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【獣医師監修】猫にアルコールは微量でもNG。飲んだり舐めたりしてしまったときの症状と対処方法

猫にアルコールは絶対にNGです。猫が酔っぱらってふらつく動画を見かけることがありますが、「少しなら大丈夫」と勘違いしてはいけません。人間にとって少量でも、体の小さな猫にとっては大きな負担になって命を脅かす可能性も。猫にとってアルコールが危険な理由と、万が一誤飲した際の対処法を紹介します。

佐野 忠士 先生

猫はアルコールを飲んだり舐めたりしてはいけない。命の危険あり

ボトルとグラスの各種のアルコール飲料
monticelllo/gettyimages
猫にとってアルコール(お酒)は、とても危険なものです。ほんのわずかな量でも与えてはいけません。

猫の体は人間に比べてはるかに小さく、アルコールの成分を急速に吸収するので、たとえ少量であってもすぐに酩酊してしまいます。そして、アルコールの成分は血液に入って全身を巡り、猫の体内に長く残るため、呼吸器や心臓、肝臓、腎臓など全身に悪影響を及ぼすことになります。

昏睡状態に陥った場合は、心肺機能が非常に低下するので、眠ったまま死んでしまう危険性も。また嘔吐した場合は、喉頭(こうとう)の機能が低下していることが多く、誤嚥や窒息を生じることがあります。死に至らなかったとしても、意識が酩酊してフラフラしているうちに高いところから落ちたり、何かにぶつかったりして大ケガをしたという例もあります。

そもそも、猫が自ら好んでお酒を飲むことは考えにくいものの、飼い主がおいしそうに口にしているものには興味を示すかもしれません。とくに「家呑み」の機会が増えている昨今、目を離したすきに愛猫がテーブル上にあったグラスやお猪口に口をつけてしまったり、こぼしたアルコールを舐めてしまったりする可能性もあるので、くれぐれも気をつけましょう。

猫がアルコールを飲んだり舐めたりしたときに見られる症状|足がふらつく、嘔吐、意識混濁、昏睡

白と茶の縞模様のアメリカンショートヘアの上半身アップ
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
万が一のときに備えて、猫がアルコールを誤飲した場合に考えられる症状について知っておきましょう。

アルコール(エタノール)中毒が考えられる症状

猫がアルコールを摂取すると、以下のような症状が現れます。

  • 足がフラフラしてうまく歩けない

  • ぼんやりしている

  • ぐったりする

  • 嘔吐、下痢

  • 意識がもうろうとしていて、呼びかけてもあまり反応しない

  • 呼吸や脈が弱くなる など


とくに、呼吸や脈が弱くなり、意識がもうろうとしていたら、非常に危険な状態だと思ってください。

症状が出るまでの時間

飲んだアルコールの量やそのときの空腹状態、また個体差によっても症状が出るまでの時間は異なります。一般的には、摂取後30分〜1時間程度で症状が現れる場合が多いようです。

猫がアルコールを飲んだり舐めたりした場合の対処方法

まっすぐにカメラを見つめるアメリカンショートヘア
ねこのきもち投稿写真ギャラリー

アルコールを少量でも摂取したとわかったら、すぐ病院へ

愛猫がアルコールを飲んでしまった、舐めてしまったなどの可能性がある場合は、症状が出ているか否かにかかわらず、すぐに動物病院に連絡してください。その際、誤飲した(であろう)アルコールの種類と度数、摂取した量、摂取した時間、症状の有無と現在の様子を伝えましょう。

その後、獣医師の指示にしたがって病院を受診してください。
誤飲したのがわかったからといって、自宅で飲んだものを無理に吐かせようとするのはたいへん危険です。催吐処置は医療行為なので、素人判断で応急処置をしようとせず、必ず獣医師に任せてください。

病院での治療方法

獣医師は飼い主さんの報告(アルコールの種類、度数、量、時間)と、症状や血液検査などの結果をふまえて、以下のような処置を行います。

催吐処置

状態によっては、胃の中から体に吸収されるアルコール量を減らすために、「催吐処置」を行います。猫が嘔吐しやすい安全な薬剤を使い、猫の体に負担をかけないよう注意しながら行われます。

胃洗浄

麻酔をかけて猫の口や鼻からチューブを入れ、胃の中を洗浄します。アルコールを誤飲してから1時間以内に行うと効果が期待できます。

活性炭治療

猫の体に中毒症状を引き起こすアルコール成分を取り除くために、有害物質を吸着する性質のある活性炭を飲ませることがあります。活性炭は、すでに血液中に吸収されてしまったアルコール成分の排泄を促す効果もあるといわれています。

点滴

体内に吸収されてしまったアルコールの血中濃度を低下させるために、静脈に点滴をして尿からの排泄を促します。点滴には低下した循環機能(血液の巡り)を補助する役割もあり、体の回復能力のサポートが期待できます。

猫がアルコールを飲んだり舐めたりしてはいけない理由|分解酵素がないため長時間体内に留まってしまう

丸い目を見開いてやや斜め右前方を見つめる茶色系のスコティッシュフォールド・ロングヘア
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
ほんの少し舐めただけでも、猫の命を脅かしかねないアルコール。なぜ、それほどまでに危険なのでしょうか。猫にアルコールが危険な理由と致死量について説明します。

「アルコールに酔う」の仕組み

人の場合、飲んだアルコールは胃の中で約20%がゆっくりと吸収されたあと、残りの約80%は小腸で速やかに吸収され、血液中に溶け込み、肝臓に送られます。肝臓でアルコールは、「アセトアルデヒド」という有害物質に分解されます。お酒を飲んだときに現れる「顔が赤らむ」「動悸が激しくなる」「頭痛」「吐き気」などの症状は、この「アセトアルデヒド」が原因で起こるものです。

「アセトアルデヒド」は、さらに肝臓内で分解されると無害な酢酸へと変化し、血液にのって全身を巡るうちに水と炭酸ガスに分解され体外に排出されます。また、一部のアルコールは処理されないまま、尿や汗などになって排出されます。

しかしながら、肝臓での分解処理には時間がかかります。分解しきれなかったアルコールを含んだ血液は心臓から全身に行き渡り、脳まで到達すると脳が麻痺した状態、つまり「酔っぱらう」という状態に至るのです。
こうした「アルコールに酔う」仕組みは、猫も人間と同じと考えられています。

猫はアルコールの分解酵素を持っていない

猫が人と大きく異なるのは、猫の肝臓にはアルコールを分解する酵素がないことです。つまり、肝臓でアルコール分解が進むと酔いがさめてくるわけですが、人の場合、たとえば、ビール500 ml(アルコール量約20g)を飲んだ場合、体格や年齢などによって個人差はあるものアルコールが分解されるまで4~5時間はかかるといわれています。ましてや、アルコール分解酵素を持っていない猫の場合、血中のアルコール濃度はなかなか下がらないので、酩酊状態が長く続いてしまうことになるのです。そして、体内に長く留まったアルコールは、脳に影響を与えるだけでなく、心臓や肺、血管、肝臓、腎臓などの機能にも害を及ぼすことになります。

ノンアルコールもNG

アルコール成分の入っている飲物は、ビールや日本酒、ワイン、焼酎はもちろん、梅酒やカクテルなど甘いアルコールドリンクもすべてNGです。また、気をつけたいのがノンアルコール飲料。「ノンアルコール」とうたっていても、完全にゼロではないものもあるので、ノンアルコール含めてNGと覚えておきましょう。

消毒用アルコールもNG

昨今、使用する機会が多いウェットティッシュや消毒用アルコール。これらにもアルコールが含まれているので、猫の口に入らないよう注意が必要です。マウスウオッシュなども猫が舐めたりしないよう、しっかり管理しましょう。
猫の衛生管理のためにウェットティッシュを使用するなら、ペット用に販売されているノンアルコールのものか、人間用でもアルコールを使用していないタイプのウェットティッシを選べば安心です。

危険な量の目安

「猫の体重1kgあたり約5.6mlが致死量」という情報を見かけますが、現在のところ、明確な研究結果は報告されていません。アルコールの種類や度数を問わず、微量でも猫にアルコールを与えてはいけない、と覚えておきましょう。

猫のアルコール誤飲を防ぐ方法

横たわって首をもたげ、斜め左うしろを振り返っているMIX(ミケ)の顔アップ
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
愛猫が飼い主の飲物に口をつけないよう、お酒の入ったグラスなどをテーブルやキッチンに置きっぱなしにしないようにしましょう。お酒をテーブルに置いたまま席を外すときは、猫が届かない場所に置き換え変える、蓋をするなどの配慮を。また、テーブルを拭いたアルコール消毒薬やウェットティッシュをそのまま置いておかないことも大切です。使用済みのウェットティッシュや消毒用クロスはきちんとゴミ箱に捨て、猫が取り出して遊んだりしないよう気をつけてください。

猫にとってのお酒は「またたび」?

猫にまたたびを与えると、ご機嫌になったり、興奮したりしますよね。まるで、人間がお酒を飲んだときのようです。

またたびついてかんたんに紹介しておきましょう。またたびは、マタタビ科マタタビ属の植物。当然ながらアルコール成分は入っていません。猫には、人にはない「ヤコブソン器官」があり、またたびに含まれる「マタタビラクトン」「アクチニジン」「β-フェニルエチルアルコール」の3つの成分に反応するといわれています。一般的なまたたびの効果としては以下のようなものがあげられます。

  • リラックスする

  • テンションがあがる

  • 攻撃的になる

  • 食欲増進になる


人がお酒を飲んだときの様子や反応と似ているといえるかもしれませんね。ただし、与えすぎないよう注意しましょう。

猫にアルコールは「毒」以外の何ものでもない

「酒は百薬の長」という言葉がありますが、アルコール分解酵素を持っていない猫にとっては、アルコールは体に害を及ぼす危険物です。興味本位でお酒を与えてはいけません。人間と猫は体の機能が違うこと、人間に比べて体が小さいことを十分に理解し、お酒類はもちろんのこと、アルコール分の入ったウェットティッシュも猫が舐めたりしないよう、十分に注意してください。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学 獣医学群 獣医学類 准教授 )
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「まいにちのねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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