猫の目の異変(病気のサイン)は、何となく見ているだけでは気付かないことも多いものです。飼い主さんが気付かない間、猫は痛みに耐えたり、視力を失って不安を感じたりしているかもしれません。この記事では、猫の目の異変に気付くためのチェックポイントと、猫がかかりやすい目の病気、おもな症状を解説します。
猫の目の病気に早めに気づこう
愛猫が目の病気になったら、いち早く気づいて正しい対処ができるようにしたいものですね。毎日の健康チェックは、飼い主さんにしかできません。毎朝起きたら、以下のチェックポイントを意識してチェックすることを習慣にしましょう。そして、少しでもおかしいと感じたら、早めに動物病院で受診しましょう。
猫の目の異変に気付くためのチェックポイント
・色のついた目ヤニやドロッとした目ヤニが大量に出ていない?
・白目や目のフチが充血していない?
・涙がつねに出ていない?
・目を開けにくそうにしたりショボショボしたりしていない?
・目全体の大きさはいつも通り?
・黒目の大きさはいつも通り?
・正面から見たときに左右でバランスが違っていない?
・表面が白っぽく濁っていない?
・表面が黒く濁っていない?
・黒目以外に黒い部分がない?
・目頭に赤い突起や白い膜が出ていない?
猫の目の病気 〜主なもの〜
猫の目の病気:結膜炎―目ヤニや涙が出る、目が充血する、目が腫れる
結膜炎とは、目の結膜(まぶたの裏の粘膜と白目)に炎症が起こる病気。結膜炎になると、目ヤニが大量に出る、涙が止まらない、目が充血する、目が腫れるなどの症状が出ます。多くは、猫カゼなどのウイルス性の病気に伴って起こります。
猫の目の病気:角膜炎―目を細める、目をショボショボさせる、涙が出る
角膜炎とは、目の角膜(目の表面を覆う透明の膜)に炎症が起こる病気。原因は、多くがほかの猫とのケンカなどによる外傷ですが、結膜炎に併発して起こることもあります。痛みが強く、猫は目を細める、ショボショボさせる、涙が出るなどの症状を見せます。角膜が白く濁ることもあります。
猫の目の病気:角膜穿孔―目に傷や穴がある、目をショボショボさせる、目が充血する
角膜に穴(穿孔)が開いている状態。おもに猫同士のケンカによる引っかき傷で起こりますが、角膜炎や角膜潰瘍の悪化で起こることもあります。強い痛みを伴うので、目をショボショボさせる、目が充血する、腫れる・むくむ、涙が止まらなくなるなどの症状が見られます。
猫の目の病気:角膜分離症―目の表面が黒く濁る
代謝障害により、目の表面が黒く濁る病気。黒い部分はやがてかさぶたのようになるため、角膜分離症と呼ばれます。原因はよくわかっていませんが、猫カゼなどのウイルス感染症と関係があると考えられています。ペルシャやヒマラヤンのほか、日本の三毛猫にも多くみられます。
猫の目の病気:緑内障―目の表面が白く濁る、目全体が大きくなる
眼球内には房水という液体が循環していて、つねに生産・排出されています。この眼球内の流れが阻害されたり、排出が悪くなったりして眼圧が上がる病気が緑内障です。強い痛み、目の表面が白く濁る、目全体が大きくなるなどの症状が出ます。網膜や視神経が圧迫されて失明することもあります。
猫の目の病気:白内障―黒目が白く濁る
水晶体(目のレンズ)の一部または全部が白く濁り、視力が低下する病気。猫には多くはありませんが、生後数ヶ月~2才の若い猫に時折見られます。原因は、先天性や遺伝性のほか、猫同士のケンカによる外傷で起こることも。進行すると緑内障を併発して失明することもあります。
猫の目の病気:ブドウ膜炎―目が充血する、目が白っぽく見える
眼球をぐるりととりまく3つの膜状組織(虹彩・毛様体・脈絡膜)をまとめてブドウ膜といい、そこに炎症が起こる病気をブドウ膜炎といいます。目が充血したり、目が白っぽく見えるなどの症状が出ます。おもに猫エイズ、猫白血病ウイルス感染症、猫伝染性腹膜炎などが原因で発症します。白内障に伴って発症することもあります。
猫の目の病気:チェリーアイ―目頭に赤い突起が飛び出る
目頭にある白い膜(瞬膜)の下にある充血した組織(瞬膜腺)が外側に飛び出してしまう病気。原因は、先天性のほか、加齢によって発症することも。外側に飛び出した部分に感染が起こり結膜炎や角膜炎の原因になりやすいので、手術で元の位置に固定する治療を行います。
猫の目の病気には正しい対処を
猫用に処方される目薬は、液体の点眼薬と眼軟膏の2タイプがあります。猫に嫌な思いをさせないように、上手に投与するコツを知っておきましょう。
猫に目薬を上手に投与するコツ
点眼薬と眼軟膏、どちらのタイプもまず猫の背後に回って手のひらで猫の顏をしっかりと支え、親指で上まぶたを軽く引き上げます。猫が嫌がって動く場合は2人がかりで行い、1人が両手で猫の顏をしっかりと固定しましょう。
あらかじめ愛猫の好きなおやつを少し用意しておいて、目薬を付けた直後に与えると、猫が目薬に対していい印象を持つようになります。
点眼薬の場合
点眼薬の場合は、猫から見えにくい方向から近づけ、目から1cmほどのところから、上まぶたと白目の間に1滴落とします。
眼軟膏の場合
眼軟膏の場合は、綿棒の先にほんの少し(1~2mm)とり、綿棒を猫の目に対して横にして近付ける。または軟膏チューブの先端に少量の軟膏を出し、直接まぶたの裏にそっと付けます。
愛情をもって適切なケアをしていこう
目薬などの投薬は、慣れるまでは飼い主さんも猫も不安なものでしょう。少しでも不安があればかかりつけの獣医師や動物病院のスタッフに、どのようにすれば上手にできるかを相談しながら行うのが良いですね。
適切なケアをして、症状が早く良くなるように根気よく続けていきましょう。
出典:『ねこのきもち』2018年2月号「症例写真でよくわかる 猫がかかりやすい目の病気」(監修 東京ウエスト動物病院 併設 眼科ケアセンター 江島博康先生)
監修/清水悌二先生(相模原プリモ動物医療センター第2病院勤務)