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【獣医師監修】舐めたり、噛んだりするのはなぜ?猫の毛づくろいの3つの理由

猫は、起きている時間の3割以上を、自分の体を舐めたり噛んだりして毛づくろいをします。食事の後や、飼い主さんがなでた後など、気が付いたときにいつもしている毛づくろい。実は毛づくろいには、猫の心と体をケアするという、大切な目的があったのです。今回は毛づくろいをする猫の心理と行動のヒミツにクローズアップします!

加藤 憲一 先生

 獣医師
 相模原プリモ動物医療センター院長

 日本大学生物資源科学部獣医学科卒業
 麻布大学附属動物病院腫瘍科専科研修医
●資格:獣医師/日本獣医がん学会獣医腫瘍科認定医II種

●所属:日本獣医がん学会

●主な診療科目:一般診療(外科・内科)/腫瘍科/画像診断科

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体をペロペロするだけで、猫はこんなことができる

前足を噛む猫
なぜ猫は毛づくろいをするのでしょうか? それには以下の3つの理由があると考えられています。
・健康維持と身だしなみのため
・ストレスや病気に対処するため
・親愛の情を示すため

健康維持と身だしなみのため

毛づくろいは猫の本能的な行動。生まれてしばらくの間は母猫が子猫の体を舐めますが、やがて自分で自分の体を舐めるように。成猫の場合、起きている時間の30%以上を毛づくろいに費やすそうです。

毛づくろいは大抵、顔周りから始まり体の下の方へと順番通りに時間をかけて舐めていきます。これは自分の身体に異常がないかどうか確かめる意味もあると考えられています。

毛づくろい中は、猫にとっておなかなど敏感な場所をさらけだすことになりがち。このため高い場所や部屋の隅など、安心だと考えられる場所で毛づくろいを行います。もし飼い主さんのそばにやって来て毛づくろいを始めたら、飼い主さんの近くを「安心できる場所」と感じているのかもしれません。

汚れやニオイをとる毛づくろい

第一の目的は、体に付いた汚れや、ニオイを取るため。もし毛づくろいをしないと毛がもつれてしまい、ノミのすみかになることも。そこから病気などが引き起こされる可能性も考えられます。特に食事の後は口の周りに汚れが付きがち。猫は時間をかけて毛づくろいを行います。

さらに猫の体には「感覚毛」とよばれる毛があります。これを舐めてきれいにしておくことで、獲物を捕ったり危険を察知したりしやすくなるのです

また、猫はもともと“待ち伏せ型”の狩りをする動物。自分の存在が相手に知られると、狩りを失敗してしまいます。そのため自分のニオイがなるべくしないように体を舐めて消す習性が、家庭で飼われるようになっても残っていると考えられます。

毛並みを整える毛づくろい

猫は身だしなみを整えるために毛づくろいを行うことがあります。動き回って遊んだ後や、寝ていて起きた後などは毛並みが乱れがち。体に汚れが付いていなくても乱れた毛並みが気になり、体を舐めて毛づくろいをするのです。

このため、猫の舌は表面がザラザラしていて、無数のトゲのような突起が覆っています。この突起が抜け毛やほこりなどを取り除き、毛並みをきれいに整えるブラシの役割をしています。

また、毛がもつれていて毛玉になりかけているようなときは、舌ではなく歯を使うことも。愛猫が体をカミカミしているように見える行動は、実は毛並みを整えている行動だったのです。
猫の舌

体温をコントロールする毛づくろい

気温が上昇すると、人は汗をかいて体温を下げることができますが、猫は毛に覆われている上に汗をかきにくいためにそれができません。その代わりに毛を舐めて唾液で濡らし、体温を下げると考えられています。唾液が蒸発するときに体から熱を奪っていくため、夏になると体を舐める回数や唾液の量を増やして、体温をコントロールできるのです。

ストレスや病気に対処するため

高い場所に飛び乗ろうとして失敗すると、猫はストレスを感じます。こんなとき、猫は体を舐めてその刺激をやわらげて気持ちを落ち着かせてリラックスしようとします。これを「転位行動」と呼び、やろうとしていたことができなかったり、失敗したときによく見られます。

また、毛づくろいによって自分のニオイで全身が覆われると、猫はリラックスできます。シャンプーをしたり、人がなでた後は猫にとって自分ではないニオイが体に残るので、毛づくろいをすることで改めて自分のニオイを付け直すと考えられています。
毛づくろいをする猫

激しすぎる毛づくろいは要注意

ほかに猫はこんなときにストレスを感じて毛づくろいをすることがあります。
・激しい遊びをした後
・飼い主さんに叱られたとき
・外から帰ってきたとき

とくに猫同士で激しい遊びをしたときは興奮することが多く、自分を落ち着ける意味で毛づくろいをすることがあります。叱られるのも、猫にとってはストレスになります。「ダメだよ!」などと声を掛けたとき、愛猫が毛づくろいをするところを見た人も多いのではないでしょうか。

注意したいのは、ストレスが強すぎて頻繁に体を舐めたり、毛が抜けて地肌が見えるほど毛づくろいを行う場合です。過剰な毛づくろいが見られたら、猫の周りで突然環境の変化があったかもしれません。その原因を取り除いたり、なるべく変化を感じさせない環境作りをしてあげましょう。

病気に対する毛づくろい

一般的に猫は体を満遍なく左右対称に舐めて毛づくろいを行います。もし片方の足だけ舐め続けるようなことがあれば、その部分に何らかのケガや病気があるせいかもしれません。

おなかや尿道など下腹部を集中的に舐めている場合は、オシッコの病気が考えられます。オシッコが出にくくなったり、出るときに違和感を感じる病気なので、猫も気になって舐めてしまうのです。

このように猫が体の一部をずっと舐め続けるようなら、病気やケガのせいかもしれません。起きている時間の大半を占めるような、長い毛づくろいが気になる場合は、かかりつけの動物病院に相談するようにしましょう。

親愛の情を示すため

猫は自分の体を舐めるだけでなく、猫同士で体を舐め合うことがあります。この行動は「親和行動」と呼ばれ、仲がよい猫同士でしか行いません。つまり、体を舐め合っている猫はとても仲がよいということ。

猫同士で舐め合うのは、顔や首の周りに限られています。足や背中、おなかなどを猫同士が舐め合うことはありません。これは、仲間同士の関係を深める目的で、お互いに自分では舐めづらい場所を舐めていると考えられています。たまに、一方の猫がしつこく舐めすぎて喧嘩になることもあるようですが、それももともとは仲がよいからです。

急所のお腹や、神経が集中する四肢やしっぽを嫌がる猫が多いのですが、母猫が子猫を舐める場合は、顔や首の周りに限らず肛門や陰部も舐めます。これは汚れを舐めとって、子猫の健康を維持する目的があるからです。
顔をなめ合う猫

まとめ

猫にとって体毛は、ただ保温のためにあるのではなく、感覚器としての機能も持ち合わせています。長い時間を使って念入りに毛づくろいをするのはそのため。猫にとって必要な行動なので、じゃませずゆっくり見守ってあげましょう。
参考/「ねこのきもち」2006年2月号『毛づくろい』(監修:尾形庭子先生)
監修/加藤憲一先生(相模原プリモ動物医療センター院長)
文/コージー根本
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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