猫の体毛の柄はとてもバリエーション豊富で、見ているだけでも楽しいものです。全く同じ柄が二つとして存在しないことから、その猫の個性としても体毛の柄は大きな意味を持ちます。猫の柄の誕生する仕組みとは?柄の種類はどのくらいあるのか?奥深い「猫の毛柄」に関する疑問を分析していきます。
バリエーション豊富な猫の柄
柄のルーツと派生
私たちが慣れ親しんでいる飼い猫は、もとは山で暮らすヤマネコが家畜として人に飼われるようになって生まれました。そしてこのヤマネコの祖先は、北アフリカやリビア半島の砂漠地帯に住む「リビアヤマネコ」です。リビアヤマネコは縞模様を持っており、全ての飼い猫の模様はこの縞模様に由来しています。
リビアヤマネコの毛柄の遺伝子が、突然変異を繰り返し複雑に絡み合った結果、現在の多種多様な毛色と柄が生まれました。
どのくらいの種類がある?
様々な色と柄を持つ猫ですが、個体差が大きく現れるためハッキリとした数を出すのは非常に困難です。まず、柄を持つ猫と持たない猫で二種類に大別できます。そして柄を持つ猫のうち、縞模様かブチ模様かでまた分けることができます。
体毛の色の違いで更に分類していくと、また多くの種類に分けられていきます。そうして分類していくと、猫の毛柄の種類はざっと十数種類くらいになります。
猫の柄が生まれる秘密
父猫と母猫の遺伝子の組み合わせで決まる
猫の毛柄は、その猫の父猫と母猫の遺伝子の組み合わせで決まります。多くは親猫の柄と同じ柄が子猫にも表れますが、遺伝子のはたらきかたは複雑なため、ご先祖である数世代前の猫の毛柄が突然表れたりすることもあります。猫一頭ごとに組み合わさる遺伝子が違ってくるため、同じ親猫から同時に生まれた子猫どうしでも、柄がみんな違うなんてこともよくあることです。
例外として、毛色が限定されている猫種では決まった毛柄が優生的に遺伝するため、両親が同じ猫種の子猫は親猫と同じような毛柄になる傾向があります。
【画像付き】猫の柄一覧
親猫の遺伝子のはたらきかたによって決まる猫の毛柄には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?ここでは猫の柄の種類を可能な限りご紹介していきます。
1:柄なし
縞模様やブチ模様がなく、全身に単色の体毛を持つ猫です。全身が一色の毛で覆われおり、シンプルでありながらインパクトのあるルックスが特徴です。
黒
全身の体毛が黒く、柄の入っていない猫です。漆黒の毛色から「ブラック・ソリッド(ハッキリくっきりとした黒の意)」とも呼ばれます。日本で最古の記録に登場するのもこの黒猫です。瞳の色は銅色(カッパー)、黄色、黄緑色(ヘーゼル)が多いです。性格は友好的でおとなしめな傾向があります。
白
柄が入っておらず、白一色の毛を持つのが白猫です。瞳の色はブルーや黄色、またオッドアイ(左右で瞳の色が違う)を持つ子もいます。白猫の白い毛色を作る遺伝子は強くはたらくため、親猫が白猫なら生まれる子猫も白い毛色になりやすいです。性格は繊細で注意深い傾向が見られます。
グレー
黒、白と同様にグレーのみの毛を持つ猫です。青みがかったグレーであることから、遺伝子学的には「ブルー」と呼ばれています。純血種であることも多く、代表的な猫種はロシアンブルーです。近年では猫の多様な交配が進み、ミックスでもグレーの毛を持つ猫が増えつつあります。
瞳の色は、メラニン色素の影響によりカッパー(銅色)~グリーンになります。性格は黒猫に似て、穏やかでおとなしめの傾向です。
2:トラ柄(キジトラ・茶トラ・サバトラ)
日本で猫と言えば、このトラと同じような縞模様を持つトラ柄の猫のイメージが強いかもしれません。トラ柄の縞模様は「マッカレルタビー(魚のサバの縞模様)」と呼ばれます。トラ柄のグループも色の違いで種類分けされます。
キジトラ(ブラウン・マッカレルタビー、ブラック・マッカレルタビー)
鳥の雉(キジ)を思わせる茶色のベースカラーに黒の縞模様(トラ柄)が入った猫。キジトラは飼い猫のなかで一番、猫本来の毛柄に近いと言われています。祖先であるリビアヤマネコに一番似ている色と柄を持ちます。
目と口の周りの毛は白っぽくなることが多く、尻尾の先にいくほど毛色が濃く黒っぽい色になります。性格は慎重派ですが、飼い主さんには甘えん坊な面を見せる傾向が強いようです。
サバトラ(シルバー・マッカレルタビー)
シルバーグレーのベースカラーに黒の縞模様(トラ柄)を持つ猫です。ベースのグレーが魚の鯖の色に似ていることから、サバトラの名が付きました。性格は慎重派と人懐っこい派の両極端であることが多いです。
茶トラ(レッド・マッカレルタビー、ジンジャー)
うす茶色に近いオレンジ色のベースカラーに、濃いオレンジ色のトラ柄を持つ猫です。全体的に明るい茶色で、アメリカでは「ジンジャー」と呼ばれ親しまれています。尻尾の先は他のトラ柄と違って白っぽい色をしているのが特徴。茶トラは遺伝的にオスが多いことが判っていて、性格にもオス特有の「甘えん坊」や「欲求にストレート」という傾向があらわれます。
3:ミックス柄(三毛・サビ・麦わら・薄サビ)
三つの色が組み合わさってブチ模様を作っていたり、複数の色がまんべんなく混ざり合った毛柄がミックス柄です。持ち合わせた毛色の多さも相まって、目にとまりやすい柄と言えます。
三毛(トーティ&ホワイト、キャリコ)
白・黒・茶(オレンジ)の三つの毛色が、ランダムに表れるのが三毛猫です。遺伝子学的にはメスがこの三つの色を持つことが可能ですが、突然変異でごく稀にオスの三毛猫も誕生します。毛色の濃淡にも個体差があり、同じ三毛でも違った印象を受けます。瞳の色は黄色とグリーンが多く、メラニン色素が薄いとブルーになることも。
性格は「気まぐれ」「怖がり」など、メス特有の個性が色濃くあらわれます。
サビ(トーティシェル、べっ甲)
黒とうす茶色(オレンジ)がランダムに混ざり合った毛柄です。同じサビでも二つとして同じ柄はないのが特徴です。顔の毛色は、右側が黒っぽければ左側はオレンジなど真ん中から左右で二色に分かれることが多くなります。
このサビ柄に縞模様が加わったものを「麦わら」、全体的に淡い色のものを「薄サビ」と呼びます。三毛猫同様、サビもメスが圧倒的に多く、性格はマイペースだったり甘えベタなところが見られます。
4:ユニーク柄(アグーティ・シェーデッド・クラシックタビー・ポイント)
縞模様でもなくブチ模様でもない、足先や顔の真ん中だけが色が濃いなど、特徴的な毛柄を持つユニークな猫もいます。
ポイント
顔部分は鼻の周りや耳の先のほか、目の周りや頬の周りなどが濃い色になります。体も足先や尻尾の先などの先端部が濃い色になるのが特徴です。冷えやすい体の先端の色を濃くすることで、日光の熱を蓄えやすくするとも言われています。シャムやラグドールといった猫種は、このポイント柄の代表です。瞳の色はブルー、またはそれに近い色になることが多いです。
クラシックタビー
アメリカンショートヘアーに代表される、太い縞模様が入った柄です。トラ柄は細めで均等に縞が入りますが、クラシックタビーははるかに縞の一本が太く、お腹のあたりでは渦を巻くような模様が入ります。このクラシックタビーはアメショだけでなく、スコティッシュフォールドやマンチカンといった猫種でも見られ、近年ではミックスでもこの柄を持つ猫がいます。性格は遊び好きで活発な傾向があります。
シェーデッド
毛の根元は白で、毛先にいくにつれて濃い色が入るのがシェーデッドです。ペルシャやノルウェージャンフォレストキャットなどの長毛種に多く見られます。色の濃淡や瞳の色は、色素の量によって大きく差が生まれるのが特徴です。
アグーティ
一本の毛に複数の色が入るのがアグーティです。毛一本に濃い色と淡い色が混ざり、光の当たり方で輝いているように見えるのが大きな特徴。また、ごく細かい縞模様が入っているように見えるため、ちょっとミステリアスな印象を持ちます。この柄を持つ代表的な猫種にはソマリ、シンガプーラ、アビシニアンがあります。人懐っこい性格を持つ子が多い柄です。
個性豊な猫の柄は見ているだけで楽しい
模様の有無やベースカラーの違いで、猫の柄は様々な表情を見せてくれます。厳密にはまったく同じ色と柄を持つ猫はいないと言えます。猫一頭一頭がそれぞれの個性あふれる柄を持って生まれてくるということですね。
参考/「ねこのきもち」2016年6月号別冊『ねこのきもちセレクション KEGARA図鑑』
監修/佐藤貴紀先生(目黒アニマルメディカルセンター 隅田川動物病院 循環器担当)
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。