愛猫の避妊手術は、初めて受けるものだと、飼い主さんは何かと不安ですよね。ですが正しいケア⽅法を知っていれば、怖いことはありません。術後に処⽅される薬の飲ませ⽅や注意点、術後に起こる変化について解説します。
避妊手術“直後”の猫の様子
メスの避妊⼿術は開腹⼿術となるため、オスの去勢⼿術に⽐べ、猫の体に⾮常に⼤きな負担がかかります。また、避妊⼿術でできた傷⼝に違和感があり、患部付近をなめたり気にしたりするようになりますが、猫が感じているのが違和感だけなのか、それとも痛みがあるのかを⾒極めることが重要です。症状や患部を気にするしぐさが⻑く続くようであれば、⼀度獣医師に相談してみましょう。
術後帰宅してから、猫に起こりうる様子は、下記の通りです。
術後の嘔吐・悪心
術後、麻酔薬や痛み止めなどの影響で、胃腸の働きが悪くなったり、猫が気持ち悪くなったりすることがあります。症状は軽度から重度まであります。以下のような状態が見られないか、よく観察してあげてください。
□舌なめずりをする、鼻をずっとなめている
□うなだれている
□ゲップをする
□やたらとあくびをする
□吐くようなしぐさをする
□うなる
□呼吸が速い・荒い
□元気がない
□口をくちゃくちゃしている
□よだれがずっと出ている
□吐く
□うずくまって動かない など
気持ち悪いという症状は、猫にとって耐えがたいストレスになります。上記の症状が見られた際は、早めに動物病院へ連絡を。
術後の痛み
静かに快適に休んだり、傷の近くに手が触れても猫が迷惑そうにしたりしない状態が通常です。以下のような症状が見られないか、よく観察してあげてください。
□反応がにぶい
□丸まってうずくまったりしている
□傷口をなめようとする
□食欲がない
□傷の付近を触ろうとすると怒る など
上記以外にも、ふだんと違う様子が愛猫に見られたら、早めに動物病院へ相談してください。
エリザベスカラーや術後着が必要なく通常の生活に戻る⽬安は1週間
エリザベスカラーで保護を
術後に傷口をなめてしまわないために必須アイテムなのがエリザベスカラー(首に装着する保護具)です。最近では開腹したお腹を守るため、お腹を覆い隠せる術後着もあります。エリザベスカラーも術後着も猫にとっては初めてのことなので、最初は動きづらい、動かないなどの様子が見られます。しかしほとんどの猫はしばらくすると慣れてうまく動けるようになります。エリザベスカラーなのか術後着なのか、どちらか猫にとって違和感が少ないほうを選んであげるといいでしょう。着用した際、よほどパニックになるようであれば、獣医師に相談してください。
避妊⼿術後の⽣活は?
薬を飲ませる⽅法や注意すべきポイントは?
避妊⼿術後にとくに注意すべきポイントは、猫が傷⼝をなめていないかです。注意して見ていてください。もし手術後に薬を処方された場合は、健康な猫にとっては、これが初めて飲む薬であることもめずらしくありません。錠剤や液体など、薬は種類もさまざまです。以下で錠剤、液体の種類別に薬の飲ませ⽅をご紹介します。
薬のタイプ | 飲ませ方 |
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錠剤 | ① 猫の上アゴを片方の手で持ち上げ、もう片方の手の中指で下アゴをやさしく下げて口を開かせます
② 錠剤を舌の付け根に落とし、すぐに下アゴを閉じて薬を飲み込ませます
(錠剤を落とす場所が手前すぎると吐き出すので、なるべく奥に落としましょう)
ポイント:思うように飲み込んでくれない場合は、ノドをさすってみて |
液体 | ① 利き手でシリンジを持ち、逆の手で猫の顔を支えます
② 犬歯のすぐ後ろにある隙間にシリンジを押し込み、薬を与えます
ポイント:シリンジを押すスピードが速すぎると、液体が深く入ってしまう恐れがあり危険なので、ゆっくり行って |
⽇ごろからの練習が⼤切
いざという時のために、⽇ごろから錠剤や液体の薬を飲む練習をしておくことが⼤切です。錠剤はドライフードを使って練習を。液体はシリンジで与えるのをふだんから慣れさせておけば、術後の猫の負担も少なくなります。また、上記の飲ませ⽅で難しい場合は、液状のおやつに薬を混ぜて与えるなどの⼯夫をするのも一案です。投薬用のおやつのような商品もあるので、動物病院で問い合わせてみるといいでしょう。
避妊⼿術後の変化は行動と見た目に現れる
行動
避妊⼿術をする前と後では、愛猫の変化を感じる飼い主さんが多いようですね。まず⼀つ目にあげられるのが猫の⾏動です。猫の発情期の⾏動が抑制され、発情期特有の⼤きな声で鳴くなどの⾏為がなくなります。
見た目
避妊手術後の猫は、ホルモンバランスの変化から代謝が落ち、太りやすくなる傾向に。これまでの⾷事量と変わっていないのに太ってしまうことも⼗分考えられます。肥満になると、糖尿病にかかりやすくなる危険もあるので、体重管理は徹底して行って。体重管理⽤のフードに切り替えるなどの⼯夫も必要でしょう。
まとめ
子猫にとっては「避妊⼿術が初めての⼿術」ということも多いので、愛猫はもちろんのこと、飼い主さん⾃⾝も⼾惑いがたくさんあるのではないでしょうか。前もって知識があれば、すぐに愛猫の「サイン」に気づいてあげることができます。そして、わからないことや不安なことは、獣医師に相談して、術後の愛猫が心地よく過ごせるようにしてあげたいですね。
監修/田草川佳実先生(聖母坂どうぶつ病院副院長)
文/ねこのきもち編集室