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【獣医師監修】抱っこが嫌いな猫を“抱っこ好き”にさせる方法
当記事では、抱っこが好きになるためのトレーニングを、3ステップでご紹介します。愛猫の個性を知り、自分の行動を省みて、正しい抱っこの方法を学びましょう。また、日々のコミュニケーションを通じて、抱っこに対する印象を好転させることも重要です。
この記事の監修

佐藤 貴紀 先生
目黒アニマルメディカルセンター 東京ベイ動物病院顧問
株式会社FORPETS 代表取締役、JVCC動物病院グループ 代表取締役を経て、株式会社WOLVES Hand 取締役
麻布大学獣医学部卒業
西荻動物病院副院長
日本獣医生命科学大学獣医内科学教室研修生
dogdays東京ミッドタウンクリニック副院長
株式会社FORPETS設立
●資格:獣医師/獣医循環器認定医
●所属:日本獣医循環器学会
●主な診療科目:循環器科
●書籍:『いぬのココロがわかる本』ぶんか社文庫/『お仕事熱血ストーリー 感動する仕事!泣ける仕事!第2期』学研/『教えて!獣医さん 犬の悩みなんでも相談室』学研プラス/『猫の急病対応マニュアル』鉄人社/『動物たちのお医者さん』小学館ジュニア文庫/『犬の急病対応マニュアル』鉄人社
●SNS:公式Facebook/公式ブログ/公式Twitter/YOUTUBE「名医のいる相談室
猫は抱っこが大好きとは限らない


人によっては「猫はみんな抱っこが大好きだよね」と思っている方もいるかもしれませんが、一方で「抱っこしたいけれど、全然させてくれない」と悩む飼い主さんも見かけます。実際のところ個体差があり、猫は抱っこが好きな子もいれば、苦手な子もいるのです。
ねこのきもち WEB MAGAZINE「獣医師が答えるQ&A(抱っこが上手にできません。)」
ステップ1:愛猫の性格を診断しよう

抱っこが苦手な理由は、猫によってさまざま。まずは愛猫は以下のどのタイプに当てはまるのか、冷静に分析してみましょう。
①性格自体がクールで、気ままに過ごしたい。ベッタリされるのが苦手。
抱っこが苦手というよりは、自由を奪われることが好きではないタイプ。少しだけ抱っこできても、すぐにいなくなることが多いでしょう。
②とにかく臆病(人に近づかれるのも怖く、物音に敏感なタイプ)
人に慣れていなかったり、迎え入れたばかりで飼い主さんに慣れていないケース。環境に慣れて落ち着くまで時間がかかります。無理に抱っこすると抱っこ嫌いになる恐れも。
③過去のトラウマから、抱っこに苦手意識を持っている
病院での治療過程や、抱っこされた状態での痛い経験など、抱っこにまつわるトラウマを抱えている可能性があります。このタイプは、抱っこ自体を怖がる傾向があります。
④他の人には抱かれるが、飼い主さんには抱っこされたがらない
飼い主さん側の抱っこの仕方が不慣れなで安定しないため、抱っこさせてくれないことも。正しい抱っこの仕方を学ぶことで、克服できるケースかもしれません。
⑤落ち着く環境で抱っこをしていない
神経質な猫は、ガチャガチャ音がしていて気になったり、抱っこしているときに他の動物や人が来るような環境だと、抱っこをさせてくれないことがあります。落ち着いた2人きりの場所でトライしてみると成功するかも。
⑥そもそも猫がその気じゃない
何か遊びに夢中だったり、安心して寝ていたり、邪魔されたくないと思っているときに抱っこしようとしても逃げられてしまいます。こちらに甘えたそうにしているタイミングを伺うことが得策です。
⑦飼い主さんから猫の嫌いな匂いがする
柑橘系など、猫は苦手とする匂いがあります。飼い主さんのつける香水やボディーソープ、ハンドクリームなどが苦手な匂いの場合は、「くさい!」と逃げてしまいます。
⑧痛みや病気が原因で抱っこを嫌がる
どこかケガしていたり、お腹などに痛い部分があったり、内臓疾患があったりすると、抱っこを嫌がります。痛みから嫌がることが特徴で、急に抱っこできなくなった場合は要注意です。
ステップ2:コミュニケーションの強化と実践

①ステップ1の分析を踏まえ、愛猫とのコミュニケーションを強化
たとえば、よく話しかけたり、その子の気持ちの良い場所を撫でてあげたり、猫の近くにいてあげるだけでも、愛猫とのコミュニケーションは強化されます。臆病な子に「私は害ではないよ」と分からせるためにも、側で静かに落ち着いて過ごしてあげてください。
そして猫が自ら甘えてきやすい状況を作り、ひたすら待つことが大事です。決してすぐに抱っこをしようとしてはいけません。猫から甘えてきて、今なら大丈夫かな?と思えるタイミングを見極めましょう。
②安定した抱っこの仕方を覚えて実践する
よくありがちなのが、猫を仰向けにして、お腹を見せるような姿勢での抱っこ。それだと「拘束された!」と思ってしまう猫も多く、猫自身の自由が効かないことに不満を感じて逃げられてしまいます。
正しく安定した抱っこの仕方は、まず片手はでお尻と後ろ足を包み込むように支えると同時に、その手の平から手首、そして腕の内側に猫が座っているように抱きかかえるものです。もう片方の手では猫の脇腹のあたりをさらに包むように支えてあげましょう。いきなり立った状態で抱っこするよりも、座ってひざの上で抱っこすることから始めると良いですね。
ステップ3:抱っこ=嬉しい&気持ちいいと思わせる

抱っこを嬉しい時間にする
抱っこされることが猫にとって「気持ちいい」や「嬉しい」といったポジティブな感情に直結するように習慣づけると、抱っこのことが好きになる確率が上がります。たとえば、猫が自分では届きにくい耳の後ろや、顎下を軽くかくように撫でてあげたり、抱っこする際に猫の大好きな布をひざに置いて抱っこしたり、少量の好物のおやつをあげたりしてみてください。
「抱っこされるといいことがあるんだ」と覚えさせることによって、抱っこに対する猫の印象も改善されるでしょう。そして、もし少しでも抱っこができたら、逃げてしまっても「ありがとう」といって自由にすることが大切です。無理強いせずに繰り返しながら習慣づけることで、抱っこ好きな猫になる日も夢ではありませんよ。
ねこのきもち WEB MAGAZINE「もう猫ちゃんにいやがられない!心地よい抱っこの3つのポイントとは」
猫が抱っこして欲しいのはどんな時?
飼い主さんにやたらと寄り添ってきたり、足にからまってきたりと、猫はときどき抱っこをせがんでくることがありますよね。そんなときの猫自身の心理はどんなものなのか、解説していきます。
甘えたい
「飼い主さんに甘えたい」という心理がはたらいているとき、猫は抱っこをせがんできます。とても可愛らしくシンプルな欲求ですね。野生での生活からやがて人と共に暮らすようになった猫は、人と密着することで飼い主さんの愛情を感じるということを覚えました。抱っこ=心地よい愛情を感じるという感覚が根付いて、猫は甘えたいときに人に寄ってきます。
動画の猫ちゃんのように、何度も足にからまってきたり、何度も膝の上に乗っかってきたりという行動が見られる場合は、甘えたい気持ちの表れと言えます。
暖を取って温まりたい
これからやって来る寒い季節、猫はより暖かいところへと移動したがります。飼い主さんの腕の中は、暖を取れて安心感も得られる、まさにベストポジションです。また、飼い主さんがお風呂上がりのときにやたらとすり寄ってくるという様子も見られますが、これもお風呂上がりのぽかぽかの飼い主さんの体温で、猫も温まりたいという心理からくる行動です。
もしお風呂上がりのタイミングで猫が体をこすり付けてきたりしたら、暖を取りたい・温まりたいという気持ちの表れと言えます。
焦らずじっくり時間をかけることが重要

抱っこが上手くいかずに逃げられたときは、すぐに抱っこしたり、怒ったりしてはいけません。焦らずじっくりと時間をかけて、深追いせずにその子のペースに合わせてコミュニケーションを続けながら、じっくり待つことが肝心です。
オモチャで誘導し、ひざの上に乗せることから始めるだけでも良い習慣作りになりますよ。たとえ前進していないように思えても、日々のやりとりが良い印象で蓄積されていけば、大きな進歩につながります。
ねこのきもち WEB MAGAZINE「イカ耳!?ヒゲ、ピーン!?猫との距離感大切です!愛猫を「抱っこ好き」に変身させよう!」
もちろん抱っこが苦手なままでも十分愛らしい猫ちゃんですが、抱っこを好きになってくれれば、さらに絆も深まるでしょう。どの子にも共通するのは、「時間をかけたコミュニケーションが大事」ということです。
参考/『ねこのきもち』17年11月号『毛色×性格 相関データFile』(監修:山本宗伸先生)
『ねこのきもち』WEB MAGAZINE「もう猫ちゃんにいやがられない!心地よい抱っこの3つのポイントとは」
『ねこのきもち』WEB MAGAZINE 「イカ耳!?ヒゲ、ピーン!?猫との距離感大切です!愛猫を「抱っこ好き」に変身させよう!」
『ねこのきもち』WEB MAGAZINE「獣医師が答えるQ&A」
監修/佐藤貴紀先生(目黒アニマルメディカルセンター東京ベイ動物病院顧問)
※写真はスマホアプリ「まいにちのいぬ・ねこのきもち」で投稿いただいたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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