猫が毛玉を吐く行為。それ自体に問題はなくても、体にそれなりの負担がかかります。猫の負担を軽減し、病気のサインを見逃さないためにも、猫が毛玉を吐く理由や毛玉の注意点、様子を見ていい嘔吐と危険な嘔吐の見分け方、毛玉を減らす対策を紹介します。
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猫が毛玉を吐く理由と吐きやすい猫の特徴
猫が毛玉を吐くのはなぜ?
猫が毛玉を吐く理由は、胃の中に蓄積した毛を吐き出すためです。
猫は自分で毛づくろいしますが、舌にブラシのようなトゲがあるため、毛に付着した汚れと一緒に毛を飲み込んでしまいます。飲み込んだ毛は便と一緒に排泄されますが、胃にたくさん溜まると口から吐き出します。
毛玉を吐きやすい猫の特徴
吐きやすい猫の特徴として、長毛の猫や神経質な猫があげられます。神経質な猫は頻繁に毛づくろいをする傾向があるため、胃に毛玉が溜まりやすいのです。また行動面では、同居猫の毛づくろいをする猫も毛玉を吐きやすくなるようです。
問題のない毛玉の吐き方
頻度や猫の様子
吐く回数が1~2回程度で、嘔吐物に異物や血液などが混ざっていない毛玉のみを吐くのであれば、問題ないと考えられるでしょう。その後も元気や食欲があり、顔つきや活動量に異変が見られなければ、自宅で様子を見ても大丈夫です。
嘔吐物の見た目
胃に溜まった毛玉が、固まりになって出てきます。飲み込んだ毛や汚れが吐き出されるので、その猫の毛質などによって、固まりの長さや色は違うでしょう。
嘔吐にフードが混じることがあり、少し茶色がかった毛玉が出てくることも。フードや胃液などを一緒に吐き出すため、嘔吐した所が汚れることもあります。
毛玉を全く吐かない場合は?
毛づくろいの頻度や飲み込む毛の量には個体差がありますが、便と一緒に排出されているのであれば、吐かなくても問題ないでしょう。吐くことは体に負担がかかる行為なので、吐かずに過ごせるのであれば、それに越したことはありません。
ただ、猫の元気がない、排便がないという場合は、お腹に毛玉が溜まっている可能性も。これらの不調が見られる場合は、様子を見ずに動物病院を受診しましょう。
受診が必要!危険な毛玉の吐き方
猫が毛玉を吐く生き物だとしても、次のような場合は体に何らかの異常を抱えていることが考えられます。自宅で様子を見ず、すぐに動物病院を受診しましょう。
誤食した異物が混ざっている
毛玉と一緒におもちゃや紐などを吐き出した場合は、注意が必要です。誤食した異物を吐き出すのは体を守るための生理現象だとしても、まだ体内に残っている可能性が。残った異物が消化管を傷つける危険性もあるので、放置するのはとても危険です。
嘔吐物に血が混じっている
毛玉と一緒にピンク色の胃液を吐いたり、毛玉に血が混じったりしている場合は、胃や食道で出血していることが疑われます。消化管が傷ついている可能性が大きいでしょう。
ヨダレが出てふらついている
口からヨダレが出る、ふらついている場合は、何らかの中毒症状が疑われます。人の薬やタバコ、タマネギ、花、チョコレートなどを食べていないでしょうか。猫が誤食しそうなものがないか確認してください。
吐いたあと元気がない
毛玉に限らず吐いた後で元気や食欲がなくなる場合は、体に異変が起きていることが疑われます。顔つきがいつもと違い、活動量が減ってぐったりとする様子が見られるのであれば、体の不調を感じているのでしょう。
1日3回以上連日吐く
どんな内容の嘔吐であれ1日に3回以上吐き、その状態が連日続いている場合は、何らかの病気やトラブルの可能性が考えられます。早い段階で動物病院を受診して、詳しい検査を受けましょう。
下痢や便秘などの症状がある
嘔吐のほかに下痢や便秘の症状が見られる場合は、病気の可能性が考えられます。寄生虫やすい炎、甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)、腫瘍などの病気は、嘔吐と一緒に下痢や便秘の症状があらわれます。
食欲がなく体重が減っている
たとえ元気であっても、体重が減少する場合は必要な栄養が摂取できていません。何らかの病気やトラブルを抱えている可能性が考えられるでしょう。
毛玉の嘔吐に関する注意点
胃に被毛が滞留する毛球症に注意!
猫が毛玉を吐くのは正常な生理反応ですが、飲み込んだ毛が吐き出せないくらい大きな塊になって胃に滞留すると、「毛球症(もうきゅうしょう)」という病気になるおそれがあります。毛球症になると食欲不振や消化機能の低下、嘔吐などの症状があらわれ、ある程度の毛玉が溜まってしまうと開腹手術による除去が必要になることも。
大切な猫の体のためには、できるだけ吐く回数を減らしてあげる工夫が必要でしょう。
吐きたそうで吐けない空嘔吐に注意!
吐くしぐさをするのに吐かないことを、「空嘔吐」といます。毛玉などを吐き出したいのに吐けないときに、この空嘔吐が見られますが、それ以外には口に違和感があって空嘔吐することも。
猫に空嘔吐する様子が見られたら、口内をチェックして赤みや異臭がないか確認しましょう。のどの炎症、口内炎、歯肉炎などの病気が潜んでいる可能性もあります。
ストレスを感じている可能性に注意!
一般的に毛玉の嘔吐は抜け毛の多い換毛期に見られますが、換毛期と関係なく猫が毛玉を吐くようになったら注意が必要です。
猫は不安や不満を感じているときにも毛づくろいをすることから、何らかのストレスを感じていて、毛づくろいが増えた可能性も考えられるでしょう。また体にかゆみや痛みがある場合も、その場所を頻繁になめるので、毛玉がお腹に溜まりやすくなります。
猫の毛づくろいが増えたと感じるようであれば、原因に心身の不調が潜んでいる可能性も。猫がどんなことにストレスを感じるのか気になるかたは、こちらの記事も参考にしてください。
嘔吐を減らすために、飼い主さんができること
ブラッシングを習慣にする
猫が舌で毛づくろいをして毛を飲み込む前に、毛を取り除いてあげることが大切です。抜け毛が多い時期や毛づくろいが好きな猫のために飼い主さんができることは、なんといってもブラッシングでしょう。
できれば、毎日ブラッシングする習慣を身につけたいです。ブラッシングが苦手な猫の場合は、触られると喜ぶ額などからそっと始め、徐々にブラッシングする範囲を広げていきましょう。詳しいブラッシングの方法を知りたいかたは、こちらの記事も参考にしてください。
必要に応じてトリミングを行う
猫の毛が抜け替わる換毛期は、グルーミングで取り切れないほど大量の毛が抜けます。それらの毛を飲み込むと嘔吐の原因になりますので、必要に応じてシャンプーやトリミングを行うといいでしょう。
自宅で行うのが難しい場合は、トリミングサロンを利用するのも手です。初めて行う場合や猫の健康状態を相談したいときは、動物病院併設のトリミングサロンを利用すると安心でしょう。近くに動物病院併設のトリミングサロンがない場合は、かかりつけの動物病院で紹介してもらいましょう。
毛玉ケア用の食事に切り替える
「ヘアボールコントロール」や「毛玉ケア」と表示されているフードを見かけたことはありますか? これらは、食物繊維の量を増やすことで消化管の動きを促し、便と一緒に毛玉を排泄することを目的に作られたフードです。これらのフードに切り替えて、毛玉が体内に溜まることを防ぐのも有効でしょう。
毛玉ケアフードは、あまり吐かない猫が食べても問題ありません。今は毛玉がお腹に溜まっていなくても、予防で与えるのもおすすめです。
毛玉除去剤を使う
毛玉ケア用品は、フードのほかに、サプリメントや毛玉除去剤といった薬もあります。この毛玉除去剤は、猫の体内で毛玉が作られるのを防止して、便と一緒に排泄させることを期待して作られた予防薬です。
ブラッシングがどうしても苦手な猫には、こういった手段で対策するのもおすすめです。これらのフードや毛玉除去剤は動物病院でも取り扱っているので、かかりつけの獣師師に相談してみましょう。
猫草を与える
猫草とは、毛玉を吐くためや便秘の予防、嗜好品として、猫が好んで食べる草のことです。一般的に猫草と呼ばれているものはイネ科の若い草のことで、エン麦や小麦、大麦など、いろいろな種類の猫草があります。
ただこれらの猫草は、消化しきれず嘔吐や下痢を引き起こす心配があるため、1才未満の猫に食べさせるのは避けましょう。1才を過ぎた成猫も食べるのは柔らかい若葉だけにして、量を1日に数本程度にとどめておきたいです。
また、胃腸が弱っているときは、なるべく与えないようにしてください。
ねこのきもちSTOREおすすめの毛玉ケアフードと除去剤
毛玉ケア用品で毛玉対策をしたくても、最初はどんなものを選べばいいのかわかりませんよね。そんな飼い主さんのために、ねこのきもちSTOREがおすすめする毛玉ケアフードと毛玉除去剤を紹介します。
1.ロイヤルカナン フィーライン ケア ニュートリション ヘアボール ケア
毛玉が気になる猫専用のフードです。食物繊維の働きにより、毛玉の排出をサポートします。12ヵ月齢以上の成猫用です。
2.ヒルズ サイエンス・ダイエット〈プロ〉 猫用【健康ガード 便通・毛玉】1~6歳
独自の毛玉軽減テクノロジーにより、愛猫の健康を維持する総合栄養食「機能性健康食」です。毛玉が便で排出されるのに最適な量の食物繊維と、必要な栄養素がしっかり吸収できるよう、消化に配慮した原材料が愛猫の健康をサポートします。
3.ニュートロ ナチュラルチョイス スペシャルケア キャット 毛玉トータルケア アダルトチキン
健康維持に配慮された、毛玉のトータルケアフードです。高品質な自然由来の食物繊維がバランスよく配合されています。
4.グリニーズ 猫用 毛玉ケア ツナ味
毛玉の形成を抑える、毛玉ケアスナックです。外はカリカリで、中のクリームはツナのおいしさが凝縮されています。主原料は自然素材なのでおやつとして安心して与えることができ、毛玉の排泄もサポートします。
猫が毛玉を吐くことは、基本的には問題ありません。ただ体に負担がかかる行為であることには変わりないので、その負担を減らしてあげるためにも、愛猫にあった方法で対策してあげましょう。少しでも病気の可能性を感じたら、迷わず動物病院で受診してください。
参考/「ねこのきもち」2016年2月号『見極め方から掃除法まで “吐く学”な飼い主さんになろう!ねこの「吐く」大全』
「ねこのきもち」2018年6月号『何を、どんな理由で吐くの?できることは?ねこの"吐く"を減らそうプロジェクト』
監修/ねこのきもち相談室獣医師
文/こさきはな
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と一部写真に関連性はありませんので予めご了承ください。