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【獣医師監修】猫が糖尿病 原因や症状、インスリン注射や療法食について

猫にとって珍しくない病気の糖尿病。どんな病気か知っていますか?猫が糖尿病を発症する原因と症状、インスリンや療法食による治療法を紹介します。「糖尿病が疑われる」「糖尿病を患っている」猫の飼い主さんは参考にしてください。

どんな病気?猫の糖尿病

カメラ目線の子猫
getty
糖尿病とは、血液中の糖が多くなる病気です。本来はホルモンの一種であるインスリンがすい臓から分泌され、血液中の糖を細胞内に取り入れていくのですが、糖尿病になるとインスリンの働きが弱まったり、うまく分泌されなくなったりして、糖が血液中にたくさん残った状態になります。
これを「高血糖」と呼び、この状態が続くことにより血液中に残った糖が尿の中に含まれるようになることを「尿糖」と呼びます。

糖尿病には1型と2型がある

糖尿病には2種類あり、インスリン依存性糖尿病(1型糖尿病)とインスリン非依存性糖尿病(2型糖尿病)に分けられます。
2型糖尿病は肥満や運動不足、ストレスによってインスリンの分泌が低下する(またはインスリンが効きにくくなる)のに対し、1型糖尿病はインスリンを分泌するβ細胞が破壊されてしまうため、インスリンの分泌自体がなくなってしまいます。犬や猫の場合は、この1型糖尿病が多く見られます。

糖尿病の主な症状

椅子の上の白猫
getty

初期の糖尿病に見られる症状

体で利用できない余分な糖が尿に排出される際、一緒に水分をもっていきます。そのため糖尿病になると、水を大量に飲んでオシッコの量や回数が増える「多飲多尿」の症状があらわれます。

また糖を細胞に取り込めなくなるため、十分な栄養が体にいきわたらなくなり、食欲が増加します。それでもエネルギー不足な状態が続くため、体重が減少してしまうでしょう。

末期の糖尿病に見られる症状

糖尿病の末期になると、食欲の低下、下痢、嘔吐、ふらつきなどの症状があらわれ、毛並みが明らかに悪くなります。この状態はかなり危険で、糖尿病性のケトアシドーシスに発展していくおそれがあるので注意が必要です。

糖尿病性ケトアシドーシスに注意!

猫も人も、ふだんは糖からエネルギーを生成しますが、インスリンの働きが悪く糖からエネルギーを生成できないときは、脂肪からエネルギーを作ることになります。そのときに発生するのが「ケトン体」と呼ばれる物質です。
このケトン体が体内に増えると、「糖尿病性ケトアシドーシス」という状態になり、食欲減退や元気消失、嘔吐などの症状が見られることがあります。また、症状がさらに進行すると、ぐったりして起き上がれない、意識の喪失、さらには血圧が低下してショック状態になるなど、命に関わる危険な状態に陥ってしまい緊急治療が必要となります。

糖尿病を発症する原因

まっすぐ見つめる猫
getty

食生活によるもの

猫は肉食のため、高たんぱく質で低炭水化物の食事が好ましいとされています。炭水化物の割合が高い食事をとっていると血糖値が上がりやすく、糖尿病にかかりやすくなるでしょう。また、一度に大量の食事をとることも血糖値を急上昇させ、糖尿病になるリスクが高まります。

年齢によるもの

糖尿病は、人でいう中年以上の年齢に達した猫が発症しやすい傾向にあります。そのため、10才を過ぎた猫は注意が必要とされています。

体型によるもの

肥満体型の猫は、理想的な体型の猫に比べて4倍糖尿病になりやすいといわれています。すい臓からインスリンが分泌されていても、インスリンの効きが悪く、高血糖状態が続くためです。
猫はこのタイプの糖尿病が多く、ある程度の年齢に達した去勢済みのオスに多く見られる傾向があります。また、早食いの猫も注意が必要でしょう。

ストレスによるもの

興奮したりストレスがたまったりすると、ブドウ糖を上昇させるホルモンが分泌され、血糖値が上昇します。猫は犬に比べると上昇した血糖値を下げる能力が低く、元に戻るまでに時間がかかります。
また、長期的なストレスがかかることはインスリンの効きを悪くする要因にもあげられているので、ストレスを感じている猫は糖尿病を発症するリスクが高くなるでしょう。

基礎疾患・投薬によるもの

インスリンの効きが悪くなる原因として、口内炎や胆管炎、すい炎、皮膚病などの激しい炎症や、長期にわたるステロイド治療などが報告されています。特定の内分泌疾患や腫瘍が糖尿病を引き起こす原因になることも知られているため、基礎疾患のある猫や投薬中の猫は注意が必要でしょう。

糖尿病の治療法①~インスリン注射~

聴診器をあてられる猫
getty
まずは体への糖の吸収を助けることにより、症状の改善を目標とした治療を開始します。インスリン注射や療法食、運動療法などの治療法がありますが、そのなかのインスリン注射は血糖を細胞に取り込む手助けをする効果が期待できるでしょう。

頻度と注射の進め方

インスリンの投与は1日1~2回、毎日行います。治療開始時に別の疾患がある場合や猫の状態が悪いときは入院することもありますが、基本的には飼い主さんが注射を行います。

最初の1週間程度はインスリンの注射量を大まかに決め、猫の体と飼い主さんが慣れる期間を設けます。その後は獣医師と相談しながら、通院頻度やインスリンの注射量を決めていくことになるでしょう。

インスリンにはいくつかの種類があるため、治療がうまくいかない場合は種類を変えることもあります。

血糖値や尿糖は、自宅でも確認できる!

自宅で血糖値を確認するために、細い針で耳から1滴血を出して計測する方法があります。ただ、この方法は猫によって難しく、猫と飼い主さんに負担がかかるでしょう。

ほかには、試験紙を使って尿中に含まれる糖の量を調べることもできますが、血糖値と比較すると大まかな結果しかわかりません。ただ尿糖が出ていなければ、インスリンがいい方向に効いていると判断することもできるでしょう。

なかにはインスリンが効きづらいケースも

先述したように、口内炎やすい炎などの激しい炎症、内分泌疾患、腫瘍などがあると、インスリンの効きが悪くなります。ほかにも慢性腎臓病や心臓病もインスリン抵抗性を起こす疾患にあげられていて、これらの疾患が潜んでいるとインスリンが効きづらいこともあるでしょう。
もし、別の疾患が見つかった場合は、両方の病気に対する治療をコントロールしていく必要があります。

治療中は低血糖症に注意

糖尿病の治療中に一番注意したいのが、低血糖症。これは糖尿病とは逆に、血糖値が低下して引き起こされる病気です。
実は糖尿病の高血糖時よりはるかに命に関わる危険が大きいため、対処が遅れると死亡につながるおそれもあります。「インスリンを間違えて過剰に投与した」「インスリン注射後、ふだんと様子が違う」など気になることがあれば、かかりつけの病院に電話するなど適切に対処しましょう。

糖尿病の治療法②~療法食~

フードを食べる猫
getty

療法食による治療

先述したように、犬猫の多くは、インスリンの分泌がなくなってしまう1型糖尿病を発症します。ただ犬がほぼ1型糖尿病であるのに対し、割合が少ないですが、猫はインスリンの効きが悪くなる2型の糖尿病も発症します。そのためインスリンの投与を中止して、療法食による治療へ移行できることもあるでしょう。

また、インスリン注射と並行して療法食による治療を行い、血糖値の上昇などを抑えていく場合もあります。

療法食の内容

一般的に、食物繊維を増量することにより糖の吸収を穏やかにし、満腹感を与えて体重を落とすものや、高タンパク低炭水化物で食後の血糖値の上昇を緩やかにして、すい臓に負荷をかけない(インスリン必要量を減らす)といったものがあります。どれも食後の血糖値の急上昇を抑える工夫がされていて、糖尿病の治療に適した内容になっています。

療法食選びは獣医師の指示に従う

療法食は「以前処方されたから」などという理由で、自由に選んではいけません。“◯◯に配慮”という機能性特化のフードもありますが、これらは基本的に健康な猫を対象としています。獣医師指導のもと、病状の変化に適宜対応しながら正しい食事を選びましょう。

猫の治療に参加する意識をもつことが大切

カップルと猫
getty
インスリン注射を開始したり、療法食を与えたりすることは、飼い主さん自身が治療の一部に参加するということです。どちらも、猫が生きていくうえで必要不可欠な要素を担っています。猫によっては注射や療法食を嫌がるコもいますが、焦らずに向き合っていくことが大切でしょう。飼い主さんの手助けが、今後の治療に大きな役割を果たします。
参考/「ねこのきもち」『愛猫の栄養学事典』
監修/ねこのきもち相談室獣医師
文/こさきはな
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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