近所の野良猫を家猫として迎え入れたいけど、まず何からやればいいのかわからないという人は多いのではないでしょうか?そこで今回は、野良猫を家に迎え入れるための準備や注意点とともに、野良猫を家猫にするメリットやならし方の手順について解説します。
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家猫になることは、猫にとっていいことなの?
道端を優雅に歩く野良猫は、自由気ままに生きているように見えるかもしれませんが、実はさまざまなリスクと隣り合わせの生活を送っています。ここでは、猫が外で生活するリスクとともに、野良猫が家猫になるメリットを解説します。
思わぬケガやほかの猫とのケンカを減らせる
道端で生活している野良猫は、交通事故に遭うリスクが高くなります。それ以外にも、ほかの猫とのケンカでケガを負ったり、動物病院で治療を受けられないことでケガが悪化したりすることも考えられます。家猫になれば、こういった思わぬ事故やケガ、ケンカのリスクを回避できるだけでなく、すぐに治療を受けることでケガの悪化を防ぐこともできるでしょう。
感染症などの病気のリスクが下がる
ほかの猫との接触が多い野良猫は、猫風邪や白血病、猫エイズなどのウイルスに感染するリスクが高くなります。また、地域猫活動を行っていない場所で暮らしている野良猫は去勢・避妊手術を受けていない可能性が高いため、ほかの野良猫や放し飼いにされている飼い猫との交配で妊娠するおそれも。
家猫になれば動物病院での健康診断やワクチン接種を受けることができるので、感染症などを予防できるほか、病気を発症してもすぐ治療を受けられます。また、去勢・避妊手術を受けられることで、望まない妊娠を避けることもできます。
猫が外で暮らすリスクについて、以下の記事でも詳しく解説されているので参考にしてみてください。
野良猫をならして家猫にするためにはどうしたらいいの?
外で生活している野良猫は警戒心が強く、野良猫としての生活が長いほど、人になれるのは難しくなります。まずはその警戒心を解くことを優先し、ごはんをあげるなどして好印象を与えることから始めましょう。猫が近づいてきても触れず、動かず、優しく声をかける程度にしてください。
野良猫がなれてきたら、「棒状のモノのにおいを嗅ぐ」という猫の習性を利用して、指のにおいを嗅がせながら存在を認識してもらいましょう。その際、そっと背中をなでてあげられるとベストです。
室内へ招き入れる段階になったら、必需品のトイレに加えて、猫が隠れる場所を確保するためのケージを用意します。人との接点を徐々に増やしていくことが大切なので、最初はごはんやトイレなど、最低限のお世話をするだけに留めておきましょう。徐々にお世話にかける時間を増やしていき、手から直接ごはんを食べてくれるようになったら大きな進歩です。
野良猫を保護するとき、どんな準備をするべき?
迎え入れ方はどうであれ、そもそも猫を飼うことができるのか、改めてじっくり考えてみてください。
そのうえで、実際に野良猫を保護する場合には、以下の観点をふまえたうえで準備をしておきましょう。
ケージや食器、トイレなど、猫用のアイテムを準備しよう
今後の飼育生活で使うだけでなく、動物病院に連れて行くまでの間のお世話でも猫用の飼育グッズは必要となるので、野良猫を保護する前にあらかじめ準備しておく必要があります。足りないものはそのつど買い足せばいいので、まずは最低限、以下のグッズをそろえておいてください。
- 食器
- キャットフード
- 猫用のミルクや離乳食(子猫用)
- 砂・容器などのトイレ用品
- 暖房機器(子猫の体温調整用)
- ケージ
- キャリーバッグ など
本当に野良猫なのか確認しよう
外で暮らしていても、必ずしも野良猫とは限りません。その地域で保護・管理されている地域猫や放し飼いにされている飼い猫、迷い猫の可能性もあります。野良猫を観察し、「耳に地域猫を示す印(カット)が入っていないか」「野良猫とは思えないほど人なつこかったり、太っていたりしないか」「首輪やマイクロチップはついていないか」などを確認しましょう。
動物病院で健康診断を受けよう
外で暮らしていた野良猫は、ノミやダニに寄生されていたり、ウイルスに感染していたりすることが考えられます。家の中に寄生虫やウイルスを持ち込まないように隔離しておき、最優先で動物病院を受診してください。
全身の健康をチェック・検査してもらったら、必要に応じて病気の治療や寄生虫の駆除、ワクチン接種などをしてもらいましょう。猫エイズや白血病の検査はウイルスの検出に時間がかかるうえ、去勢・避妊手術も猫の月齢によってはすぐに行えない場合もあるので、猫が落ち着いてから動物病院と相談のうえ受けるとよいでしょう。
野良猫を迎え入れる準備については、以下の記事も参考にしてみてください。
野良猫を迎えたあとの注意点
動物病院で年齢を調べてもらう
子猫の場合は、年齢によって与えられる食べ物が異なります。まだミルクや離乳食しか食べられない子猫なのか、ドライフードを食べられる年齢になっているのか、動物病院で調べてもらいましょう。
食事やお世話の仕方を教えてもらう
まだ子猫の場合は、人の手でミルクを飲ませたり、排泄を促したりしてあげる必要があります。正しい方法でお世話できていないと、下痢や脱水症状を引き起こしかねませんので、いずれも動物病院に相談してお手本を見せてもらいましょう。
先住猫がいる場合は、最初は隔離を
自宅に先住猫がいる場合は野良猫の寄生虫やウイルスをうつさないよう、治療の完了やウイルスの潜伏期間を過ぎるまで、別々の部屋に隔離しておきましょう。お世話しているうちに飼い主さんにウイルスが付着することも考えられるので、野良猫まわりの清掃・消毒を徹底するほか、お世話のときに使った手袋や洋服を替えることも心がけてください。
なお、部屋を分けられない場合は、まわりを布や段ボールで覆ったケージに野良猫を入れ、猫同士が直接接触しないよう工夫するのもおすすめです。ただし、空気感染する感染症には効果がないため注意してください。
トイレのしつけはゆっくりと
外で暮らしていたこともあり、室内でのトイレははじめ失敗する確率が高いです。しばらく粗相を繰り返してしまうことも考えられますが、1匹で用を足せるようになるまで根気よく教えてあげましょう。
トイレのしつけは、とくに難しいことをする必要はありません。部屋を落ち着きなく歩きまわるしぐさが見られたら、トイレの中に入れるのを繰り返すだけです。外に出てもトイレに入れるのを繰り返すうちに、中で用を足せるようになります。
無理にお風呂に入れない
野良猫はもちろん、猫は一般的にお風呂が苦手です。無理に入れると大きなストレスになるだけでなく、体に負担をかけてしまうので、無理に入れる必要はありません。ノミやダニ、害虫の卵などは動物病院で処方される駆除薬でないととりきれないため、お風呂やシャンプーは駆除薬の投与後、猫がなれてから行うのが無難です。
自分で飼えない場合は新しい飼い主さんを探す
自分では飼えないけれど野良猫を保護してしまった場合は、保護団体や動物病院に相談したり、譲渡会に出したりして新しい飼い主さんを探しましょう。見つかるまでの間に、前述したワクチン接種などを済ませておくほか、スキンシップなどになれさせておくことも大切です。
家猫になったものの……外に出たい欲求はあるの?
室内飼いしている猫が、よく外を見つめている場面を目にすることがありますよね。家猫として迎え入れたばかりだと、「外へ出たいのではないか」「家の中が退屈なのではないか」と不安になるかもしれませんが、はたして野良猫に外へ出たい欲求はあるのでしょうか?
ずばり、外への欲求はある!
野良猫として外で生活をしていた猫は、外の世界も自分の縄張りと認識しています。つまり、“外へ出たい欲求は大いにある”といえるでしょう。しかし、前述したように、外には猫にとっての危険がたくさん潜んでいます。外へ出たいという欲求を抑えさせるのは難しいですが、一度室内飼いをすると決めた以上、外に出さないことを徹底しましょう。
ちなみに、室内だけが自分の縄張りだと思っている猫は、侵入者がいないか見張っているだけと考えられます。
本能を満足させてあげて
外へ出たい欲求が強いあまり、大きな声で鳴き続ける猫もいます。そういった場合は、狩猟本能が満たされるような遊びを取り入れたり、運動量を増やせるようにキャットタワーを設置したりして、室内生活でも楽しいと思えるような環境を整えてあげましょう。
室内飼いのストレス対策や脱走の防止方法について、以下の記事で詳しく解説されているので参考にしてみてください。
しっかりと責任感をもって迎え入れよう
野良猫か家猫か、どちらが本当に幸せかは猫に聞いてみないとわかりません。しかし家猫として迎え入れることで、病気や空腹といった不安やリスクから解放してあげることはできます。気になる野良猫がいるのであれば、保護を検討してみてもいいのではないでしょうか。
ただし保護したら、一生その猫を飼う覚悟と責任をもつことになるということを忘れないでください。また、幸せに暮らしていけるよう、準備や確認も怠らないようにしてくださいね!
参考/「ねこのきもち」特別編集『初めて猫を飼う人も、2匹目以降を迎える人も、みんなで考えたい「猫のためにできること」 保護ねこのきもち』
監修/ねこのきもち相談室獣医師
文/pigeon
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。