猫の口内は強いアルカリ性なので虫歯になりにくいといわれていますが、一方で歯周病など歯肉の病気も多く見られます。病気が悪化すると、痛みからフードが食べられなくなったり、口内から細菌が体内に運ばれて内臓系に悪影響が出ることもあります。猫の歯磨きの方法や慣らし方を知り、こまめなケアを行いましょう。
猫の歯磨きの頻度は?習慣にするためのポイント
まずは、猫の歯磨きを行う頻度の目安や、歯磨きを習慣にするためのポイントをご紹介します。
歯磨きの回数は?
歯垢は約1週間で歯石になり、歯石になると簡単には落とせなくなります。1週間に1回以上は歯磨きをして、歯垢のうちに取り除きましょう。
口まわりが触れると、歯磨きや投薬もラクに
いきなり歯磨きをしようとしても、大抵の猫は嫌がってしまうもの。まずは口まわりに触れ慣れさせましょう。口を開けることができるようになると、乳歯から永久歯に生え変わる様子を観察できたり、薬も飲ませやすくなります。
続けることが大事。できることからゆっくりはじましょう
まずは歯みがきを嫌なことと思わせないのが肝心です。怖がったり、嫌がる様子が見られたときは、無理強いせず、最初はガーゼで磨くなど、嫌がらない方法から初めてみてください。1日または2日に1回数秒間をなるべく長く続けることによって、歯磨きが猫の習慣になり、嫌がらずにやらせてくれるようになります。
難しければ歯磨きグッズをつかってのケアでもOK
歯磨きと一緒に使うのが理想ですが、直接歯をお手入れするのが難しい場合は、食べながら歯垢除去ができるおやつや、遊びながら汚れがとれるおもちゃで、猫に嫌がられずにケアする方法もあります。
歯磨きへの近道!猫の口まわり&歯のタッチ
1.触ると喜ぶところからなでる
スキンシップの延長として、猫が喜ぶあごの下などから優しくなでるところからスタート。その後、あご下を中心に、頬、鼻筋など口まわりを人差し指でやさしくなでます。
2.口まわりを触り、口角を引っ張り上げる
口まわりを触っても大丈夫になったら、両手で猫の口から頬にかけて少しずつ揉むように触ります。その後、さりげなく両手で口角を引っ張り上げてみましょう。最終的に、奥歯まで見えるような“笑顔”になればグッド! ただし、指を嚙まれないように、猫が嫌がったらすぐに手を離すようにしてください。嫌がる猫も多いので、できそうになったら、ほめながらおやつを与えることを繰り返し、“これをすればイイことがある”と猫に好印象をもたせましょう。
3.前歯を触る
片方の手を猫のあご下に添えて、反対側の手の人差し指で上唇を少し持ち上げながら前歯を軽く触っていきましょう。歯を触られることを嫌がるなら、指に愛猫がお気に入りのおやつのペーストやウエットフードの汁をつけてみてください。おいしそうなニオイのする指なら受け入れてくれる猫も多いはず。
4.奥歯を触る
片方の手の人差し指で上唇をしっかり持ち上げながら反対側の手の人差し指で奥歯を軽く持ち上げ触っていきましょう。
歯ブラシで猫の歯磨きをする方法
タッチができるようになったら、歯周病菌の温床である歯垢を最も効果的に取り除ける、歯ブラシに挑戦してみましょう。
1.用意するもの
・ペット用の歯ブラシ
・ペット用の歯磨きペースト
・水とペーストを入れる器(仕切りつきなら便利)
2.歯磨きを始める前に
乾いた歯ブラシは、猫が痛がって嫌がる原因になります。歯ブラシを水で濡らしてから歯磨きペーストをつけてあげてください。歯磨き途中で乾いてきたら、繰り返し行いましょう。
3.猫を膝の上にのせ、リラックスさせる
抱っこができる猫なら膝の上にのせ、触ると喜ぶところからなでて猫をリラックスさせながら歯磨きの体勢に移行しましょう。猫の後方から両手を回す抱え方が安定するのでおすすめです。
抱っこが苦手な猫の場合は、台の上にのせて猫の後方から手を回す抱え方をしてみましょう。猫が暴れるなら、お気に入りの布で体を包むのも、猫が安心するうえに、飼い主さんも引っかかれるのを予防できるので、一石二鳥です。
4.歯垢のつきやすい臼歯(奥歯)を磨く
ほかの歯よりも大きな臼歯は、歯垢がつきやすいので念入りに磨いていきましょう。
歯ブラシを持っていない手の人差し指で猫の口角を引っ張り上げ、歯ブラシを45度くらい傾けて歯に当てます。左右に小刻みに動かして1本ずつ軽く磨いてきましょう。
歯ブラシの持ち方を鉛筆持ちにすれば小刻みに動かしやすく、歯茎を傷つけないように優しい加減で磨けます。
5.犬歯と切歯(前歯)を磨く
歯ブラシを持っていない手の人差し指で上唇を上げ、歯ブラシを45度くらい傾けて歯に当てます。左右に小刻みに動かして1本ずつ軽く磨いていきましょう。
長さのある犬歯は左右の横方向だけでなく、上下の縦方向も磨くとパーフェクトです。歯石がたまりやすい歯と歯茎の境目の「歯周ポケット」も意識して磨くように心がけてください。
6.歯ブラシを受け入れない猫には
歯ブラシでなでられるのが好きな猫もいるので、磨く用となでる用の2本持って、口まわりをなでながら歯磨きしてみましょう。歯磨きの成功率がアップするはずです。
しかし、どうしても歯ブラシを受け入れない場合は、歯ブラシよりも小さい綿棒で試してみてもいいかもしれません。ただ、歯ブラシほど歯垢を落とす効果は望めないので、綿棒に慣れてきたら再度歯ブラシで挑戦しましょう。
歯磨きシートで猫の歯磨きをする方法
歯ブラシや綿棒での歯磨きがどうしても難しいなら、猫が比較的受け入れてくれやすい“歯磨きシート”がおすすめです。この方法で慣れてきたら、歯ブラシに再挑戦してみましょう。
1.用意するもの
2.歯磨きを始める前に
歯磨きシートを人差し指の長さに合うようにシートをカットし、指にしっかり巻きつけましょう。少しキツめに巻けば、猫の違和感が少なくなり、歯をスムーズに拭くことができます。
3.猫を膝の上にのせ、リラックスさせる
歯磨きをさせるの「3.猫を膝の上にのせ、リラックスさせる」のプロセスと同じ要領で猫を歯磨きの大勢にしましょう。猫がリラックスできれば、どんな体勢でもOK。
4.歯垢のつきやすい臼歯を拭く
歯磨きシートを巻いていない手を猫のあご下に添えて、シートを巻いた人差し指を猫の口の端から滑らせるように入れてください。指の腹で臼歯を左右に小刻みに軽くこすりましょう。
5.犬歯と切歯を磨く
歯磨きシートを巻いていない手の親指で上唇を持ち上げて、シートを巻いた人差し指の腹で左右に小刻みに軽くこすりましょう。長さのある犬歯は上下の縦方向も拭くとグッド!
6.歯磨きシートが入らなければ、ガーゼを使用して!
歯磨きシートに比べ効果や便利さは劣りますが、ガーゼでもOK。同様に指にまき、水やウエットフードの汁を染み込ませれば準備完了です。
とくに3才を過ぎると、猫の80%が口の中に疾患を抱えているといわれています。愛猫の命を守るためにも歯磨きは欠かさないようにしましょう。
監修/長谷川諒先生(きたじま動物病院)
文/ねこのきもちWeb編集室
参考&画像・イラスト出典/「ねこのきもち」本誌、ムックより