猫と暮らす
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【獣医師監修】猫に牛乳を与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説
猫に人間用の牛乳を与えることはできますが、猫によっては乳糖不耐症や牛乳アレルギーにより下痢や嘔吐などを起こすことがあります。腎臓病の猫やシニア猫、子猫にはとくに注意が必要です。牛乳は栄養豊富ですが、猫には猫用ミルクを与えたほうが安心です。
佐野 忠士 先生
酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授
酪農学園大学附属動物医療センター集中治療科診療科長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了
北里大学獣医畜産学部および同大学獣医学部勤務
日本大学生物資源科学部獣医学科勤務
●資格:獣医師/博士(獣医学)/世界的獣医心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER インストラクター)/CCRP
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本獣医学会/日本獣医師会/日本動物リハビリテーション学会/動物臨床医学研究所/日本麻酔科学会/日本臨床モニター学会
●主な診療科目:麻酔科/集中治療科
●書籍:『asBOOKS チームで取り組む獣医師動物看護師のためのICU管理超入門』/『as BOOKS チームで取り組む獣医師・動物看護師のための輸液超入門』/『動物看護師のための麻酔超入門・改訂版』 など多数
猫に牛乳を与えるときは乳糖不耐症や牛乳アレルギーに要注意
人間用の牛乳を猫に与えることはできますが、猫の体質によっては下痢や嘔吐が起こることもあります。また、腎臓病の猫やシニア猫、子猫に与えると体に重大な不調をきたす恐れがあるので注意が必要です。このようなことから、猫には人間用の牛乳ではなく必ず猫用ミルクを与えたほうがよいとする意見もあります。
猫に人間用の牛乳を無理に与える必要はありませんが、初めて猫に与える場合は、ほんの少し舐めさせる程度にとどめ、下痢などの症状が現れないか様子を見るようにしましょう。牛乳に耐性がある猫でも、少量にとどめたほうが安心です。
牛乳のおもな栄養素|炭水化物・脂質・タンパク質の順に多く含まれる
エネルギー | 61kal |
---|---|
水分 | 87.4g |
タンパク質 | 3.3g |
脂質 | 3.8g |
炭水化物 | 4.8g |
灰分(無機質) | 0.7g |
文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照
猫が牛乳を摂取するメリット|水分補給やさまざまな栄養素の補給に役立つ
水分補給|嗜好品としてたまに与えるならOK
多様な栄養素|栄養価が高い
ただし、準完全食というのは人間を基準としたもので、完全肉食動物の猫に必要な栄養成分がすべて含まれているわけではありません。そのため、牛乳が好きな猫で、後述する乳糖不耐症や牛乳アレルギーでない場合に与えれば、栄養補給も期待できますが、基本的にはデメリットになることが多いため、無理に与える必要はないでしょう。
猫が牛乳を摂取するデメリット|乳糖不耐症、牛乳アレルギーなどに注意
乳糖(ラクトース)|乳糖不耐症により下痢や嘔吐などが起こる恐れあり
一般的に、母乳を飲んでいる時期には腸からラクターゼが多く分泌されるので、乳糖不耐症は起こりにくいといわれていますが、成長に伴って母乳が不要になるとラクターゼの分泌量は減少します。そのため、ほとんどの猫が乳糖不耐症である可能性が高いといえます。
なお、ラクターゼが多く分泌されていても、人間用牛乳と猫の母乳では成分が異なるため、分解できずに下痢になることもあり注意が必要です。体の小さい子猫が下痢をすると重症化することもあるので、母乳ではなく人間の手で哺乳瓶などを使って育てる場合は必ず子猫用ミルクを用意してください。
牛乳アレルギー|アレルギー反応による皮膚疾患や下痢、アナフィラキシーショックに注意
また、アレルギーでも下痢の症状が現れることも多く、乳糖不耐症と混同されることもありますが、それぞれの原因物質はまったくの別物です。乳糖不耐症は乳糖が原因で起こり、牛乳アレルギーは牛乳のタンパク質成分であるガゼインやホエイなどのアレルゲンに反応して起こります。
牛乳アレルギーでは、最悪の場合はアナフィラキシーショックを起こして死に至ることもあります。いずれにしても初めて牛乳を与える際は、まずはほんの少し与えてみて注意深く様子を見守ることが大切です。
カルシウム|過剰摂取による尿路結石症のリスクあり
リン|過剰摂取により慢性腎臓病を悪化させる恐れあり
また、リンが多い状態が続くと、尿中のマグネシウムと結びついてストルバイト結石(ストロバイト結石)を形成し、尿路結石症のリスクが高まります。とくに、腎機能が低下している腎臓病の猫は余分なリンをうまく体外に排出できず、慢性腎臓病を悪化させる恐れがあり危険です。
腎臓病の猫には人間用の牛乳は与えず、健康な成猫でも、リンを含む牛乳の過剰摂取にならないようにくれぐれも注意しましょう。
高カロリー|肥満に注意
猫に牛乳を与えるときの注意ポイント|少量を水で薄めて、たまに与える程度を推奨
与えてよい種類
人間用の牛乳を猫に与える場合は、ほしがったときに少し与えるくらいにとどめましょう。ただし、初めて猫に与える場合は、まずはごく少量を与えてみて、下痢やアレルギー反応が現れないかしばらく様子を見てください。無理に与える必要はありません。
体が小さく影響が出やすい子猫に人間用の牛乳は与えないようにしてください。また、シニア猫も、人間用の牛乳を摂取すると心機能に負担がかかることがあるため注意が必要です。子猫用、シニア猫用のミルクがあるので、猫の年齢や状態に合わせて選ぶとよいでしょう。
与えるときの適量
また、猫の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。
猫の体重目安 | 1日あたりの摂取可能目安 |
---|---|
4~5kg | 39~46g(約1/26~1/22パック) |
※数値は、避妊・去勢済みの猫で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出牛乳1パック1リットル容量で計算。
容量200ミリリットルで約1/5~1/4パックが目安です。
調理方法
ただし、乳糖不耐症の猫や牛乳アレルギーの猫には薄めた牛乳でも与えてはいけません。牛乳を薄めても乳糖は存在し、温めても乳糖の量は減ることはないので、下痢や嘔吐などの症状が現れる危険性があります。
猫に牛乳を与える場合は、猫用ミルクがおすすめ
猫用ミルクは乳糖を大幅カットまたはゼロで安心
ほかにも、カロリーに配慮したものや、乳酸菌や食物繊維を配合したものなど、機能的な商品も販売されていて、猫に合わせて選ぶことができます。
猫用ミルクと犬用ミルクでは成分配合が異なる
タンパク質の分量が多いのは、猫は犬よりも肉食性の強い動物で、タンパク質(アミノ酸)をエネルギー源としているからです。また犬が食事から摂るべき必須アミノ酸は10種類ですが、猫はタウリンを含む11種類なので、ほとんどの猫用ミルクにタウリンが配合されているのも異なるポイントといえます。
なお、猫用ミルクは犬用よりも脂肪分が少なめに調整されていますが、逆をいうと犬用ミルクは猫用よりも脂肪分が高いということです。犬用ミルクを猫に与えると、カロリー過多になったり消化不良を起こしたりするので、与えないように注意しましょう。
猫用ミルクの粉末・液体のメリット・デメリット
猫用粉末ミルク
メリット|長期保存が可能。哺乳瓶に必要な分だけ作れるので経済的です。
デメリット|毎回お湯で溶かして、38度程度まで冷ましてから与える必要があり、手間がかかります。
猫用液体ミルク
メリット|溶かす必要がないので、そのまま容器に入れて与えられます。常温のまま与えてもOK。
デメリット|粉末タイプと比べて種類は少なめで高価。一度開封すると保存がきかないので、余ったら処分する必要があります。
子猫に猫用ミルクを与えるときの注意事項
猫用ミルクを与える際は、子猫用哺乳瓶や小動物用哺乳瓶を用います。人間用の哺乳瓶は吸い口が太いうえに硬いので、口の小さい子猫には不向きです。また、吸う力が弱い場合などは、シリンジやスポイトなどで数滴ずつ舌に垂らしてあげるとよいでしょう。
哺乳瓶で与えるときは、人間の赤ちゃんとは逆で、子猫のお腹を下にした状態で与えます。空気を吸い込まないように哺乳瓶を下に向けて、吸い口の部分にミルクがしっかりたまってから口元に持って行きます。お腹がいっぱいになると嫌がる素振りを見せたり、口の周りにミルクがたまってきたりするので、哺乳瓶を離して口元をきれいに拭いてあげましょう。
猫に人間用の牛乳を無理に与える必要はない
文/倉田千穂
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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