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【獣医師解説】猫がキャットフードを食べない理由と自宅でできる工夫

愛猫が急にごはんを食べなくなったら、飼い主さんとしてはとても心配ですよね。そこで今回は、猫がキャットフードを食べない原因や食欲をアップさせる工夫について紹介します。

徳本 一義 先生

 獣医師
 有限会社ハーモニー代表取締役
 日本ペット栄養学会理事
 ペットフード協会新資格検定制度実行委員会委員長
 日本獣医生命科学大学非常勤講師
 帝京科学大学非常勤講師
 など

●資格:獣医師 経営学修士(MBA)

●所属:日本ペット栄養学会

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まずは猫の習性を理解すること

愛猫がフードを⾷べない理由を探るには、猫の習性を理解することが⼤切です。猫は本来、集団ではなく単独で暮らす動物。⾷のバリエーションを増やしたいという「好奇⼼」と危険なものを避けたいという「警戒⼼」の両⽅を持ち合わせています。単独で暮らす猫にとって、⾷べられる物を増やし、食べられない物を避けていくことは死活問題だからです。
そして「好奇⼼」が勝った場合、普段と違うものを突然⾷べたくなる習性があります。それを「ネオフィリア」と呼びます。普段のフードを食べなくなるのは、⾷べ飽きたわけではなく、「ネオフィリア」も理由のひとつだと考えらます。
また、上記に加えて、食べ物に対する以下の習性も理解しておきましょう。

・猫はいつでも狩りのために体を動かすことができるよう、おなかをいっぱいにしたくないため、こまめに⾷べる習性があります(逆に、おなかが空いていなくても獲物がいたら狩りをします)。

・猫は素材や味より栄養バランスで摂取を判断しているという研究結果があります。タンパク質が十分に含まれていないものは、すぐに⾷べなくなるという傾向もみられています。

病気が原因でキャットフードを食べないケース

愛猫がごはんを食べないとき、以下のような様子が見られたら、それは病気が原因かもしれません。

◇食べようとしてすぐやめる場合⇒“口内炎”や“歯周病”、”顎関節症”などのおそれ

⾷べる体勢になってもすぐやめてしまう場合は、⼝内炎ができて、⼝の中が痛むのかもしれません。⼝内炎のほかの症状としては、⼝臭がしたり、よだれの量が増えたりといったことがあります。
また、⾷べたそうにしているのに、あきらめてしまうような場合は、顎関節症の疑いがあります。あごを開けるときに痛みが伴う病気で、⾻折や脱⾅といった外傷のほか、噛み合わせの悪さも原因とされています。

◇あきらかに元気がない場合⇒重大な病気のおそれ

急激に⾷欲が落ちたり、もしくは全くなくなったりする場合は細菌やウイルスの感染によって引き起こされる感染症をはじめ、何らかの重大な疾患の可能性があります。すぐに動物病院に連れていってあげましょう。

ちなみに、⾷欲不振になる一⽅で、おしっこの量が増えたり⽔をたくさん飲むようになったりしたときは慢性腎臓病のおそれがあります。トイレの猫砂のかたまりが大きくなったら要注意です。また、便秘も慢性腎臓病の初期症状であることがありますので、たかが便秘と侮らないようにしましょう。体重が落ちて痩せてしまう傾向が⾒られたら、慢性腎臓病を疑って速やかに病院に連れていきましょう。

元気なのにキャットフードを食べないケース

元気そうに見えるのに、なぜかごはんを食べないとき、それはキャットフードそのものや猫のライフステージの変化などの影響と考えられます。

◇フードが変わって慎重になっている

前述した通り、猫は警戒心が強い動物なのでフードを切り替えた結果、食べるのに慎重になっていることがあります。飼い主さんはフードを与えた瞬間に食べないと気になってしまう傾向もあります。しかし、猫は少し時間がたってから食べることもあります。その場合、そのフードの嗜好性が高いかどうかとは関係がありませんので注意して下さい。とくにストレスを感じる環境では、食べ慣れたもの以外は食べない傾向があります。

◇繁殖期

去勢・避妊手術をしていない猫で、春・秋・冬の季節に食欲不振になる場合は、繁殖期の影響かもしれません。これは、ホルモンバランスの変化や、フードよりも異性への興味が上回ってしまうためです。

◇ちょっとした変化によるストレス

愛用の食器を変えたり、食器が汚れていたりといったことも、デリケートな猫にとっては食欲不振につながるストレスの一因です。食器のサイズによっては、単に食べづらいという可能性も。ヒゲが当たるので深い容器が嫌いな猫もいます。

◇年齢によるもの

猫は⾼齢になると、寝ている時間やじっとしている時間が増えて活動量が少なくなり、若い頃に⽐べて⾷べる量が減ることがあります。また、嗅覚などの感覚が低下している場合もあります。⾼齢の猫がフードを⾷べない場合は、年齢によるものが原因かもしれません。

◇フードの栄養バランスが合っていない

これも前述したとおり、猫は素材や味よりも栄養バランスを重視して⾷事を選ぶという研究結果があります。研究の中で、猫は好きな風味の低タンパク質の食事よりも、嫌いな風味の高タンパク質の食事を選んでいたのです。
それは、本来、単独で暮らして狩りをする猫が、いつでも動けるようにおなかをいっぱいにしたくない動物だからです。無駄な食べ物でお腹を満たしたくないので、自分にとって必要なタンパク質が十分に含まれていないフードはすぐに食べなくなる傾向があるということを意味しています。

工夫して食欲をアップさせよう!

「どうにかして愛猫にごはんを食べさせたい!」そんな飼い主さんへ、猫の食欲をアップさせる方法を紹介します。

◇食器を変えてみる

食器はひげが当たらないような平べったい形のものを選び、食事のあとは毎回キレイに洗ってあげましょう。人では気にならないような洗剤の残りが気になることがあるので、しっかりとすすぎます。猫自身の唾液や食べかすなどの汚れが腐敗し、そのニオイで食欲が落ちることもあります。食器は陶器を好み、ステンレスやプラスチックは嫌がる傾向もあると言われています。
また、お水と食器が近いと嫌がる猫もいます。これは野生の猫が水の近くの獲物は腐っている可能性が高いと判断する習性からきている、という説があります。食器と水の置場所を離してあげるのもひとつの手かもしれません。

◇食事環境を変えてみる

猫は暗く狭い場所に安心感を覚えます。食事中は外が見えないようにダンボール箱を利用するなど、周りを気にせず落ち着いて食事できる環境を作ってあげましょう。

◇フードを手であげてみる

フードを手のひらに出してあげると、そのままバクバク食べることがあります。食器から直に食べられるようにするため、徐々に食器に手を近づけて誘導していくといいでしょう。


◇好きなドライフードを混ぜてみる

フードを新しいものに変えた場合は、今まで食べていた愛猫の好きなフードを、混ぜてあげるのも手です。好みのニオイにつられて、新しいフードを食べてくれるかもしれません。出汁パックなどをドライフードの中に同梱して、猫の好きな匂いだけをつける方法もあります。

◇フードをレンジでチンしてみる

キャットフードは温めることで香りが立ち、風味が増すように作られています。猫は40度前後のフードをもっとも好む傾向にあります。ドライフードであってもレンジで温めることができますので、試してみる手もあるでしょう。また、ドライヤーで温める方法もありますが、40度を超えると急激に嗜好性が悪くなるので注意して下さい。

◇猫の好みに合ったフードに変えてみる

猫によって、小粒が好きな猫もいれば、大粒が好きな猫もいます。フードを砕いて小さくしたり、逆に食感の良い大粒に変えたりと、フードの形状にも変化をつけてみましょう。あまり食いつきが良くないと感じたら、サンプルを取り寄せるなどして、いろいろなフードを試してみてください。

みんなは愛猫にどんなフードを与えている?

ほかの飼い主さんは、愛猫にどんなフードを与えているのでしょうか。飼い主さんに聞いた声を一部ご紹介します。*

◇ドライ?それともウェット?

ドライフードのみを与えている飼い主さんが多数という結果に。ドライは経済的、管理がラクで種類も豊富、歯石が付きにくいといったメリットがありますし、一方のウェットにも、水分量が多く満腹感が得られやすい、嗜好性が高いといったメリットがあります。病気や災害時に備え、どちらのフードも食べられるようにしておくのが理想的です。

◇療法食や機能性フードの利用は?

療法⾷を利⽤している方もいました。療法⾷は特定の病気の猫に対して与えるために、特別に栄養バランスを調整したフードです。特定の栄養素が増やされていたり、逆に制限されていたりします。適応となる病気に合わせて、一部の栄養素が栄養基準を下回るくらいまで制限されているものもあるため、誤った使い方をするとかえって健康を損ねることにもなりかねません。また、同じ病気であっても、病気の進行度合いや状態によって与えるフードが異なることもあります。療法食の利用については、飼い主さんが自分で判断せず、必ず獣医師の指導にしたがって与えるようにしましょう。

また、機能性フードといって、治療効果はないものの、例えば⽑⽟ケアや体重コントロールなど、目的に合わせて成分が調整されているフードもあります。原則的に、機能性フードは「総合栄養食」の基準を満たしているため、愛猫の体質に合わせて飼い主さんの判断で利⽤できるフードです。
治療と健康維持では利⽤⽬的が異なるため、獣医師やペット専門店のスタッフなどに相談をし、必要に応じて取り⼊れてみても良いでしょう。

◇おやつは与えている?

多くの飼い主さんが、主⾷とは別に、何らかのおやつを与えていると回答しました。ただし、愛猫の健康管理のため、ダラダラと与えるのは控えてください。おやつは1⽇のカロリーの2割までと言われていますが、余裕をもって1割程度と考えておくといいでしょう。与え⽅には注意して、“ごほうび”として、あるいは、興奮を落ち着かせたいときなどに、少量を有効活⽤するのが良いとされています。なお、市販のもののほか、加熱処理をした味付けしていない⾁や⿂も、おやつとして利⽤できます。ただし、⾷べてはいけないものには⼗分注意して下さい。
おやつによって、タンパク質をとりすぎて内臓に負担がかかってしまうことや、脂肪をとりすぎて⻩⾊脂肪症(ビタミンE不⾜)になることもあります。また、おやつの与えすぎで栄養バランスが偏ってしまっても⾒た⽬ではわからないこともあります。定期的に動物病院で健康診断を受けることも⼤切です。

キャットフードはさまざまな種類が販売されています。愛猫のフード選びにお悩みの飼い主さんは、ぜひこの記事を参考に、愛猫の好みに合ったフードを探してみてくださいね。
監修/徳本一義先生(有限会社ハーモニー代表取締役)
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