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獣医師監修|猫の体重管理(ダイエット)~肥満の原因や対策、体験談まで~

愛猫の体重管理(ダイエット)について、お悩みの飼い主さんもいるでしょう。そこで今回は、猫の肥満の定義や原因、リスクとともに、猫の正しい体重管理法や注意点を解説。猫の体重管理の成功体験談もご紹介します。

徳本 一義 先生

 獣医師
 有限会社ハーモニー代表取締役
 日本ペット栄養学会理事
 ペットフード協会新資格検定制度実行委員会委員長
 日本獣医生命科学大学非常勤講師
 帝京科学大学非常勤講師
 など

●資格:獣医師 経営学修士(MBA)

●所属:日本ペット栄養学会

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猫の肥満とは?体重管理(ダイエット)を見直す基準について

フードボウルの前に座る猫
Lightspruch/gettyimages

愛猫の適正体重を知る

過剰な脂肪が体に蓄積して、適正体重を20%以上超えている、あるいは、体脂肪が30%以上のことを「肥満」といいます。愛猫が肥満かどうかを判断するためには、愛猫の現在の体重を知り、適正体重と比較するとよいでしょう。

個体差があるため正常な体重というのは把握しづらいですが、成長期には肥満になりづらいことから、1才時の体重を基準にするという方法があります。1才時の体重よりも増加していたり、1才時の体重が分からないようであれば、かかりつけ医に相談してみましょう。

猫の体重の量り方

愛猫の体重を知るには、定期的に動物病院に通い、診察台で量ってもらうのがおすすめです。自宅で量りたい場合は、飼い主さんが愛猫を抱っこして体重計にのり、その後飼い主さんの体重を引くという方法もあります。

「ボディコンディションスコア(BCS)」で理想の体型をチェック

先述のとおり、猫の体格などには個体差があるため、適正体重を超過していたとしても肥満とは限りません。そんなときに役立つのが、「ボディコンディションスコア(BCS)」という、肥満度のチェック方法です。

ボディコンディションスコア(BCS)

ボディコンディションスコア
参考・写真/「ねこのきもち」2017年5月号別冊『愛猫の栄養学事典』
ボディコンディションスコアでは、猫の体を見たり触ったりすることで、肥満かどうかを判断します。BCS3が理想の体型とされているので、愛猫がBCS4・BCS5に当てはまる場合は、かかりつけ医と相談しながら、体重管理を始めたほうがよいかもしれません。

詳しくは以下の記事でも解説しているので、あわせて参考にしてみてください。
※ボディコンディションスコアには5段階と9段階がありますが、ここでは5段階評価を紹介しています。

猫の肥満の原因とは?

体重計とメインクーン
ablokhin/gettyimages
では、なぜ猫は肥満になってしまうのでしょうか。考えられる主な原因は以下のとおりです。

フードやおやつの量が多い

1日に与えるフードやおやつの量が多いと、カロリーオーバーとなり肥満の原因になります。また、猫の主食となるフードは、ライフステージ(年齢、肥満などの生活状態、妊娠などの生理状態)によって見直す必要があるため、与えているフードの種類が愛猫のライフステージに合っていないと、肥満につながることがあるでしょう。

運動不足

運動不足になると余ったエネルギーが脂肪に変換されて、肥満になってしまいます。また、一度太ると動くことが億劫になり、さらに運動をしなくなるという悪循環が生まれやすくなるので注意しましょう。

ケガや病気が原因の場合も

関節炎にかかっている猫や、ケガをして安静中の猫などは運動量が減ってしまうため、肥満になりやすくなります。また、甲状腺機能低下症やクッシング症候群など、内分泌系の異常によっても体重が増えてしまうことが。

加齢

猫は年を重ねると運動量が減り、筋肉量も落ちて基礎代謝が低下します。そのため、若い頃と同じフードを与えていると、エネルギーを消費できずに太ってしまう傾向が。また、加齢に伴い運動量が減ることも、太りやすくなる原因のひとつと考えられています。
ただし、12~13才を超えると体重が減ってくることもあります。
そのほか、避妊・去勢後の猫は肥満になりやすい傾向があるので、とくに注意が必要です。猫の避妊・去勢に関する詳しい情報は以下の記事を参考にしてみてください。

猫の肥満がもたらすリスクとは?

フードボウルと2匹の猫
anastas_/gettyimages
猫が肥満になると、次のような問題を抱えるリスクが高まります。

肥満の猫が抱えやすいリスク

  • 体重増加によって足腰への負担が大きくなった結果、関節の病気にかかりやすくなる

  • 首の周囲に脂肪がつくことによって気道が圧迫され、呼吸器の病気にかかりやすくなる

  • 体重が増えることで動くことが面倒になり、泌尿器の病気にかかりやすくなる

  • 過剰な体重が麻酔の効果を薄めてしまうため、手術が難しくなることがある

  • 糖尿病や熱中症などの発症リスクが高まる など
このように、猫が肥満になるとさまざまな病気を引き起こすリスクが高まり、健康寿命の短縮につながるおそれがあります。愛猫に健康で長生きしてもらうためには、飼い主さんがしっかりと体重管理をしてあげることが大切です。

猫の正しい体重管理(ダイエット)法とは?

キャットタワーにのる猫
Liudmila Chernetska/gettyimages
猫の体重管理では、獣医師とよく相談したうえで目標を設定し、食事・運動の両面からアプローチしていく必要があります。

食事管理をする

食事量を徹底管理する

まずはおやつを与えるのをやめ、獣医師に相談しながら1日の総食事量を決めて、その量を守ることを徹底しましょう。
そして、1日の総食事量を与える回数で割り、毎回同じ量を与えるようにしてください。これを毎日繰り返すことで、その量で満足できるように習慣化するのが目的です。それでも太る・体重が減らない場合は、獣医師に相談して、1日の総食事量を5~10%程度減らしてみるのもよいでしょう。

食事の与え方を工夫する

(1)早食いを防止する
早食いをすると、脳で満腹感が得られないままフードを食べ終えてしまいます。猫は人のように意識してゆっくり食べることができないので、早食い防止用のフードボウルやフードが食べづらくなっている知育玩具などを活用したり、フードを小皿に分けて部屋の各所に置いたりして、早食い対策をしてあげましょう。
(2)ゴハンの回数を増やす
少量でもこまめに食べていれば、空腹を感じにくくなります。そこで、1日の給与量を、朝・昼・晩・寝る前など、できる限り小分けにして与えましょう。
(3)ごほうびとしてウエットフードを活用するのも◎
ウエットフードは高カロリーと勘違いされやすいですが、実際は同じ分量でもドライフードより低カロリーです。水分含有量が多く満足感もアップしやすいので、ごほうびとしてたまに与えるのもいい方法でしょう。
なお、主食として与える際は、必ず「総合栄養食」と明記してあるものを選んでください。

体重管理用のフードを取り入れるのも手

猫の体重管理をするときは、体重管理専用のフードを取り入れる方法もあります。

体重管理専用フードとは、高タンパク、低脂肪、高食物繊維といった、体重管理に適した栄養バランスが整えられたフードのことで、低カロリーで満腹感を与えながら必要な筋肉量を維持するなど、愛猫の体重管理をサポートしてくれるものです。

健康な泌尿器を維持するためにミネラルバランスが調整されていたり、健康的な脂肪代謝のためにL-カルニチンが配合されていたりするなど、メーカーによってその特徴は異なるので、獣医師と相談しながら愛猫に合ったものを選びましょう。
「療法食」とは異なる点に注意!
なお、ここでいう体重管理専用のフードとは、「機能性フード」のことを指します。「機能性フード」とは、健康管理する際の気になるポイントに応じて、栄養素などが整えられたフードのことです。

体重管理専用のフードの場合は、重度の肥満を解消するのが目的ではなく、あくまでも適正な体重の維持や軽度の体重過剰が気になる猫の栄養に配慮したフードという位置づけになります。獣医師の指導のもと与える「療法食」とは異なりますので、正しく理解しておきましょう。

運動量を増やす

運動するとカロリーを消費できるのはもちろん、筋肉量が増えて基礎代謝も上がるので、太りにくくなります。猫は犬のように散歩に連れて行くのは難しいですから、室内での運動量をアップさせる工夫をしましょう。

ただし、猫は長時間動き回るのが得意ではありません。運動時間は1回15分程度を目安にして、1日2~3回行うようにしましょう。

キャットタワーを活用する

キャットタワーの上り下りは、よい運動になります。あまり興味を示さない猫の場合は、フードをキャットタワーの上のほうに置くことで、猫を上らせることができるかもしれません。この場合、器は落としても割れない素材のものにしましょう。

おもちゃを活用する

猫の運動量をアップさせるには、じゃらしやボールなどのおもちゃを使い、飼い主さんが一緒に遊んであげることも大切です。
また、猫が転がすことで中に入れておいたフードの粒が少しずつ出てくる、ボール状のおもちゃもおすすめ。早食い防止につながるうえ、運動量アップにもつながるでしょう。

猫の体重管理(ダイエット)の注意点

キャットタワーの上で見つめる猫
kaorinne/gettyimages
猫の体重管理をする際は、以下の点に注意してください。

過度な食事制限や無理な運動はNG

極端な食事制限や運動は、健康を害するおそれがあるので絶対にしないでください。とくに、関節炎や心臓病などの基礎疾患がある猫や、重度の肥満の猫が無理な運動をすると大変危険ですので、必ず獣医師の指示に従いましょう。
また、肥満の猫が急激に食事量を減ると、肝リピドーシスという病気になり、命に関わることもあります。肥満の猫のフードを変更する際には、ゆっくりと時間をかけて行いましょう。

なお、肥満(気味)の猫が獣医師の指導のもとで食事管理する場合、1週間につき1~2%程度の体重減少が理想的とされています。定期的に動物病院で体重を測定してもらって、適切なペースで体重管理するようにしましょう。

同居猫がいる場合は別々の場所で食事を与える

複数飼いで多いのが、食欲旺盛な猫が同居猫のフードを食べて太っていくケースです。このような場合は、食事を与える部屋を別々にしてドアを閉め、猫が行き来できないようにしましょう。

手作りフードは栄養バランスを損ねるおそれも

手作りフードで愛猫の体重管理をしようと考える飼い主さんもいるようです。しかし、手作りフードを日常的に与える場合は、猫の栄養学に関する専門的な知識がない限り、栄養バランスが崩れてしまうおそれがあります。

猫の体重管理をする際は、動物病院で適切な指導を受けたうえで、愛猫に合ったフードを適量与えることがもっとも大切だといえるでしょう。

飼い主さんに聞いた!猫の体重管理(ダイエット)の成功体験談

キャットタワーでくつろぐ猫
chie hidaka/gettyimages
ではここで、愛猫の体重管理に成功した飼い主Aさん(仮名)の体験談をご紹介します。

愛猫の体重管理に成功した体験談

Aさんがまず行ったのが、フード量の見直しです。1日分の量をきちんと計測し、それを「起床後」「出勤前」「帰宅後」「就寝前」の4回に分けて与えたといいます。

もちろん、体重管理には運動も欠かせません。先述した、キャットタワーの上にフード皿を置いて上下運動をさせるなど、愛猫の運動量をアップさせる工夫を取り入れ、なんと5年間で-2.7kgの減量に成功したのです。

この体験談の詳しい内容は以下の記事でも掲載していますので、気になるかたはチェックしてみてくださいね。
正しい方法で体重管理を行い、愛猫の健康を守りましょう。
監修/徳本一義先生(有限会社ハーモニー代表取締役)
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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