猫と暮らす
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【獣医師が解説】猫にアルコールが絶対NGの理由は、猫と人の肝臓の違い
晩酌中に猫にお酒をあたえようとしたり、お酒を飲ませたらどうなるだろうという興味を持ったりして、猫にアルコールを飲ませようとするのは、絶対にやめましょう。人間の身体では少量のアルコールでも、身体の小さな猫にとっては大きな負担になってしまいます。飼い主がおもしろ半分に、猫が酔っぱらった様子を動画にしている投稿も多々あって、アルコールを飲んでも大丈夫と勘違いしている方もいるかもしれませんが、とても危険なので絶対に飲ませないでください。
この記事の監修

佐野 忠士 先生
酪農学園大学獣医学群獣医保健看護学類准教授
酪農学園大学附属動物医療センター集中治療科診療科長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了
北里大学獣医畜産学部および同大学獣医学部勤務
日本大学生物資源科学部獣医学科勤務
●資格:獣医師/博士(獣医学)/世界的獣医心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER インストラクター)/CCRP
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本獣医学会/日本獣医師会/日本動物リハビリテーション学会/動物臨床医学研究所/日本麻酔科学会/日本臨床モニター学会
●主な診療科目:麻酔科/集中治療科
●書籍:『asBOOKS チームで取り組む獣医師動物看護師のためのICU管理超入門』/『as BOOKS チームで取り組む獣医師・動物看護師のための輸液超入門』/『動物看護師のための麻酔超入門・改訂版』 など多数
アルコールに酔うとはどういうことか

まずは、「お酒に酔う」とはどういうことか確認してみましょう。人間の場合、アルコールを摂取すると、お酒の約20%は胃で、約80%は小腸で吸収され、血中に溶け込みます。肝臓でアルコール分解が始まります。ただし、すぐには分解できません。アルコールを含んだ血液が心臓から全身へ行き渡り、脳までいくといわゆる酔っ払いの状態に至るのです。肝臓でのアルコール分解が進むと、酔いが醒めていきます。人間でも、完全にお酒が抜けるのは10時間ほどかかるといわれています。猫の場合も、肝臓に分解酵素がないこと以外のお酒のまわり方は同様です。
猫の肝臓ではアルコールが分解できない
人間の場合は、肝臓のアルコール分解酵素が働き、時間がたてば次第に酔いがさめていきますが、猫の場合はそうもいきません。猫の肝臓ではアルコールを分解する酵素がないからです。猫がお酒を飲んでしまうと、体内に有害物質として蓄積されていきます。分解されないので、血中のアルコール濃度もなかなか薄まりません。その間ずっと、酩酊状態は続きます。二日酔いが3日続いた猫もいるようです。そもそも猫がアルコールを飲む習慣はなく、身体の仕組みそのものが人間とは違うことを頭に入れておきましょう。
死にいたる可能性もある
人間の身体でも、体格によってお酒の酔い方が違うことはご存じですか?同じ量を飲んでも、体格の大きい人のほうが酔いにくい傾向があります。それは、血液中のアルコール濃度が濃くなりやすいかどうかの違いです。血中アルコール濃度が0.41~0.50%以上になると脳への影響や死亡にいたる可能性があるといわれています。猫の場合は、アルコール度数10%のお酒であれば1kgあたり約50ccのお酒を飲んだだけで致死量にいたるといわれています。もし、猫が3kgであれば、150㏄で死の可能性…。安易にお酒を舐めさせるのは本当に危険です。
酩酊状態になるとどうなるのか

アルコール中毒の症状
前述したとおり、猫にはアルコール分解酵素がありません。それゆえ、少量を摂取しただけで中枢神経に影響を及ぼし、酩酊状態になります。人間にはたったひと口のアルコールと感じる量でも、高確率でアルコール中毒になるでしょう。いわゆる二日酔いの状態から、意識を失うレベルまでにいたることも考えられます。もし猫がアルコールを飲んでしまった場合は、動物病院へ連れていき、治療してもらってください。
もし間違って猫がアルコール摂取してしまったら
もし猫が誤ってアルコールを飲んでしまった場合は、病院での治療が必要になります。もし飲酒してまもなくであれば、胃洗浄や催吐処置が有効です。アルコールを早く体外に出すために、点滴をうつ場合もあります。病院に行ったら、「いつ頃」「何を」「どのくらい飲んだか」を答えられるようにしておくとスムーズに治療・診察してもらえるでしょう。
猫が飲んでもいい飲料

アルコール以外で猫が飲んでいいのは、ずばり水です。水は常に清潔な水が飲めるようにしておきましょう。猫用のミルクや猫用のスポーツドリンクも販売されています。また、魚や肉を茹でた汁も飲ませて大丈夫です。ただし、調味料やスパイスは入れないようにしましょう。常用するというよりは、猫が元気のないときにあたえてみてはいかがでしょうか。
中性の軟水
猫にあたえるならば、ミネラル分が少ない中性の軟水の水が良いとされています。あまり水を飲まない猫もいるようですが、水分不足は健康によくありません。水分を含む食事も取り入れることや、猫に害のないお肉や魚の煮汁を冷ましてあげるのもいいでしょう。水道水のカルキ臭さを嫌がる猫もいるので、その場合は軟水のミネラルウォーターやウォーターサーバーなどを利用します。こまめに水を換え、きれいな水を保つことで水を敬遠する理由が少なくなるかもしれません。
猫にとってのお酒はまたたび?
またたびをあたえると、まるでアルコールを摂取したかのように、ご機嫌になったり、興奮したりしますよね。またたびはお酒なんでしょうか?またたびは、マタタビ科マタタビ属の植物です。決してアルコール成分が入っているわけではありません。またたびの「マタタビラクトン」「アクチニジン」「β-フェニルエチルアルコール」の3つの成分に、猫は反応するといわれています。人間にはない「ヤコブソン器官」があり、その器官がフェロモンを感知することで起こる反応です。常用すると効果がうすまるので、日をおいて使用するといいでしょう。食欲がないときや元気のないときに使うと効果が期待できます。
猫にとってアルコールは毒でしかない
命を落とす危険があるという認識は、まだまだ広まっていないようですが、アルコールは、猫にとって毒ともいえる飲み物です。ないとは思いますが、猫が酔っぱらってる姿をおもしろがったりするのは虐待といっても過言ではありません。絶対にやめましょう。また、誤飲しないように気をつけることも重要です。猫が飲んではいけないものをしっかりと把握して、愛猫と健やかに、なるべく長く一緒に生活していきたいですね。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医保健看護学類准教授)
文/BE
※一部写真はスマホアプリ「まいにちのいぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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