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【獣医師監修】猫ひっかき病ってどんな病気?症状や治療法は?
「愛猫に急にひっかかれた」という経験はありませんか? 実は、そのひっかき傷が原因で、「猫ひっかき病」という感染症を発症するおそれがあるのです。今回は、猫ひっかき病の特徴や症状、ひっかかれた場合の対処法や予防法などについて解説します。

佐藤 貴紀 先生
目黒アニマルメディカルセンター 隅田川動物病院顧問
VETICAL動物病院(オンライン相談)
慶應義塾大学大学院経営管理研究科
●経歴:
麻布大学獣医学部卒業
西荻動物病院副院長
日本獣医生命科学大学獣医内科学教室研修生
dogdays東京ミッドタウンクリニック副院長
株式会社FORPETS設立 白金高輪動物病院院長
株式会社FORPETS代表取締役
JVCC動物病院グループ代表取締役
株式会社WOLVES Hand取締役
●資格:獣医師/獣医循環器認定医
●所属:日本獣医循環器学会
●主な診療科目:循環器科
●書籍:『いぬのココロがわかる本』ぶんか社文庫/『お仕事熱血ストーリー 感動する仕事!泣ける仕事!第2期』学研/『教えて!獣医さん 犬の悩みなんでも相談室』学研プラス/『猫の急病対応マニュアル』鉄人社/『動物たちのお医者さん』小学館ジュニア文庫/『犬の急病対応マニュアル』鉄人社
●SNS:公式Facebook/公式ブログ/公式Twitter/YouTube『名医のいる相談室』
猫ひっかき病ってどんな病気?
この病気の病原菌は、「バルトネラ・ヘンゼレ」と呼ばれる細菌ですが、バルトネラ・ヘンゼレは、すべての猫の体内に常在している菌ではありません。
この菌を保菌しているネコノミが猫に寄生して、グルーミングなどの際に口内や爪が菌に汚染されることで、その猫から猫ひっかき病に感染してしまうのです。
猫ひっかき病の感染経路は?
一方、猫同士の間では、ネコノミの排泄物を媒介として感染していきます。感染猫の血液を吸ったネコノミが被毛の上で排泄すると、猫同士がお互いにグルーミングをするときにそれを口にすることに。結果、口にしてしまった猫の体内で菌が繁殖していきます。
原因はネコノミ! 注意が必要な季節とは
この時期は猫の繁殖期と重なるため、親猫・子猫ともにバルトネラ・ヘンゼレを保菌するおそれが。特に子猫はネコノミに寄生されやすいだけでなく、じゃれる延長で人をひっかいてしまう危険性も高くなるため、注意が必要です。
猫ひっかき病に感染するリスクを抑えるためにも、猫はできるだけ完全室内飼育で飼うようにしましょう。また、室内飼いであってもノミがいれば保菌の可能性は高まりますので、ノミの定期的な駆除と予防が一番の対策です。また、爪もこまめに切っておきましょう。
猫ひっかき病の症状 人の場合・猫の場合
猫ひっかき病に感染した人の症状
リンパ節の腫脹による疼痛のほか、発熱、悪寒、全身の倦怠感、食欲不振、頭痛、吐き気などの症状も現れ、重症化すると、心内膜炎や脳炎など、別の病気を併発するおそれも。
これらの症状が現れている場合は、抗菌薬の投与などを行い、治療を試みます。
猫ひっかき病に感染した猫の症状
猫にひっかかれたときの応急処置と受診の目安
受診したほうがいい症状は? 何科に行けばいいの?
先述したように、猫ひっかき病の病原菌には、平均2週間の潜伏期間があります。猫にひっかかれてから、数日~数週間後に猫ひっかき病を発症する危険性は十分考えられるので、応急処置と傷の経過観察はしっかり行いましょう。
ひっかきやすい猫の特徴は?
たとえば、もとは外で暮らしていたノラ猫の場合、ほかのノラ猫と縄張り争いなどの経験があるため、完全室内飼いの猫よりも警戒心が非常に強いです。人やほかの猫との接し方を知らずに生きてきたこともあり、恐怖心からひっかいてしまう場合も。
また、生後4週ほどたった子猫になると、ある程度歩いたり動いたりできるようになり、より活発に遊んだりじゃれたりするようになるため、悪気はなくても好奇心などから人を噛んだり、ひっかいたりしてしまうことが。猫は生後2ヶ月までに学んだことが性格のベースになるといわれているので、この時期の対応には十分に注意しましょう。
性別や1匹飼いかどうかも関係あり
1匹で飼われている猫は、多頭飼いのようにほかの猫から受けるストレスがない反面、じゃれあいなどで退屈しのぎができないので、刺激を求めて飼い主さんに強くじゃれついて、噛んだりひっかいたりしてしまうことがあります。
愛猫の性格や体調もチェック
また、体調の変化によって攻撃的になる場合も。これまでは触っても、噛んだりひっかいたりしたことがなかったのに、急にひっかいてくるようになったという場合は、触られている箇所に痛みを感じていたり、体調不良に伴うストレスを感じ苛立ちやすくなっていたりする可能性が。突然触られるのを嫌がるようになったときは、一度動物病院を受診してみましょう。
猫ひっかき病を予防するには?
おもちゃなど猫が噛んでも安全なものを上手に使いながら、こまめに遊んであげる時間をとることで、退屈からくる過剰に乱暴なじゃれつきやかみつきなどは減らせる傾向があります。
そのため、猫が退屈して飼い主さんにじゃれてこないように、1日3回以上は遊ぶ時間を設けるのがおすすめです。1回5~10分程度の短い時間でも、構われる回数が多いことでストレスの発散になります。しっかり遊んで、きちんと発散させてあげましょう。
スキンシップに慣らしていこう
猫の体がこわばってきたり、触られることを嫌がったりするそぶりが見られた場合は、触るのをやめてすぐに自由にさせてあげてください。
エスカレートさせないよう、習慣づけよう
また、猫が噛んだりひっかいたりしてきた場合、そのままにしたり、要求に応えたりしていると攻撃グセがついてしまいます。
遊びの延長での攻撃の場合には、低い声で「あっ!」や「だめ!」などの短い言葉を発したり、ほかの人に別の場所から音を出してもらったりして、猫を驚かして気をそらしてください。猫の気がそれた瞬間に攻撃から逃れ、猫の気が落ち着くまで別の部屋に行くなど距離をとって離れるなど、それ以上猫の相手をしない意思表示をしましょう。
病気を媒介するノミ対策も行おう
基本的にノミが生息しがちな暗い縁の下や草むらなどには近寄らせないようにしてください。猫にノミが付くと、首筋の後ろや尾の付け根など、毛づくろいをしにくいところに留まることも多く、その部位に砂粒のような黒いノミの糞が集中して見つかることもあります。普段からブラッシングのときなどに、ノミやノミのフンがないかよく観察するようにしましょう。
また、ノミの駆除薬などを使用するのもおすすめです。動物病院で処方してもらうことができ、スポイトタイプ、注射、スプレー剤の3種類が主流。予防のためか、駆除のためかなど、目的により適したものが異なるため、獣医師と相談のうえ選択するといいでしょう。
猫ひっかき病にならないためにも、愛猫との関係を大切に
また、猫にひっかかれた後に出血をしていなくても、バルトネラ・ヘンゼレ菌が体内に入り込んでいることは十分考えられます。そのまま放置していると重症化するおそれもあるので、水洗いなどの応急処置をした後は、病院で診てもらうと安心ですよ。
「ねこのきもち」2018年3月号『猫の"しちゃう"ワケを知って"させない"!噛む引っかく「0」飼い主宣言』
監修/佐藤貴紀先生(目黒アニマルメディカルセンター 隅田川動物病院 循環器担当)
文/kagio
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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