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【獣医師監修】猫伝染性腹膜炎(FIP)とは?原因や症状、予防法も
猫の不治の病ともいわれている「猫伝染性腹膜炎(FIP)」。診断や治療が難しく、猫の感染症のなかでも特に注意が必要な病気です。今回は、猫伝染性腹膜炎(FIP)の原因や症状をはじめ、検査や治療法、予防法などについて解説します。
荒木 陽一 先生
猫伝染性腹膜炎(FIP)はどんな病気?
猫伝染性腹膜炎(FIP)の発症原因
しかし、何度か感染するうちに猫の体内で突然変異を起こし、強い毒性をもつ「猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPウイルス)」へと変遷することがあります。この突然変異したFIPウイルスが単球やマクロファージに侵入し、血管やリンパ管から全身にいきわたることで、猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症してしまうといわれています。
猫コロナウイルスは乾燥した排泄便のなかでも約7週間は生き残るといわれており、完全にウイルスを根絶するのが難しいので注意が必要です。
なお、「猫コロナウイルス」と、2020年より世界的に蔓延している「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」はまったく異なるものなので、混同しないよう気をつけましょう。
FIPウイルスの発症率や潜伏期間は?
なお、猫コロナウイルス感染から6~18ヶ月あたりが最もFIPウイルス出現のリスクが高く、短くて2~3週間、長くて数ヶ月~数年の潜伏期間があるようです。
猫伝染性腹膜炎(FIP)の致死率
「FIPが完治」の報告例もある?
つまり、FIPによく似た症状を発症していたものの、FIPの診断が確実ではなかったということです。実際に「治った」と報告されるケースでも、確定診断まで進んでいなかった場合が多いようです。
発症しやすい猫はいる?
なお、過去の症例から、雑種猫よりもベンガルやアビシニアンなどの純血種の猫のほうが、感染リスクは高いと考えられているようです。ただ、メカニズムが解明されているわけではないので、この年齢や猫種で必ず発症するというわけではありません。
猫伝染性腹膜炎(FIP)で見られる症状
ドライタイプ
- 神経症状(旋回・眼振・発作・起立不能・知覚過敏など)
- 眼科症状(ぶどう膜炎・虹彩炎・眼球の白濁・緑内障など)
- 腸間膜リンパ節腫大
- 皮膚のできもの など
ウェットタイプ
- 腹水(腹部がパンパンに膨れる・膨満感)
- 胸水(胸部が張る)
- 心嚢水(心臓の膜に水がたまる)
- 陰嚢水(精巣鞘膜にたまった水による陰嚢拡大)
- 副鼻腔炎 など
共通症状や複合型が見られる場合も
- 発熱
- 食欲不振
- 元気消失
- 体重の低下
- 黄疸
- 下痢・嘔吐 など
猫伝染性腹膜炎(FIP)の診断・治療法とは
猫伝染性腹膜炎(FIP)の検査・診断方法
まず、猫の病歴や飼育環境などの確認とともに血液検査や超音波検査などを行い、猫伝染性腹膜炎(FIP)の条件と一致する点がないかを確認します。その後さらに、以下のようなタイプごとの検査を行います。
ドライタイプの検査
ただ、検査に使う病変組織は腹腔鏡手術を行って採取しなければならないため、猫の体に負担が大きいという欠点があります。猫の体調面や金銭的負担を考えて、特殊検査を行わないケースがほとんどのようです。
ウェットタイプの検査
- 猫コロナウイルスPCR検査
- 細胞診を用いた遺伝子検査
- コロナウイルス抗体価検査
- リバルタ反応
- 蛋白分画 など
猫伝染性腹膜炎(FIP)の治療法
しかしながら、これらの薬は症状の緩和などには一定の効果があるものの、症状を回復させたり病気の進行を止めたりすることはできません。特に子猫のときに猫伝染性腹膜炎(FIP)と診断された場合は、命にかかわる難病という覚悟が必要となります。
新たな治療法を試す動きも
FIPの治療(診療)にかかる費用は?
傷病名 | 1頭あたりの年間診療回数 | 1頭あたりの年間診療費(中央値) | 1頭あたりの年間診療費(平均値) |
---|---|---|---|
慢性腎臓病(腎不全含む) | 15.0回 | 71,517円 | 272,598円 |
膀胱炎 | 3.0回 | 12,852円 | 45,741円 |
胃炎/胃腸炎/腸炎 | 2.2回 | 8,748円 | 36,334円 |
心筋症 | 6.6回 | 50,933円 | 164,135円 |
結膜炎(結膜浮腫含む) | 1.7回 | 5,368円 | 18,647円 |
原因未定の外耳炎 | 2.7回 | 7,560円 | 28,166円 |
糖尿病 | 14.0回 | 122,319円 | 321,831円 |
原因未定の皮膚炎 | 2.2回 | 6,480円 | 24,592円 |
尿石症 | 3.4回 | 14,256円 | 82,175円 |
歯周病/歯肉炎(乳歯遺残に起因するもの含む) | 2.6回 | 20,196円 | 71,061円 |
膵炎 | 9.0回 | 54,714円 | 209,220円 |
鼻炎/副鼻腔炎/上部気道炎 | 2.7回 | 7,639円 | 39,019円 |
甲状腺機能亢進症 | 8.5回 | 60,588円 | 191,908円 |
猫伝染性腹膜炎・FIP | 4.8回 | 40,360円 | 117,439円 |
膀胱結石 | 4.0回 | 21,596円 | 122,033円 |
便秘(巨大結腸症含む) | 3.4回 | 10,021円 | 59,061円 |
ただし、上記のデータはアニコム損保に契約した個体で、請求のあった診療費を集計したものです。個体によってはより費用が高額になることも、逆にここまでかからない場合もあるので、あくまでも目安として考えてください。
猫伝染性腹膜炎(FIP)の予防・対策法
そのため、現段階でできる予防・対策としては、以下のようなウイルスの伝染や免疫力の低下を防ぐための方法があげられます。
手洗い・消毒を習慣化する
また、猫コロナウイルスは化学的な刺激に弱く、アルコール消毒などで不活性化するといわれています。外出後や猫に触る前には、手洗い・消毒することを習慣づけておくことがおすすめです。
トイレを清潔に保つ
なかには、猫コロナウイルスに感染した猫、もしくは猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症した猫の便を介したと疑われる感染ケースも報告されているため、猫が排泄したあとはすぐに掃除・消毒をし、トイレを清潔に保つことを心がけましょう。
ストレスの少ない室内環境を整える
- フードや水は常に新鮮なものを用意する
- 日中・夜間の室温管理を徹底する
- 密になるような多頭飼育を避ける
- 新しい環境や慣れない環境など、ストレスを感じる生活環境をなるべく作らない
猫を複数飼っている場合は部屋わけの検討も
また、新しい猫を迎えたり、同居猫との相性が合わなかったりすることでストレスを感じる猫もいるので、猫同士の仲が良くないと感じたら、部屋をわけて飼育することも検討してみてください。
愛猫が健康・快適に暮らせる方法を考えることが大切
大切な愛猫のために、体調に異変が見られたらすぐに動物病院を受診し、ストレスや苦しみがない生活で快適に暮らせる方法を考えてあげましょう。
監修/荒木陽一先生(プリモ動物病院 練馬院長)
文/pigeon
※猫伝染性腹膜炎(FIP)を含む病気の治療費は、アニコム ホールディングス株式会社が公開している「アニコム 家庭どうぶつ白書2019」の猫の請求理由TOP20を参照。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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