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【獣医師監修】猫に牛乳を与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説

猫に人間用の牛乳を与えることはできますが、猫によっては乳糖不耐症や牛乳アレルギーにより下痢や嘔吐などを起こすことがあります。腎臓病の猫やシニア猫、子猫にはとくに注意が必要です。牛乳は栄養豊富ですが、猫には猫用ミルクを与えたほうが安心です。

佐野 忠士 先生

猫に牛乳を与えるときは乳糖不耐症や牛乳アレルギーに要注意

皿からミルクを飲む猫
kulbabka/gettyimages
準完全食と呼ばれる牛乳には、三大栄養素であるタンパク質や脂質、炭水化物をはじめ多くの栄養素が含まれていて、人間にとってはメリットのある食品です。しかし、猫にとっては必ずしもそうではありません。

人間用の牛乳を猫に与えることはできますが、猫の体質によっては下痢や嘔吐が起こることもあります。また、腎臓病の猫やシニア猫、子猫に与えると体に重大な不調をきたす恐れがあるので注意が必要です。このようなことから、猫には人間用の牛乳ではなく必ず猫用ミルクを与えたほうがよいとする意見もあります。

猫に人間用の牛乳を無理に与える必要はありませんが、初めて猫に与える場合は、ほんの少し舐めさせる程度にとどめ、下痢などの症状が現れないか様子を見るようにしましょう。牛乳に耐性がある猫でも、少量にとどめたほうが安心です。

牛乳のおもな栄養素|炭水化物・脂質・タンパク質の順に多く含まれる

ブルーの瞳が印象的なミックス
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
牛乳(普通牛乳)に含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分

エネルギー61kal
水分87.4g
タンパク質3.3g
脂質3.8g
炭水化物4.8g
灰分(無機質)0.7g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

猫が牛乳を摂取するメリット|水分補給やさまざまな栄養素の補給に役立つ

猫に牛乳を与えるメリットとして、おもに以下のようなことが挙げられます。それぞれの特徴を見ていきましょう。

水分補給|嗜好品としてたまに与えるならOK

牛乳を好む猫には、たまにおやつとして与えてもよいでしょう。飲水量が少ない場合などに与えれば、猫によっては喜んで飲んでくれるかもしれません。ただし、猫の水分補給の基本は水です。新鮮な水を十分に与えているなら、わざわざ牛乳で水分補給させる必要はありません。

多様な栄養素|栄養価が高い

牛乳には、三大栄養素であるタンパク質や脂質、炭水化物のほか、ビタミンなどもバランスよく含まれていて、栄養価が高いため、「準完全食」と呼ばれています。

ただし、準完全食というのは人間を基準としたもので、完全肉食動物の猫に必要な栄養成分がすべて含まれているわけではありません。そのため、牛乳が好きな猫で、後述する乳糖不耐症や牛乳アレルギーでない場合に与えれば、栄養補給も期待できますが、基本的にはデメリットになることが多いため、無理に与える必要はないでしょう。

猫が牛乳を摂取するデメリット|乳糖不耐症、牛乳アレルギーなどに注意

おすまし顔でポージングするスコティッシュフォールド
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
多くの栄養素を含む牛乳ですが、猫によってはデメリットになることもあります。注意すべきポイントを確認しましょう。

乳糖(ラクトース)|乳糖不耐症により下痢や嘔吐などが起こる恐れあり

生乳から作られる牛乳には、生乳由来の「乳糖(ラクトース)」と呼ばれる成分が含まれています。乳糖は、ブドウ糖などに分解されることでエネルギー源となって働きますが、多くの成猫は乳糖を分解する酵素「ラクターゼ」をあまり持っていないので、消化不良により下痢や軟便、嘔吐、腹痛などを起こすことがあります。このような症状を、「乳糖不耐症(にゅうとうふたいしょう)」といいます。

一般的に、母乳を飲んでいる時期には腸からラクターゼが多く分泌されるので、乳糖不耐症は起こりにくいといわれていますが、成長に伴って母乳が不要になるとラクターゼの分泌量は減少します。そのため、ほとんどの猫が乳糖不耐症である可能性が高いといえます。

なお、ラクターゼが多く分泌されていても、人間用牛乳と猫の母乳では成分が異なるため、分解できずに下痢になることもあり注意が必要です。体の小さい子猫が下痢をすると重症化することもあるので、母乳ではなく人間の手で哺乳瓶などを使って育てる場合は必ず子猫用ミルクを用意してください。

牛乳アレルギー|アレルギー反応による皮膚疾患や下痢、アナフィラキシーショックに注意

牛乳にはタンパク質が含まれるため、稀にアレルギー反応を起こす猫もいます。牛乳アレルギーの初期症状では、湿疹などの皮膚疾患が多く見られますが、ひどく痒がるようなら病院を受診しましょう。

また、アレルギーでも下痢の症状が現れることも多く、乳糖不耐症と混同されることもありますが、それぞれの原因物質はまったくの別物です。乳糖不耐症は乳糖が原因で起こり、牛乳アレルギーは牛乳のタンパク質成分であるガゼインやホエイなどのアレルゲンに反応して起こります。

牛乳アレルギーでは、最悪の場合はアナフィラキシーショックを起こして死に至ることもあります。いずれにしても初めて牛乳を与える際は、まずはほんの少し与えてみて注意深く様子を見守ることが大切です。

カルシウム|過剰摂取による尿路結石症のリスクあり

ミネラルの一種であるカルシウムは、神経の伝達や筋肉を動かすのに不可欠な栄養素です。またリンと結びついてリン酸カルシウムとなり、猫の骨や歯の健康を維持するのに役立ちます。しかし、猫がカルシウムを過剰摂取すると、シュウ酸カルシウム結石を形成して尿路結石症のリスクが高まるので注意が必要です。

リン|過剰摂取により慢性腎臓病を悪化させる恐れあり

リンは体内でカルシウムとのバランスをとりながら存在し、猫の骨や歯を作るのに役立っています。ところが、血中のリンの量がカルシウムの量を上回ると、バランスをとるために骨を溶かしてしまうことがあります。

また、リンが多い状態が続くと、尿中のマグネシウムと結びついてストルバイト結石(ストロバイト結石)を形成し、尿路結石症のリスクが高まります。とくに、腎機能が低下している腎臓病の猫は余分なリンをうまく体外に排出できず、慢性腎臓病を悪化させる恐れがあり危険です。

腎臓病の猫には人間用の牛乳は与えず、健康な成猫でも、リンを含む牛乳の過剰摂取にならないようにくれぐれも注意しましょう。

高カロリー|肥満に注意

牛乳には脂肪分が含まれていて比較的高カロリーなので、与えすぎると肥満につながることがあります。猫に牛乳を与える場合は少量にとどめ、与えすぎにならないように注意してください。

猫に牛乳を与えるときの注意ポイント|少量を水で薄めて、たまに与える程度を推奨

仁王立ちしているような白黒猫ミックス
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
猫に牛乳を与える場合の適量や調理方法などのポイントを確認しましょう。

与えてよい種類

猫には人間用の牛乳よりも猫用ミルクがおすすめです。人間の乳児用の粉ミルクや液体ミルクも、牛乳をもとに作られていて猫用に成分調整されているわけではないので牛乳と同様のリスクがあります。

人間用の牛乳を猫に与える場合は、ほしがったときに少し与えるくらいにとどめましょう。ただし、初めて猫に与える場合は、まずはごく少量を与えてみて、下痢やアレルギー反応が現れないかしばらく様子を見てください。無理に与える必要はありません。

体が小さく影響が出やすい子猫に人間用の牛乳は与えないようにしてください。また、シニア猫も、人間用の牛乳を摂取すると心機能に負担がかかることがあるため注意が必要です。子猫用、シニア猫用のミルクがあるので、猫の年齢や状態に合わせて選ぶとよいでしょう。

与えるときの適量

猫に牛乳(普通牛乳)を与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、猫の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。

猫の体重目安1日あたりの摂取可能目安
4~5kg39~46g(約1/26~1/22パック)

※数値は、避妊・去勢済みの猫で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出牛乳1パック1リットル容量で計算。

容量200ミリリットルで約1/5~1/4パックが目安です。

調理方法

人間用の牛乳を与える場合は、水でかなり薄めてください。また牛乳を冷蔵庫から出して冷たいまま与えるとお腹を冷やすため、鍋で加熱したり湯煎したり、電子レンジなどで温めて、37~38度ほどの人肌程度まで冷ましたものを与えましょう。牛乳をぬるま湯で薄める方法も有効です。

ただし、乳糖不耐症の猫や牛乳アレルギーの猫には薄めた牛乳でも与えてはいけません。牛乳を薄めても乳糖は存在し、温めても乳糖の量は減ることはないので、下痢や嘔吐などの症状が現れる危険性があります。

猫に牛乳を与える場合は、猫用ミルクがおすすめ

石のように伸びあがるスコティッシュフォールド
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
猫に与えるなら、人間用の牛乳よりも猫用ミルクのほうがおすすめです。猫用ミルクの特徴や与え方などを見ていきましょう。

猫用ミルクは乳糖を大幅カットまたはゼロで安心

「キャットミルク」とも呼ばれる猫用ミルクは、乳糖を大幅にカットしてあるので、人間用の牛乳よりも安心して与えられます。なかには乳糖ゼロを謳う猫用ミルクもありますが、乳糖不耐症の猫でも摂取してよいかは、念のため獣医師に相談したほうがよいでしょう。

ほかにも、カロリーに配慮したものや、乳酸菌や食物繊維を配合したものなど、機能的な商品も販売されていて、猫に合わせて選ぶことができます。

猫用ミルクと犬用ミルクでは成分配合が異なる

猫用ミルクの成分も犬用ミルクの成分も、おもにタンパク質や脂質、炭水化物、ミネラル、繊維、水分などで、猫や犬に必要な栄養素がバランスよく配合されています。ただ、猫用は犬用と比べると、タンパク質が多く、脂質が低いのが特徴です。

タンパク質の分量が多いのは、猫は犬よりも肉食性の強い動物で、タンパク質(アミノ酸)をエネルギー源としているからです。また犬が食事から摂るべき必須アミノ酸は10種類ですが、猫はタウリンを含む11種類なので、ほとんどの猫用ミルクにタウリンが配合されているのも異なるポイントといえます。

なお、猫用ミルクは犬用よりも脂肪分が少なめに調整されていますが、逆をいうと犬用ミルクは猫用よりも脂肪分が高いということです。犬用ミルクを猫に与えると、カロリー過多になったり消化不良を起こしたりするので、与えないように注意しましょう。

猫用ミルクの粉末・液体のメリット・デメリット

猫用ミルクには粉末タイプと液体タイプがあります。それぞれのメリットとデメリットは以下のとおりです。

猫用粉末ミルク

猫用ミルクの多くが缶入りの粉末タイプです。
メリット|長期保存が可能。哺乳瓶に必要な分だけ作れるので経済的です。
デメリット|毎回お湯で溶かして、38度程度まで冷ましてから与える必要があり、手間がかかります。

猫用液体ミルク

紙パック入りが多いものの、なかには缶入りもあります。
メリット|溶かす必要がないので、そのまま容器に入れて与えられます。常温のまま与えてもOK。
デメリット|粉末タイプと比べて種類は少なめで高価。一度開封すると保存がきかないので、余ったら処分する必要があります。

子猫に猫用ミルクを与えるときの注意事項

生後2~3か月くらいまでの子猫には、必ず子猫専用のミルクを与えてください。自分で水を飲めるようになったらミルクは卒業です。

猫用ミルクを与える際は、子猫用哺乳瓶や小動物用哺乳瓶を用います。人間用の哺乳瓶は吸い口が太いうえに硬いので、口の小さい子猫には不向きです。また、吸う力が弱い場合などは、シリンジやスポイトなどで数滴ずつ舌に垂らしてあげるとよいでしょう。

哺乳瓶で与えるときは、人間の赤ちゃんとは逆で、子猫のお腹を下にした状態で与えます。空気を吸い込まないように哺乳瓶を下に向けて、吸い口の部分にミルクがしっかりたまってから口元に持って行きます。お腹がいっぱいになると嫌がる素振りを見せたり、口の周りにミルクがたまってきたりするので、哺乳瓶を離して口元をきれいに拭いてあげましょう。
こちらの記事もお読みください。

猫に人間用の牛乳を無理に与える必要はない

人間用の牛乳を好む猫もいますが、乳糖不耐症や牛乳アレルギーにより下痢や嘔吐などが起こることもあるので注意が必要です。牛乳は栄養価が高いもののデメリットも多いので、無理に与える必要はありません。牛乳に対して耐性のある猫がほしがったときに、少量を与える程度にとどめておきましょう。いずれにせよ、どの猫にも猫用ミルクを与えたほうが安心です。
猫には与えてはいけない食べ物があります。確認しておきましょう
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/倉田千穂
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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