。

「猫伝染性腹膜炎(FIP)」の症状は2つのタイプに分かれる

寝そべる猫
getty

FIPはドライタイプ・ウェットタイプの2種類に分類されますが、同時に併発する場合や、一方だけの症状だったのにもう片方の症状が後から出てくる場合もあります。
そしてドライタイプ、ウェットタイプともに、高熱、元気がない、食欲低下、体重低下、黄疸、下痢、嘔吐といった症状が現れます。それぞれ見ていきましょう。

ドライタイプ

イラスト/島内美和子

「ドライタイプ」は成猫に多く見られるタイプ。さまざまな臓器に肉芽腫or結節状の病変ができ、場所によって症状が異なるのが特徴です。たとえば脳に異常が出ると、異常行動や痙攣、発作などの神経症状が出たり、目に異常が出ると角膜の白濁や、目の虹彩が赤く濁るなどの見た目の変化が現れたりします。ほかにも、肝臓や腎臓、すい臓の障害なども報告されています。

ウェットタイプ

イラスト/島内美和子

「ウェットタイプ」は子猫に多く見られるタイプ。発症すると、血液中のたんぱく質が漏れ出し、腹部や胸部に体液がたまります。腹部や胸部に水が溜まることで呼吸数が増え、呼吸困難に陥る場合があるので注意が必要です。
そこまでご飯を食べていないのに腹部がパンパンに膨れることや、胸部が張っているといった症状がみられます。また、脱水症状や黄疸が見られることもあります。

「猫伝染性腹膜炎(FIP)」の診断と治療法

猫の横顔
getty

FIPは診断が難しい

FIPは診断が難しい病気です。ウェットタイプはお腹や胸に水が溜まり、その水を分析することで診断を行います。ドライタイプの場合には、数日の発熱や体重減少、元気がない、黄疸、眼球の異常、発作、痙攣といった症状と、血液検査による特異点が見られるかどうかなどが初期の診断となります。
当てはまる項目が複数あるとFIPの可能性が考慮され、特殊な検査を受けることになります。しかし、初期でドライタイプであると確定することは少なく、あくまでFIPの可能性が高いという診断にとどまることが多いそうです。万が一自宅の猫の様子がいつもと違うと感じたら、様子をよく観察するようにしてください。

不明点が多いのがFIPの特徴

FIPの診断で用いられる検査のひとつが猫コロナウイルスに対する抗体検査ですが、FIPウイルスと猫コロナウイルスを区別するのが難しいため、この抗体値が高いからといってFIPであるとは断定できません。また、リアルタイムPCR法という遺伝子検査でFIPウイルスを検出する方法もありますが、感染初期などでウイルス数が少ないと陰性となる場合もあるようです。いずれの検査も単独でFIPを確実に診断するのは難しいため、最終的にはこれらの検査結果やさまざまな所見を総合して判断されます。
このように、不明点が多いのがFIPの特徴といってもいいでしょう。もし、愛猫に疑わしい症状が現れた場合には、かかりつけの獣医師さんに相談することをおすすめします。

FIPの治療法

現状ではFIPの完治は難しく、出ている症状に合わせて治療薬を投与して症状を軽くするような、延命治療が主な目的となります。治療には抗生物質や抗炎症薬、ステロイド、インターフェロンなどが使われます。インターフェロンとは、ウイルスの増殖を抑えるために体内で作られるたんぱく質の一種。なんらかのウイルスに感染して体内で作られているインターフェロンが追い付かなくなったときに、体外からインターフェロンを投与してウイルスの増殖を抑えます。
しかしながら、FIPそのものに対して劇的な効果があるわけではありません。悲しいことですが、治療してもよくならないことがほとんどといってもいいでしょう。特に子猫のときにFIPと確定した場合は、ある程度の覚悟が必要です。

ねこのきもち WEB MAGAZINE「病気・症状データベース(感染症)」

「猫伝染性腹膜炎(FIP)」発症しやすい猫はいるの?感染は?

積み木で遊ぶ猫
getty

FIPは感染するの?

「猫伝染性腹膜炎」と病名がつけられていますが、FIPウイルス自体が感染するわけではなく、コロナウイルスが猫の体内でFIPウイルスに変異すると考えられています。猫コロナウイルスはほかの猫の便を通じて感染するので、多頭飼いをしている飼い主さんはトイレを清潔にするよう心がけてください。
まずは、FIPウイルスの元となる猫コロナウイルスに感染しないことが一番ですが、残念なことにペットとして飼われている猫の多くはこのウイルスに感染しているため、FIPを防ぐのはなかなか難しいでしょう。

FIPを発症しやすい猫はいる?

猫コロナウイルスがFIPウイルスに変異する条件は、いまだ明確にはなっていません。しかし、猫コロナウイルスに感染しているのははもちろんのこと、ストレスの多い猫にもFIPの発症が多いようです。また、比較的若い猫が多い傾向にもあります。

ブログで報告「FIPが完治」??

インターネットブログなどで「FIPが治った」という報告があがることがあります。本当に完治したのなら嬉しいことですが、このようなケースは生検やFIPの特殊検査をしていない場合が考えられます。つまり、FIPによく似た症状を発症していたため、FIPの診断が確実ではなかったということでしょう。
実際に「治った」と報告されるケースでは、確定診断まで進んでいなかった場合が多いのです。

「猫伝染性腹膜炎(FIP)」できる予防・対策はしておこう!

膝の上でくつろぐ猫
getty

予防は困難な病気ですが、飼い始めのときに「感染症のチェック」を受け、猫の住む環境にコロナウイルスをなるべく持ち込まないようにすることはある程度可能です。飼い主さんは愛猫に触れる前に、アルコール消毒する習慣を付けてください。また、外出先では、病歴が分からない猫に触らないことも大切です。
ストレスをかけない環境やトイレを清潔に保つことも有効です。フードや水は常に新鮮なものを用意し、居心地のいい環境づくりを心がけてください。さらに室温管理も重要な項目です。多頭密飼いを避け、日中は適温を確保できるように務めて、冷えやすい夜間は暖かい寝床を用意してあげましょう。

飼い主さんが感染症の症状を事前に知っておくことは、何よりも早期発見につながりますし、ストレスのない生活は他の病気の予防にもつながります。「愛猫に健康に過ごしてもらうために、私たちができることはなんだろう」と常に問い続けていきたいものですね。

参考/「ねこのきもち」2016年5月号『防げる?治せる?付き合える?意外と知らないねこの5大感染症』(監修:東京都江東区の猫専門病院 東京猫医療センター院長 獣医師 服部幸先生)
   「ねこのきもち」WEB MAGAZINE『病気・症状データベース(感染症)』
監修/ねこのきもち相談室獣医師
イラスト/島内美和子
文/HONTAKA
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。

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