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【獣医師監修】オス猫の去勢手術後のケア方法や注意点、術後の変化

今回は、オス猫の「去勢手術」を受けるときに、知っておきたい重要事項を解説します。去勢手術のメリットやタイミング、術式、費用、手術直後の状態、ケア方法、手術後の見た目や性格の変化など、さまざまな事柄を知って愛猫の去勢手術に備えましょう!

荒木 陽一 先生

 獣医師
 プリモ動物病院 練馬院長

 東京農工大学農学部獣医学科(現 共同獣医学科)卒業

●資格:獣医師

●所属:日本獣医がん学会

●主な診療科目:一般診療(外科・内科)、救急診療、腫瘍科

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オス猫の去勢手術のメリット

上向く猫
猫の去勢手術とは、オス猫の精巣を摘出すること。メス猫の避妊手術と同じように、望まない妊娠を避けるために行われるものです。そのほかのメリットとして、以下のものもあげられます。

去勢手術の主なメリット

  • 精巣腫瘍などの生殖器系の病気を防ぐ効果が期待できる
  • 「疑似交尾」といわれるマウンティングや、性的アピールとしての「スプレー行動」などをしにくくなる
  • オス猫がもっている縄張り意識が低くなり、噛みグセやケンカなどの「攻撃行動」が少なくなることがある
  • 性的な欲求が減ることで、繁殖のために相手を求める「脱走行動」が減る傾向がある
  • 発情や性衝動がなくなるので、相手を求めて大声で鳴くことが少なくなる など

愛猫の去勢を決めたら知っておきたいタイミングや術式、費用

景色を見る猫

去勢手術のタイミングは?

精巣さえ確認できれば、何才でも去勢手術はできます。しかし、精巣を摘出すると生殖器の成長が止まると考えられており、早すぎると尿道が細いままになってしまうことがあるといわれています。そうすると、尿の病気リスクを高めるおそれがあるので注意しましょう。

去勢手術のタイミングは、獣医師と相談しながら決めるのがベストです。最近では精巣の摘出と生殖器の成長についてはあまり関係ないという考えもありますが、一般的には生後5〜10ヶ月頃に行われることが多いようです。

去勢手術の術式は?

去勢手術は「皮膚切開手術」をします。これは、精巣を包む皮膚(陰のう)を切開し、精巣を取り出す手術です。切開するのは1cmほどで、手術時間は10分程度。ほとんどの場合は、手術当日に自宅へ帰れます。

まれなケースですが、精巣が陰のう外の皮下や体の外側に出ていない(お腹の中に入り込んでいる)「停留精巣」のオス猫がいることも。お腹の中の場合は、去勢手術は、メス猫と同じように開腹手術や腹腔鏡手術をして精巣を取り除く方法によって行われます。

去勢手術の費用はどれくらい?

手術をする動物病院や猫の状態にもよりますが、平成27年の日本獣医師会の調査によると、猫の去勢手術にかかる費用の相場は約13,000円ほどだといわれています。ただし、この金額は去勢手術のみの金額なので、術前検査費や薬代、入院費などは別途必要です。

・術前検査とは

術前検査とは、「全身麻酔に耐えられるか」を調べる大切な検査です。一般身体検査や血液検査などを行い、先天的な病気はないか、臓器の機能に異常はないか、ウイルス感染の疑いはないかなどを確認します。

また、レントゲン検査や超音波検査などが追加され、より詳しく体の状態を調べることもあります。 通常の検査だけなら、術前検査費は5,000円前後で済むことが多いですが、検査項目が追加されると、10,000円以上になることもあります。ただし動物の場合、手術や検査などの各費用は病院ごとにことなるため、正確な費用については事前にかかりつけの病院に確認するとよいでしょう。

去勢手術“直後”の猫の状態や注意点

膝に乗る

肉体的・精神的にかなりのダメージを受けている

去勢手術は子孫を望まない場合や問題行動の回避、病気を予防するためには大切なことですが、猫にとっては恐ろしい体験でもあります。去勢手術後のオス猫は、心身ともにかなりのストレスを受けていることも多く、今までとは違う行動をとることも。

特に、手術直後は家についたとたんに部屋の隅に隠れるなどの行動を見せる猫もいます。そのようなときは、無理やり引きずり出さず、落ち着くまで見守りましょう。 比較的に若いうちの体験のほうがそれほど恐怖に感じないということもあります。

一時的に抵抗力と免疫力が低下する

去勢手術直後は、一時的に抵抗力や免疫力が低下します。抵抗力が低下すると、感染症の危険性が高まるので注意しましょう。

術後2週間前後はシャンプーを控え、同居猫がいる場合は必要に応じて少しの間隔離するなどといった対策も必要です。しかし、隔離することがストレスになることもあります。手術を受けた猫が安心して過ごせるように配慮しましょう。

去勢手術“直後”のケアやエリザベスカラーを嫌がるときは

ゴハン

食餌は少しずつ

去勢手術は短い時間で行われる手術ですが、猫の体に負担がかかっていることには、変わりありません。そのため、退院後のゴハンは、一度にたくさん与えるのではなく、少量ずつ時間をおいて与えるようにましょう。

また、手術前日から当日は麻酔の影響に配慮して、食餌や飲水を控えるよう指示されることもあります。退院の際に食餌開始のタイミングをきちんと確認しましょう。また、精神的なストレスなどの影響で食欲がない場合もあります。ゴハンを食べなかったり吐いたりすることが続くときには、早めに獣医師へ相談してください。

エリザベスカラーを嫌がるとき

エリザベスカラーは、猫が患部をなめたりしないようにする保護具です。最近はやわらかい素材のものも見られるようになりましたが、プラスチック製のものが一般的のようです。

プラスチック製の場合は、エリマキトカゲのように顔まわり装着するので視野が狭くなり、猫の日常生活に大きく影響します。これは、猫にとってストレスになったり、パニックを引き起こしたりすることも。メスであれば術後服がありますがオスの場合は患部の位置からも使用できません。患部の状況や猫の性格を考え、獣医師と相談して対策してください。

なお、猫去勢の場合は猫の性格にもよりますが、必要のないことも多々あります。

見た目や性格など、去勢手術後の変化とは?

毛布と猫

見た目の変化

・腰やお腹周りがふっくら

性ホルモンの分泌がなくなると、代謝が落ちてきます。そのため、今まで通りの食餌量だと太りやすく、腰やお腹周りが、ふっくらしてくることがあります。

・筋肉質ではなくなり丸い印象

オス猫は本来運動量が多く、メス猫より筋肉がつきやすい体質です。しかし去勢出後は運動量がやや減り、筋肉もつきにくくなる傾向があります。

・顔周りがスッキリする

ホホ周りの皮膚が発達するのは、オス猫の性ホルモンの影響です。去勢手術によってその分泌がなくなると、顔周りはスッキリした印象になることがあるようです。

性格の変化

メス猫の鳴き声に反応しなくなり、闘争心が減るので飼い主さんは「穏やかになった」という印象を持つでしょう。若いうちに去勢手術を行うと、大人になっても子猫のような“甘えん坊”の性質が残ることもあるようです。
去勢手術を受けることを決めたら、手術後に起こるさまざまな変化に落ち着いて対応してください。飼い主さんが落ち着いて行動すれば、愛猫も落ち着きを取り戻すでしょう。
参考/「ねこのきもち」2017年5月号『術後の“?”もスッキリ!去勢・避妊手術のすべて』(監修:Pet Clinic アニホス 院長 弓削田直子先生)
   ねこのきもちWEBMAGAZINE『【獣医が教える】オス猫の去勢手術にかかる費用と留意点』(監修:かんもん動物病院 獣医師 八木田智洋先生)
監修/荒木陽一先生(プリモ動物病院 練馬院長)
文/HONTAKA
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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